シナリオ詳細
希望のかけらを握りしめ
オープニング
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平たく言えば、創作ノートの精霊の討伐だ。
天才作家の最後の作品の未完成原稿の束が発見されたのだ。相当熱を込めていたようだが、いかんせん形にはならなかった。ひょっとしたら、校正の作家がほ割くしてくれるかもしれないがそれは少なくとも今じゃない。
「いいかい。物語の最後は厳重に閉じなくちゃいけない。でないと、どんどん現実に流出し始める。出てきて悪さし始めるんだな」
『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)は、シャリシャリと果物の砂糖漬けをかみ砕いた。
「閉じられない物語っていうのは終息しなくてはならない力場が行先を見失って吹きだまる。グルグルと。大抵は気にするまでもない。忘却と共に薄れて消える。作者が忘れればただの没ネタ。混沌中で読まれるような未完の大作でも、栄誉は残って力場は失われる」
だがしかし。
「力場だけが残っちゃう場合もあるんだよな。なんかの拍子で」
すでに物語の仔細は失われている。そこにどんな物語があったのかは誰にも確かめようがない。ただ、倒されるべき「最後の敵」がいるだけだ。
「悪い。そういう訳だから、討伐対象の強さがいまいち限定できない」と、情報屋は、ものの見事にぶっちゃけた。
「それが本格的にずるりんちょする前に倒してほしい。まだ本にしっぽが埋まってるくらいの感じだから。それを倒してラストにハッピーエンドと書いてきてくれ」
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――という依頼を受け、ローレット・イレギュラーズは現場に乗り込んだ。
そこは創作空間に侵食された異空間。何の脈絡もなくいろんなものが飛び出してくるお約束の世界だった。
討伐対象の強さが分からないのも当たり前だ。書き手が消えたあやふやな世界でボスキャラは滅びることが許されずに死なない理由を乱立する。
ここまで長い長い死闘を繰り広げてきた。
多段変身に対応するには骨が折れた。この場では割愛するが、誰かが回想してくれるはずだ。
複数の命を封じ込めたアイテムを壊すのも骨が折れた。この場では割愛するが、以下略。
駆け付ける部下。この場では、以下略。
とにかく、もうあと一撃うてるかどうかのところまで追い込まれている。
だから、物語にラストが打てるよう説得力を持った「特別ななにか」を出さなくては。
自分に連なる何か。現在過去未来。次元を超えて。自分に連なるスペシャルな奴を。
情報屋さんが言っていた。
「特殊空間だから。何でもありだ。今使えないけど五日使えるようになるという設定の必殺技とか、次元のかなたに置いてきた身内とか、この先、どっかの宝箱から出てくるかもしれない装備とか、劇場版でしかできないスペシャル変身とか。設定をねつ造して決めてくれ。どうせ、その空間でしか成立しない幻だ。後先考えず特別な奴をぶつけてやれ」
そう。それが、希望。胸に抱いた想いこそが力になるのだ。
- 希望のかけらを握りしめ完了
- GM名田奈アガサ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年07月06日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「炎が燃えて、風が舞い、雷鳴轟く戦いだった」
『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)が絞り出すように言った。
「トンチキ空間だと思って舐めていたがとんでもない! 長く苦しい戦いだった!」
シラス(p3p004421)は、額の汗をぬぐった。
「仲間たちがいなければここまで戦い抜くことは出来なかったに違いない! それもあとほんの僅かでお終いさ!」
倒しても倒しても何度も姿を変える脈絡のなさ。それまでの読者の考察を一切無に帰す新事実。そのでたらめさは「物語のその部分が書かれていないから』に起因していた。
しかし、小説には設定があり、プロットがあり、思いつきメモがあったりするのだ。現実世界になくても、作者の内的空間に形跡は残っている。
それを追い求めるうちに一所にいた仲間もばらばら。辛うじて誰かと一緒にいる者は幸いだ。
しかし、声は聞こえる。他ならぬ、対峙したボスキャラが中継点だ。こいつと向き合っている限り、仲間との絆を断たれることはない。
『よくわからない異空間みたいですが、ラスボスも不憫なもので。情け無用にきっちり完結させてあげる事がラスボスの、物語の為なんでしょうねぇ』
八重歯がかわいい鉄帝人『ステンレス缶』ヨハン=レーム(p3p001117)の声は、コンセントのしっぽをぴしりとしならせた音と一緒に届いた。
