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シナリオ詳細

5つ星レストラン、アルタ・マレーア

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●想いは星に。物語は永遠に。アルタ・マレーアは開店する
「みんな! みんな!」
 カタリーナ・マエストリは駆けていって、バランスを崩して盛大に転んだ。
「お、お嬢さん!」
 慌ててアルタ・マレーアの従業員たちがやってきた。カタリーナは痛打も気にせずぱっと顔をあげる。
「勝っ……たのだわ! 勝ったのだわ! みんな帰ってくるのだわ!」
 滅海竜リヴァイアサンの撃破の一報は、またたくまに海洋王国のすべてに広まっていた。
 昨日の宿敵同士が今日ばかりは泣いて抱き合い、酒飲みたちは誰とでも酌み交わし、誰がだれにともなく酒をおごる。
 失われた者たちを惜しみ、思い出話をして、勝利したものたちを讃えるために、人々は酒樽を……まだ飲めぬ者たちはジュースをあける。
 間違いようもなく、祝いの日だ。
 ここのところのアルタ・マレーアもまた戦っていた。戦いが苛烈になるにつれ、補給が前線に回され、食材が手に入らなくなっていった。
 それでもなお、知恵を振り絞って経営を続けたのは、5つ星レストランとしてのプライドだったに違いない。
 いつも通りの日常が戻ってくると信じて、彼らは店を開けていた。
「こうしてはいられないのだわ! さあ、ここからは、キャシーたちの”戦場”! アルタ・マレーアを開けるのだわ!
今日ばかりは……マナーも言いっこなし!」
 こうして、アルタ・マレーアは開店する。

●クラーク家
「どうして」
「ああ」
 ひっそりと。
 露台にもうけられた貴人のための特別な席で、レジーナ・クラークとレナード・クラークは、向かい合って静かに食事をとっている。
 そこには長女パール、長男エドワードの姿もあった。
「レジーナが言わんとすることはわかる」
「どうして、私たちはこうやって食事をしているの。どうして今日も生きているの。どうして明日も生きていくんでしょうね」
 名門貴族クラーク家の一員である彼らの食事の所作は完璧で、一点の隙もない。
 ナイフの音一つ立てず、鏡あわせのように向かい合う双子は、静かに店の喧噪を眺めている。
「そうね……」
 パールがふっと息を吐く。
 誰もがその人物に触れない。
 クラーク家においては……よくあることだった。家系図が、不意に途絶えるのは。そして誰も話をしなくなって、さもいなかったかのように扱われるのは。
 まだ、誰もが理解し合えない。まだ、憎しみの炎はくすぶっている。
「一応、招待は送ったけれど、あの人は来るかな?」
「私なら、来ないでしょうね。ならば……デイジーは来るのではありませんか」
 エドワード・クラークは柔和な笑みを浮かべる。
「彼女は私たちとは違います。決定的に」
「度しがたいわ。忌々しい事ね」
「彼らは……イレギュラーズたちならば、分かるのだろうか」
 彼らは、気まぐれにイレギュラーズたちに聞くかもしれない。

●『ナイトライト』フィフィ
「こらーーーー!」
「あっ、見つかっちゃっタ!」
『ナイトライト』フィフィは厨房からつまみ食いをしていたのだが、追いかけられてテーブルクロスの下へと身を隠す。
「神聖なアルタ・マレーアの中で、つまみ食いは許さないのよ! 万死! 万死に値するわ!」
「きひひひっ。賑やかだなあ」
 フィフィはシェフに追い回されながら、隠れつつ料理を食べている。
「というか、普通に立食パーティーなのですが!? 普通に食べてくれたらいいじゃないですかね!?」
(だってそれじゃあつまらないもんネ? もっともっと遊びたいよネ? きひひっ)
 フィフィはあまりにも素早い。
 もしかすると、めざとい者なら……イレギュラーズたちなら、フィフィと会うこともあるかもしれない。

GMコメント

●目標
 とくにありません。
 アルタ・マレーアを楽しんでください!

