PandoraPartyProject

シナリオ詳細

腐男子、帰ってきて。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「いいからとっとと仲直りしてこいっつーの。こっちの飯がまずくなんだよ」
 そう言って友達の尻を蹴り飛ばす、ちょっと粗暴に見えるけどほんとはシャイなすっげ―いい奴。とか、言われてるけど、違うんだ。
 たしかに喧嘩した友達の仲たがいを心配してるんだけど、仲直りしてほしいのは間違いないんだけど、そこに利己的な理由があるのは否めないというか、ぶっちゃけ、推し同士のけんかはスパイスレベルが最高であって、ガチで絶交するのはご勘弁。
 いや、物語とかなら、仲たがいした後、10年後にどこかの戦場でばったりとかあるかもしれないよ。そういうのもいいと思うよ。でも一介の傭兵でそんなことしたら絶対死に別れエンドだろ? 違う? というか、俺が観察できないでしょ? だめじゃん。こっちとしては日々なんか仲良くしてるのみるだけで癒しというか満ち足りるというかうちの猫と犬仲良くじゃれるなあはははは―的な気分になれるし、それ人間でやるのはまずいなーと思いつつ、殺伐とした日々の一服の清涼剤? お前らずっと仲良くしてろよなっていうか、お前ら二人のためなら命投げ出しはしないけど、結構無茶出来るな的な。
「意地張ってるんじゃねーよ」
 いや、マジで。仲直りして? 俺の精神衛生及びお仕事のクオリティ的にやばいから。
「――――っ!」
 名前が呼ばれる。ふと見上げると、俺の頭上に、丸太が、落下。

『あなた、最高です。差し入れお持ちしてご迷惑じゃありませんか? いい夢――そう、50年くらいでたりますか? 振込先はどこですか?』

 暗転。そして、楽園。イノチが尽きるまで。


「――」
『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)はボリボリ菓子をかみ砕いている。
「――世間にはお付き合いを『匂わす』みなさんもいれば、勝手に「そこに発生していない恋があるのでは」と匂いを妄想する皆さんもいる。脳内での世界再構築は自由です」
 割と長い空白の後、そう切り出した。
 発生していないなら、そんな事実はないのでは。シュレディンガーの恋愛萌芽。
 あくまで激しい妄想から自分の脳内感覚を狂わせております。
「まあ、他人の恋バナは楽しいからゴシップがあるわけで。世の中には火のない所に幻の火が見える皆さんもいる」
 普段は、良薬は苦かろうがそのまま出す系薬師が非常に回りくどいことを言っている。
「先日とあるギルドの一人が丸太の崩落現場に出くわしまして――正確には風圧で吹っ飛んだんですが――いつまでたっても目が覚めない。どうやら、通りすがりのどなたかが、なんていうか、気を利かせてくれたみたいで」
 え~。なんでそんなことすんの。やだ~。
「該当者の萌え語りにすっかり胸キュン」
 客観的事象は主観的事象と大きく異なる場合があります。
「はい?」
「わかりやすく言うと、『尊くて死にます。振込先はどこですか』状態」
 なに、その読み専腐女子みたいなナニカ。
「リャナン・シーっていうのに分類される存在で――」
 才能あるものに技芸の才を与え、代償として精気をもらう。
「萌えに萌えて、逆に命を貢がれてる。今、自分のアジトに連れ込んだ状態かな。今後の人生は保証しますので萌え語りお願いします的な」
 それ、石油王になったら神作家を囲いたいって妄想だろ。
「んで、該当者も夢だと思い込んでて、すっかりノリノリで語りだしてるわけで」
 あ~。起きたら、特殊空間でしたとか普通ないからな。常識バイアスの勝利。
「ちょっと行って、該当者に妄想も悪くないが、現実の萌えを忘れるなって言ってきてくれる?」
 あ、そっち方面の説得ね。OK。胸キュンキュンな妄想で現実を思い出させてやろう。

