シナリオ詳細
赤色警鐘ワンルーム
オープニング
●危機感の音。いのちの消えゆく音
あの後。
彼らは私が毒殺されそうになっていたのだ、と教えてくれた。
この白いワンルームに閉じ込められていたら、そのうち死んでいたのかもしれない。
でも、違った。
「幸宮さん。君に実験体になって貰いたい」
院長のようなおとこ。というよりかは少年。
私のワンルームにあらわれて、そういったの。
でも、私には生きたいと思える理由があるじゃない。
ほら、例えば。
皆と食べたお昼ご飯を、退院したら作れるようになりたい、っていう小さな野望を果たしたり。
海も見に行ってみたいわ。それから、あの庭の外。もっと大きな庭があるって云ったの。そこにも行ってみたい。
この狭い部屋(ろうごく)の外。硝子越しじゃなくて、確かにこの目で空が見たい。
この薬の匂いしかしない、温もりを感じない部屋には嫌気がさしたころだったから。
たとえ身寄りがなくとも、生きてやりたかったから。
「嫌よ」
そう、口にしたの。
リハビリをして立ち上がれるようになったわ。
すこし身体は弱くとも、走れるようにもなった。
健康を取り戻した。また学校にだって行きたいもの。
実験体になんて、お断りだから。
「じゃあ、イエスと言って貰えるまで、ここに居てもらおうか」
って、言われてね。
今日でもう三日目。ご飯も何も食べてないから、そろそろ死んでしまうかもしれないわ。
ねえ、お友達(ヒーロー)。
私を、助けて。
●いのちのついえるおとがした
「おにーさん、おねーさん、大変っす」
ガツゥはフィスから受け取った書類にてんやわんや。その明るい笑顔はひどく沈んだ顔になっている。
「舞白さんが、ほぼ軟禁状態っす」
と語ったくちびるは震えていて、握られた拳はひどくきつく握りしめられていて。
冷静になるためだろう、ガトゥは一旦息を吐いた。それから、大きく息を吸ってこう告げた。
「舞白さんの物語(じんせい)の、ヒーローになってほしいっす」
教会という場所は能力者の力を最大限に引きだせるということ。
舞白の教会にいけば舞白は回復以外の攻撃の能力も使えるようになること。
肝心の舞白が閉じ込められていること。
ご飯を持って行ってほしいということ。
分厚い紙の束が手渡されて。ガトゥは顔をあげて、頭を勢い良く下げた。
「……頼むっす。ヒーロー」
- 赤色警鐘ワンルーム完了
- NM名染
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年05月24日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談3日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●君の世界は君だけのものだ
(高い塔に幽閉されたお姫様を助け出す……か。なかなかカッコいい役回りじゃないか。
本来ならコソコソやるのが俺流だが、折角だから正面突破をさせてもらうぜ)
白衣を翻し、『凡才』回言 世界(p3p007315) は病院内を急ぎ足で歩く。
走ってはいけませんよ、だなんて囁く白衣の天使達の声がやけに煩く思えて、苛立ちを抑えて走っているのはきっと気の所為なんかではない。
(実力行使? 上等だ。やられたら同じ分だけやり返してやる)
ただあの日。
共に本を読んで過ごした君の横顔に、友としてのよろこびを覚えた。
友の幸せを掴み取るために力を惜しまないことの、何がいけないのだろうか。
真白い楽園(ろうごく)。無色彩の鳥籠。
――迎えに来たぜ、お姫様。なんてな?
「……っ、世界!」
力ずくで鍵を開けた先、ベッドに抑えつけられている舞白が目に映った世界は駆け寄ると、辺りに居た医者らしき人物から舞白を背に庇うように立った。
「人が集まってくるまで囚われた姫と助けにきた王子みたいなドラマティックな会話にでも興じてみるか?」
「……っふふ、流石お見合いしてくれただけあるわね?」
「あれは違うだろ……まあ、俺と逃げてくれるかな、お姫様」
「らしくないけど、ちょっとドキッとしちゃったじゃない。――喜んで!」
「似合わない役だとは理解しているが一世一代の大舞台だ、存分に味わわないと損だろう?
――さあて、観客も集まったところで。舞白、脱出するぞ」
「世界、逃げ道なんてないわ。お医者さんが通路を……」
ちっちっち、と指を左右に降って。そう悠長にしている間にも、人は集まってくる。
「舞白、俺に捕まってくれ」
白衣の内側を指し示し。舞白はおずおずと抱き着いて。
「それじゃあ――あばよ」
勢い良く地を蹴って、窓ガラスを突き破って急速落下。
そらにふたり、とけてゆく。
「せ、せかい、これ、私達死んでしまうわ!?」
「大丈夫だ、安心しろ。俺がついてる」
――風の精霊よ。流れゆく大気の守護者よ。
我が呼びかけに応え、その力を貸し給え――!!
