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シナリオ詳細

氷海砕きのロンペイロス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ヴィーザルの海を制す者
 鉄帝国北部、ヴィーザル地方。『ノーザンキングス』なる(自称)連合王国は度々、鉄帝国と小競り合いを続けている。
 そして、ノーザンキングスの中で最もストレートに敵意を向け「易い」相手といえば、やはり戦闘民族ノルダインであろう。
 ヴィーザルの海を渡り、海沿いの地に侵攻しては略奪の限りを尽くす者達。そして、ノーザンキングスで最も発言力がある者達だ。
 彼らは冬の海を恐れない。略奪に躊躇がない。蹂躙に手心がない。そして命に対する敬意が徹底的に欠けている。
「……別にそれは構わねえよ。あいつらの生き方を否定する権利は俺にはねえ。ノーザンキングスを仕切ってるのも百歩譲って認めといてやる」
「じゃあ、私達を誘い込んでまでこうして会話の席を設けた理由はなんです? 回りくどい手をとったということは、表にはできない話と認識しますが」
 ヴィーザル地方、シルヴァンス部隊『白兎』管轄テントの一つにて、『蒼ノ鶫』ドロッセル=グリュンバウム(p3n000119)は『白兎』隊長、ヴァイス・ブランデホトと対峙していた。
 先ごろ、ノーザンキングスの動向を調べようとしたイレギュラーズが突如現れたヴァイスに声もなく誘導され、辿り着いたのがここだったのだ。
 外は、冬とまでは行かずとも初春程度の陽気だ。海洋での冒険が記憶に新しい一同には厳しい環境だったのだから、こうして温かいテントで会話ができるのは有り難いのは確かだ。
「俺『は』ノルダインのやり方に異論はねえ。シグバルドも根は良いやつなんだろうよ。だが、一人だけ。どうしてもシメときてえ奴が出来た」
 ヴァイスの鋭い眼光が一同を射抜く。それは自身に向けられたものではない、と分かっているが、その敵意……殺意にほど近い感情は察するに余りある。
「俺の部下が何人か、『氷海砕きのロンペイロス』の連中にやられた。奴はノルダインの中でも特に胸糞悪ぃ野郎で、捕まえた奴は男だろうと女だろうと悪趣味な拷問にかけやがる」
 女の方が悲惨だがな、と吐き捨てた彼は、「部下の故郷がやられた」、とだけ短く続けた。眉間の皺が深くなる。
「不可侵条約があるわけでもねえ、連合を名乗ってるだけだがあいつらも俺も必要なら必要なだけ、奪えるところから奪うさ。……俺達は賢くねえんだ。わかるだろう?」
「仇討ちというわけですか。見返りは?」
 ようようと吐き出した彼の言葉に、すかさずドロッセルは問いを差し挟む。少しだけ言葉をつまらせたヴァイスは、笑みを作り、一同へ告げる。
「あのクソッタレ野郎が次に狙う場所の連中を俺達の庇護下に置く。鉄帝本国のクソ野郎だろうと殺す理由がねえ奴は殺さねえ」
 『俺達』はな、と呟いた彼の手を、イレギュラーズが掴んで乱暴に揺さぶった。
 交渉成立、ということだ。

●ノルダインとシルヴァンス
「……なんのマネだよ『白兎』ィ。お前等のヤサはもっと東だったろうが。少なくとも俺の縄張りに顔を出す都合はねえはずだぜ?」
 そして、テントでの会談から一晩あけて。
 夜明けと共に現れたノルダインの船を座礁させ、荒っぽく出迎えた一同を見たロンペイロスとその配下たちは、不機嫌を隠すことなく彼らを見る。当然、真っ先に目が行くのはヴァイスの姿。
「待ってたぜ『氷海砕き』。ヘルツ、カルダン、ミーヴィー、コルステスの首に見合うだけの馬鹿の頭をすっ飛ばして帰ろうと思ったんだがな、手前の顔を見て考えが変わった。……お前のド頭置いてけ。それでチャラにしてやるよ」
 ヴァイスの言葉を聞き終わるより早く、ロンペイロス達は己の得物を引っ張り出す。
 交渉の余地など最初からない。殺す以外の理由を探すには、ヴァイスは怒りを押し殺しすぎていたのだ。

