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シナリオ詳細

伝承の軍神に打ち勝て!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■彼は戦国最強
 その昔、名君と呼ばれた男を悩ませた宿敵がいた。
 彼ら二人は国境にて数度相まみえ、結果は引き分け。それは正しく宿敵であった。
 その一方で宿敵は義に厚く。ある年、名君の国に塩がないと聞き及んだ時に自国の塩を分け与えたのだ。
「何故このような真似をした?」
「我の宿敵はお前一人、民に非ず」

 また彼は一度戦場に出れば引き分けはすれど負け知らず。
 ある時、魔王と呼ばれる男の軍勢が、自国近くの国を攻めているとの知らせを聞き。縁も由もないその国を救いに走り、魔王の軍勢の裏をことごとくかいて、勝利を収め続けたのだ。
 さしもの魔王も彼には叶わぬと軍を引いたという。
 それ故に、名君も魔王もいなくなった後の世は彼が天下を取るものと思われていた。

 だが、彼は。軍神とまで称された彼は、ある日突然死を迎える。
 酒好きだったのだ、彼は。そして、酒の肴に塩を舐めるのが大好きだったのだ。それが故に、身体を壊しての突然死。
 子がおらぬ彼の跡は分裂し、軍神の名はそこで途絶える事となる。

■今一度戦場を!
「と、まあ……大変に勇猛で、それでいて優しい面もある軍神と、毘沙門天の生まれ変わりと言われた彼なんだけども……」
 例によって、なんだよねと言いよどむ境界案内人のカストルは目を伏せる。
 戦場で命散らすのではなく、病死だった事が軍神の心残りだったのだと。
「だから、これは只の私闘になる。けれども、放っておくわけにもいかないだろう?」
 強敵との闘いを望むのは、彼だけではない。
 そう、己の腕を確かめたいイレギュラーズもまた、軍神と成る可能性を秘める者達なのである。
 故に、イレギュラーズはまだ見ぬ強敵を求め、世界を渡る。

NMコメント

 がっつり誰だかわかってしまうオープニングですね、以下略です。
 純粋な戦闘、伝承シリーズです。
 いつも言っておりますが、今回も強敵です。お気をつけを。
 以下敵詳細

■軍神×1
 毘沙門天の化身、軍神と呼ばれた大柄な男。白装束に身を包んで馬に乗って現れます。七つの枝に分かれた不思議な剣を使います。
 能力値としては、HP、両面攻撃、防技、抵抗の高い重戦車。反面、回避、反応、機動力、EXAは低い……はずですが。

P騎乗戦闘Ex+:馬に騎乗している間、回避、反応、機動力上昇。攻撃によっては落馬しない。自らの意志で降りる事はある。
P毘沙門天の化身:【暗闇無効】【怒り無効】【精神無効】【麻痺無効】の複合スキル
P軍神:死棘薔薇相当のスキル
P酒好き:生前の逸話のせいか、血に欠陥を持つようです。【出血】系統の効果が倍加になるデメリットスキル。
A軍神の一撃:物理至近単体攻撃。高威力、高CT。
A毘沙門天の一撃:神秘超遠距離攻撃。【万能】【貫通】【物理+神秘威力】
A式神召喚:神秘超遠距離単体攻撃。【万能】【懊悩】【呪縛】【停滞】
A良き闘争よ!:戦場にいる一番強い敵を狙う、戦場全域対象単体攻撃。【必中】【防無】【物理×2+神秘威力】【攻撃対象は強制EXF成功】

 以上となります。
 相変わらずの強敵続きですが、是非に勝利を求め闘いに赴いて下さいませ。

  • 伝承の軍神に打ち勝て!完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月25日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
彼岸会 空観(p3p007169)
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ

■言葉は要らぬ
「……来たか。我が宿敵と成り得る者達よ……」
 馬上にて盃を傾けていた白装束の大男が、その手の盃を投げ捨てイレギュラーズ達四人を見下ろす。
 大きく見えるのは馬に乗った大男ゆえか。否、その身に宿す気迫が、闘気が、闘いへの渇望が、そのものを更に大きく見せている。
「ベネディクト=レベンディス=マナガルム、いざ尋常に」
 手にした槍の穂先を大男に向け、言葉少なく名乗りを上げるは『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
 今回のメンバーの中では間違いなく一番の体格を誇る彼だが、それでも軍神から見れば小さい。されど、その身に宿す闘気は決して引けは取らず。
 逝くのなら床の上でなく戦場で。かつて彼の仲間が遺した言葉だ。そして、軍神自身も願う事。故に、彼は『本気で』その想いに応えるのみ。
「さあ、始めましょう。相手にとって不足なしです」
「来なさい、その渇きが消えるまで戦って、一片の悔いも残さずに成仏させてあげるから!」
 『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)と『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861) が繋いでいた手を、指を離す。次に繋がるのは戦いが終わった後。されど心はいつでも一つ。
 砕かれぬ盾に寄り添うは赤き華。ただでさえ険しい表情を一際険しくした軍神が、一つ笑む。
 良き。
「戦う前に一つ、お願いがあるのですが」
 彼岸会 無量(p3p007169)が一人、酒瓶と盃を手に軍神の前に歩み出る。
「何だ?」
「一献、酌み交わして頂けませんか? ただの景気づけですよ」
「良かろう」
 互いの酒瓶を傾け、互いの盃に注ぐ。そしてそれを一息に飲み干し、離れる。
 嗚呼、昂ぶる。夢幻、決して現ではないこの不思議な世界で、軍神とまで呼ばれた男とこれから見える。そう考えるだけで、無量の身体は喜びに打ち震える。
 それは軍神も同じ。目を見れば、四人が並々ならぬ実力者だと感じ取れる。床で死した時に遺した未練が象った、虚構の存在であるこの身に過ぎたる幸福よ。
 決して口には出さず、その思いは七支刀を構えた手に乗せ。闘いにて示すのみ!

■武で語れ!
 馬が吼える。軍神を乗せて戦場を疾走る。
 並の人間ではその動きに追いつく事叶わず、軍神の刃は酒を酌み交わした女に振るわれる。
「くっ……くく……流石、お強い!」
 あまりにも重く鋭い一撃に、無量の肩は裂け血が噴出す。されど痛みに顔を歪めるのは一瞬、すぐにその顔は歓喜の表情を浮かべる。
 かのように強き者と闘えるのならば、剣士冥利に尽きるもの!
 そして、強き刃には最高の一撃で返礼するのが礼儀!
 両の手で握りし太刀が揺らめく。一度目は緩やかな、まとわり付くような剣。これは馬が跳ねる事で躱される。されど無量は手を止めない。手首を捻り、刃の行方を変えし狙うは軍神の喉! 躱す暇なき連撃に軍神は冷静に、刀の刃で応じ。
 されどされどここまでは『見せ』の太刀。無量の狙いは三の太刀。受け止められた刃を引くと見せかけ、軍神の腕を切り裂く一撃!
「ぐ……虚を突くか……!」
「おっと、俺を忘れて貰っては困る」
 無量の刃が引くと同時に迫るはベネディクトの穂先。彼が自らを鍛え上げ編み出したのは、狼の如き疾き一撃。それは軍神に攻撃を悟らせる暇など与えず、正確無比に無量のつけた傷を穿つ!
 蛍は彼らの交わす刃を目で追いながら、冷静に。努めて冷静に、己の身に砕けぬ盾の力を齎す。ほんの少し、ほんのちょっとだけ。彼らのように刃を交えてわかりあえるのが羨ましいけども。
 それは、ボクの役目じゃない!
 戦場を分析していた珠緒も動きだす。まずは、大きな傷を負いながらも無理に身体を動かした無量の手当。彼女の扱う賦活の魔術は、みるみるうちに無量の傷を塞いでいく。
 無量が頷きだけで礼をしたのを見た珠緒はもう大丈夫だと判断し、次に行うは軍神への介入。小さな血液を飛ばし、それを介して力を奪い取る不可思議な魔術。
 それに侵されたのも、軍神は気づかない。もしかすると、気づいていて放置したのかもしれないが、表情に変化はない。いや……何かを口元で呟いている。あれは、何だ?
 珠緒の頭脳が必死に知識を漁りだす。どこかで聞いたような、聞いたことのないような、まるで呪文の一文。
 そこまで考えたところで、珠緒は本能的に叫んだ。軍神の手に力が集まるのが視えた。
「皆さん、散ってぇぇ!!」
 その言葉に、無量もベネディクトも反射的に左右へ散る。その間を、軍神が放った強大な法力が全てを抉りとるかのような勢いで疾走る。
 否、否!
 一人だけ、それを受け止める事のできる者がここにはいる。蛍がただ一人。目に見えぬ盾を前に、そして砕けぬ想いを胸に。軍神の放った法力の流れに逆らうかのように真正面から立ち向かう。流れを、遡る!
「何……!?」
 さしもの軍神も、これには驚いた。かつてこの一撃をまともに受け止められたのは数人、それこそ『宿敵』と彼が認めた者達だけなのだ。
 つまりこれは、彼女が。そして彼女と並び立つこの者達が『宿敵』足り得る証拠である。
 無量の刃に、ベネディクトの槍に、珠緒の血にその身を汚されながら軍神はなお笑う。
「良き……良き!」

■良き闘争を!
 軍神が自ら馬から降りる。
 我と対等に渡り合える者を見下ろすは不義也。
 『宿敵達』よもっと語り合おうぞ!