精霊が世界の翳した手に描かれた魔法陣から飛び出し、二人を宙に浮かばせて。
病院を出た先、道路沿いに着地して。ひと時の『王子様』は舞白の頭をくしゃりと撫でると、病院へと走って行った。
「大丈夫。俺達はお前を助けに来た」
その言葉を胸に、舞白は迎えに来たイナリと走り出した。
●しらないなら、しらないなりに戦うまで
(私はヒーローって感じの立場じゃないけど、女の子を実験台にするなんて許せないわね。
これは天罰よ――報いを受けなさい!)
手招きして路地裏へと舞白を連れて行き、隠密行動を意識して動く『狐です』長月・イナリ(p3p008096) 。
「あの、世界は大丈夫なのかしら……」
「大丈夫。世界さんは強いわ! それに私も、これから来る仲間もね。
だから安心して。ここは私が守るわ!」
安心させるように微笑めば、舞白も震えを隠して頷いて。
――負けられない。
敵の怒号が近付いてきたのを確認すると、今は未だ身の丈に合わない程の力を身体に宿しその力を奮った。
閃光は敵を怯ませ、破壊する。けれどそれだけでは止まらない。
ち、と舌打ちして次の手段に出る。
まだ負けたかなんて、わからない。
「幸宮さん、少しこっちに来てくれる?」
こくりと頷き舞白が近付くと、上から下までじっくりと眺めてから舞白そっくりの式神を生み出して。
「私みたい……!?」
「ふふ、しぃ。静かにしないと気付かれちゃうでしょ?
それよりほら……見ててね」
しゅ、っとマッチをすって、火をつけたダイナマイトを持たせる。
舞白に似た式神は敵の元へと駆けて行く。
バコン!!!
大きな破裂音が外で聞こえたのを合図に、イナリと舞白は路地裏を抜けて走り出した。
「私が爆発した……!?」
「ふふ、私にしたらこれくらい造作もないわ」
イナリが舞白の手を引いて駆ける。駆ける。駆ける。
「もうすぐ合流地点よ」
「ありがとう! 貴女の名前は――」
「私? 私はそうね……さすらいの稲荷神とでも名乗っておこうかしら」
足音が響く。追っ手は追うのを止めない。
暗がりの路地裏よりも、コンクリートの地面が暗く思えた。
敵が逃がしてくれないのなら、正面突破だ。
「幸宮さん、少し隠れて!」
赤の弾幕を形成し、敵に撃ち込む。数だけは多いから、直ぐに倒れても増援が止まない。
舞白が逃げるのをサポートするように弾幕を撃ち込んでは逃げ、撃ち込んでは逃げて。
そうして走り抜けた先、傷を追ったイナリを舞白は癒しの力で回復した。
「ありがとう、稲荷神さま。私、もう少し頑張ってみるわ」
「ええ、ええ。その言葉が聞けただけで充分!
ここは私に任せて――進んで!」
駆け抜けて遠くなる舞白の背を見送って、イナリは敵を見据えた。
「――さて、ここからは手加減無しで行くわよ?」
●闇を照らし進む月よ
「舞白さん、こちらです!」
大きく手を振って。眩く光る『今は休ませて』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900) は、舞白が隣に来ると一緒に走り出す。
(きな臭いと思っていたら、相手も直接手段に訴えてきましたね。舞白さんをいったいどうしたいのでしょう。
殺したいのか、実験に使いたいのか、それとも、僕たちとの逃避行もすべて計算の上なのか――ともあれ、舞白さんを放っておくわけには参りませんから)
敵の銃撃から庇うように後ろを走る。追っ手の声が響く。舞白の顔は青白く――銃声を気にさせまいと睦月は声をかけた。
「舞白さん、できるなら癒やしの力をお願いできますか。僕はこれから攻撃にはいるので」
「っ……ええ、わかったわ!」
超能力で飛ばされる槍や銃火器。地面からは茨が咲く。
嗚呼、これではいけない。
睦月は戦闘態勢に入った。その右手を敵に翳し、封印の魔を施すと、超能力の使えない敵は身動きが取れず。
身体能力上昇系の超能力者も居たのだろう、格段に追っ手のペースが落ちてきた。
(僕の役目は役目は一人でも多くの追手を減らすこと。ならば――!!)
生み出した毒蛇がさらに敵を追い詰める。がぶりと噛み付いて毒を染み込ませ――泥に沈むように、ばたりと倒れていく敵達。
地面に触れて晶槍を生み出してさらに牽制して、近づかせまいと奮闘する睦月。それを舞白は必死にサポートした。
先に見える緑。それに気付いた舞白は『冬宮さん!!』と大きく名を呼んだ。睦月も頷いて舞白に近寄って声をかける。
それは、約束。
「貴女が無事だったら、僕の下の名前をお教えしましょう」
「でも、あんな人数……稲荷神さまも、世界も……!!!」
嫌よ、と首を振る舞白を窘めるように微笑むと、睦月は舞白の背中を押した。
ぐ、と歯を食いしばる音が聞こえた。睦月は敵と退治する。
「どうかお気を付けて――回復、ありがとうございました。さあ、早く走って!」
年相応に不安げな顔をしつつも大きく頷くと、舞白はジュルナットの方へと走った。
彼女は振り返らない。
(気になるのは前回の会話。能力者は寿命と引き換えに複数の能力を持てるが、理性を失う。
――舞白さん、どうかそのままのあなたでいてください)
睦月の祈りは、果たして届くのだろうか?