●状況
 今日だけは無礼講です。
 アルタ・マレーアでは立食パーティーが行われています。
 厨房から次々とこった料理が運び込まれていて、好きにとって食べます。味はもちろん折り紙付きです。

・料理
 海産物を中心に、おしゃれな料理がいっぱい。

 クリームチーズのカナッペ
 オマールのビスク(スープ)
 カルボナーラ・デ・ナスコンディーノ(こっそり隠れん坊のカルボナーラ)
 飾り切りの蜜がけフルーツ
 それに、たくさんの飲み物!

●登場人物
「美食家」カタリーナ・マエストリ
 海洋王国の五つ星レストラン『アルタ・マレーア』のオーナーの娘。食いしん坊で大食らい。
 頭の大きなリボンとボリューミーな美しい髪が特徴的だが、バランスが悪いらしく良く転んでおでこをぶつけている。
 繊細な味覚と抜群のセンスを持っている。
 料理にかける情熱は並ではなく、時折珍しい食材や非合法な食材の調達なども依頼したりもする。

クラーク一家
 クラーク家の人間は、表向き皆仲が良いとされているが、いがみ合い、陰謀の中に生きてきた。
 長男エドワード、長女パール。
 レジーナとレナードの双子。
『流氷のマリア』ことマリー・クラークを失い、デイジーに救出された彼ら。
 悼むようにか、ただひっそりと食事をしている。
 エドワードは騎士然とした人物。
 パールは浪費家であり、才能のある投資家でもある。
 レジーナとレナードは互いとだけ仲が良い。
 デイジーに招待を出したようですが……意図はなく、ただ「食事」をしたかったのだと述べている。それに嘘はないようだ。

『ナイトライト』フィフィ
 何か面白いことを起こそうかと思ってやってきた。
海洋を拠点に活動するギャング集団《ワダツミ》の構成員……だが、今のところいたずら画策中といったくらい。
人の料理に勝手に唐辛子を足したり、まだ悪ふざけで済んでいるが、……飽きてくるとなにかやらかすかもしれない。
「面白ければ何でも良し」の判断基準に倫理観はない。

●カタリーナ「何が食べたい?」
・何が食べたいか答えると、大きな口でにいっと笑って、シェフたちが腕を振るってくれることでしょう。

●クラーク家の人たち
・クラーク家の人々は、戯れにレストランに会うイレギュラーズに問いかけるかもしれません。

エドワード「なりたいものになれないとき、どうすればいい?」
パール「一番欲しいものは?」「誰かに強く<嫉妬>したことはある?」
レジーナ「取り返しのつかないことはあった?」
レナード「それを、どうやって受け入れた?」

●フィフィ
・今回の戦いはすっごく面白かっタ! またこういうことがあったらいいのにネ!
・遊ぼう、と言ってくるので、かまってあげると喜ぶでしょう。面白くって荒唐無稽ならなおヨシ!
……あまりカタリーナを怒らせないように。

●その他
解決するべき課題はなく、関係者全員に答えなければならないということでもありません。物騒なことも起こりません(たぶん。望まない限りは)

  • 5つ星レストラン、アルタ・マレーア完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年06月30日 22時14分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
戦気昂揚
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
サイズ(p3p000319)
妖精の守り手
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
胸いっぱいの可能性を
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
メーコ・メープル(p3p008206)
不退転の贖罪
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司

リプレイ

●エピローグ
「喪ったものは戻らぬ。
しかし戻らぬからと言って、全てが喪われるわけではないのじゃ」
『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)のつぶやきが波に飲まれる。
「まだやらなきゃならねぇことは山積みだが……今日ぐらいはゆっくりさせて貰おうかね
……」
『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は、黙祷を捧げるようにわずかに目を瞑った。
 海は、大切な者たちを飲み込んだまま返してくれない。
 ただ、静かにそこにある。

