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シナリオ詳細

<魔女集会・前夜祭>フロランタン、お口に一つ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『夜』
 夜(ナハト)――それは魔女たちで形成される集団だ。
 その長たる闇色の乙女、『夜の長』ワルプルギスは時折、夜の魔女たちを集めて集会を開く。
 そろそろ、魔女集会(サバト)の時期が近づいてきて――

 大樹ファルカウへの信仰の場所たるアンテローゼ大聖堂には二人の魔女が居た。
 片や、司教たるフランツェル・ロア・ヘクセンハウス。
 片や、商人ギルド・サヨナキドリに属する夜の魔女、『竃の魔女』グレーテル。
「あら、いらっしゃい。招待状はお持ちかしら?」
 茶化す様にそう言ったフランツェルに武器商人 (p3p001107)は勿論と小さく笑んだ。
「やァ、『灰薔薇の魔女』。それに『竃の魔女』もご一緒とは珍しい」
 くすりと笑った武器商人に「彼女ったら私に相談があったのよ」とフランツェルは小さく笑う。ヨタカ・アストラルノヴァ (p3p000155)はその言葉に「相談?」と小さく首を傾いだ。
 曰く――集会(サバト)が近づいてきた事で、グレーテルはワルプルギスよりサバトの会場周辺の視察を頼まれたらしい。そのついでと言っては何だが、群生する鮮やかなる花よりとれる蜜糖を得たいそうだ。
 ふと、バスケットをその膝の乗せていたグレーテルは武器商人以外の気配を感じて柔らかに笑みを浮かべて見せる。
「こんにちは、私はグレーテル。こっちはお兄様のヘンゼルよ。よろしくね」
「よろしくね。おにいさま おにいさま。
 うん、そうだね、きっと『いるんだ』。おにいさまもよろしくね」
 意味ありげに笑んで見せたはカタラァナ=コン=モスカ (p3p004390)。その様子にきょとりとした反応を返したルビア・キルハート (p3p008342)は魔女がバスケットに愛おし気に話しかける様子を見て訳ありだと認識した。
「それでは、我々はサバトの会場周辺の視察を行い、花の蜜を得ればよい――という事ですか?」
 丁寧な礼を一つ、穏やかな口調でそう言った夜乃 幻 (p3p000824)にグレーテルは頷いた。どうにも一人で視察できるわけがなく、『兄の手も借りたかった』グレーテルにとってローレットと繋がり深いフランツェルは恰好の相談相手だったのだろう。
「ねえ、グレーテル。花の蜜で何を作るのかしら」
「フロランタンを」
「美味しそう! 出来ればアンテローゼ大聖堂にもお裾分けなんかは?」
 ちら、と見遣るフランツェルにグレーテルは「サバトにいらっしゃい?」とおかしそうに返す。
「フロランタン、って、とってもおいしそう! アウローラちゃんたちにも作れるかなー?」
 きらりと瞳を輝かせたアウローラ=エレットローネ (p3p007207)にグレーテルは「ええ、きっと」と微笑む。華やかではない素朴なお菓子を作る竃の魔女は「良ければ一緒に作りましょうね」とイレギュラーズ達へと言った。
『まあ! 鬼灯くんに作らなくちゃ!』
「嫁殿の手作りお菓子を食べれるのであれば、幸運だな」
 そっとその腕に抱いた『嫁殿』へと愛おし気に話しかけた黒影 鬼灯 (p3p007949)はさっそく会場の視察に向かおうと提案した。
「会場というのは、どのような場所で?」
 事前に聞いておきたいとグレーテルへと言ったランドウェラ=ロード=ロウス (p3p000788)へ、フランツェルとグレーテルは顔を見合わせてため息を吐いた。
 無関係な人が寄り付かないように会場周辺はダンジョンのように変化する遺跡が存在するのだという。ワルプルギスの権能か、それとも、神様の悪戯かはさておいて――
「ダンジョン内部の視察なのよ」
 ――それはまた、大変そうだ。

GMコメント

 ご用命ありがとうございます! お花の蜜を取りに行ってダンジョンアタックだ。

●成功条件
 ・甘い花『ルーナルーナ』の蜜を瓶に詰める
 ・ダンジョン内のモンスター10体程度の討伐

●ダンジョン
 ワルプルギスが夜を呼び寄せて行う魔女集会(サバト)の周辺に存在するという人避け用のダンジョン。内部には誤って発生しているモンスターが居ますが、サバトに訪れる魔女たちを阻害する為に討伐が求められます。
 ダンジョンは迷路のように入り組んでいます。モンスターは『ルーナルーナ』の甘い香りに惹かれる為、ルーナルーナに近づけば近づく程、その数を増やします。
 寧ろ、モンスターが多い方に華があるという目印にもなるかもしれませんね。