GMコメント

 田奈です。
 ヤミさんが性癖垂れ流しシナリオやっていいって。
 どのくらい食いついてもらえるかわからないけど、やりたいものをやっといた方がいいよねってことで。
 火のない所に紅蓮の炎を見る萌える幻想に囚われた、飽くなき瞳を持つ同志たちよ。同胞を救うために今こそ薄い宝典を幻想の頁で厚くするがよい。
 あ、口調はこういうのでなくて全然問題ないです。

該当者
 脳内でがっつり仲間の腐妄想で明日への活力を得ている腐男子。大丈夫。絶対大賞には悟らせない。生モノはデリケートだから、この事実は障害は鎌でもっていく。ローレットには守秘義務が発生しております。

*リャナン・シー的なにか。
 「神」=該当者を囲って、鼻息を荒くしている。大丈夫。50年くらいは元気で生きられるから。その後ピッチピチで開放するから。金品財宝お土産も持たせるし。というか、ガチで貢がせて。善意しかない。というか、リャナンシーが生命維持してくれた分治療が間に合ったので一応GJと言えないこともない。「神」が帰ると言ったら帰してあげます。だって、「神」から萌えがなくなったら意味がなくなるんだもん。

やること。
 *「現実の推しを見ろよぉ! このままだとおまえ、あんなに見たがってた『色々』をみっぱぐるぞ!」の「色々」を具体的に埋めてください。ピンナップの発注文的執拗さで埋めてください。
 その場にいる半分以上が『色々』を語ってくれれば成功です。誰かに押し付けると万が一ということがありますので、ちゃんとネタを練ろうね。

参考資料:該当者のギルド
やたらと自分を見つめ直す旅に出る奴がいるので、出入りが激しい。
女子禁制なんて一言も言ってないのに、女子の入団希望者が来ない。
小さな言い合いは割とあるが、みんなまあまあ仲がいい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 腐男子、帰ってきて。完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年05月31日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラク(p3p002078)
出来損ないの蜘蛛
リョウブ=イサ(p3p002495)
老兵は死せず
姉ヶ崎 春樹(p3p002879)
姉ヶ崎先生
那須 与一(p3p003103)
紫苑忠狼
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
庚(p3p007370)
宙狐
藍銅 神無(p3p007720)
鬼いちゃんに任せなさい!
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手