GMコメント

 そんなことよりドチャクソに可愛いヴァイス君を見てくれ。

●達成条件
 ロンペイロスの部隊の壊滅(ロンペイロス自身の生死は達成条件に含まれない)

●『氷海砕き』ロンペイロス
 人間種。ノルダインでもちょっとだけ名のある男で、略奪行為に際して必要以上の拷問や見せしめを好む男です。
(士気向上という意味では適切な行動なので一概に悪事、とはいえないですが、被害者には関係のない話です)
 かなり屈強で斧と円盾を装備した典型的戦士タイプ。だが、斧は両手斧に近いサイズを片手で持っている為、威力も本人の筋力も理解の外にある。
 名乗り向上と、同範囲(自身から2レンジ)の識別付き付与スキル(防技微減、物攻大幅上昇)、ほか力任せの技を使う。
 盾を使った格闘技と、斧の投擲攻撃は特に強烈。

●ノルダイン兵士×12
 ロンペイロスの部下。
 士気が非常に高く、弱い相手も強い相手もどちらも大好き(どっちにしろ打倒して辱める為)。
 片手剣、弓を装備する他、フィジカルが無駄に屈強な術士もいる。
 ロンペイロスの指揮に忠実で、無駄攻めしないし陣形を簡単に崩すことはない。

●『白兎』ヴァイス・ブランデホト
 友軍。『白兎』からの参戦は彼のみ。詳細な事情は拙作「『太陽の種』争奪戦」にて(参照不要)。
 武器はサブマシンガン。指揮統制能力による付与や連射による列攻撃などが可能。そこそこ戦力になる。

●ドロッセル=グリュンバウム
 基本的な神秘術式がいくつか使え、治癒も多少ながらできるイレギュラーズ。
 保険程度の扱い。何故かここのところノーザンキングス駐留軍に居座っている。

●船上
 海沿いの村・浜辺との境界線あたり。
 浜辺なので足を取られやすく、反応が微減。敵方は慣れているためこれを被らない。
 敵勢力を5名以上素通ししたら依頼は一気に失敗へと向かう(即失敗ではない)。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 氷海砕きのロンペイロス完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月06日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ヴィクター・クロロック(p3p008362)
半端者
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
キャナル・リルガール(p3p008601)
EAMD職員