●モンスター*有象無象
 たくさんいます。強さはいろいろ。小鬼の様な小さなものから、巨大な熊まで。
 皆、『ルーナルーナ』に惹かれています。
 このモンスターを最低でも10匹討伐してください。それ以上倒してもOKです。

●甘い花『ルーナルーナ』
 月光を帯びたように白く輝く美しい花。甘い香りを発し、モンスターたちを誘います。
 花に瓶を当てれば蜜を取ることが出来ます。多めに取っておけばあとでグレーテルと一緒にお菓子作りが出来るかもしれませんね。

●『竃の魔女』グレーテル
 目隠しをした美しい女性。バスケットの中に兄がいると言い、愛おしげに話します。
 見えない方が、いろいろと、しあわせでしょう?
 お菓子作りを得意としており、魔女集会の為の手土産にフロランタンを作るそうです。
 もしも、皆さんがご希望であればダンジョンアタック後に一緒に作る事も出来ますよ。

●『灰薔薇の魔女』フランツェル・ロア・ヘクセンハウス
 深緑のアンテローゼ大聖堂に坐する司祭。ローレットに遊びに来る困った魔女。
 支援などは適度に行えます。ダンジョンアタックの際などに引っ張っていくことも可能です。(もちろん、お留守番でもOKです。お留守番は紅茶を淹れてまってます)

 楽しい『夜』の準備をしましょうね。
 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <魔女集会・前夜祭>フロランタン、お口に一つ完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
武器商人(p3p001107)
闇之雲
カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)
海淵の呼び声
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
ルビア・キルハート(p3p008342)

リプレイ


「最近魔女によく合う気がするなぁ。これは運命っていうのかい?
 で、グレーテルとグレーテルのお兄さんと一緒に行ってフランツェルも一緒」
 にんまりと笑みを一つ。『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)が恭しく『左腕』を差し出した。有効の証のその掌にそっと『竃の魔女』グレーテルは掌を重ねる。
「ええ、ご一緒に。魔女は運命という言葉が好きなのよ」
 甘い香りを纏わせたグレーテルのその言葉に「運命、うん、そうだね。僕(クレマァダ)も好きだ」と歌うように告げるは『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)。
「サバト――必要なのは月齢かな。それとも星辰の並び?
 それともただの口実で、ただのお泊り会? お花を取ってくるだけの、平和なお仕事だね。……本当に?」
「ええ、今は」
 唇に乗せた甘いその響きにカタラァナは「そう」と音乗せる。
「フランツェルちゃんも、ヒマならついておいでよ。でも、ああ――『自分の身は自分で守れる?』」
 揶揄うカタラァナの声音に『闇之雲』武器商人(p3p001107)は頷いた。守り手が少ないならば魔女を危険に晒してしまう。
「我(アタシ)達は行くけれど、歌姫の言う通りさ」
「ええ、有難う。私も自分の身は自分で守れるわ。折角のお誘いなら『足手纏い』になってみようかしら」
 くすりと笑った灰薔薇の魔女に『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)はにんまりと微笑んだ。
「それじゃあ行こう! 魔女さんの集会なんてすごいなー。
 どんな雰囲気何だろう? アウローラちゃんも遊びに行けたらいいのに」
 楽し気に微笑んだアウローラ。その言葉に「どのような場所でどのようなことをするのでしょう?」とルビア・キルハート(p3p008342)はこてりと首を傾げる。
「どのようなモノであるのかは分かりませんけれど、…美味しいお菓子の準備をされるというのならお手伝いするのは吝かではありませんわ!」
 楽し気に竃の魔女のお菓子作りを楽しみにするルビアとアウローラの声が弾む。本日のメニューは『フロランタン』。その生地に練り込む甘い蜜を求める魔女の言葉を聞きながら『小鳥の翼』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)はフロランタンと唇に響きを乗せた。
「それはメヌエットの如く……名前のメロディは軽やかで、そして甘く響き、虜にしてやまない。
 っあ……決して甘い物が食べたいから参加した訳では……ない……!」
 慌てたようにそう告げた『小鳥』へと武器商人はくすりと笑う。竃の魔女のお菓子の味は素朴ながらも美味だ。それはサヨナキドリでもお墨付き。その出来立てが食べれるというならば――心躍らぬ訳がないだろう。
「フロランタン作りなんて、初めてで御座います。あれは生っているものではなく、作るものなのですね?」
 そっと、木々に茂っているようなジェスチャーを見せた『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)はそう言ってから可笑しそうに小さく笑う。
「……ふふふ、夢の世界にいた頃はそう思っておりましたが、流石の僕もお菓子がどうやってできるかぐらいはここ2〜3年で覚えましたとも」
「ああ、よかったですわ! 樹に茂っているのかと思いましたもの!」
 揶揄う声音のルビアに幻も目を細めて笑みを返す。お菓子作りを覚えたのは『召喚』がきっかけだが――ふと、彼女の心にしこりの様に残るものがある。
「お菓子を作れるようになって、もしもあの方が生きて帰ってきたら、振り向いて頂けるでしょうか」
 呟くその言葉に、ヨタカの表情が昏くなる。幻にとっての愛おしい人は、今は大いなる海に向かっているだろう。冠位魔種による悍ましき呪いが二人の運命を別ったというならば。
「そんなヨタカ団長様、哀しい顔をしないでくださいな。只の冗句で御座います」
「……でも……」
「いいえ、少々質が悪う御座いましたね。ここは場を盛り上げる奇術を……」
 出発の時間だと声が掛かる。それでは、後程と恭しくも首を垂れた幻にヨタカは小さく頷いた。


