PandoraPartyProject

シナリオ詳細

黒猫と大図書館とハタキ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 世界中の本を綴じ込めている、と言われるほどに大きな図書館があった。
そこは知恵の女神の居城で、彼女の眷属たる黒猫の巣。大概の場合は荘厳に静かで、聞こえてくるのはページをめくる音ばかり。ただ、今日ばかりは少し勝手が違った。
割烹着に三角巾を装備した黒猫はもそもそとジャージに着替えている女神に声を荒げた。

「ご主人!! ここからここ、全部五十音がぐちゃぐちゃになってるんですけど!! ご主人!!」

「あーあー聞こえません。聞こえませんよ。神は特に盲目で白痴になりうる」

 今日は図書館の館内整理日だったのだ。ただ少し、女神は怠惰すぎたし図書館は広大すぎた。神の住まいし場所であるのだから沢山の人が訪れるわけではないが、それでも埃は貯まるし、年月が過ぎれば少しは本の取り違え、差し間違えなども起こるもので。
それこそ、黒猫一つの手には余ってしまう。当の女神は広間のソファでカウチポテトを決めていた。のんきなものである。

「よくわからない屁理屈をこねないでもらえますか! 貴方は一番知性を持っていないといけないタイプの神でしょうが! ……全く、 知恵の女神が片付け一つもできないと信者に知られたら……」

「出来なくはないんです。やらないだけで……」

「さっさとやれください」

 ぶーぶーと文句を言いながら外界で仕入れたという人をダメにするソファとやらに埋まる駄女神を見て。
お前人じゃねえじゃんというツッコミも喉を通らず思わず天を仰いで。黒猫は祈りを捧げた。

──ああ、神様。この際誰でもいいです。誰か助けて。マジで。

 

「あははは……。うん。黒猫さんがね、困ってるみたいなの」

 『ホライゾンシーカー』ポルックス・ジェミニにもこの現状には苦笑を禁じ得なかった様だ。

「その世界には此処と同じぐらい大きな図書館があるの。其処が500年に一度ぐらいの館内整理日なんだけど。管理している知恵の女神様……? が人が見てないときひどくぐうたらなのよ」

 だから、監視兼お手伝いとしてイレギュラーズが本の中で掃除をしたり、整理をしたりして助けてあげてほしい。とポルックスは話す。

「人の目があれば女神様もきちんと働くから、手分けしたら2,3時間ぐらいで終わる量みたい。お礼に好きな本とかおねだりしたら、もしかしたらくれるかも?」

そうでなくても黒猫はとても喜ぶだろう。恐らく、すごく。神が目の前にいるのに神頼みをする始末なわけであるし。

少し面倒かもしれないけれど、黒猫さんの笑顔ときれいな図書館のためお願いね!とポルックスは話を締めくくるのであった。

NMコメント

 はじめましての方ははじめまして、またお会いした方はお久しぶりです。
金華鉄仙と申します。
ジャージのお姉さんは好きですか? 私は好きです。それはともかく図書館の整理をしたり、掃除をしたりするシナリオです。


●世界観
巨大な図書館。うず高く積まれた書棚と少し埃っぽい匂いが特徴です。実は神殿の役割もしているので、女神様が住んでいます。
図書館の外はファンタジー世界ですが、近代的な技術もちぐはぐに流通しています。いわゆるご都合主義的。
図書館には開架と閉架の2つの区分けが存在し、どちらかを選択してお手伝いして貰う形になります。開架は基本的に普通の本、小説本や絵本、基本的な近代の知識の技術書があるのに対し、閉架には魔導書や召喚用のスクロールなどが保存されております。うっかり巻物を開けたら炎が吹き出てくるなどのアクシデントもありますのでお気をつけください。

●女神様
あらゆる魔法を使役し、あらゆる知識を持つ凄い人。でも駄目なお姉さん。
ついでに限界腐女子です。外面は良いのでイレギュラーズの前では善良で神々しい女神を装い、手伝いにも協力します。とはいえ自分で動くわけではなく、遠隔操作の魔法で本を揃えたり、箒を一時的に使い魔にして掃除させる、などですが。

