PandoraPartyProject

シナリオ詳細

人は麦を食べて生きるものではあるが

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●住民は太陽の下で呻く
 黄金の穂が風に揺られてさらさらとはためく。
 その黄金の海面は、どこまでも、どこまでも続いていて。
「どうしよう……」
 エンサイン王国ハーストン領ブレーブトリー村の村民は、近年まれに見る小麦の大豊作に、文字通り頭を抱えていた。
 豊作なのはいい、大地の神々のご加護があってのこと。
 だが、こんなにたくさんの小麦が実って、その麦をどう消費すればいいのか、という話だ。
「多いに越したことはないにせよ、これだけの小麦をどうすれば……」
「小麦だけじゃない、大麦だってかなりの収穫量だ」
「周辺の村々に提供するにせよ、これでは……」
 農作にあたる村民が揃って額を突き合わせる中、ブレーブトリー村の村長がぱんと手を打った。
「……よし、決めた!」
「村長?」
 突然手を打った村長に村民が何事かと目を向ければ、老爺はぐっとその拳を握りしめ。
「冒険者の力を借りるのだ! 祭りの支度をせい、今すぐに!」
 村長の言葉を受けて、村民はすぐさま動き出した。
 神のご加護で豊作となったのなら、感謝を申し伝えねばなるまい。
 至極自然な流れであった。

●冒険者は図書館の中で目を剥く
「やあやあお歴々、今日もお日頃はいかがかな?」
 『ツンドラの大酒飲み』グリゴリー・ジェニーソヴィチ・カシモフはにこやかに笑いながら、そう特異運命座標たちに告げた。
 彼がここに出張ってきたということは、何らかの用件があってというのに違いはない。しかし今回は、どうやらいつもの話とは違うようで。
「神の力で地の実りが潤沢にある、大いに結構だ。だが、住民が消費しきれない量が実ったとなれば、話は違う。ということで、お歴々には消費の手伝いをお願いしたいのだ」
 その芝居がかった言葉に特異運命座標が首を傾げると、頷きながらグリゴリーが説明を始める。なんでも、土地の実りが多く実りすぎて、消費が追い付かなくなっている世界があるのだそうだ。
 普段から彼が案内する、寒冷地帯が広がる世界ではない。もっと温かく、穏やかな気候が続く、安穏とした世界だ。
「世界『クロウエル』はいずれの国も、穏やかな気候と肥沃な大地が広がっている。今回の舞台であるブレーブトリー村においても同様だ。ただ、今年は大地神の加護が強く作用した結果、溢れんばかりの小麦と大麦が実っている」
 そう話しながらグリゴリーはため息をつく。
 曰く、『クロウエル』はその世界に神の加護が満ち、その加護が強く出る土地が、年内に数か所出るのだという。そういう土地は作物の実りが非常に、非常によくなり、零年では考えられないほどの実りが得られるのだそうだ。
 今回は、そういう劇的な実りを得られた土地が舞台となる。
 村民総出で小麦と大麦を収穫し、乾燥させ、石臼で挽いて粉にしてはいるが、当然のごとく人手が足りない。何分、小さな村であるからして。
「小麦粉と大麦粉については、村民総出で石臼で挽いている。だがまぁ、その仕事を手伝うのもありだと思うよ。なにせ重労働だからね」
 そう話すグリゴリーは小さく肩を竦めた。住民の行っている労働に協力を申し出れば、住民の心象もだいぶ良くなるだろう。
 粉を挽いて支度を整えれば、あとは粉を消費する祭りの場面だ。
「村では、豊作に感謝する祭りが行われていてね、小麦と大麦を使った料理が諸々出てくるが、なにぶん量が多いから消費が追い付かない。お歴々においては、そう、出店を出すなりどんどん食べるなりして、消費の手伝いをしてほしいのさ」
 そう言いつつグリゴリーは笑う。曰く、ブレーブトリー村は辺境の小さな村である故に、外の地方からの客も期待は出来ないのだそうだ。大いに客を呼べればそれに越したことはないが、なかなかそうもいかないのが現状とのこと。
 それ故、グリゴリーもこうして出張ってきたというわけだ。
「とまぁ、そんな具合だ。気負わず、恐れず、己の思いつくままに小麦と大麦の実りを享受するといい。ものは一杯にあるからね」
 そう告げて、獅子の獣人はにこりと笑う。彼の開いたポータルの向こうから、爽やかな夏の空気が漂ってきた。