はらはらとこぼれる創作メモの吹雪。そのどれもに同じ名詞が存在する。
『なんか呼称があったほうがいい気がするんですが魔王ガッサーとかで良いです? 今なんか閃いたんですけど、何か他に良さそうなのがあればそっちで』
ラスボス改め、魔王『ガッサー』
名前を付けることができればこちらのものだ。存在は固定され、でたらめは出来なくなる。さあ、だから、これが。
残ったいくつかをすりつぶし、エンドマークをうつ根拠となる最後の一撃だ。
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次元断層も、二人を引きはがすことはできない。新たなエピソードとして、二人の物語の末葉となるだろう。
「まさか、女神様をさらったのがお前だったなんて……!」
『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)は、母とも慕う女神の気配を確かに感じていた。
「シリウスさんや大勢の仲間のおかげで――」
ポテトは、声を詰まらせた。スピンオフが増える。
「ここまで沢山の犠牲を出しながら。彼らの意志を継ぐ為にも、ここで負けるわけには行かない!」
『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)が、銀の剣を振りかざした。
「ポテトの親代わりでもある女神様を救い出す為にも、貴様の不正義を糾し、断罪するッ!」
リゲルの宣誓に呼応し、巽という名の友が召喚された。
「親友の窮地とあらば見過せはしない! この世界の大団円の一助とならば、喜んで我が剣を振るおう!」
ポテトも、虚空に手を伸ばした。
「下兄様……女神様を救うために手を貸してくれ!!」
この女の血はそなたの血。その女の骨はそなたの骨。連なりし血の縁をたどり、時空の狭間に整えられし目録より速やかに顕現せよ。
「――母である女神様を連れ去った奴は許せない……」
穏やかな表情を浮かべる「下兄様」が、差し伸べられた手を握って微笑む。
「女神様を助け出すためにも力を貸すよ」
リュヌと呼んでいいという妻の兄に、リゲルは頭を下げた。いつか、ゆっくり膝を交えて話をしたいがここは戦場。いつ、この不安定な空間が揺らぐかわからない。
「――リゲル、下兄様は高火力の魔法が得意だ」
兄と言葉を交わしたい。愛しい夫を紹介したい。それを脇に置き、短く必要な情報だけを告げるポテトにリゲルは頷いた。
「巽は大日本帝国から召喚された大正時代の人間だ。母国も世界大戦が控えているというのに、俺達の戦いに協力してくれている」
ポテトには、リゲルがどれほどこの召喚に応じてくれた軍人を信頼しているのか痛いほど伝わってきた。
「俺と巽が前に出ます。貴方は後方からの援護をお願い致します!」
「……なら、お言葉に甘えて……」
リュンヌが詠唱を始めた。巨大な氷の槍が先行するリゲルと巽の頭上を通り過ぎ魔王の腹腔を穿つ。
「止めは、任せたよ……」
かりそめの召喚。愛しい妹の頬を撫で、リュンヌの姿は虚空に溶けていく。あるべき場所に戻るのだ。
「止めの一撃の始まりは私から行かせてもらう!」
ポテトが詠唱に入った。
「咲き誇れ聖域の花たち。敵を穿ちその守りを奪え。そして我が愛しき者たちに、希望と祝福を!」
降り注ぐ花弁はリゲルと巽の刃を鍛え、魔王ガッサーの鎧を腐らせる。
「ガッサーを倒してくれ!」
愛しい女の声に応えずして、何故騎士を名乗れようか。
リゲルの胸に去来するポテトへの感謝。この先を、ともに未来を歩くため――
「最高の技でもって、運命をー斬り開く!」
ガッサーよ、犯した罪の数を数えろ。静かなる断罪の刃が罪を恍惚に変換し、その陶酔の深さが魔王を殺す。
「巽! ――後は頼んだぞ!」
リゲルの声を背に、巽は、逆袈裟に切りかかる。右肩から入った切っ先があらわになっていた心臓を断ち割った。
滝のような血しぶき。魔王の崩落。静かに納刀し、彼もまた虚空に溶けていった。挨拶の言葉はごく淡く。束の間の邂逅は短く、それでも各々の心に刻まれた。
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「魔王ガッサー。今この本の世界を飛び出して、混沌に手を伸ばそうとしているのね。だけどそんなことはさせない!」
口調に若干の補正がかかっております。
『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)、単身魔王の前に立つ。
「……え、違う? まーまー、ノリって大事じゃない?」
恐ろしいことに、全然違くないので、そのまま絶対倒してほしい。いや、マジだから。合ってるから。そのまま全力ノリノリで倒していただきたい。
「一撃」
目の前の魔王は、まだ元気っぽい。
「……ひよわなあーしの力では無理だわ」
つうか、剛力パンチとか、JKに期待すんなし。ありえねーから。辞書に適材適所って載ってるか?