●アルタ・マレーアにようこそ!
「とうっ! 呼ばれて飛び出て妾のお出ましなのじゃー」
 ばばーんと扉が開いた。『共にあれ』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)は意気揚々と店内へと至る。
「うむ、相変わらず良いレストランじゃなキャシー」
「ふふーん、いらっしゃい!」
「いつもの感じでなんか良い感じの美味しい料理をお任せで頼むのじゃ」
「まかせるのよ! 最っ上級のおもてなしなのだわ!」
 デイジーは店の一角に陣取るクラーク一家に気がついた。
「そして、なんか辛気くさい顔が一つ、二つ、三つ、四つ! ま、相手してやるとするかのう」

「5星のレストランでただ飯……くー……サイズねえにいには色々と鍛冶屋の黒字貢献に凄く力を貸してくれたけど、まさか高級レストランパーティに招待なんて……雇ってよかったー!」
 感動に打ち震えるルチルを横目に、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は内心ひやひやしている。
(使えるのかな……)
 アルタ・マレーアへのペア券。……悪夢から目覚めたときに、なぜか持っていたものだ。
「サイズねえにいはそれどこで手に入れたの?」
「あーいや、イレギュラーズとして招待されてまして」
「ふーん?」
 嘘ではない。
 サイズの心配は杞憂に終わり、チケットは受理された。
「たくさん食べるぞー!」
 はしゃぐルチルの傍ら、サイズの頭にあるのは帰りの護衛のことだ。
(まあ、今回は沢山ご飯を食べて英気を養おう……)

「……あっどうしよ、ちゃんとした服じゃなきゃ入店お断りとかないよね!?」
『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の前を、羊のおんぶぬいぐるみバックを背負った『都会怪獣メイゴン』メイ=ルゥ(p3p007582)と王が通っていく。
 かっちりした服装でなくても大丈夫そうだ。
「列はこちらですかめぇ?」
 メイのロケッ都会羊に導かれるように、『すやすやひつじの夢歩き』メーコ・メープル(p3p008206)が後ろに並ぶ。
「ですです! メイたちははじめてですよ! そちらも?」
「うん! あのアルタ・マレーアにご招待されるなんてびっくり! 海洋のグルメ本で見ていいなーって思ってたんだけど、高くて行けなかったから憧れだったの!」
 フランたちが話に花を咲かせていると……。
「接待で何度か使ったことがあるが、良いぞ。ここは」
 常連クレマァダの登場だ。
「わぁ、常連さん!」
「味も格式も一流……じゃが今日は少々かまびすしいのう」
 慌ててぴしりと背筋を伸ばす一行。
 いや、クレマァダはにこりとほほ笑む。
「……まあ良し!! 祝勝会に無粋は無用じゃ」
「やったです!」
「わーい!」
「許されたアル」
「よかっためぇ……」
「うむ、食べるぞ!」
「おー!」
 クレマァダの号令に、一行が続く。

●極上のおもてなしを
「さすがに繁盛しているアル」
 王はきらりと目を光らせる。料理人なのである。
 縁は慣れたもので、ゆっくりと料理を見て回っていく。
 飲み物と一緒に、パスタやサラダ、フルーツを自分のペースで味わっている。
「こいつは何て料理だい?」
「そちら、カルボナーラ・デ・ナスコンディーノの山菜ヴァリエーションでございまして……」
 なるほど。とった料理を一口食べて、辛さにむせかえった。尋常な辛さではない。
 咳込みながら、視界の端に捉えた影を引っ掴む。
「ったく……やっぱりお前さんか、フィフィ」
「ひひっ、見つかっちゃったァ!」
 足をばたつかせきゃっきゃと騒ぐフィフィ。
「遊ぶのは構わねぇが、あまり面倒事を起こしなさんなよ。お前さんのボスに怒られても知らねぇぞ? ほら、パフェでも奢ってやるから大人しく――って、もういねぇ」
 また店の片隅で小さな悲鳴が上がる。
「あぁくそ、逃げられちまったか」
 縁は額を押さえる。