●黒猫さん
♂。
駄目なご主人に仕えている使い魔。苦労人。
拾われた恩がありなかなか離れがたいし、多分自分が居なくなったら死んでしまうな、と思っているため従者を続けています。今回は猫の姿だと掃除に不都合のため、猫耳の生えた割烹着の少年として動いています。イレギュラーズには基本好意的で、無茶なお願い以外はだいたい聞き入れてくれるでしょう。

●目的
図書館が綺麗になること。黒猫さんの手助けをする、女神様のケツを叩くなど手段は問いません。相応の非戦スキルがあるならばそれを使ってくだされば描写します。箒やモップ、雑巾などは支給されます。

●書いていただきたいこと
開架と閉架、どちらを担当するか。
どのような形で手伝いをするか。掃除、整理、黒猫さんの労いなど。
起きて欲しいアクシデントなどありましたらそちらも。
やりたいこと、したいことをどんどん書いていただきたいと思います!

  • 黒猫と大図書館とハタキ完了
  • NM名金華鉄仙
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月13日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
ミミ・エンクィスト(p3p000656)
もふもふバイト長
御堂・D・豪斗(p3p001181)
例のゴッド
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師

リプレイ


 さて。
無限に近い書棚が収まれた荘厳で、壮麗な図書館。其処の玄関ホールにて、黒猫は緊急的に放り込まれたお手伝いさんを目の当たりにする。

「お初にお目にかかります!幻想種のドラマ、と申します。この度はこの図書館の整理を手伝わせて頂きます。よろしくお願い致します!」

「ミミ・エンクィストなのです。図書館のお掃除ならびに整理……を頑張れば良いんですよね?」

「俺は赤羽・大地ダ。手伝ウのはいいガ……、やべぇ本が紛れ込んじゃいねぇだろうナ?」

「ゴッドである。ゴッドは神とは少し違うが、ユーのウィッシュを聞き届けよう!」

 白銀の髪の美しい少女と、愛らしく家庭的な狼の少女と、赤と黒のツートンカラーが特徴的な髪をした少年。そしてゴッドであった。ゴッドは神ではないが、ゴッドであるらしい。
素直に気圧されて目を瞬かせる黒猫であったが、瞬時に脳みそを切り替えた。

「……! 助かりました!! ほんっと……に……ありがとうございますッ……! ヴッ!」

人手、とても、助かる。死ぬほど……。そんな思いが黒猫を突き動かしていた。深く、深くお辞儀をする。じんわり涙が溢れてくるのが分かった。人ってあったかいなぁ。

「……はっ。では、開架はあちらに、閉架は奥にあるので、場所まで僕がご案内しますね。今日はよろしくおねがいします」

ほんのりと生暖かいやら、引き気味やらの視線を受け取り、黒猫は頬を掻きながら皆の先導をするのであった。


 其処は開架の奥の奥、本が傷まないように魔力の光に包まれ、厳重に鍵のついた扉で囲まれた閉架書庫。
盗難防止と言うよりは、うっかり出てきてしまったり、出てしまったものの脱走防止だったりはするけれど。それでもどの本も門外不出なのだ。

