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シナリオ詳細

<鎖海に刻むヒストリア・前>海洋王国満喫譚

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 これは大罪と呼ばれし、大いなる存在『アルバニア』との決戦を明日に控えた八人の男達による日常の一幕なのである――

 海洋王国首島リッツパーク。様々な文化の混ざり合う美しきその場所で、誰が言ったか『男子会』が計画されていた。
 堂々と中央に鎮座するはベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)である。
「それで、ベネディクト=レベンディス=マナガルム卿。今日は何を?」
「俺は故郷(くに)でも男子会という者に所縁はないのだが……」
 カイト・C・ロストレイン (p3p007200)はベネディクト=レベンディス=マナガルム卿の言葉に「成程」と小さく唸った。
 ロストレイン家を空けて暫くの間は傭兵業を中心とするラサに身を寄せていたカイトにとって海洋王国が観光事業を得意としている事は知っている。知ってはいるが――
「普通に余暇を楽しめばいいのか……?」
「ああ、そうだな。一応は海洋のガイドブックを用意したんだが……」
 フレイ・イング・ラーセン (p3p007598)の言葉にテーブルの上に置かれていた『海洋王国満喫ガイドブック Vol.123』を手にジェラルド・ジェンキンス・ネフェルタ (p3p007230)は小さく唸る。
 その中には可愛らしい文字で『女子会♪ 昼はBBQを。温泉も楽しんで美肌で海を満喫しちゃえ』と踊っている。
 女子会がそうならば男子会だってきっと――と思った所で、部屋の窓を開けて外を眺めていたジルーシャが「見て」と手招いた。
「ほら、あそこ――同じ旅館に泊まっている子よ。
 昼食は浜辺でBBQができるのね。海洋は海産物が豊富だし、美味しいものも多いもの。
 折角、旅館で『お泊り』するんだから楽しんじゃいましょう?」
 微笑むジルーシャ・グレイ (p3p002246)にベネディクト=レベンディス=マナガルム卿は「成程、食は大事だ」と大きく頷く。
「それから明日は『冠位との決戦』なら、夜は早々に寝て英気を養った方が――?」
 秋月 誠吾 (p3p007127)は『テストを目前にした学生の様に』夜の過ごし方を考えた。いや、それも勿体ない。日向 葵 (p3p000366)はにい、と笑って「修学旅行と言えば枕投げっすよ」と頷いた。
「ああ、枕投げか。いいな、決戦前ならば景気づけにもなるだろう」
「そうっすよね。折角なら枕を投げて、練習試合だ」
 誠吾と葵のその様子に伏見 行人 (p3p000858)はくく、と小さく笑った。
「いやいや、折角の夜の過ごし方は――これだろ?」
 くい、と手で仕草を見せれば悪くはないという反応がいくつか返ってくる。
 海洋王国の地酒を楽しむのもオツなものだ。土産物も忘れずに買っておきたい。
 折角ならお守りになるものでもいい……などと口々に本日の過ごし方が飛び出してくる。
 そう、これは誰が言ったか男子会だ。豪華な旅館に、豪華な食事、温泉付き。離れの部屋。楽しまずは損ではないか。

 今日は男子会だ。明日、冠位魔種との戦いが待ち受けていても!
 今日は男子会だ。酒、飲まずには、いられないのである!

GMコメント

 リクエストありがとうございます。
 完全に男子会という名の修学旅行気分でGOです。ワクワクするね。

●過ごし方
 お昼は浜辺でBBQ、夜は枕投げ大会以外はノープランニングです。

 お昼:
 まだまだ海に入るのは寒いかもしれない初夏。潮風が心地よいですね。
 海産物をメインにしたBBQです。勿論お肉もあります。必要なら追加でいろいろ注文OK。
 BBQセットは旅館の係の者が準備をしますが、火をつけるなどからは『旅館の人がっても良いですし、皆さんがやってもOKです』。火がつかないと焼けませんね。がんばろう。
 こちらでもお酒を飲むことは大丈夫です。