(どうやって食べるんですかめぇ……)
 メーコはきょろきょろ辺りを見回す。
『戦気昂揚』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が意気揚々とテーブルを回り、片端から料理を取り分けていた。メーコに気がつくと、場所を譲る。
 じきに補充はあるだろうが、メーコの分を残してくれたようだ。おいしいぞ、と目が言っている。
「あ、ありがとうございますめぇ」
「名誉大佐! であらせられますよね? こちら、我々の自信作でして……!」
「おうっ」
 エイヴァンはニッと笑って、少しかがんでグラタンをつまむ。一皿も巨躯のエイヴァンの前では小さく見える。
「とりあえずあるものは全部頂くぞ」
 巨躯の白熊の気持ちの良い食べっぷりに、シェフたちはわっと盛り上がっている。
「うーん、食べたいものか。肉と魚を合わせた料理ってのはなかなかないが……そういうものも天下のアルタ・マレーアなら出せるんじゃないか?」
「なるほど、肉、肉……鯨肉ステーキをお見舞いするのだわ!」
「どれも本当においしそうな料理ばかりですめぇ……。山の料理はいろいろ知ってるけど、海の料理はなかなか食べる機会が無かったから本当に楽しみだったんですめぇ」
「なんとっ! メイもお山育ちなのですよ! 海産物はあまり食べることがなかったので、珍しい食べ物ばかりなのですよ! 辛いお魚お料理などあればたくさん食べたい……ところなのですが……」
「?」

●メイのピーマン克服大作戦
「メイは今、一大決心をしてここに来たのですよ」
 メイはふるふるとうつむき、ぎゅっとてのひらを握った。
「い、いったいなんですかめぇ?」
「5つ星のレストランなら、メイの苦手な食べ物もおいしく料理してくれるはずなのですよ」
 それすなわち、宿敵・ピーマン。
 王が腕組みをして頷いている。
「そ、そんなに無理をしなくてもいいのではないですかめぇ?」
 メイは首を横に振る。
「お山から降りて、都会で生活をしているメイが、立派なシティガールになる為にもこの戦いからは逃げることは出来ないのですよ!」
「そ……そこまでの決意なら何も言いませんめぇ」
「うんうん、ピーマンは食べなきゃだめだよ!」
 フランたちは応援に回るようだ。
「苦い食べ物は苦手ですが、負けられない戦いがここにあるのですよ!!」
 メイは勢いよく手を挙げる。ぷるぷるしている。
「カタリーナさんッ!! ピ、ピーマ、ンを使った、おおお、お料理を、おね……お願いしますですよッ!!」
「はーい! まっかせるのよ!」
 厨房へこだまする注文に、メイは少し後悔し始めていた。

「たくさん食べるぞー!」
 片っ端から料理を盛り付けていくルチルと、心配そうに眺めるサイズ。
「ルチル、そんなに食べれるんですか……? 初めての海洋でテンション高まっているのはわかりますが……自分の食べれる量だけ取ってくださいね……?」
「何言ってるの! せっかく幻想から来たんだよ。ほらサイズねえにいも沢山食べよ!」
「いやほら……あの、目立たないようにこっそり隅っこで……美味しい……」
 サイズの鎌の上に料理をのせるルチル。サイズの本体は鎌であり、味覚はそちらにあるのだ。
「でしょでしょ? あっ、あれなんだろう?」
「人だかり、ですかね?」

