PandoraPartyProject

シナリオ詳細

海戦ゴーストシップ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●浮上する海賊船
 ネオフロンティア海洋王国。
 多くの諸島からなる国家であり、他国からは観光地として認識されている。
 漁業も盛んであり、お国柄というべきか、諸島周辺の海にはいつ何時であれ船が浮かんでいる。
 けれど、ここ最近……とくに、深夜から早朝にかけて沖に出ている漁師たちの間で、不穏な噂が囁かれていた。
 それは、幽霊船の目撃情報。
 ボロボロの幽霊船が、気づけば背後に迫っているというものだ。
 幽霊船に乗るは、骨と皮ばかりになった荒くれ者ども。
 錆びたサーベルやマスケット銃を手に漁船へ襲い掛かるのだ。
 幽霊船に襲われた漁師たちの中には、大きな怪我をしたものもいる。
 大砲に撃たれ、相棒とも言える漁船を失ったものもいる。
 海賊船は一艘だけ。
 3本のマストを備えた小型の船で、なかなか高速だという話だ。
「小さな船だが、操舵性に優れ小回りが利く。速度も出る。一度補足されれば、そう簡単には逃げられねぇ」
 幽霊船に襲われた熟練の漁師はそう言った。
 海賊たちに襲われた結果だろうか、老人は両足に深い傷を負っている。
 傷が治ったとしても、しばらくは海に出ることはできないだろう。
「俺の相棒は幽霊船にやられて海の底だ。なぁ、誰か仇を討ってくれないか? 必要だってんなら、ボロ船を1隻くれてやるよ」
 そう呟いて、沖へ目をやる老人は、それっきり口を噤んで黙り込む。
 遠くを見つめるその眦から、ぽろりと一粒、熱い雫が零れて落ちた。

●出航
「皆さん、船酔いには注意するのです」
 そう言って『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、海洋王国の地図を広げて見せる。
 地図には数ヵ所、赤いペンで×印が書き込まれていた。
 ×印の周辺には、小さな島が点在している。
「幽霊船が出るのは、決まってこの周辺の海域なのです! そこで、皆さんには船で現場へ移動してほしいのです」
 現在、幽霊船の噂が漁師の間で広まって、この海域に近寄る者は滅多にいない。
 ほかの漁船が邪魔になることもないが、サポートも受けられないという状態だ。
「とある老漁師が船を提供してくれるみたいです! って言っても、ボロボロだから何度も大砲を撃たれたら全壊しちゃうことが予想されます!」
 もちろん、借り受けるボロ船には3門の自衛用の大砲が積まれている。
 とはいえ、甲板を押して移動させられる小さな大砲だ。
 射程も短く威力は低い。
 だが、幽霊船の動きを止める程度の役には立つだろうか。
「船の操舵に1名必要になるです! 操舵室から離れても問題ないですが、その間船は風と波に流されて、勝手に移動してしまうです!」
 船を思った通りの場所に移動させるには1名が操舵室に控えておく必要がある。
 さらに3門の大砲もボロ船には備え付けられている。
 操舵に1名、大砲操作に3名が船やその装備を操るのに必要な人数だ。
「接近せずに遠距離攻撃だけで戦うも良し、接近して甲板上で戦うのも良し……幽霊船を沈められれば、それでいいのです!」
 もちろん、船を使わずに幽霊船を捜索するという手もある。
 幽霊船の出現するシチュエーションを思えば、あまり得策とは言えないだろうが。
「大砲には【火炎】の効果が付与されているです。それと、海賊たちは【暗闇】を付与してくるから、そちらも要注意なのです」
 海賊船に乗る船員たちは20名ほど。
 遠距離、近距離両方の攻撃手段を備えた、海戦のプロたちだ。
 船上での戦いなど慣れたものだろう。
「船を完全破壊してしまえば、海底から上がっては来れないはずなのです。さぁ、海戦開始なのですよ!」
 なんて、言って。
 ユーリカは、イレギュラーズを送り出す。