 夜:
 (晩御飯はなんだかいい感じの懐石を食べた事にします。美味しかったね。)
 枕投げ大会です。誰が予約したんだ! 全員大部屋で一緒に寝てもらいます。
 やっぱり明日は決戦ですから景気づけにぱーっとね。枕投げです。
 チーム分けは自由に決めて頂いてOKです。寧ろチームなんてなくてもいいかもしれません。
 相手の顔面にシュートです。
 お布団は人数分です。修学旅行かなという雰囲気です。
 また、離れにお部屋を用意したので、騒がしくしてもOKです。
 売店で種類、おみやげ、おつまみ何でもお買い上げOK。
 旅館の人が気を利かせて晩酌セットも準備してくれます。ご入用ならお申し付けください。

 ただし、明日はアルバニア決戦だ。気を付けて!
 あまりに酔い潰れたらパンドラが削れるよ。ほどほどにね。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 男子会は皆さんの考えで自由自在だぜ。グッドラック。

 それでは楽しんで!

  • <鎖海に刻むヒストリア・前>海洋王国満喫譚完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月23日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
カイト・C・ロストレイン(p3p007200)
天空の騎士
ジェラルド・ジェンキンス・ネフェルタ(p3p007230)
戦場の医師
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ


 これは、絶望を冠したあの大海で行われる大いなる戦い――の、前日譚である。
 前々日から『0次会』だと旅行計画段階から飲んでいた事は忘れてはいけない。
 しかし、集まった八人の勇士たちは、皆、明日の為に準備を――多分――していた。

「いよいよ明日は冠位魔種との決戦なのね。
 この国の未来が……アタシの友人や、皆の大切な人たちの運命が、これで決まる」
『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は緊張したようにそう言った。よくよく見れば彼は日差しを遮る為のサングラス(「勿論おニューよ?」)を手にしている。
 切なげに目を細めたジルーシャは重く溜息をついてから仲間たちを見回した。
「アタシは戦いの場にはいけないけれど……。
 きっと誰一人欠けることなく、皆無事に帰ってくるって信じてるわ」
 待つことも、戦いだ。どれ程に、辛く長い時間であるか――その言葉に頷いた『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はしまったと言わんばかりの困惑をその顔にべったりと張り付けていた。
「あーそういえば明日は海洋で決戦だったな。
 こんな機会、中々無いから若干浮かれてて忘れてたっスわ」
「いやまさかアルバニアとの決戦前日にこんなことをしようとは……言い出しっぺ誰だっけ?」
 慌てたような葵へと『天戒の楔』フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)はくく、と喉を鳴らして笑う。
 そう、明日は冠位との戦いなのだ! 決して忘れてはいられぬ大一番。その様子をまじまじと見つめていた『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)は彼らの様子を見て聞いていた大戦とは随分と違うようだと首を傾げる。
「確か明日は大きな戦いがあるって聞いてたんだが、聞き間違ってたんだろうか?」
 確か、大いなる存在が『マジでヤバくてパない感じの権能を発揮している(※月原節)』らしい――のだが……。
「明日の事は明日考えれば良い。俺はそれで良い、それが良い。なので全力で楽しむよ。今日はね」
 ぽん、と誠吾の肩を叩いた『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)。『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はその言葉に大きく頷いた。
「まさか決戦の前にこういう機会に恵まれるとは……。
 あまり海洋の街を観光した事も無かったし、いい機会だな」
「ああ。海洋。その名の通り海の街か。
 俺は森生まれ砂漠育ちだからな、海ってのは憧れみたいなもんがある。波の音も心地よくていいな」
 宿の窓を開け放ち、広大な青の広がる美しいビーチを見下ろした『戦場の医師』ジェラルド・ジェンキンス・ネフェルタ(p3p007230)は「潮風が気持ちがいい」と満足げな笑みを浮かべる。
「既に出発の準備は整えてある、ならば後は身体と精神をベストな状態で保つだけだ。楽しませて貰うとしようか」
「たまにはこういう息抜きも大事だね。
 文字通り、僕だと羽を伸ばすって言葉がそのまんまの意味になるな。
 気が抜けない日々が多かったから、こういうのは久しぶりだなあ」
 ベネディクトに息抜きしてこそベストコンディションとなると微笑んだ『六枚羽の騎士』カイト・C・ロストレイン(p3p007200)。さて、旅装束をしっかりと準備しているベネディクトとは対照的にカイトは手ぶらである。
「荷物は? 日焼け止めはあるのかしら?」と心配そうに『UVカット。夏の男も美白美肌でクールにキマる』と書かれた日焼け止めを差し出すジルーシャにカイトは余裕を浮かべた笑みで微笑んだ。
「荷物? それなら家に置いてきた剣に括り付けておいたよ!
 ……なんでかって? そりゃ、現地へ行ったときに剣をギフトで呼び出せば運んできてくれるから、さ!」
 カイトの武器もまさかそんな使われ方するとは思っていなかっただろう。誠吾はその様子を見てぱちりと瞬いた。
(……余裕があるのか、それとも恐怖心を隠して敢えて明るく振舞っているのか……。
 勇士揃いと言えばそうなんだろうが――果たして、どちらなんだろうな)
 明日の事を思って憂いていれば折角の『男子会』が勿体ない。気分を切り替える様にうーんと背伸びした誠吾は海へ向かう準備を整える葵に手伝うと手を差し出した。
「果たしてオレ達はこんな事してていいんだろうかとはオレも思ったっスけど、
 この際そんなのどうでもいいっスね! 今日は一日中思いっきり楽しむ、それに尽きるっス!」
「ああ、まぁ細かいことはさておいて。せっかくの機会だし楽しませて貰おうか」
 そう、折角の男子会なのだから!