 一人のチャレンジャーが、今、ピーマンに挑もうとしているところだ。
 メイの前に出されたのは白身魚の甘酢あん……ピーマン添え。
「くぅッ、ピーマン、なんて圧倒的な威圧感を放っているのですか」
 目をつむって、フォークを振り下ろす。目を開けてみた。
 ピーマンはない。
「ハッ!? 無意識にお皿の隅に避けてしまっていたのですよ!?」
 しかも、なんだか増えている。
「きひひっ」
 フィフィの仕業らしい。
「やめるですよ! うう。こ、これは5つ星のピーマン……きっとおいしい……おいしい……ぐぬぬぬぬ。だ、誰か食べるお手本見せてくれないですか? そうしたらメイも頑張るので!」
 おそるおそる辺りを見回すと、クレマァダが腕を組んで立っていた。
「ピーマンは、食べなさい!」
「ううっ」
「がんばるアル」
「がんばれー」
 さりげなくサイズも応援に混じる。
「ピーマンを、食べて、立派なシティガールにっ!!」
 口に運んだ。
……第一歩。
 ぱちぱちと健闘をたたえる拍手が広がった。
 おいしい、が、じわじわと苦みがやってくる。
「よく頑張ったもんだ、うん」
 縁が頷いた。
「こっちに水を頼む!」
 エイヴァンが大きな手をあげた。
「きひひっ!」
「ああっ、なんてことを! ワシのヒゲがびしょ濡れにっ!」
 お偉いさんにかかったらしい。すれ違いざまにびっと親指を立てるフィフィ。エイヴァンはにやりと笑って、それから真面目くさった顔を作った。
「すまん、改めて水をくれ」

「よーし、あたしもおっきいお皿にこんもりお料理盛って食べるぞー!」
 といっても、どれから行こうか。
 フランは先輩に従うことにした。
「やはり季節のものが良いな。ヒラマサ……スズキ……」
 気取らない海洋料理といえばやはり魚介だ。約束されたおいしさに、クレマァダはうんうんと頷いている。
「ふむふむ、なるほど!」
 フランは慣れているクレマァダのおすすめを網羅する所存だ。
「気取らない海洋料理といえばやはり魚介。そして鮮度のよい魚といえばカルパッチョ!」
「それだー!」
「アクアパッツァや香草とバターで焼いた牡蠣なんかもいいのう」
 じゅるり、とよだれがわいてくる。
「ああっ、最高! 深緑にいた頃はお魚あんまり食べられなかったし、海洋! って感じだね」
「うむ」
「このオマールのビスクっていうのも絶品だよー、鍋ごと飲めちゃうね。うんうん」
「どれ、そちらもいただこうか」
「メ、メイもあくあぱっつぁ……ぴーまん抜きを食べるですよ」
「頑張りましためぇ」
 メーコがメイの背中をさする。
「それにしても、やっぱり常連さんが頼むものって間違いがないなあ。デイジー先輩が食べてるものはきっとすんごい美味しいし、何食べてるのかも聞いてみよーっと」
 デイジーか。
 クレマァダはふとクラーク一家がやってきているのを思い出す。
「クラークの者らは消沈しておるな。……経緯を思えば無理もない。
しかしあのしたたか者共が、随分殊勝なことじゃ」

●取り返しのつかないこと
「あー……」
 フィフィを追いかけていた縁は、知った顔を見つけた。レナードとレジーナが一瞬固まった。一度、戦場で出会った仲だ。
「あの後どうなったか気にはなってたんだが……お互い五体満足で何よりだ」
「……」
 なんとなしの沈黙。
 口を開いたのはレジーナだった。
「ねぇ、戦いの中で……取り返しのつかないことはあった?」
「取り返しのつかねぇこと? ……あぁ、そりゃぁあるぜ」
 縁の脳裏に浮かぶのは一人の女の姿。
 たった一度の取り返しのつかねぇ過ちのせいで、“二度”この手で殺された美しい幻想種。
 魂に刻まれたその“声”は、今も。……手を取ることは、しなかった。
「どうやって、受け入れるんだ?」
 続きを引き取ったのはレナードだった。
「こいつを受け入れられる日は……多分永遠に来ねぇと思うぜ。俺はこの先一生あいつの記憶に苦しめられるんだろう。あの日あいつの手を取ってやらなかったことを後悔し続けるんだろう。だからこそ――受け入れずに背負っていきてぇのさ」