GMコメント

●ターゲット
海賊船員×20
骨と皮ばかりの海賊。
マスケット銃と錆びたサーベルを装備している。
言葉を発することはできないが、海賊らしく好戦的な性格のものが多いようだ。
小型の帆船に搭乗している。帆船は速く、小回りも利く。
また、左右に5門ずつの大砲を備えている。
大砲の弾には【火炎】のBSが付与されている。

銃撃:物中単に小ダメージ

斬撃:物近単に中ダメージ、暗闇



●船
イレギュラーズの借りているオンボロ船。
操舵に1名を割く必要がある。
装備は甲板上を移動させられる3門の大砲のみ。
大砲の弾には【火炎】のBSが付与されている。

 
●場所
小さな島や岩場が点在する海域。
人の住めるほどの島はない。
また、島の近くは浅瀬になっているため、場所によっては船で近づくことはできない。
幽霊船の被害を受けたとある老漁師から提供されたオンボロ船で現場を訪れることが可能。
主な戦場は船の上か、岩場の上、浅瀬などになることが予想される。

  • 海戦ゴーストシップ完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月21日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
オーカー・C・ウォーカー(p3p000125)
ナンセンス
杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ

●開戦
 ネオフロンティア海洋王国のとある海域。
 その海域ではここ最近、夜になると幽霊船が現れると噂されていた。
 事実、幽霊船に襲われ沈んだ船も多数ある。
 噂が広まるにつれ、海域を通る船は大幅に数を減らしていた。
 けれど、この夜……月明りを頼りに2隻の船が海を進む。
「どんなボロ船だろうと、船っつーのは自分の体の一部みたいなもんだ」
 薄暗い操舵室から、近くを走るボロ船を見つめ『戦気昂揚』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)はそう言葉を紡ぐ。
 エイヴァンは、白熊に似た容姿の獣種の男性である。
 彼が駆るは自身の愛船、砕氷戦艦「はくよう」であった。今回の任務にあたり、漁師の老爺から借りたボロ船だけでは不足と見て、エイヴァンは自分の船を出航させたのだ。
 おかげで、取れる戦法も索敵の効率も上がっている。
 にぃ、と口角を吊り上げエイヴァンは笑う。
「来やがったな」
 彼の視線の先では、たった今水面を割って浮上した幽霊船が姿を現す。

「ま、夏だしなぁ。幽霊船の一隻や二隻湧いて出る時期だろうさ。海洋で長いこと暮らしてりゃぁ、その手のモンにはいい加減慣れちまう」
 ふぅ、と吐いた細い紫煙が潮風に流され空に溶けた。
着流しの襟を軽く整え『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)はよっと一声、ボロ船の甲板で立ち上がる。
 そして縁は愛刀に手をかける。
「……とはいえ、船乗りにとって船は命と同じくらい大切だ。そいつを沈められるのも〝慣れろ〟とは流石に言えねぇわけで。そんじゃ張り切って、あの爺さんの分まで“敵討ち”といこうや」
 闇夜に響く鞘鳴りの音。
 冷たささえ感じる刀身に、月の光が反射する。

ボロ船の甲板上で杠・修也(p3p000378)は拳を握る。
「接舷するまで、船の防御は俺が担おう。漁業に影響が出ないうちにしっかりと解決しておかねばな」
幽霊船には都合10の大砲が備えられている。ボロ船にも3門の大砲が備えられているが、射程も威力も桁違い。
 船のサイズ差もあり、戦力の差は歴然だ。
 事実、ボロ船に横腹を見せるようにして幽霊船は砲撃を開始。
 ドドドドドン、と続けざまに砲撃の音が鳴り響く。
「……っ!」
 噛みしめた歯の隙間から吐息を零し、修也は鋭く拳を振るう。
 魔力を纏った一撃が、大砲の弾を弾き飛ばした。