「だから、あーしは数をそろえる!」
異世界転生モノは、チート系の逆、非力を知恵と知識と発想力でどうにかするのもまた醍醐味と心得よ!
「『リングトナード』、エルフ耳の魔法弓射手! 『タワー・オブ・ロンドン』、蒸気で放つロケットパンチャー! 『ロストトーキョー』、重火器ガン積みハッピートリガー!」
遠距離系スタンバイ!
「宇宙戦争『トートロンメル』、レーザーブレードサムライ! 魔法少女跋扈『フラクタル』、炎の燃え系魔法少女! ブシドー斬り合い『ネオエド』、桜舞う彩の刀使い! 『マジックユーギ』、なんかコストの高い姫騎士カード!」
アタッカー、スタンバイ!
「『ヴィラン』、毒使いの闇医者! 料理パンク『カマドクドー』、カレーで世界を救った勇者!」
更に、色物系もスタンバイだ!
いったいどれだけのお時間をソシャゲに費やしておられましたか。しかし、その掛けた時間と情熱と人生が、今ここで開花する。人生に無駄なものなどありはしない。
「他にもたくさん召喚したけど、サブキャラなので省略」
外側から、ありえない量の弾幕が張られ、その内部で大太刀やらレーザーブレードやら炎で存在がも腹グリップのみのマジックロッドやらないトランスやらが乱舞する。
「たとえ別世界であっても、あーしであるなら息を合わせる事なんて造作もないのよ!」
でたらめあいまい君間だからこそのクロスオーバーである。本編では許されない特典冊子・書下ろしのみの大盤振る舞いだ。
「これぞ『召喚夕子・大行進(あーしのいせかいこすぷれぱんち)!』」
購入店舗によって内容が異なる場合があります!
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ルフナは、たった一人魔王ガッサーと対峙していた。
「旅の始まりはどうだったか。森の外の世界を知らなかった僕らを襲った突然の戦火」
もちろん、そんな事実はない。最後の一撃の威力を増幅するためのアレなのでご清聴ください。
「リモコンはどっかいくし、イヤホンは絡みに絡まった上に引っかかってビーンってなって耳からすっぽ抜けるし、「1」足りないし……」
腹が割れそうになったり、体の水分なくなりそうだったりが物理的にも慣用句的にもあった。
「……今思い出しても胸がいっぱいになるよ」
夕子ちゃんは「えっちなめにあう」星の下に生まれているから、色々あったけど仕方ないね。なるたけ早く忘れてあげてね。
「託された思い、背負った期待が僕の力となり、背中を押してくれるんだ」
背中を押されたルフナは、最高の火力を呼び出す。
「ディン兄は、幻想種はしまっちゃう、幻想種以外はしまつしちゃうマンなんだ」
お互いの幸せのために、全力で新緑に引きこもっていてほしい。
「そう。ディン兄は幻想種以外絶対殺す砲を撃てる」
兄の力を信じている。絶賛生き別れ中だが、現身を召喚するのに躊躇しない。立ってるものは兄でも使う。
(もし暴走した時は【褐色肌片目隠れ長耳弟属性ショタ】としてのポテンシャルをフル活用して兄を宥めるから)
写し見に干渉して、ご本人様降臨してこないとも限らない。とっとと一発ぶたせてお帰り頂く。
「手を重ね、魔力を編み上げ、力を合わせて最後の一撃を、いま、放つ!」
現実で会ったら、兄は万策を駆使てルフナを新緑に連れ戻す。そのためなら魔王も従えようとするだろう。
柔らかな笑顔が戻っておいでという。応と答えることはできない。
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位相が変われば、魔王の有り様も変わる。
ポテトとリゲルの前に現れた魔王ガッサーが騎士物語ならば、ヨハン達の前にいる魔王ガッサーは冒険活劇だった。
「――全ての情報は出揃った、この天才参謀によるクェーサードクトリンの前にはラスボスの弱点など丸裸だ!」
立ち位置独自でいい感じです! ショタ軍師は確実に一定層をえぐります。ソースは、行動硬直に至った魔王ガッサーだ!
「戦略眼をフル活用して閃いた計算式から導き出される弱点は……そこだぁーっ!! 全力全開! ファントムチェイサー射出!!」
ぎゃー! あざとさという名の悪意にえぐられる―!