「閣下は……ございますか?」
 兵士が何気なしに彼らのやりとりを聞いていたようだ。
「直近で言えばそうだな……甲羅戯艦隊あたりか」
 エイヴァンは目を細め、激しい戦いに思いをはせた。
「まぁ、勿論俺だけの責任ってわけじゃないが。俺自身が力不足であったこともまた事実だ。護り切れなかっとことに変わりはないからな」
「そうですか……」
「まぁ、最低限の落とし前はつけた。相手側の軍団は壊滅したからな。そっちについてもまぁ納得のいく終わり方というとあれだが。少なくともこれ以上引きずるつもりはないさ。もちろん、それを忘れるつもりもない」
 兵士は、黙って話を聞いている。
「これはあくまで教訓だな。二度と同じ悲劇を繰り返さないために。下なんて向いてる暇はないからな。この本はそのためにも持ち続けている」
 エイヴァンが取り出したのは、甲羅戯艦隊航海誌だ。ボロボロになるまですり切れた一冊。兵士が崩れ落ちた。
「あ、ありがとうございます。先の戦いには、私の友人も……。閣下。ありがとうございます。あなたのような方海洋王国にいてくださって、本当に良かった」
 敬礼を向ける。

●なりたいものになれなかったとき
 それは、エドワードの気まぐれだった。
「『なりたいものになれなかったとき』……?」
 メーコはじっと考える。フランが先に答えた。
「あたしもね、修行して強くなって、みんなを守れるようになったけど。
でもたまに、怪我を治すだけじゃなくてあたしも敵に攻撃できれば、もっと守れるのかなって思うんだー」
「適正の違いですか……」
「でも、今のあたしはまだまだ力不足だから……なりたい気持ちは忘れないまま、今の自分に出来る事をして、いっぱい自分を褒める! あたしすごい!がんばってる! かわいい! って! えへへ、あたしはあたしのこと大好きだもん」
 エドワードはまぶしそうに目を細める。
「エドワードさんも、なりたいものあったの?」
「ありました」
 メーコは、自分なりの言葉を紡ぐ。
「メーコの場合はその過程を大事にしたいと思っていますめぇ」
「過程……ですか」
「羊のメーコがオオカミになりたくても、オオカミになろうとする努力なんかはできますめぇ。
ただ、本当にオオカミになれるわけでもなし。そうなりたい、そうありたいと思う心が大事だと思いますめぇ」
「なれないのであれば、意味がないのでは?」
 メーコはやんわりと否定する。
「頑張った結果、自分の理想になれなかったとしてもそこに至るまでに頑張った結果はちゃんとついてきますめぇ。
たとえ目標としての成果は無かったかもしれませんけど、その過程を歩んだ自分は、別の視点で見ればきっと素晴らしいものになっていると思うんですめぇ」
「め、メーコなんかがあまり偉そうに言える事でもないですけどめぇ……えへへ……」
 メーコは恥ずかしそうにうつむいた。
「いや失礼、参考になりました」