 煌びやかな衣装に美しい深緑の林。夢まぼろしの如く広がった『ワルプルギスのダンジョン』を眺めながら『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)は「此処に華が咲いて居るんだな」と周囲を見回した。
「最初は美しい方々の中に黒衣の俺が混ざっても良いのかと真剣に悩んだが……
 嫁殿の手作りお菓子が食べられるなら、話は別だな。一秒でも早く味わいたい、その為の尽力は惜しまないさ」
 そっと、その腕に抱いた愛しい人を見下ろせば金の髪を揺らした愛らしい『嫁殿』は鈴鳴るようにその声音を弾ませる。
『えへへ、嬉しいのだわ! それに意外と鬼灯くん甘いもの好きなのよね!』
 力強く頷く鬼灯はそれ以上に『嫁殿の手料理』というポイントも重要なのだと小さく笑みを浮かべた。やはり愛しい人の作ったものというものは何倍にも甘く、そして上質な味わいとなるのだから。
 蜜が集う場所にはモンスターが多数存在するらしい。ルーナルーナの蜜はモンスターたちを集わせる。ならば、それ程までに『探索』に苦心する事はないだろう。
 ランドウェラは鼻に頼れないのならば目を使って見極めようと、より白く美しい花を探すべく色彩感覚を生かす。護衛役たるヨタカは『花の蜜を蒐集』するものに負荷がかからぬ様にと気を使った。
「……あっち……モンスター、沢山……いるな……!」
「ええ。ヨタカ団長、あちらに向かってみましょう。ルーナルーナが存在しているのでしょうから」
 ひらり、と蝶々の翅を揺らして、ステージを歩むように幻は進む。その細い背中には、愛おしい人に対する思いがまだ、重く伸し掛かったままなのだろうと思えばヨタカの表情は暗く沈んだ。
「我(アタシ)の小鳥は物思いかい? 魔女集会(サバト)の準備はお嫌い?」
「いいや、そういうわけではないよ」
 首を振ったヨタカへと武器商人はにんまりと笑みを浮かべた。その身に宿すは魔力と破邪の障壁。武器(かわいいこ)をその手に握りしめ、ゆっくりと確かめるように進み往く。
「キルハートの方、此方かい?」
「ええ! アイドルたるこの私ですもの、無論ハイセンスを持っておりますもの。
 このすぐれた視覚、聴覚、嗅覚で『ルーナルーナ』を見つける事など容易い事ですわ! ファンの皆様、どうぞついていらっしゃって!」
 嗅覚には力を入れて察知をしようと進むルビアが楽し気に目を細める。るんるんと歩む彼女のその振る舞いはアイドルそのものだ。ダンジョン内のモンスターに気付いたように魔力を破壊的な威力で打ち出したアウローラはにんまりと笑みを浮かべる。
「じゃあ、アウローラちゃんはモンスターの討伐中心に頑張るねー。お花の蜜は皆にお任せしても良いかなー?」
 微笑んだアウローラの背後で「そうだね。そうしよう。お花はきっと道を辿れば着くものさ」とカタラァナは楽器を弾き歌うたう。
 リズミカルなそれに合わせて攻撃放つはアウローラ。カタラァナ曰く『僕は弱いからみんなが必要』なのだそうだ。
「『魔女』ってさ。魔術師、とどう違うの?
 それだし、僕は魔術を使うけど『魔術師』とはちょっと違う感じするじゃない?
 自分がそう思っているからそうであるのか――それとも外から何か、僕らを僕らたらしめる何かが働くのか」
「さあ。私は魔女だけど、魔術師は確かに違うわ。自己認識が鍵ではないかしら?」
 人は何を以て人であるとするか。カタラァナは凪ぐ潮騒の寧を響かせて、歌うたう。まるで海淵へと伝えるようなコン=モスカの乙女の声にフランツェルは「神と何を差すかと同じのようね」と小さく笑った。