「これだけの本があれば、今日は休まず働けそうですね」

 意気込んで、腕まくりをして、ドラマは早速本の整理にとりかかる。その動きは軽く、手慣れた雰囲気を醸し出している。
それもそのはず。普段は依頼にと大忙しで、剣を持つことも多い彼女であるが彼女は新緑一の書庫を持つ一族であり、彼女自身もかなりのビブリオフィリアであるからだ。自宅代わりの馬車すら本で一杯で、今回の手伝いに声を上げたのも世界の本の全てを内包しているほどの図書館に興味があるという純粋な好奇心が大きい。
勿論、本の扱いは誰よりも丁寧で、正確だ。たとえ大量だったとしても望むところである。スクロールは特別な棚に、傷ついた本はカゴの中へ。調子良く作業を続けていく。
 一通り本棚一つを片し終わり、開架の方へとちらり、と目線を向けた。扉が挟まっていて様子は伺えないけれど、一生掛かっても読みきれない本があったな、と回想する。そんな小説や絵本、技術書の置かれた開架の方もとても、とっても興味が惹かれるけれど……。ドラマは剣士であり、司書であり、そして魔術師でもある。深淵の叡智を求めるのは当然のこと。

「……しかし、これだけ、魅力的な本があるとなると……。果たして私に、読まずに掃除に徹する事が出来るのか」

現代魔法実践学、月の光を媒介した魔術について、誰かの研究日誌。これは……うぅ。

「無理ですね……」

書棚を半分ほど片付けたところでついついぺらりと、ふと目についた魔導書を開いてしまって。
それからはページを捲る手がもう止まらない。ああ、少しだけ、そう。もう少し。後片付けを使い魔がしているようだから、その間だけ。
もう一冊だけなら、未知なる叡智を貪っても、怒られないかもしれません……。


「……ありゃ駄目だな」

「マ、魔本の影響とかそんなんじゃネェっぽいから大丈夫だロ」

すっかり本の虜になってしまった同僚のことを霊魂から聞かされた赤羽大地はため息を付いて、しかしまあ理解できないこともないのである程度の間は放置しておくことにする。

「あんなに幸せそうにしてるのはちょっと阻害し難いしな」

彼の手際も一般とは逸脱して良いものだ。こちらも、図書館を預かっている身の上である。一つ一つ慎重に本を抜き、モップで本棚の埃を取り除く。取り違えられている本は元の棚へ。きれいになった本棚へ、本を詰めていく。

「次はスクロールか……」

本棚の脇の羊皮紙の山に目を向けた。取り扱いに気をつけてほしいと念が押されていたので、一応取り分けておいたものである。しかし、どうやら触れただけでも発動するようなデリケートな物が混ざっていたようで……。

「オイオイ、なんか蠢いてねえカ?」

スクロールの山を突き破り、真っ黒な、触手のようにうごめく不定形の化け物が姿を表す。虚空へ吠えて、目線は大地のもとへ。ひたり、ひたりと歩みを進めた。

「! 女神、これは……!」

「まだ懲りていなかったのですね、少し大人しくさせておきますね。触れないように」

とっさに声を上げた大地に、涼やかな女性の声が何処かから。開架に居る筈の女神……であるらしい。
そう短く伝えた後、スクロールの上から巨大な布が降ってくる。それは化け物の体を包み隠し、その場に煮こごりのような形を内包してとどまった。

「……こんなんでなんとかなるのか」

「聖なる祈りがこもっていますから。意外と効くものなんですよ」

では、私はこれにて。そんな声とともにまたひっそりと、閉架は静かな空間へと戻る。
少しため息を付いて、やれやれと赤羽は冷や汗を浮かべた額を拭った。

「ナルホド。……しかしこんな厄介なモン、何処から仕入れてきたんだカ」

「まあ、悪意ある人間の手に渡るよりは、こちらにある方が安心ではあるけど」

既に動かなくなったそれらを見やい、近づかないように気をつけながら。しばらく清掃作業は続くのであった。


「……ふぅ、何とかなりましたか……」

閉架での騒ぎを納め、少しホッとしたように息をつく。
さ、仕事したから紅茶でも……。とポットを手にとった所で。

「成程ユーがゴッデスか。このライブラリのマスターだそうだな!」

「ひぇぁっ」

開架の奥、小さなルームにて汗をワイプするブロンドのレディーへとゴッドはトーキングしに行っていたのである。
もとい、『例のゴッド』御堂・D・豪斗が女神の居る居室まで足を運んだのだ。彼は異世界の神であったという。実際存在感は今も健在で、その卓越した語彙は常人のそれを凌駕する。
女神の困惑もよそに、豪斗は話を進めた。