●海戦
 音もなく、海の深くをアザラシが進む。否、ただのアザラシではない。そのアザラシの名は、『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)。歴としたイレギュラーズの一員だ。
「むきゅ……他者の命を、しかも戦った事がないだろう漁師さん達を襲うのは酷いっきゅ。悪い事をする海賊には海底で反省か強制成仏してもらうっきゅ!」
 海上を舞うカモメと視界を共有しているレーゲンは、海深くにいながらも海上の様子を把握していた。
 砲弾が放たれたその直後、レーゲンは今が好機と急浮上。
 行使した【物質透過】のスキルでもって、幽霊船の船体を通過。甲板上へと身を躍らせる。
「MA・Fっきゅ!」
 乗船と共に、レーゲンはその白いヒレを振り下ろす。
 放たれたのは極寒の風。それは大砲の1つへと直撃。
弾の装填を行っていた骸骨船員1人ごと、凍り付いて砕け散る。

レーゲンが作った一瞬の隙を、『ナンセンス』オーカー・C・ウォーカー(p3p000125)
は見逃しはしなかった。
 レーゲンはその2メートル近い長身を乗り出し、幽霊船の位置を確認。
 操舵輪に手をかけた。
「砲撃支援を頼む! それに合わせて接舷するぞ!」
 幽霊船の砲撃は、修也と縁が防いでみせた。
 第二波の砲撃はレーゲンの攪乱により遅延している。
 とはいえ、時間がかかれば次の砲撃に襲われる。いかに仲間たちが防御に努めているとはいえ、そう何度も防ぎきるのは難しいだろう。 
 ならば、その前に敵戦に乗り込み大砲を操作している骸骨兵たちを倒した方が良い。
 そう判断し、オーカーは一気に接舷することに決めた。

 場所は甲板の上部へ移る。
 オーカーが船を加速させると、船体はギシと軋んだ音を立てる。
「大丈夫なの、これ? ギシギシと軋む頼りない音が天使のラッパか何かに聞こえて来たわよ」
ボロ船の大砲を操作しながらゼファー(p3p007625)は震えた声を零した。
 牽制のために大砲を発射させてみれば、さらに船体は大きく軋む。
「……マジで頑張って頂戴よ、ボロ船ちゃん?」
 果たして、接舷まで船体が持つのか。
 新たな砲弾を大砲へと詰め込みながら、ゼファーはボロ船の無事を祈る。
 以前に負った傷が治りきっていないのだ。傷口に、夜の海水はきっとひどく染みるだろう。

 風圧で海水が飛沫をあげた。低空飛行で、海上を疾駆する『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は、幽霊船に自身の居場所を伝えるべく明かりを灯したランタンを振るう。
「敵船を海底の素敵な漁礁に変えてあげるわ!」
 その手には魔を払うという剣が一振り。接敵と同時に攻撃へと移るべく、イナリは剣を肩に担ぐように構えた。
 海上を舞うイナリを見つけた数体の骸骨兵が、イナリへ向けてマスケットの銃口を向ける。
 同時に放たれる数発の弾丸がイナリの肩や脚を撃ち抜く。
「く……このぉっ!!」
 血の雫を散らしながら、イナリは歯を食いしばる。
 少しでも敵の注意を自分に惹きつけるために、痛みを堪え夜空へ向けて吠え長けた。
 そしてイナリは剣を振るう。
 放たれた無数の閃光が、一瞬夜空を白く染め……熱線が、幽霊船を撃ち抜いた。

 イナリの熱線により、幽霊船は大きく揺れた。
 見れば、甲板の一部は熱によって焼かれている。骸骨兵の中には、炎に焼かれ海へと落下する者もいた。
 すぐに消火へ移らなければ、幽霊船はやがて業火に包まれる。イナリの熱線はそれほどの威力だったのだ。
 もっとも、イナリ自身もダメージを負うというリスクもあるのだが……。