「――こんな魔力じゃちっとも効かないでしょうけど、何度も何度も弱点を撃ち続けてきたのです」
この最終局面に少しくらい痛がってもらっても良いんじゃないかなぁ? と、ヨハンは笑った。
「そう、主力の合体攻撃を撃つ隙さえできれば上出来ですよね! 今です!!」
参謀様が輝けと合体攻撃組にささやいている。
「魔王ガッサーだかなんだか知らねえが、おまえを倒せば終わるんだよな!! 今までの長く苦しい旅も、死んでいった人々も……」
『ラド・バウC級闘士』サンディ・カルタ(p3p000438)は、大きく息を吸い込んだ。
(そして、この俺のモテない人生もだっっ!!!)
スピンオフ作品『闘士になればモテモテと言われて召喚に応じたが、そんなことはなかったぜ』が爆誕した。何処かのラノベ作家にインスピレーションが下りたことだろう。ぜひ書店もしくは頒布会を当たってほしい。
(……まぁでも、俺よか「決着」に強い想いのあるレディがいるんだ。どーせなら、シラスより華麗でクールにミズキちゃんをエスコートしてやるぜ!!)
「魔王ガッサー……」
『鋼鉄の冒険者』ミズキ・フリージア(p3p008540)は、両手を握りしめた。手にした無理と無茶の区別がつかない故の幸運とファルカウの加護が武器だ。
「この黒マフラー、見た事がないとは言わせませんよ? 何せ、貴方自身が家族を奪った挙げ句、洗脳して部下にした(らしい)男の物ですからね!」
見たことがないというより、今生えた設定だ。魔王ガッサーの脳裏に今までなかった関連エピソードは流し込まれている。マフラーの持ち主の男の生涯がスピンオフ単行本一冊分ポップアップした。
「……このマフラーを託された時に言われましたっけ。『強く望めば、1度だけ未来の自分の力を手にする事が出来よう。お前は何故、その力を望む?』
スピンオフ作品の最終章突入直前引き台詞。ひとまずしおりを挟み、ティッシュを取りに行き、飲み物を用意する間に噛みしめるためのセリフだ。
「私はまだイレギュラーズなりたてで戦闘なんて全然出来なくて……先輩方の足を引っ張ってばかりだったけど……此処まで来たのなら、魔王ガッサーを倒してハッピーエンドを目指すしかないでしょう?」
魔王ガッサーは咆哮した。ビキビキと肩関節が震え、大量の粘液と共に飛び出したのは武器を握った腕だった。
ズルりずるりと片側四本の計八本。それがもつれ合うこともなく、連携をとるように振り回される。
「まさかこの土壇場にまた変身を残していたとはな!?」
だが、あの四対の腕は、命を絞り出したようなものだとシラスの勘が言う。
だが、あと一押し、もう一撃を深く決めれば倒せる手応えは確かにある!
シラスが声を上げた。
ヨハンがしてくれたお膳立てに乗って加速。得意のディアノイマンの自動計算ステージが上がる錯覚。比べものにならないスピードアップ! 几帳面すぎる懐中時計の秒針が何も持たない手に別の属性を張り付ける。魔王の防御を引きはがす指先。いっそ無限に穿てそうな気さえする。
「サンディ!」
シラスにとって、これまで何度も依頼の解決に協力し合ってきた間柄。歳が近いからライバルのようにも思える。
サンディは動いた。
(シラスは確かに強ぇけど……俺だってC級闘士なんだ、同じぐらいの歳の男に負けてられっかよ!!)