●クラーク家の会合
 失態を演じたクラーク家の面々。生かすも殺すもデイジー次第。
「なんじゃ、お主らおったのかの。べ、別に招待状を貰ったから来たわけじゃないんだからね!」
「……」
 一同は、毒気を抜かれたようにぽかんとしている。
「……と言うかお主ら先ずその前に妾に言うことがあるじゃろ」
「は?」
「ま・ず・は! 妾とみんなに、「悪いことをしてごめんなさい」じゃろがー!」
「ごめんなさい、ですって?」
「うむ、素直に謝れば許してやろう」
 答えは、沈黙。
「さて、今日のコースの料理はなんじゃっろなー。おっと、そうじゃその前に今日はゲストを呼んでおるのじゃった」
 デイジーの指はパチンと軽やかな音を立てゲストを招き入れた。
「皆ご存じ、マリーの母親、マライアなのじゃ」
「ど、どういうことですか?」
 マライアは、クラーク家の別荘で暮らしている。
「ん? 妾がさらっ……おっと、つれて来たに決まっておるじゃろ」
 デイジーならやりかねない、という共通認識。マライアは、少しさみしそうに、それでも優雅に挨拶をした。
「いやー、別荘地から黒服に追い回されながら逃げるのは中々楽しかったのじゃ」
「……」
「というか、お主らアレじゃろ。
どうせ、妾のこと呼びつけておいて、なんかしんみりとした雰囲気出しながら反省してますって顔して、それから妾からなんか良い感じの話になるっぽくお言葉頂戴したかったんじゃろ?
ふれにくいマリーのことをスルーしながらの」
「ぐうっ……」
「あーまーい!! アルタ・マレーアの上品な甘みのデザートとは月とすっぽんになるくらい甘すぎるのじゃ!」
「うう……」
「お主らにマリーのことは忘れさせんし、マリーを魔種にしてしまったクラークの家は反省すべきじゃが、その前に話すことは甚大な被害が出た海洋王国をいかに復興し新天地との交流を深めていくか。そのためのクラーク商会じゃろ。お主らの嫉妬がどうとか妾知らんし」
 そう言ってぷいとそっぽを向く。
「マライアもそう思うじゃろ?」
 マライアは、じっとデイジーを見る。
「お主の娘は妾が殺した。故、妾のことは怨んでも呪っても良い。それは、妾の罪じゃ」
 デイジーの髪に触れ、優しく撫でた。

「どう思う?」
「……」
 双子が頷く。”気にくわない”。
「そうですね。我々も全力を尽くさなくてはならないでしょうね」
 抜け殻だった彼らに火がついたと、同時に。
 デイジーが、届かないところにいるともわかるわけで。
 大物であると認めざるを得ないわけで。
「……ああ、決めた。僕たちは”マリーのことは忘れない”」
 それは彼らなりの謝罪の言葉だったのかもしれない。

●これから
「どう思われますか、祭司長様。なりたいものになれない、というのは」
 エドワードが、ちょっと笑んでいるのは気のせいだろうか?
 クレマァダはふ、と自嘲した。
「我は、なりたいものなど考えたことが無かったな。
生まれた時からモスカで、それ以外の可能性は考えたこともない」
 言い切る意味を、クラーク家のものたちは知っている。
 生まれたときから背負い、そうしていなければ容赦なく波に飲まれていく。
 クレマァダはゆるゆると頭を振った。
「……嘘じゃ。
我は姉と普通の姉妹になってみたかった。
なんでもできる自分にできないたった一つのことが出来る姉に嫉妬した。
それらすべてが取り返しのつかないものになってしもうた」
「……」
「我は決してそれを受け入れてはおらぬ。
ただ喪ったまま、穴がぽっかりと開いて居る」
 エドワードはただ、小さく頷いた。
「じゃが、いくら辛くとも空腹は訪れる。
生きるというのはそういうことじゃ。
のう、カタリーナ殿?」
「はーい! おかわりなのよ!」
「それに羨しいことじゃ。
お主らの大陽はまだ沈んでおらぬ。
それは努々、得難いものと心得よ」
 クレマァダは意味ありげに微笑んだ。
「祭司長の言葉じゃ、けっこう信憑性はあると思うぞ?」
「……お心に止めておきます」

「あっ、僕のデザート!」
「油断しておる方が悪いのじゃ」
「フィフィ! お偉いさんはまずい!」
「ふふん、追いかけっこならまけないのですよ!」
 やいのやいのの大騒ぎ。
 今日だけは無礼講で。
 今日だけは敵も味方もない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

以上、海洋の祝勝会でした!
ほんとうに長い戦い、お疲れ様です。
失われたものを忘れないで、それでも前に進むのでしょう。
気が向いたらまたまったりのんびりいたしましょうね。

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