「おぉぉ! 一気に仕留めるぞ!」
 幽霊船が大きく揺れたその瞬間。
接近していたエイヴァンは、砕氷戦艦「はくよう」の船体を幽霊船へと押し付ける。
 砕氷戦艦のタックルを受け、幽霊船の進路がずれた。
「幽霊船と戦うのは久しぶりだな……絶望の青は踏破してもまだまだ海には危険がいっぱいってことだね」
 船体同士がぶつかる瞬間、戦艦「はくよう」の甲板から跳んだ影が1つ。
痩身にスーツを纏った『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)だ。
 さらに、史之の後に続くようにもう1つ跳んだ影がある。
 それは、黒い体毛の犬獣人……レーゲンの相棒である魂を失った少女、グリュックである。
 着地と共にグリュックは駆ける。
 甲板の真ん中で戦闘を繰り広げていたレーゲンの身体を抱え上げ、素早くその場を離脱した。
 たった1人で幽霊船の砲撃を食い止め続けていたレーゲンは傷だらけだった。その白い体毛は血が滲んで赤く染まっている。
レーゲンの身を胸に抱き、グリュックは庇うように骸骨兵たちへ背を向ける。
 だが……。
「俺がいる限りケガなんてさせない。仲間は俺が守る!」
 響き渡る史之の声。
 そして舞い散る淡い燐光。
 暖かな光がレーゲンの体に降り注ぎ、その身に刻まれた傷を塞いだ。
 さらに、砕氷戦艦「はくよう」から暫く遅れて、ボロ船もまた幽霊船に接舷。
「こっからは私の距離! ってことで遠慮なく行くわ!」
 武器を大砲から槍へと変えたゼファーを先頭に、修也、縁が幽霊船へと飛び移る。
 
 大上段に振り上げた、ゼファーの槍が輝いた。
 否、槍の切っ先にランタンの灯りが反射したのだ。
 にぃ、とゼファーの口角が上がる。
 獰猛な笑みだ。接近戦を得意とする彼女が、ここまで大砲による牽制しか出来ていなかった……それはきっと、彼女にとって大きなストレスだったのだろう。
 跳ぶ勢いを乗せたゼファーの一撃が、甲板に大きな穴を穿つ。攻撃に巻き込まれた骸骨兵の身体が砕け、穴の底へと落ちていく。
「どう? 挨拶代わりの一発には丁度良いでしょ?」
 なんて、言って。
 甲板から引き抜いた槍を腰だめに構え、ゼファーは敵陣の中央目掛けて加速する。

 甲板の端、刀を手にした縁が笑う。
 行使するスキルは【欺瞞偽証】。自身を弱者に見せることで、敵の注意を惹きつけるというスキルである。
 縁に向けて振り下ろされる斬撃を、刀でもって受け流す。
「さぁ、もっと集まって来な。俺はこれでも“しぶとい”方なんでね、ちょっとやそっとじゃやられねぇよ?」
 怒りに我を失った骸骨兵たちに、果たして縁の声は届いただろうか。
 
 縁が骸骨兵たちの注意を惹きつけているその隙に、修也は甲板上を駆け回る。
 鋭い拳打が、炎に包まれた骸骨兵の頭部を砕く。
 次いで、さらにもう一撃……レーゲンによって凍らされた骸骨兵が海へと叩き落された。
「数を減らそう。弱っている個体を優先する」
 視線を素早く巡らせながら、ダメージを負った個体を選んで修也は攻撃を放っていく。
 修也が確実に敵を屠っていくおかげで、縁やゼファーはダメージを与えることに集中できるのだ。
 とはいえ、慣れない船上での戦闘。
 波に船が揺れ、修也は大きく姿勢を崩した。修也の拳が不発に終わり、返す刀で骸骨兵のサーベルに斬られる。
 腕から肩にかけてを斬られた修也は、傷口を押え数歩後退。
 ここぞとばかりに、2体の骸骨兵が修也へ襲い掛かるのだが……。
「むきゅ! 風の冬をゼロ距離お届けするっきゅ!」
 駆け込んで来たのはレーゲンを抱いたグリュックだった。否、グリュックに抱かれたレーゲンというべきか。
 レーゲンによって、骸骨の1体が凍り付く。
 さらにもう1体の骸骨兵は、魔力を纏った修也の拳が殴り飛ばした。
 修也の危機を救ったレーゲンはそのまま甲板端、大砲のもとへと駆けて行く。
 さすがは獣種といったところか。船の揺れなど気にしていない。
 レーゲンの放った極寒の風が、大砲2を1つ凍り付かせる。