「ミズキちゃん!」
戦場に慣れていないミズキの動きに響くようにサンディが動く。ごく自然にミズキを温存するための動き。
「悪いが逃がすわけにはいかねぇ」
未だ途切れることのないシラスの連打に並ぶように魔王ガッサーの間合いに入り、サンディはとっておきを繰り出した。
「こいつでガッチリ風の渦の中に捕らえる!」
サンディの嵐は魔王のありようを許さない。地に這いつくばり、暴威に首を垂れ、屈服せよと仰せだ。
単身より誰かと連携した方が、おそらくサンディの長所がいかされる。
(だからこいつに、サンディに後れを取るわけにはいかないんだ)
シラスは叫んだ。
「俺たちはミズキの一撃のための捨て石だ」
「ミズキちゃんの音速の一撃へのお膳立ては完了だぜ!」
駆け抜けるミヅキの耳に切れ切れに二人の声が届いた。
(シラスさんが魔王を捉えてくれている。サンディさんが魔王の守りを崩そうとしてくれている。色んな人が、こんな私に託してくれたんです。『トドメはミズキに任せた』って)
踏み込む足が音を抜いていく。
「魔王ガッサー! 受けなさい! これが……私の全力のソニックエッジです!」
現実の世界だったら、まだまだへなちょこソニックエッジだったろう。魔王には到底届かない。だが、ここはあいまい空間で、三人分の――
「統率によって完璧に連携を取った主力攻撃、これが効かなきゃウソになるでしょうこのお話も。勝利への布石、お膳立ては終わった! さぁ、感動のフィナーレといこうか! 勝利を掴めぇーっ!!」
いや、ヨハンの分も載せて、四人分。想いを乗せた誠実さは最強なのだ。
ミズキは、黒いマフラーに叫んだ。望みを言うのではない。自分の力がどこを目指すかの死んでいった男への報告だ。
「速く……速く……誰よりも速く! それが何よりも、私が望んだ力だから……ッ!」
いつだって、ヒトの想いは何かを飛び越えていく。
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それぞれがそれぞれのやり方で魔王を倒した。一人一人の目に映る魔王はばらばらだったけれど、同じ魔王『ガッサー』を倒した。
そして、エンドマークが書きこまれなかったお話のボスキャラはようやくラストを迎えたのだ。
だから、これはエピローグ。フェイドアウトするための緩衝だ。
気が付けば、はらはらと世界を隔てる障壁は崩れ去っている。
今までずいぶん遠くにいたはずの八人はすぐそこに立っていて――。
「――あぁそうだ、物語のハッピーエンドにはこれも付き物だな。有難う私の王子様。お陰でこの世界に平和が戻りました――なんてな?」
ちぅ。
「有難う、俺のお姫様」
ちぅ。
リゲルとポテトが口づけを交わした所に、ポンと六人が現れたような格好になった。
若干の間。指の間から見るのはお作法である。
「ミヅキ、やったな!――って、え!?」
「見てない! 俺は何も見てない!」
「いえ、あの、愛し合う二人は素晴らしいと思うんですよっ!」
「あーし、そういうのはよそでやってほしーんだけど」
「そういう気分ってあるんだそうですね。鉄帝だと作戦中のそういうのは一応軍規違反ですけどね」
「若いっていーよねー」
そういうのに免疫があるとは思えない男子二人と推しのことにかまけている女子一人に、エッチな目には合うけど全年齢な青春のJKに鉄の青春を送ってる男子一人。それに、その辺りどうなんだよとツッコミを入れたくなる一見ショタ物見高い56歳。
リゲルはそれでも妻を放したりしませんでした。
ヒロイックファンタジーのラストを締めるのはキスシーンであるが、残念。この場はクロスオーバー。
さあ、各々思いのやり方で、エンドマークを書きこもう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様です。それぞれ趣深い一発をいただきました。これで現実世界への流入はありません。ゆっくり休んで次のお仕事頑張ってくださいね。
GMコメント
田奈です。EXプレイングを解禁します。
あなたの関係者、がっさーに紹介してください。
物語にこのままでは滅びられないボスキャラを滅ぼして、終局を迎えさせてください。
必要なのは、ラストにふさわしい説得力のある「特別ななにかによる」一撃です。
必殺技、特別な装備、謎のアイテム。突然召喚される関係者。プレイングを、どんなボスキャラにどんな一撃ををぶち込むかに費やしてください。一人一体でも構いませんし、複数で一体のボスに挑んでもOKです。合体技も浪漫ですね。
つまり、ロマンあふれる一撃を繰り出せれば勝ちです。もちろん、ダメージ判定はしますから浪漫に火力を持たせることをお忘れなく。
舞台=書かれていないあいまいな書割。
一切描写されていないラスボスのいるところです。まったく設定がありませんので、相談してすり合わせしておいた方が合体技を使うなら有利でしょう。もちろん、全然違う設定で全然違うボスキャラと戦ってもらっても構いません。根幹は同じです。その辺りも相談してくださいね。
ボスキャラ
*物語のラストに出てくる存在。これを倒せばエンディングだが、未完なので、ラスボスは死ねずにいる。ラスボスにふさわしい死にざまを用意しなくてはなりません。
ここまでいい感じでダメージを与えているので、あと一撃、何かかっこいいのをかましてください。
「一撃です」
しつこいようですが、行動ターンは残り1です。次のターンはありません。
*ここに至るまでの回想シーンをねつ造して、よりこれから繰り出される一撃をスペシャルにするのもありです。
*火力がある関係者を召喚することが可能です。
曖昧な空間だから成立したかりそめの邂逅。
本物かどうかは微妙だし、互いの記憶に残るか定かではないけれど、一言二言言葉を交わすくらいはできるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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