NMコメント

 特異運命座標の皆様、こんにちは。
 屋守保英です。
 小麦や大麦は異世界の食料を支える大事な物品ですが、多く作りすぎても困るもの。
 いい感じに消費してくださいな。

●目的
 ・小麦粉と大麦粉の消費に協力する。

●場面
 グリゴリーが頻繁に出入りしている異世界、ある程度文明の発展している世界です。
 製粉技術は地球レベルで発達しており、薄力粉も強力粉も自在です。
 目安として、小麦粉と大麦粉を合わせて5キログラムは消費してもらえると、その世界の人たちが喜びます。

 それでは、皆さんの楽しいプレイングをお待ちしております。

  • 人は麦を食べて生きるものではあるが完了
  • NM名屋守保英
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月30日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

嶺渡・蘇芳(p3p000520)
戦場の調理師
ミミ・エンクィスト(p3p000656)
もふもふバイト長
リック・ウィッド(p3p007033)
ウォーシャーク
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ

●豊作すぎるのも問題なのです
 その日のブレーブトリー村は、日が昇り始めた時から大忙しだった。
 収穫した小麦の穂に大麦の穂、脱穀も済んだそれを大きな石臼に入れては、力を合わせて挽いていく。
 その、住民総出での力仕事の中に、『もふもふバイト長』ミミ・エンクィスト(p3p000656)と『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の姿はあった。
「うふふふ、この穀物地帯、実に素晴らしいわ。こんな場所が、こんな世界にもっと増えれば素敵なのに……」
「そうですねー、こんなにたくさんの実りがあるのはいいことです!」
 石臼のレバーを握って全力で押していくイナリが、麦の穂が一面に広がる畑の風景を思い返しながら言えば、ミミも麦の実を石臼の受け皿に流し込んでいく。
「すまないねぇ、わざわざ来てもらった上に、製粉作業まで手伝ってもらっちまって」
「大丈夫よ、人手不足だと聞いたし、手伝いは必要でしょ」
 ブレーブトリー村の村人が一緒になってミルを動かすイナリに声をかければ、イナリもにこやかに笑って返す。
 そんなイナリの元へ別の村人が麻袋を抱えてやってきた。
「おーい姉さん、この位でいいですかい」
「ええ、ありがとう。あっちに置いてちょうだい」
 頷くイナリが小屋の隅を指さすと、村人がそちらに袋を運んでいく。ミミが首を傾げながら、再び粉挽きを始めたイナリに声をかけた。
「イナリさん、あの袋なんですか?」
 彼女の言葉に、イナリが石臼の受け皿に目を向けつつ口を開く。受け皿の中の大麦は、もう大半が粉になっていた。
「脱穀して製粉する前の大麦をいくらか分けてもらったの。それもそのまま料理に使うわ」
「素晴らしいです!」
 その言葉に、ミミは石臼の中の大麦粉を袋に詰めるべく、嬉々として箒を持ち出した。
 ミミとイナリが加わったことで、製粉作業は格段に順調に進んでいる。その挽いた小麦粉と大麦粉を紙の袋に詰め、封をするのは『金波銀波』リック・ウィッド(p3p007033)の仕事だ。
 今回だけで粉を使い切るわけではない。村の備蓄としていくらか貯蔵することになっている。貯蔵分は隙間が無いように封をする必要があった。
「よいしょ、っと……はい、詰めたんだぜ!」
「はい、ありがとー」
 リックが封をした袋を『羽休め』嶺渡・蘇芳(p3p000520)に渡せば、蘇芳がそれを村の倉庫へと運んでいく。
 大きな袋を肩に担ぐ蘇芳に、村人の一人が心配そうな声をかけた。
「大丈夫かい? 挽く作業よりは重労働でないにせよ、袋は重たいだろうに……」
「これくらいなら大丈夫よー、他にも出来そうな事があれば言ってねー」
 村人ににっこり笑みを返すと、蘇芳はそのまま小屋の外へ。倉庫までどんどん小麦粉と大麦粉の詰まった袋を運んでいく彼女を見つつ、リックの笑顔が弾ける。
「そうそう。おれっちみたいに明らかに無理、ってわけじゃないしな!」
「ああ、まぁ……お前さんは小さいしなぁ」
 リックが笑うと、彼を見下ろして村人が苦笑する。
 存在が安定しない小柄な精霊種、リック・ウィッド。フィジカルの能力値は、実に4である。