 淡い燐光が舞い散った。
 史之の回復術が、乗船して来たイナリの身体に降り注ぐ。
 骸骨兵たちの集中攻撃を受けたイナリは【天孫降臨・迦具土連砲】の発動後、一度海中へ沈んでいたのである。
 おかげで美しい金の髪も、べったりと頬に張り付いてしまっている。
 頭を振って水を払ったイナリは、軽く腕を回して調子を確認。
「うん、いい調子……っと!?」
 剣を構え、跳び出そうとしたその瞬間。
 船が大きく揺れ、加速した。一瞬、並走していたボロ船と「はくよう」が幽霊船から離される。
「うん、この機動力は厄介ね。まずは舵の破壊を狙うわ」
 船の揺れのせいで、命中率が低下している。エルヴァンやオーカーもまた、幽霊船を止めるべく奔走しているのだが、イナリもまた船上からその一助となることを決めた。
 剣を構えたイナリが、船の後方へと駆けて行く。
 その姿を見送って、史之は視線を修也へ向ける。
「さあ、張り切っていこうか!」
 修也へ向けて回復術を行使しながら、史之は安全圏へと移動。
 飛び散った淡い燐光が、修也の腕の傷を癒した。
 直後、史之の肩から血が飛沫いた。
 背後から接近してきた骸骨兵により、銃弾を撃ち込まれたのだ。
 肩に空いた傷を抑え、史之は痛みに唇を噛んだ。
 そして……。
「女王陛下の海におまえたちはいらないよ、目障りだ、消えろ!」
 傷口から手を放し、血に濡れたその掌を骸骨兵へと翳す。
 一瞬の閃光。
 放たれた一筋の光線が、骸骨兵を撃ち抜いた。

 ボロ船の甲板に立つオーカーは、海上へと視線を向けていた。
 海上を泳ぐ奇妙な影を見つけたからだ。
 それは、片腕を失った骸骨兵だ。おそらく修也や縁によって海へと落とされたのだろう。
 戦線に復帰すべく、必死に幽霊船を追いかけている。
 オーカーは懐から取り出したリボルバーへ弾を込め、骸骨兵へと銃口を向けた。
「……しっかり敵討ちを果たさせてもらうぜ」
 乾いた銃声が一つ。
 夜空に響いたその直後、骸骨兵の頭部を弾丸が穿ち、そしてそのまま動きを止めた。
 直後、幽霊船の後部で轟音。
 砕けた船体の部品が、ボロボロと海面へ落ちていく。
 それを一瞥したオーカーは、急ぎ足で操舵輪に取りついた。そろそろ戦闘は終わりそうだと、そう判断したためだ。

 剣を激しく振り回し、イナリが船体を破壊していく。
 その都度、幽霊船は次第に速度を落としていった。幽霊船と並走するエイヴァンは、にぃと獰猛な笑みを浮かべる。
 自慢の愛船を操舵し、幽霊船へと体当たりを慣行。幽霊船が大きく傾き、直後その船底が岩礁に乗り上げた。
 これで幽霊船は二度と航海に出られない。
 幽霊船から距離を取って停船したエイヴァンは、操舵輪から手を放し甲板の端へと移動した。
 指揮するように腕を翳して、幽霊船へと狙いを定める。
「爺さんの船はしっかり距離をとっているか。よし、大事なもんを沈めるわけにはいかんからな……この距離なら安全だ」
 そう呟いたエイヴァンの頭上に、無数の氷塊が浮かび上がった。
「っ撃ぇ!」
 エイヴァンが腕を振り下ろすと同時に、氷塊は空中を疾駆。
 幽霊船やその周辺へと、雨のように降り注ぐ。

●海底
 降り注ぐ氷塊に圧し潰されて、海賊船が半壊した。
船底には穴が開き、マストはへし折れ、大砲はへしゃげる。
傾いた甲板の上を転がる砲弾を横目に、イナリは目の前の骸骨兵へと剣を突き付けた。
「船乗りが自らの船を奪われるのは辛い事らしいわね」
 果たして、骸骨と成り果てた海賊たちにそのような感情が残っているかは分からない。
 船体を破壊するのに体力を使ったのか、肩を激しく上下させつつイナリは剣を一閃させた。
 切断された骸骨兵の首が、甲板を転がり海の中へと消えていく。