リプレイ

●鉄錆と潮風
「ははあ。揃いも揃って脳筋そうなツラしちゃって。脳筋はアル中鉄帝人だけで定員オーバーですってのに、ねえ?」
「『ねえ?』じゃありませんわよ! 貴女だってこうして真っ直ぐ突っ込んでいるのだから大して変わらないでしょう!?」
 ゼファー(p3p007625)と『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の二人は、ロンペイロスの一団を前にしても全く動じた様子がなかった。尤も、海から来る暴威であれば彼女らは遥かに強大な存在を相手にしたのだから当然といえば当然。粗雑なだけの相手など、気にするまでもない。
「かぁー、荒くれ者が雁首そろえちゃって嫌だねぇ。ま、こっちの陣営も似たようなもんか」
「しにゃは大人しい方ですよ? ……それよりブランデホトさん、ブルーブラットの銃使いですか!? 仲良くしましょう!」
「俺が言う立場じゃねえが、手前ェ等本当に緊張感ゼロだな……」
 『半端者』ヴィクター・クロロック(p3p008362)と『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)の軽口の叩きあいは、一触即発の戦場にあって清涼剤のような役割を果たしていた。無論、ヴィクターが見ていた方向は明らかなんだが敢えて触れない。ブランデホトは、早々に寄り付くしにゃこに呆れたような目を向けた。親近感、理解できなくもない。
「鉄帝なら、きっとメンツとかも必要なのでしょうね」
「最終的には、ノーザンキングスとはケッチャクをつけなきゃとは思ってるんだけど……」
 『儚花姫』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)の視線を受け、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は腕を組んで考え込む。同じく視線を受けたヴァレーリヤは視線をそらして口笛を吹き出した。まあ、彼女は大きい事件があったばかりなので『内部』に目を向けるべき人間なのだがそれはさておき。
「それを置いておいて、ロンペイロスは直ぐにぶっ飛ばしとかなきゃね。オレのジモトを蹂躙されちゃカナワナイ」
「はン、奪う価値があるんなら遠慮なく奪いに行ってやらぁ! それを差し引いても俺の船を潰したお代はもらっとかねえとな?」
 「なァお前ら」、とロンペイロスが問いかけると、クルー達は威勢よく声を張り上げた。イグナートも、そのやり取りで警戒心を強めたのは明らかだ。
「ノーザンキングス同士の仲間割れ、ね……ま、いいっス。クソヤローがいたら〆たくなるのは万国共通っスからねー」
「違ェな。こんなもんは『ノーザンキングス』(おれたち)の看板背負ってやることじゃねえ」
「オウよ。俺達は被害者だ。正当な交渉をする権利がある。違うか?」
 『遺跡調査員』キャナル・リルガール(p3p008601)の素朴な(そして普遍的な)感想は、しかしブランデホトもロンペイロスも即座に否定した。粗雑な連中なりの、同義というのがあるのだろう。
 クソヤローのくだりを否定しないのは、やはり土地柄か。
「なんだか面倒なことに巻き込まれたけど……仇討ちより、こいつらを村に行かせたくないって方が大きいよね」
 『救いの翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)は翼を広げ、今や遅しと飛びかからんと構えた兵隊達を押し止めるべく身構えた。
 ゼファーとドロッセルは視線を交わさず、しかし何れもロンペイロスの挙動へと意識を注ぎ込む。
「そこのボスゴリラ、私と踊って貰えないかしら? ……嫌って言っても行かせやしないけど!」
「乳臭い小娘に興味を向けるのも億劫だが、邪魔をするなら殺しておいたほうが後腐れもないだろう、なあ?!」
 ゼファーの挑発がロンペイロスを刺激したということは、恐らくあるまい。あるとすれば、彼女から立ち上る強者の気配に対する好奇心か。
「ところで、あなたはおんなじ名前のウサギさんなのね。皆、呼び方を困らせてしまってごめんなさいね?」
「……調子狂うぜ。あのクソ野郎をシメてくれんなら気にしねえよ」
 ヴァイスの言葉に、ブランデホトは呆れたように相手を見た。そして、ライフルを構え、後方に跳ぶ。
 その後退を逃げと見たか挑発と見たか、ロンペイロスの部下達はブランデホトを追うべく踏み出す。隊列を崩さず、手際よく、そして殺意を顕に。
「荒くれ者達を相手するのは味方だけで十分だよ。楽させてほしいもんだ……なあ?」
「そこで私を見ないでくださいます!?」
 ヴィクターがヴァレーリヤをちらりと見ると、彼女は心底不機嫌そうに声を張り上げた。
 無論、その間にヴィクターの魔砲とヴァレーリヤの突撃を浴びるのは正面切って襲ってきた兵隊達なのだが……。