 前線に出てきた蛍が鉄壁を誇るのを理解した軍神は、彼女を足止めすべく式神をけしかける。
 しかし蛍は止まらない。彼女の『鉄壁』は正しく皆を護る為の想いと誓い。式神すらも跳ね除け、なおも仲間を護らんと立ち塞がる。
 軍神から見れば小さな蛍の身体が大きく見える。否、彼女だけではない。
 変幻自在の刃を扱い、幾度となく打ち込んでくる無量。
 対照的に愚直で、実直で、とにかく真っ直ぐな一撃を放つベネディクト。
 彼ら彼女らを支え、時折音を置き去りにした光の魔を扱う珠緒。
 四人が全て、軍神の目には自らと同じく大きく見えた。それがとても喜ばしい。
 その中でも一際、軍神の目を惹いたのは……。
「良き闘争をしようぞ、そこな女子よ!」
 蛍の割り込みを、ベネディクトの身体を、珠緒の祈りを全て跳ね除け。彼が惹かれたのは無量!
「共に仏の道を進んだ身。貴方の道と私の道では天と地ほども差が御座いましょう」
 地獄のような世を嘆き、人を斬る事こそが救いだと信じたかつての無量。気づけば鬼と成り果て、されど今はまた人であり。償えぬ業を背負いて今ここにいる。
 それは人のまま人を救おうとした軍神とは正反対で。けれども、その根底は同じで。だからこそ、二人は惹かれ合う!
「其れ故に、我を通さねばならない。いざ、いざ参る!」
 軍神の拳が無量の腹に叩きつけられる。呻く彼女だが、倒れない。否、倒れる事は許されぬ。
 返礼とばかりに、僅かながらに『視えた』線を、刃の切っ先でなぞる!
 彼女が切ったのは、軍神の首筋。如何に強靭な肉体と言えど、血の筋を切られて無事でいられる者はいない。それでも、軍神は笑う。
 更に追い打ちをかけんと、流れる血を止める事もせず。ニの拳を叩きつけようと振り上げ。
「そこまでだよ!」
 一度は跳ね飛ばされた蛍が再び立ち塞がる。軍神の拳を受け、息も絶え絶えに立っている無量を護る為に!
「無粋な……!」
「悪いな、俺達は一人じゃないんだ!」
 怒る軍神の腹を、ベネディクトの槍が深く貫く。ぽた、と血が赤く染まる。
「大丈夫ですか無量さん!」
「ええ……なんとか……」
 珠緒の治癒術を二重三重に受け、青ざめた無量の顔に生気が戻る。
 これは、勝てぬな。そう悟った軍神が、血を流す腹を押さえ、静かに地面に座り込む。
「……感謝するぞ、宿敵達よ……」

■最期の盃
「……なんだか、不思議な感覚」
「ええ、そうですね……」
 寄り添うように座る蛍と珠緒が、茶の入った盃を手にそう呟く。
 二人がこうしている理由。それは軍神の願いによるもの。自分を打ち負かした宿敵達と、一献酌み交わしてから逝きたい、と。初めて人らしい願いを口にしたのだ。
 未成年だからと断った二人に、茶もあるぞ、とどこからか出してきた軍神。血を流しているのに、意外に元気だな、と思ったのは秘密にしておく。
「軍神と呼ばれた者よ。俺達はあなたの目に適かったか?」
 軍神と酒を酌み交わし、ベネディクトはそう問う。彼の質問に軍神は、小さく笑った。
「愚問だ、宿敵」
「感謝する」
 言葉少なく、再び酒を呷る。これだけで良いと実感できた。
「……お前も、そこな女子も……砕けぬ盾も、赤き華も……皆、良き宿敵であった」
 天を仰ぎ、感慨深く語る軍神。その言葉に覇気はなく最期が近い事を皆に悟らせる。
「……介錯は私が……」
「不要ぞ。……介錯というなら……最期まで、酒を共に」
 剣を手に立ち上がる無量を、軍神が留める。それが望みならば、と再び無量は盃を手に。
「今日はお気に召す戦を馳走できた、でしょうか」
「愚問」
 珠緒の問いに、二文字で返す。その言葉の意味は、語る事こそが無粋である。語らぬ事こそが答えだと。
 口数少ない軍神の想いを受け止めた珠緒は一つ頷き、茶の入った盃を傾ける。とても苦い、苦い味がした。
 やがて、軍神は動きを止める。その手に盃を持ったまま。
「本望を遂げることができたら、こんなに清々しく逝けるものなのね……少し羨ましいかも」
 その姿を目に焼き付け、蛍は想う。自分にもいつか来る最期は、どうなるのであろうかと。

成否

成功

状態異常

なし

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