リプレイ


「というわけで、きましたるは腐女子系リャナンシーのご自宅!」
『はですこあ』那須 与一(p3p003103)、説明セリフと集中線、ありがとう。
「そしておりますはリャナンシーwith腐男子ず! 何がとは言いませんが高まってキター!!」
 窓の外からのぞいてみれば、該当者――リャナンシーさん言うところの『神』――が、身振り手振り付きでまくしたてている。熱心に頷きながら、目頭にそっとハンカチを当てるリャナンシーさん。
「まぁね、死にそうになってね? リャナンシーのおうちにごしょうたーいってなったら夢だと思うでござるよねー?」
 妄想語ってと言われれば、死に物狂いで語るよね。断ったらどうなるかわかんないもん。これは夢。夢ですよー。
「要するに『財力あるオタクに神が囲われた』とそういう感じです?」
『強者食い』ハンス・キングスレー(p3p008418)がぼそぼそ呟いた。
 念のため、神の後ろに(個人の感想です)を入れて下さい。
 意外と牧歌的な外観のおうちに、ダイナミックエントリー・強制介入お邪魔します。結界とか、攻勢防壁とか張ってなくてよかった。
「どこからいらっしゃいました!? 通れるのは同好の士のみの結界を張ってましたのに!」
 こんばんは、リャナンシーさん。同好の士です。
『牙撃特攻隊長』姉ヶ崎 春樹(p3p002879)が、リャナンシーさんの前でこぶしを握り締めた。
「神様の気持ち、分からなくもないさ。今時珍しいよなぁ、こういう天然モノの『男子のキャッキャウフフ』は。俺だっててぇてぇと思ったよ」
 対象のすぐ脇でつぶさに観察してきた該当者だからわかる、双方の視点。「心配してんだぜ?」という呪文からずるずる心情を引き出す会話術。リャナンシーさんは、該当者の語りを聞けば聞くほどこの言葉を叫ばずにはいられなかったのだ。『貴方が神か!』
 リャナンシーさんの表情の変化に、春樹は共感を覚えた。推してくれる読者もてぇてぇ。
「けどな、同じく神様――いや、該当者たんを推す身として言わせてもらうと……身の丈に合ったラッキーなら兎も角、『神の奇跡』なんて偉大すぎるモノが介入してきたら、ヲタの心臓がもたねぇだろうがッ!」
「私なんか、神じゃないですよ。一介の『作家に貢ぐリャナンシー的なにか』です!」
 インスピレーションと引き換えに生気を吸い取り、結果対象を早逝させるのが一般的リャナンシー。
 こちらは、そのインスピレーションに金払わせてください。と、貢ぐ方。
「うん……これは……悪いやつじゃあないんだよな」
『双色クリムゾン』赤羽・大地(p3p004151)、どっちかっていうと踊りがうまかったから色々持たせてくれた瘤取り爺さんの鬼。
(その分、どう扱ったものか。地雷踏み抜いたらどうしよう……)
 デリケートな乙女心を傷つけぬよう、該当者の解放交渉を始めようとする赤羽根と大地。
「良いモノには思わず対価を渡したくなるよね]
『老兵は死せず』リョウブ=イサ(p3p002495)は、リャナンシーさんに微笑んだ。
「最近はそれを怠る人も多いから、その姿勢はとても好印象だし褒めたいな」
 ビュリホ眼帯ロマンスグレーアラカンとな、奇跡の配合でしかない。天から贈り物を賜っているのはさもありなん。
「でも今回の対価はNGだ、他のを持って出直しておいで」
 ロマンスグレーからの「めっ」は、ごほうびです。
「50年の生活保障と解放時の肉体年齢保障と獲得予定報酬に相当の財産ではだめですか?」
 リャナンシーさんもいろいろ学んだらしい。強制搾取をしようとすると正義の騎士団が突っ込んでくるのだ。
「彼にはな。今この瞬間の華のそばにいるべきなんだよ。今まさに萌え出る若い芽を見守るのさ」
 彼をお家に帰してあげようね? おじさまにささやかれて、はい。と言わないリャナンシーさんはいなかった。
「あの、今日までの日割りで計算した分は差し入れしてもいいですか。『神』に御負担をかけるとか、萌えの阻害するとか、死ねる。ガチで死ねる。万死に値する。心がつぶれる」