遠くなって行く足音。近づいてくる敵。
まずは此処を乗り越えようと、睦月は固く心に誓い――その手を敵へと向けた。
●想いを超える術など
「あんまり強い子が残ってないと嬉しいナ……っと、お疲れ様。おじいちゃんに任せてヨ」
『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト(p3p007518) は、疲弊した舞白を軽々姫抱きにすると、素早く走り出した。
「回復は無茶しない程度でお願いするかナ。おじいちゃんと約束できル?」
「わかったわ。貴方の名前は――、」
「ジュルナット・ウィウストだヨ。おじいちゃんって呼んでネ」
「ええ、わかったわおじいちゃん、それじゃあ教会迄――あともう少し。頼めるかしら」
「勿論!」
舞白が本能的に好んだ森の中に教会はある、
「森ならおじいちゃんの専売特許だ――任せてヨ!」
森の中で姿を隠すように進んでいくジュルナット。ハーモニアである彼に森で戦いを挑もうなどと自殺行為である。
風の力がジュルナットに力を貸し、ある程度の敵の位置を教えてくれる。たまに銃弾が飛んできても肉壁になり、舞白が癒し、死の凶弾を送り返せば少しずつ確実に敵は減っていく。
「正直相手の強さは未知数だし、無理に戦わず逃げるにこしたことはないからネ?
」
と笑顔で言うのだけれど、ジュルナットには一撃確殺がお似合いだ。確実に倒してくれる安心感に、舞白は安心した。
「……あ、そこを左に」
「左ね、了解」
寂れた教会がポツリとそびえ立って居た。
白く、大きく、美しい壁には蔦が蔓延っている。
「扉を開けてくるから、待っててネ」
「わかったわ」
ジュルナットは舞白を降ろすと、蔦を少しずつ解いていく。
(――しかし、何を思うて実験体になんかするんだろうネ。
解剖? 研究? まあどんな理由だろうと馬鹿馬鹿しい事に変わりはないけどサ)
ちらりと舞白を一瞥する。能力を持っているとも感じさせない、小さな少女だ。
不安げに周りを伺う様子は、本当に『ただの少女』のようで。
(同じ人である以上相手にも心はあるし意思もあル。
それを捻じ曲げてまでする必要があるなら、どれだけ崇高なのか教えてもらいたいくらいだネ)
うまく蔦を切り解くと、ジュルナットと舞白は教会へと進んで行った。
「……お腹、空いてない?」
「実は朝から何も食べてないの」
毒が入っているらしくて、と少しお腹を抑えた舞白に、ほれ、とリンゴを手渡したジュルナット。金色の皮に目を煌めかせた舞白は、これをシュルシュル剥くジュルナットの手付きに歓声をあげた。
――一先ずは。安心できると、そう思っていたかった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
どうも、染(そめ)です。
力は武器になります。
それでは、今回の依頼の説明に入ります。
●依頼内容
幸宮 舞白の逃走の補助。
毒に危機感を覚えています。教会へ連れて行って、と助けを求めています。
追いかけてくる病院の人間に見つからないように、リレーで連携して教会まで連れて行きましょう。
ゆきみや ましろ。女の子です。17歳くらい。高校生ですね。
幼い頃から病弱でこの病院に入院してるようです。七階の一番奥の部屋が病室。
黒い髪と黒い目をした、線の細い少女です。
くだものや読書が好きです。友達ができました。
【New!】
能力使用時は薄く目が緑に光ります。
●世界観
『力の代償』
という物語の中。
現代日本によく似た世界ですが、超能力者が居ることが大きな違いです。
超能力者は二つのグループに対立していて、良いことをする超能力者と悪いことをする超能力者に別れているようです。
超能力者はその力と引き換えに短命で、大人になることが難しいと言われています。
舞白もその一人です。舞白の能力は『癒しの力』です。他人の傷を癒すことに長けていたようです。
●病院について
超能力者専用の病院です。特殊な石を使ってできているため、超能力者も普通の人間のように入院することができます。
薬の匂いがきついです。
病院内には図書館やカフェなど、リラックスできる場所の他、庭、森、池などだいぶ自由な自然があるようです。
他にも色々な場所がありますので、プレイングに自由に書いて頂ければ採用いたします。
●護衛方法
病院から連れ出して舞白の云う教会まで連れて行ってください。
『教会』には薄い緑の十字が立っています。
●サンプルプレイング
Aさん→Cさん→俺→Dさんの順番。
敵がまけてないだって? まかせろ、荒事は男の得意分野だ!
以上となります。
ご参加お待ちしております。
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