●美味しいものは正義です
 製粉作業も終わり、備蓄する分の粉も収め、大地の神に感謝を捧げる催しも終わり。
 いよいよ祭りの本番、料理を提供する屋台が居並ぶ。
 挽いた小麦粉で焼いたパンをパン屋が売り、採れた小麦や大麦で作ったエールやラガーを酒屋が売り。
 そんな中で、蘇芳も自分の屋台を出していた。
「ピザはいかがー、焼き立ての美味しいピザですよー」
 蘇芳が作ったのは、小麦粉と大麦粉を混ぜて捏ね、休ませた生地で作ったピザだ。
 トマトソースは干し肉由来の旨味と、ニンニク由来の香りがたっぷり。ベシャメルソースはまったりとして口当たりが滑らかだ。
 それに様々な野菜やハム、チーズを乗せて焼けば、耳はもちっ、中はさくっのピザが出来上がって。
 普段は小麦粉を捏ねて焼いただけの丸パンが中心なブレーブトリー村の村民には、目新しいピザは大いに受けた。作り方もパン生地を伸ばし、具材を乗せて焼くだけと簡単だ。
 ピザが飛ぶように売れていく中、蘇芳は別の作業に取り掛かっていた。
 手元で柔らかい生地を伸ばし、そこに果物を甘く煮たプレザーブを乗せて包む。
 それを焼けば菓子パンのようにもなるが、そうはしない。薄く小麦粉をまぶすだけだ。
「蘇芳、生麩、追加で持って来たぜ」
「ありがとー、助かるわー」
 そこに、リックが出来上がったばかりの生麩を持ってやってきた。それを蘇芳に手渡せば、彼は蘇芳が先程作ったばかりの饅頭を見やる。
「それ、麩饅頭か? 焼く前の麩なんてどうするのかと思ったら、そんな使い方もあるんだなー。味見していいか?」
「ええ、どうぞー」
 蘇芳の許可を得てプレザーブを包んだ麩饅頭を取り、一齧り。
 すると。中から芳醇で濃厚な果物の甘さが溢れ出す。生麩のもちもちとした食感も、実に気持ちがいい。
「美味いっ! 果物の甘さがちょうどいいんだぜ!」
 リックが喜んで麩饅頭にがっつく様を、蘇芳は微笑ましげに見ていた。
 視界の先では、リックが先程まで麩作りを指導していた村人たちが歓喜の声を上げている。手には椀。焼き麩をスープの浮き身にすることを覚えたらしい。
「焼き麩の方はどうかしらー?」
「いい感じだぜ、受けもよかった! サポートについてもらった村人は、俺が口出ししないでも作れるようになった!」
 蘇芳の言葉にリックも笑う。
 実際、水で練った小麦粉を水で洗ってグルテンだけを残し、それを小麦粉で伸ばして切って焼くというリックの焼き麩は、小麦粉の大量消費に一役買っていた。
「いいわねー。これで小麦がまた豊作になっても、たくさん消費できるようになるわー」
「へへっ、そうだな!」
 嬉しそうな声で話す蘇芳に、リックも誇らしげに笑みを見せた。