「神様、ええ、それは難しい話ですね。私達は何を以て神とするか。
 悍ましき死の呪いさえ、神の所業のようではありませんか。運命を決定付けるのも神だと申す者も居ますもの」
「嗚呼、けれど、運命とは稀有なる存在にも変化させられるのかもしれないよ?」
 幻は小さく笑う。『特異運命座標』なんて大それた立場であれば運命を捻じ曲げられるか。武器商人の歌うようなその声音に「そうであれば、嬉しいですね」と囁いた。
「こぎと えるご すむ♪ ……うーん。てつがく。
 僕には歌しかないのだけれど、歌うばかりがどうやら人生じゃないらしいから。年上のおねえさんに勉強させてもらおうと思ったんだ」
 首を傾げたカタラァナ。幼さをその身に漂わせる『海』の如き彼女は深淵の瞳をでぐるりと周囲を見回した。
 ふと、モンスターが集まっている場所がある事にルビアは気づく。振り向いた彼女に頷き返したアウローラは「あの白いお花がルーナルーナ?」と首を傾いだ。
 月の雫を落としたような美しき大輪。甘い蜜を垂らしたそれは馨香を漂わせる。
「それでは――参りましょうか」
 煽薔薇に留まる蒼い蝶。ステッキを手にした幻が恭しく礼を行えば、此処が彼女のステージと化す。
 加護が付与された可愛らしい服のフリルが揺れる。霊力を言葉と変えて、強大な魔力をその身に有する『電子の精霊』は貫くようにモンスター穿つ。
「さ、嫁殿、しっかりと捕まっておくれ」
『ええ、ええ、鬼灯くん! まるでメリーゴーランドみたいで楽しいのだわ!』
 楽し気にころころと微笑む嫁殿に微笑み浮かべて鬼灯は魔糸を鉄球へと変形させる。敵を薙ぎ払うその一撃にぐるりと踊ればダンスホールで舞うかの如く。
『ふふ、鬼灯くん! もっともっと、踊りましょう?』
「ああ、嫁殿がお望みならば――!」
 リズミカル躍るように、鬼灯のその背後でアイドルは新しい希望をその身に宿して笑みを浮かべる。
「さあ、皆様! ファイト一発ですわ!」
「おや、アイドルに励まされては『頑張らない』訳にはいかないね?」
 圧倒的声援で呼びかけるルビアに武器商人が小さく笑う。モンスター退治は信頼するファンの為、そう思えばこそアイドルは舞台で『応援』を行い続ける。
 ファンの心の支えとなる為に。そうして微笑む偶像の傍で歌うカタラァナは「見てごらん」とルビアへと囁いた。
「たくさん たくさん 敵がいるんだ。ああ、こわい――」
 怖いから、勝手に『叩き合ってもらいましょう』と。響く音色は夢見る様に。
 その音色に合わせて『ぞろり』と姿を見せたのは、武器商人の傍らに居た『存在してはならぬそのコ』。可愛らしくも微笑んで破滅を謳ったその呼び声にモンスターたちは悍ましいと肩を竦める。
「これは僕らのだからあげないよ。
 好きな物は独り占めしたいんだよえっへへ……いや、皆と一緒の方が楽しいか」
 ルーナルーナへ近寄るなかれとモンスターを弾く。してそこに飛び込むはヴィオラの音色によって生成された毒の魔石。
「君たちへの手向けの歌は…魔女達の慟哭だ……」
 ヨタカは静かに手を伸ばす。魔石の毒が周囲に広がり、モンスターのその身を地へと伏せさればルーナルーナから蜜を集めたランドウェラが小さく息を吐く。
『僕を守っておくれ』『痛いのは嫌いさ』とは言ったもので。彼が集めた蜜は甘い香りをその瓶からも漂わせる。長居は無用だろう――余計なモンスターが集まってこない保証もない。
「さ、帰ってフロランタンを作りに行こう」
 目を細めたランドウェラはその手にルーナルーナの蜜を詰めた瓶を揺らす。
 琥珀の色をしたそれが揺らぎ、甘いかおりを漂わせた。