 後は、これは夢と思い込んでる該当者の意識を現実に引き戻すリハビリというかカンフル注入のお時間ですよ。
「さて、君は結構長い間ここで夢を見ているみたいだけど、新鮮な萌、足りているのかい?」
『出来損ないの蜘蛛』アラク(p3p002078)は、該当者に言った。
 具体的に言うと、みんなでどこかのバザールに行ったら二人してはぐれた。(のを物陰からこっそり見る)イベントだったり、どこかの草原に沈む夕日を見る二人のスチル(ギルドメンバーの中からわざわざ二人だけの写真をわざわざとる)だったり。
「結構、長い間?」
 該当者がわなわな震え出した。え、これ夢だよね? 
「今日が何月何日かわかるか?」
 不安気に顔をゆがめる該当者に、大地が畳みかける。
「もう少しで色々と暑い夏が待ってるでござるよ?」
 与一がとどめを刺す。今年の青葉の頃シチュ逃してます。どんな気持ち、ねえ、どんな気持ち!?
「なんだと!? あいつら、仲直りしたんだろうな!? ギルド離脱とかしてないよな!?」
 仲直りはした。ギルドは解散も離脱もしていない。さすがにこの状況で該当者を見捨てるようにそんなことするほど薄情ではない。というのを、かくかくしかじか。
 該当者は肩で息をしていた。危なかった。心が死ぬところだった。
「気持ちはわかるし、なんなら俺もそこに参加したいけどジャンルは違えど同じnmmn好きとして、これ以上リアイベ逃させるわけにはいかないよね!」
『鬼いちゃんに任せなさい!』藍銅 神無(p3p007720)、年とると涙腺緩くなってきてもらい泣きしてしまいそう。
「「例えば、人より華奢な子が転びそうになって普段クールな幼馴染に助けてもらってキュンとしてたり、不器用な傭兵さんが恋心に気づいて悶々としてたかもしれないんだよ!? 見逃すなんて死んでも死にきれなくない???」
 推しカプのシチュを見られなったら成仏するべきではないという思想を広げたい訳ではありません。
「妄想竹というのは雨後の筍の如く次々と湧き出でてはカノエたちを力付け、惑わし、パライソへ誘ってくれるものでございますね。限界オタクにはどんな供給も甘露となって染み込むものです」
『宙狐』庚(p3p007370) が切れ長の目を巡らせる。伏し目がち、かわいい。
 ふやふやと柔らかそうな毛並みを揺らめかせるこんこんさんが妄想とかパライソとか言っちゃうのって聞いてるこっちの耳がパライソに旅立っちゃうんですけど、どう責任取ってくれるんですか。知らなかった頃に戻れないんですけど。
 神無と庚、双方向からじくじく炙られた該当者がついに吠えた。
「バースデーイベント!」
 該当者の嘆きが特殊空間の天井をつく。
「聞いてくれよ。俺が受けじゃねえかなって思ってる方の――茶色い小型犬ぽい方の誕生日が夏前なんだよ。日付過ぎたか。今日何日だ。冬に、攻めじゃねえかなって思ってる方――こっちはでっかいもっふもふの黒猫だと思ってたら黒豹の誕生日に、小型犬が誕生日プレゼント渡したんだよ。ということは、次はお返しプレゼントイベントじゃね? もらったからって免罪符立ってるし。もう、どうなるか俺キュンキュンだった訳、わかる!?」
 そんな大したことない状況でそこまで熱くなれんのかよ。ローレット・イレギュラーズは、魔物に50年貢がれる男の熱さをみた。
 生ものの鮮度を崩さないよう絶妙の距離を保ちつつ二人を見守る。それが該当者のスタンス。良い奴過ぎてうっかり「@@君も幸せにしてあげてください」とご要望が一定数たまり、スピンオフを書かれかねないタイプだ。
「カノエたちの本分は妄想ではなく、補完です。その表情、言葉、行動、空白に捏造考察深読みの限りを尽くし、行間に幻覚を見る人種でございます」
 たとえ、小型犬が渡したプレゼントがたまたま目についた出店のおもちゃの宙返りカエルでも、勝手にそこに「お前、死にかけても絶対生き返るんだぞ」的メッセージを勝手に妄想する人種。それが該当者だと、庚はみなに告げたのだ。
 今が好機と、ハンスは演技で羞恥心を抑え込み、演説をぶちかます覚悟を決めた。
「あの特有の蒸した空気で肌にひっつく浴衣と喧騒の中にいる推し達……無邪気に屋台を楽しみ、花火に照らされる彼らの姿……!」
 それを三歩下がって気配を消しつつほほ笑む該当者。いなくなってはいけない。まだ二人には、「これ、別にギルドのみんなと来ただけだし。その中で気が合うだけだし」というエクスキューズが必要な段階なのだ。甘酸っぱいのだ。
「そして海や川! 水飛沫舞う炎天下、汗をかいて水を泳いで……ソーダバーを溶ける溶けるって焦りながら頬張るetc……さいっこうじゃないですか!?」
 該当者さんは、片手で鼻と口を押さえ、もう片方で親指を立てた。いい仕事なさいますな。
「後――染まった舌の見せっことか?」
 定番。だが、そこがいい。