「ワールドを統べるというのは、人の子にも黒猫にもわからぬ苦労があるものよ! ゴッドにもわかる! が、そんなフレンズのライフとバースのリィンカーネーションは我らにとって、実によきエンターテインメント!」

「は、はあ……そうですね? 永遠を生きる者は些細な変化にも喜びを感じるものです。人の営みも、それによって産まれる本という一つの知識の集合体且つ、芸術も」

「うむ。故にな、ゴッドはゴッデスに願いたい! ライブラリーに納められたカルチャーをインストラクションしてはくれぬか、と!」

「……成程。私で良ければ喜んで、異界の神。文化、と仰られたのなら……」

女神は目を移ろわせる。ぱっと目についたのは小説の棚であった。

「こちらでは有名な古典文学が彼処に。如何でしょう?」

「それはインタレスティングそうだな! 拝見しよう!」

ぱちり、と指を鳴らし、書棚に向かう。積み重ねられた図書を眺めたゴッドは不思議そうに女神へ振り向いた。

「このブック、1巻だけでネクストが見当たらぬようだが」

「あ、この本は此方は別の書棚に……」

「これはいかんぞ、ゴッデス!ブックはクリンナップして並べられるべきだ!」

「ゔっ」

「ノープロブレム! ゴッドも手を貸そう! 共にファンタスティックなアバンチュールのためにこのライブラリーをオーガナイゼーションだ!」

ぐっ。溢れ出すナイスガイ……もといゴッドオーラ。思わず惚れてしまうような笑顔に、逆らえる人は居るであろうか。

「……はい、頑張りましょうか」

女神の観念したような声に、ゴッドは満足そうに頷くのであった。


 「女神様、女神様! 上の方、届かねーんで掃除してほしいんですよ」

流石に客を働かせているのに一人だけのんびりしているわけには行かず、使い魔を操作しながら自分でも片付けを始めた女神の元にぴょこぴょことミミが駆けてくる。

「おや。分かりました。では上の方は箒にやらせましょう。埃が落ちてきますから、気をつけてくださいね」

「分かったのです! あと、お仕事が終わったら皆でおやつにしたいのですよ」

「まあ。素晴らしいですね。紅茶を準備いたしましょう」

「ありがとうなのです!」

元気よく返事を返し、掃除へと戻る。手にはハタキ。彼女は本来パン屋さんなので掃除は特筆するほどではないのだが、それでも家庭的な雰囲気にはとても似合っていた。

「よし、まずはホコリを落とすところからですねえ」

 ぱたぱたぱた。本の上の上部を中心に、地面へホコリを落としていく。脚立で届くところまで続けて、終わったら少しずらしてまた乗って。暫くすれば床に綿埃が薄く降り積もっていく。見上げればせっせと頑張る箒たちが見えた。
私も頑張らないと。少し奮起して、箒を取りに戻って。床を掃き清め、最後はモップで仕上げ。
本を並べ替え……。

「むむ、『美味しいパンの作り方』……?」

 少し、覗いてみちゃったりしてしまって。いけないいけないと書棚に戻す。
おやつと、もう一つ、女神様とお約束したのだから。

「……喜んでくれたら嬉しいですねえ」

孤児院で共に育った兄妹達の顔を思い浮かべ、思わず笑顔が綻ぶ。
文字が読める子もだいぶ増えたことだし、絵本はきっと丁度いいプレゼントになることだろう。


掃除を終え、イレギュラーズ達は大図書館の部屋へと帰ってきた。
それぞれ、自らの一冊の本を抱えていることに気づくだろう。サボりたがりの女神と、勤勉な黒猫。二人からの心ばかりのプレゼント。
恐らく、それぞれが一番望んだ珠玉の一冊であることだろう。

成否

成功

状態異常

なし

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