「隊列並べてまっすぐ来てくれるなら狙いやすくて助かるッス。狙いやすい相手は僕、大好きッスよ」
 キャナルは後方に陣取って魔力を練り上げる術士目掛け、爆弾を次々に生み出していく。一発あたりの威力は相応、そして狙いは悪くない。術士達は必然として、彼女を面倒な手合と認識する。
「おこぼれに預かるために尻尾振ってついてくとか、獣種よりイヌらしいね」
「誰かについてくってのはそういうモンだぜ。誰にも相手にされねえよりはずっとマシだ」
 ミニュイの挑発は、それなりに有効だったのは確かだ。現に、何名かは彼女目掛けて攻撃を仕掛けに行っている。だが、特に眼光の鋭い類の数名は彼女の視線を無視して前進する。彼らの目的はあくまで海沿いの集落。無駄な交戦は無視するに限ると言わんばかり。
「それじゃあ、その誇らしいリーダー肝煎りの陣形を崩されたらどんな顔をするのかしら。気になるわ」
 ヴァイスが生み出した暴風は、向かってくる兵士を後衛ごと弾き飛ばす。吹き飛ばされた兵士の表情に、動揺の色は薄い。感情の切り替えが早いのだろう。
「固まってくるならタスカルよ、倒しやすいからね!」
「そう来るだろうことは承知の上だ……!」
 イグナートは迫りくる兵士を纏めて蹴散らすべく、集団の中心めがけ拳を振り回す。が、彼の連撃を兵士の一人が止め、他の兵士が隙を見て彼へ飛びかかった。ひと塊に集まって来た分、互いにかばい合うことで一網打尽となるのを防いだのだ。
 更に後方から、弓と術が入り乱れ襲いかかる。イグナートにとって一つ一つはさして強烈ではないにせよ、繰り返し狙われれば次第に傷が増えていく。それは無視できない瑕疵に繋がるのだ。
「しにゃの可愛さを無視してまであちらに行きたいんですか? ……もしかしてビビってます?」
(うわぁ、煽り方クソウゼぇ……)
 しにゃこは突っ込んでくる兵士との距離を維持しながら狙い撃ち、挑発することも忘れない。技術でもなんでもなく単なる言葉で兵士の神経を逆なでする。
 それを脇目に見ていたブランデホトは、このテの相手を酷く嫌う……敵としては。故に、今回は相手する必要がなかった、という事実がどれほど有り難いことか。
「手前ェ等、だらしなく遊んでるようなら俺が殺してやるか?」
「……っ」
 当然ながら、ロンペイロスは不甲斐ない部下を求めていない。彼らがロクに戦えないなら、むしろ自分一人でも戦う……そんな声音だ。
「あらあら、部下にお説教? 悠長な話だこと」
「口の減らねえ小娘はもれなく俺が殺してやる。囀るんじゃねえよ」
 ゼファーは前に出ようとするロンペイロスの斧に槍を重ね、相手の攻撃に割り込むようにして弾き返す。鼻先まで迫った槍の穂先を、しかしロンペイロスはスウェイバックで躱し、盾で弾き返した。その無理のある動きに槍の衝撃、合わせれば無傷とはとてもいくまいが……彼女の業前の正面切って受け止めたにしては、異常なほどに傷が浅い。
(……然し。態度のデカさに違わない実力はあるらしいわね)
 ゼファーは塞がっていく自身の傷口を一瞥すると、相手の間合いに踏み込んでいく。ドロッセルは戦いに巻き込まれぬように必死に、そしてロンペイロスの挑発に乗らぬように立ち回る。
 彼を前進させれば強力な号令を受けた兵士達の突撃で戦闘は俄然厳しさを増す。
 そうでなくとも、弓手や物理干渉系の魔術を使い熟す術士への指揮を楽して妨害できるほどには、ロンペイロスは御しやすい男ではない。
「そのクソ野郎、やることと人間性はド底辺だが腕は確かだぜ。……お前さんほどかは知らねえがな」
 ブランデホトはロンペイロスの傍らへ駆け寄った術士の喉を狙撃すると、リロードして次の敵へ照準を合わせた。放置しておけばゼファーを弾き飛ばし、全身の機を生む手はずだったのだろう。……再度詠唱しようとしたそれは、しにゃこの追撃で息の根を止められる。
「だそうだけれど。だらしない時間稼ぎを始めたら私が殺しても構わないのでしょう?」
「『氷海砕き』がゼファーひとり砕けないなんて名折れですわねー!」
 ゼファーが、それに便乗したヴァレーリヤがロンペイロスを挑発する。イレギュラーズは現状、優勢であるどころかやや押され気味ですらあったが……そんな時だからこそ、彼女らは軽口を叩くことを忘れない。
「こんな状況で笑ってられるなんて、ホント愉快だ」
「手数と力だけで突っ込んでくる相手なんて、倒されなければいずれ倒せるしね。……恐れるほどの相手じゃない」
 ヴィクターは、限りある魔力を攻撃に注ぎ込み、次いで仲間達の治療に専念した。それでも、敵を通さないという意思のもとで行く手を阻み、自ら盾になってみせもする。
 経験が少ないなりに、覚悟は十全に持ち合わせているのだ。