 引いた槍の先端を、まっすぐ骸骨兵へと向ける。
 遠距離からのマスケットによる銃撃は、無言のままに回避する。弾丸がゼファーの頬を掠め、白い肌を朱に濡らした。
 接近し、サーベルを振り上げる骸骨兵。
「よおくよく、狙いを定めて……」
 槍の射程に、骸骨兵が足を踏み入れたその瞬間。
「ドカン!」
 見えないほどの速度で一閃。
 脳天を砕かれた骸骨兵は、その場で力なく崩れ落ちた。

 レーゲンの身体が宙を舞う。
 甲板の上から海に向かって、グリュックが放り投げたのだ。
 その様子はまるで弾丸の如く……きれいなフォームで着水すると、その身に宿した魔力を一気に解き放った。
「むきゅ! 海の中に隠れている奴はこれでぜんぶっきゅ!」
 衝撃によって、海中に潜んでいた骸骨兵たちが海水もろとも宙に弾き飛ばされた。反動で受けたダメージに、レーゲンは「きゅう……」と苦悶の声を零す。
 そして、空中に投げ飛ばされた骸骨兵は、魔力砲により粉々に砕けた。
 砕け散った骸骨兵は、煙を上げながら海へと落下。そのまま二度と、動き始めることはなかった。
「あと少し……無事に切り抜けられそうだな」
 甲板から魔力砲を放ったのは修也であった。海面から手を振るレーゲンに手を振り返し、修也は甲板上での戦闘に戻る。

「そろそろ引くぞ! 乗れ!」
 そう叫んだのはオーカーだ。
 幽霊船上での戦闘がある程度落ち着いたのを見て、エイヴァンとオーカーの操舵する船が近づいてくる。
 半壊し、座礁した幽霊船をその場に放置したままレーゲン、修也、イナリ、ゼファー、史之はそれぞれ乗って来た船へと戻っていった。
 仲間たちを船上に回収すると、オーカーは万が一に備え再びボロ船を遠ざけた。
 幽霊船の周囲には、船上のエイヴァン、史之と、そして縁のみが残る。

 水中へと潜った縁は、幽霊船の船底へ。
「船を壊されるモンの気持ち、ちっとは“骨身”に染みたろ。これに懲りたら、もう二度と出てくるんじゃねぇぞ」
 防御を一切考慮せず、縁は刀に意識を集中。
 そして放たれた一閃が、幽霊船の船底に特大の穴を開けてみせた。
 穴から流れ込む海水が、幽霊船を沈めていく。
 今は座礁しているが、潮が満ちれば半壊した幽霊船は残骸となって波の飲まれ、どこかへ流れていくだろう。
 幽霊船の周囲に倒れた骸骨たちも、深い深い海の底へと沈んでいくはず。
 
 幽霊船が沈黙したことを確認し、史之は自身のギフトでラム酒を生成。
 ボトルに詰めたそれを、幽霊船へと放り投げる。
「海から上がってこれない、か。幽霊にまでなって何に執着してたのかな、迷わずあの世へ行きなよ」
 砕けた酒瓶から、琥珀色の液体が飛び散った。
 風に混じった酒精の香りを吸い込んで、史之はしばし目を閉じた。
 安らかな眠りを願う、それは祈り……。
「さぁ、任務は完了だ。戻って、ボロ船の修理を手伝うぞ。次いつ海に出られるかわからんが、爺さんには新しい相棒が必要だろう?」
 お前たちも手伝えよ、とエイヴァンは縁と史之に告げて舵輪を回す。

 こうして夜が明けるころ、砕氷戦艦「はくよう」と、老爺から借りたボロ船は、幽霊船を撃破し、堂々と港へ街宣したのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
無事、幽霊船は撃破されました。依頼は成功です。

今回はご参加ありがとうございました。
海上での戦い、いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけたのなら幸いです。
機会があれば、またのご参加おまちしております。

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