 更なる悲劇は抑止しなくてはならない。
「あ、リャナンシー殿……もしよければお名前聞かせていただいても?」
 連絡先をこそこそやり取りする与一とリャナンシーさん。
「それででござるな、ベテラン腐男子ーズの萌え論もいいんでござるけどな? 今年の夏にでござるな、ウ・ス=異本とかの販売会が開かれるかもでござってな?」
 チラシを渡す与一。横から、大地がリャナンシーに言い聞かせ始めた。
「神作家の神な作品が巷で、あるいはアンダーグラウンドで公開されてるかもしれない。新たな神が、光輝く才能が、見出だせるかもしれない」
 該当者にぶつけようかと思ったが、彼は自分の押しCP以外に興味はないらしい。ならば、事の発端の方に釘をさすことにした。タゲチェンだ。
「穴蔵に込もって、それをみすみす見逃すつもりか? 同志と語らう機会を逃してしまうぞ。心の火は、分かち合ってこそ、より燃え上がる」
 ソースは俺。
「まあ、望まない人間を無理やり沼に引きずり込まなきゃあ、俺は別にどうでも良いけど……」
 リャナンシーさんは、その発想はなかったわーという顔をした。
「神が降りてくるのを待ってちゃダメだゾ。神は永遠じゃなイ、色んな理由で失踪するかもしれなイ。だかラ、神は自分の目で見つけて崇めるんダ。誉められたラ、創造神は多分めちゃくちゃやる気出ス」
 声色が変わり、更にリャナンシーを別方面で煽った。
「後、ご招待したら一応説明だけでもしといた方がいいと思うでござるよ? また今回みたいなことになると悪いでござるしなー」
 招待するなとは言わない。好条件だし。ぜひ、合意の元、期間も決めて、何なら第三者機関をはさんで。
 リャナンシーさんは頷いた。もしかしたら、今後眠り腐男子が発生するかもしれないが、その時短期契約遂行中と出たら不問という話になったとかなんとかそれはまた別の話。