「ちょっと頑張ってみたのだけどどうかな? 足りる?」
 瓶の中で揺れる蜜色。美しいそれを目にしたとき、グレーテルは「まあ素敵」と微笑んだ。お菓子作りのお手伝いを名乗り出たランドウェラにとって料理とはまだまだ未知の分野だ。
「味見か見る専門でよろしく頼む」
「それでは、作り方を教えて頂いてもよいでしょうか? ……それから、ルーナルーナの近くで木の実も拾ったのですが、アレンジに入れても?」
 バスケットの中に詰め込んだ木の実を指先でころりと転がした幻は食べられるものかどうかを確かめる。グレーテルに頼まれてフランツェルは「これは美味しいわ」「これは酸っぱいかも」と深緑に住まうものとして一つ一つを選別した。
「ならば、これはナッツの様な食管を与えられるかもしれませんね」
 心を込めて作りましょうと笑み浮かべた幻へ『ファンサ』の為に菓子作りを行わんとするルビアはせっせとエプロンに身を包む。
「世界一可愛いアイドルの私の『お料理姿』なんてファンも大喜びですわね!
 さ、この私にお菓子旁を教えてくださってもよろしいのですわよ! 心を込めて作りますもの!」
 可愛いの権化たるルビアが胸を張る。それは偶像崇拝(アイドル)のオーラであろうか。グレーテルはぱちりと瞬いた後「ええ」と柔らかに頷いた。
「アウローラちゃんも作っても良いかなー?」
「それなら、嫁殿も参加させていただきたい」
 可愛らしいエプロンに身を包んだアウローラが調理器具を並べる傍らで、普段のロリィタワンピースから『お料理姿』へと衣装を変更した嫁殿がちょこりと座る。
「グレーテル殿。もし宜しければなのだが、少し持って帰っても良いだろうか。是非、部下達にも食べさせてやりたくてな」
『鬼灯くんは私の作ったものを食べて欲しいのだわ!』
 勿論だと嫁殿に微笑む鬼灯。ある意味で、幸福溢れるその様子にグレーテルは可笑しそうににんまりと微笑んだ。
「ふろらんたん、僕たちも作れるの?」
「勿論、作れるわ。難しければ『魔女』がお手伝いするもの」
 魔法で、とはカタラァナは聞かなかった。グレーテルは抱えた『兄』に「そうでしょう?」と微笑みを浮かべ、カタラァナへとそっとエプロンを差し出した。
「教えてくれる?」
「皆で頑張ろうじゃないか。我(アタシ)も頑張ろう。
 おや、小鳥、待って居てもいいんだよ」
 どこか緊張したような顔をして武器商人を見上げたヨタカ。武器商人がお菓子作りをするならば、お手伝いをと名乗り出た彼は調理ではなく洗い物などの周辺を担当しようと水場へと足を運ぶ。
「そぉ、手伝ってくれるの。じゃあ洗い物してくれるいいコの小鳥には味見をさせてあげようね――はいアーン」
「……え、味見していいの……? ふふ、じゃあ1口貰うよ……。
 紫月の作ったものはどれも美味しいね……」
 途中経過をぱくりと口に含めばそのさくりとした感覚が伝わった。クッキー生地にキャラメルでコーティングしたナッツを乗せて焼き上げた菓子の味わいにヨタカの目尻が下がる。お礼に、と武器商人の頬にキスを送れば「さあ、もっと作ろうか」と武器商人がくすりと笑う。
 依頼を完了したならば、自身が憩いの場として開放する屋敷に集う者達にもフロランタンを作ってやりたいのだとランドウェラは真剣な顔で菓子作りを眺めている。
「レシピが必要ならお渡しするわ。ああ、けれど……難しければいつでも質問をしにいらっしゃってね?」
 グレーテルはサヨナキドリにて菓子を販売する魔女だ。彼女を訪ねるのは容易なのだろう。ほっとしたように頷くランドウェラは「それじゃあ、頑張ろうかあ」と柔らかに笑みを浮かべた。

 ――魔女集会まであと少し。各地で続々と魔女たちが『準備』を進めているだろう。
 グレーテルは素敵な手土産が出来たとイレギュラーズへと礼を言った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 リクエストありがとうございました!
 素敵な魔女集会になるとよいですね!

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