●甘いものも正義です
 他方、数々の屋台が出店する中で、特に人目を引いていた屋台があった。
「はーい、ミミさんのお菓子教室、第二回が受付終了なのですー! 第三回は一時間半後に始めますので、もう少々お待ちくださーい!」
 ミミ主催の、お菓子作りを教える屋台、名付けて「ミミさんのお菓子教室」である。
 第一回のケーキを作る会は村のご婦人方ですぐに満席になり、第二回の今回もこうして早々に席が埋まった。奇数回は小麦粉中心で作るお菓子、偶数回は大麦粉中心で作るお菓子、と内容を分けているので、余計にである。
「今回はー、大麦粉を中心に使って、クッキーを作ります! 大麦粉は栄養たっぷりですから、保存の利くクッキーにすれば、困った時にすぐ食べられます!」
 本職はパン屋だが、店に焼き菓子も並べているミミの話を、大人も子供もしっかり両手を揃えて聞いている。今回は題材が焼き菓子ということもあり、子供連れで参加するご婦人も多かった。
 先生の話が終われば、早速大麦粉と小麦粉に砂糖と重曹を加えて篩ったものに、菜種油を加えて練っていく。まとまった生地は台に移して、麺棒で伸ばせば、あとは型で抜くだけだ。
「先生、こうですか!?」
「そうそう、もう少し均等に力を入れれば、焼きムラがなくなるのです」
 質問をしてくるご婦人に、にこやかに応対していくミミ。そうしてテーブルの間を縫うように回り、型抜きが済んだらそのクッキーを焼き窯の中へ。
 クッキーが焼けるのを待つ間に、別の村人が手を上げる。
「先生、前の会で作っていたケーキの焼き方も知りたいです!」
 あのご婦人は、第一回に参加が出来なかった人だ。申し訳ないとも思いながら、ミミはゆるゆると頭を振る。
「残念ですが、第二回はクッキーが題材なのです。次の回ではまたケーキの作り方を教えるので、是非次も参加してくださいねー!」
 ミミの返答に、しょんぼりしつつ手を降ろすご婦人。しかし第一階に参加した生徒は第三回に参加する必要はない。競争率は下がるはずだ。
 と、そこにイナリがやって来た。先程まで押し麦を使ったグラノーラと、小麦粉を使ったシリアルバーを大量生産し、備蓄食料として提供してきたのだ。
「あら、大盛況ね」
「あ、イナリさん。お疲れ様です、シリアルバーとグラノーラはどうですか?」
 ミミの問いかけに、にっこり笑ってイナリが指を立てる。
「おかげさまで。特に村の司祭さんたちに喜ばれたわ。どうしても栄養が偏りがちだからって」
 イナリの作ったグラノーラとシリアルバーのレシピは、レシピ本として何冊か記したものを作り、村の教会に預けてきた。万一何かがあった時に、信頼できる人物がレシピを持っているというのは重要だ。
 教会の司祭たちも、果物を大麦や小麦と一緒に取れるグラノーラやシリアルバーは、非常に有り難かったそうで。イナリのレシピは永久保存されるそうだ。
 にっこり笑いながら、イナリがミミへと笑みを向ける。
「休憩する暇もないでしょう、アシスタントしましょうか?」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
 その申し出に破顔するミミだ。実際、この二回の教室の間、休まることがほぼ無かったのである。手伝いは非常に有り難い。
 と、そこで窯から白い煙が上がる。
「あ、焼けましたね!」
「出していきましょう、手伝うわ」
 ミミとイナリが協力して、窯からクッキーを取り出していく。焼き上がったクッキーは湯気を立てながらもサクサクとして、実に歯切れがよさそうだ。
「また、世間話とかしながらワイワイ作って、皆さん集まってワイワイ食べて、美味しいですねーってしたいですネ!」
「そうね、大地の実りとはそういうものだわ」
 クッキーを皿に開けながらミミが言えば、イナリも笑みを浮かべてそう返し。
 ご婦人方の手がクッキーに伸びる中、二人は晴れ晴れとした表情で青空を見上げる。
「いやー、怪物達と戦わなくっていいお仕事、最高ですねえ」
 そして、じーんと感激するミミさんなのでした。

成否

成功

状態異常

なし

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