 ミニュイは繰り返し相手を挑発することで、少しずつ狙いを自分に集め、自らも積極的に攻めに転じていた。深い傷を負いながら倒れず、しかし攻め立てた側は徐々にその身に傷を増やしていく。僅かな、肉体自慢の術士の治癒など、もはやこの激戦の速度に追いつくのは不可能なほどになっていた。
「隊列が乱れてしまったなら、立て直すのも大変そうね。……考えなくていいようにしてあげるわ」
 ヴァイスが放った茨は手近な敵に巻き付き、苛み、動きを止める。思考すらも凍りついてしまえば、最早陣形もクソもなかろう……その脳天に、キャナルの精密射撃が突っ込まれればなおさらだ。
「クソヤローはクソヤローらしく獣のクソにでもなればいいんスよ。北(こっち)でバカみたいに国だ領地だ騒いでる分には文句言いやしないッスよ」
 キャナルは爆弾を構え、後衛目掛けて投げつける。
「キミらみたいなクズは駄目っス」
「そうだね、オレのジモトを蹂躙されちゃカナワナイ」
 イグナートは前衛の最後の一人、その至近距離へと踏み込むと、全霊の打撃を叩き込む。振り下ろされた片手剣は折れ砕け、胴はイグナートの拳の形が残るほどにひしゃげ、吹き飛ぶ。仮に生きていても、オートミール一口すら喉を通るまい。
 弓も、術士も。相当に負傷を重ねながらも、イレギュラーズによって掃討されている。
「……もう少しもたせろよ、バカ共が」
 ロンペイロスは追いすがるゼファーを斧の一撃で振り払うと、最初からそうしたかった、とばかりにずんずんと前進する。ゼファーは無事だ。少なくとも、あと少し戦う程度には体力が残っている。惜しむらくは、傍らのドロッセルが治療可能なほどに魔力が満たされるより、ロンペイロスとの決着が早かろう、ということぐらい。
「そこから先へは進ませませんわよ」
 ヴァレーリヤはメイスを突きつけると、相手を黒いキューブへと囲い込む。数多の苦痛が彼を襲い、動きの精彩を欠こうとする。
「味方全員殺されたんだから大人しくお帰り頂いた方がいいなないですかー! 引き際もわからないんですか?!」
 しにゃこは弾倉を交換すると、キューブから伸び出た足先に銃弾を叩き込み、そのまま真上にポイントする……胸元だ。
「逃げる……っていっても、逃がす気はないけどね」
 ミニュイはロンペイロス目掛けて鎌鼬を連続して放ち、避ける余地を奪う。盾で受け止めた彼は、咆哮一喝、両手で斧を構え直した。……今までが本気じゃなかったというよりは、追い詰められたことでより深い敵意を自覚した、といったところか。
「ああ、逃げる……逃げるか。馬鹿野郎が。『白兎』、これが手前ェの堪忍袋の緒ってやつか」
「そうだよ、これが俺が感じてる苛立ちだ」
 正面から相手してやる気はないけどな。ブランデホトはそう告げると、イレギュラーズに視線をやる。
 トドメを譲るとかヌルいことを考えるな、と。死ぬ気で戦え……そう、目が告げていた。
「あー、嫌だ嫌だ。こういう雄臭いやりとり好きじゃないのよ、私」
 だから殺すわ、とゼファーが槍を突きこむ。振り返ろうとした彼の膝が、僅かに崩れた。……少し遅れて、ロンペイロスの耳にヴァレーリヤの聖句が届く。
 腹部に突き込まれた槍へ手を伸ばそうとして、しかし彼は胸部、喉、頭に三点射を受け、仰け反った。……頭部に突き刺さった弾頭は、しかし頭蓋を貫かずに地面に落ちる。
「石頭にも程があるッス。普通貫かれて終わりッスよ……」
「しにゃはあれ以上、あの声を聞きたくなかったから満足です」
 キャナルは自身の打った弾の行く末に顔をしかめ、しにゃこは喉を貫いた成果に満足げだ。
「生憎、ヘッドショットで格好良く決めるくらいなら心臓にホローポイント打ち込んだ方が早ぇのさ。俺は『白兎(おれたち)』をバカにしてきた連中にはそうしてきた」
 銃身の熱がヴィーザルの冷たい空気に触れ、ブランデホトの銃から緩い湯気を伸ばす。一同の視線を受け、彼は肩を竦めた。

成否

成功

MVP

ゼファー(p3p007625)
祝福の風

状態異常

ゼファー(p3p007625)[重傷]
祝福の風
ヴィクター・クロロック(p3p008362)[重傷]
半端者

あとがき

 お疲れ様でした。最後あたり、まともに戦闘が続いていたらもうちょっとヤバげなことになっていました。多分。
 ですがゼファーさんが全力で止めたことで全体へのバフが最小限で済み、各人倒れてでも止めるぐらいの覚悟がキマってたのでかなり決着まで早かったとかそういうのもあります。
 被害が思いの外少ないのは勿論ドロッセルの努力ではなく(AP全部単体治療で消えてます)、臨機応変に動けたヴィクターさんの功が多少なりあります。
 何でもできる、は良し悪しですが、今回は非常にベターでした。

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