「さて、該当者たんには俺の同人ショップからかき集めた薄い本達(装備)を見て貰おう。今回持ってきた本は全て俺が描いたんだが……俺の作品の最大の特徴は、絶妙な位置に巡らされたモザイクだ」
『掛け算が止まらねえ!』 のコピーがまぶしい姉ヶ崎はる姫先生の新刊はこちらになりまーす。お釣りのないようにご準備してお待ちくださーい。最後尾の方は恐れ入りますが札を高くお持ちいただけるようお願いいたしまーす。頒布開始いたしまーす。幻聴が聞こえる。ショップ売りだから、即売会の声がするわけないのに、壁の幻想が見えた。
「モザイクってのは凄ぇもんだぜ。本来何でもない物でも、かけちまえばあらぬ妄想を抱かずにはいられなくなる。そんなモザイクを、俺は……ギフトで現実に生成できるんだッ!」
 該当者はよろめいた。善意100%の春樹を見つめて切なそうな顔をした。え、何、恋に落ちるの? ここでネタ出し野郎と同人BL作家のドキドキが止まらないシチュになるの!?
「の」
「の?」
「色々準備してくれてありがとう。だけども、のっとふぉーみー……」
 ノットフォーミー入りました!
 解説しよう。直訳すると「私向けではない」作品のクオリティとか無関係に、単にこちら側の好みの問題で楽しめませんという奴です。地雷と言わない言い回しを覚えましょう。リピート・アフター・該当者。さんくすあろっと。ばっと、のっとふぉーみー。
「俺、接触はキスまで・暗転からの朝チュン派なんです!」
 ちゅどーん。爆発音で大体お察しください。
「暗転って、単純なように見えてかなり多くのパターン考えられるよね」
 リョウブ、なる程ねとうなずいた。
「悶々と悩んで眠れないだけで終わるかもしれないし、一線を越える可能性もあるし。どうなってしまうんだって色々考えてしまって、ドキドキするよねぇ」
「ですよね!」
「絶望の海の方で色々進んでるからね、あの海を一緒に越えようとしてる二人とか見たくないかい? 死と隣合わせで不安で、時に当たり散らしてしまうけど、同時に相手がいるからこの絶望も超えられると思ってるわけだ。それに船は狭いからね、場合によっては同室なんじゃないか? 灯りとかも制限されるし、これは暗転するシーンが挟み込まれるやつじゃないかな」
「いい暗転です! そこに俺がいなければもっといい!」
 船内だと雑魚寝が多いから。おっと、そのシチュ詰めてると薄い本が厚くなるな
どちらにしろ「子猫ちゃん、危険なアヴァンチュールをご所望か」なんて帯を巻かれがちな姉ヶ崎先生とレーベルが違う!
 必要なのは、レースのカーテンと時間経過を表す白ゴマだ。
「えっちは? 全年齢対応なエッチはもとめてないの!? 全体的にモザイクをかけた深緑バナナをリョウブたんと与一たんに咥えてもらおう。とおもってたのに! 『ちゃんと喉奥まで噛まずに咥え込めよ?』とかセリフ用意してたのに!」
「オラオラ系、ノットフォーミー。大型猫型肉食獣攻め×涙目強気ワンチャン受け、基本ブロマンス推しです!」
 該当者、ひろった孤児(ヒト)×育てた魔女(不老長寿)シチュとか好き。
 すれ違うジャンルのベクトル。求める物のベタとコマの書きこみ密度、なによりモザイクの要不要が違う。
「神無たんとアラクたんに絡んでもらって身体にモザイクをかけるか。下半身を重点的にな! これがキャッキャウフフの一線を超えた腐界マスターの業ってやつだぜ! って、心臓を高鳴らせていたのにっ!」
 言及されていないが、かわいい庚もおしっぽふっかふかにしてからみ上等待ったなしステンバーイしていたのだ。マフモフぺろぺろグリグリとか、異種族推しにはたまらない何かが拝めるところだったのに。ああ、世界の損失。
 慟哭の春樹センセに励ましのお便りを。同時に、ローレット・イレギュラーズの挺身振りに、どうぞ皆様惜しみない拍手を。
「からみなしか……あっ、そうだ新刊予定の神アラ神の薄い本あるよ」
 あ、春樹センセ、ぴくっとした。
「……教えてなかったっけ? まあ、書いたよ!!」
 NLメインだけど、自分たちをモデルにBL書いてるアラクは勇者だ。
「読みたいなら次回のイベントで合同サークル『夢現』で頒布するからよろしくね!」
 自分がネタの神無の笑顔がまぶしい。同軸リバですか。神アラとアラ神両方乗ってるやつですか。後者だと解釈違いが発生するかもしれないのですが。
「推しカプに起こってほしいおいしいのを演出しようね! 俺は攻めにも受けにもなれるハイスペック鬼いちゃんなので! ――って張り切ってたんだけど、ほんとにいいの?」
 該当者は大きく頷いた。
「アイツらにえっち求めたら、風呂とか着替えとかで反応したら俺のキャラがやばくなって身の破滅じゃないですか。あの二人に気味悪がられてギルドから離脱されたら終わりなんですよ!」
 自分の気の置けない友人ポジに影響が出るような肉体の自律回路の構築はしない。
 それが、生モノを至近距離で堪能する「友達」ポジの腐男子! 修行僧のような精神性が求められる。『男』にモザイクがいるような反応してはいけない。
「そんな俺の性欲なんて些末なことで、風呂イベ逃したくない!」
 厚い叫びだった。叫ぶ顔に春樹がモザイクをかけたほど熱く激しい肉欲とは別次元の欲望の発露だった。
「所詮妄想が、公式に勝るわけが無いのです……!」
「そうだな。生のアイツらに勝てる萌えはねえな! 俺、帰るわ! リャナンシーさん、面倒見てくれてありがとな!」
 
 尊い、尊い、神、神対応。尊い。と、咽び泣きながら、リャナンシーさん、特殊空間、解除。
 ローレット・イレギュラーズが元居た空間に戻ってくると、該当者が眠っていた病室から歓声が沸き上がっってきた。
ギルドの誰にも知られてはいけない、内緒の『神』のご帰還だ。
 けなげな彼のため、攻黒豹と受け小型犬の顔をてのぞきになんか行ってないけない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。これで該当者君は、バースデーイベを見逃すこともなく、日常に戻ることができます。
ゆっくり休んで次のお仕事頑張ってくださいね。

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