「良い場所だなあ。掛け値無しに……」
 ざぁ、と漣が心地よい。日差しは季節にしては激しいが、吹く風は茹だる様な暑さを緩和していた。宿泊地として選んだのは海洋王国でも評判の良い宿だ。
 それもあってか、ビーチに出た時には昼食用BBQの道具はしっかりと整えられていた。
「全部用意してもらえるとなれば、あとは焼いて、食べて、呑む。うん、男だけだと適当に済ませて良い部分は適当で良いのが本当に気が楽だな……」
 行人の隣では精霊も楽し気だ。まだまだお天道様はニコニコと見守っている。前後不覚になるまでとは行かないが思いっきりと出来るのが『男子会』の醍醐味だ。
「いやはや、明日決戦とは思えないね。……見てよ、この海。まるで嵐の前の静かさだ。
 いやいや今日はそういうのは忘れて目の前のことを大事にしよう」
 海を見つめて、その手には剣が如くスコップを握りしめる。お砂場用と受付で貸し出された小さなバケツを手にした天義騎士はその背の翼の変化を解いた。
「はー窮屈だったな、鎧も剣も。ないとここまで軽いもんか……。
 それに、僕こういうのやってみたかったんだ! 此処に大聖堂を立てよう!」
「大聖堂!?」
 近寄るフレイにカイトは浜辺の砂で山を作り上げていく。積み上げられるその峰々を作る表情は少年そのものだ。
「肉食わないのか?」
「あっ、肉。BBQのセッティングをするんだったね。
 一応趣味が釣りで山奥とか一人でキャンプする程度の力はあるから任せてくれたまえ」
 胸を張ったカイト。火を起こす所からこちらでやりますと精霊たちの力を借りるジルーシャと行人は積み上げられた材料を見つめてにやりと笑う。
 BBQ奉行ことジェラルドはやる気十分に食材のチェックを始めている。
 折角ならばチャレンジを、とベネディクトは旅館の従業員に教えを請うた。火をつけるところからそうだが炭や着火剤などの準備も従業員は楽し気に教えてくれる。
「炭で火を起こして……火さえつけとけば、あとは網に乗せとけば勝手に焼けるだろ。海産物も野菜も適当に並べとけばいいさ」
 誠吾がうん、と唸りながらそう呟けば旅館の従業員は楽し気に「その通りです!」と返事を一つ。
「なるほど、こうやるのか……あ、それなりに酒飲みが居る様子なので、お酒はかなり頼む事になると思うので……」
「ええ、その際は是非ご連絡を。こちらに通信機器を置いておきますので――」
 練達特性だというそれは糸電話を思わせた。その糸が旅館へと続いていっているのを見ると、どうやら受付へと直接声を飛ばす風の魔法のようだ。
 ベネディクトが頷けば、ジルーシャが「サラちゃーん」とその名を呼んだ。火精サラマンダーはBBQの為に火種を良き友人へと与える。その様子に頷いて行人は「カイ=レラ」と傍らへと呼びかけた。
「少しの間この火をふーってしてくれるかな。そう、いい感じ」
「ありがとッス。火力の判断ならできるっスけど火種からってなれば……サラマンダーとカイ=レラには世話をかけるっスね」
 にんまりと微笑んだ葵にサラマンダーとカイ=レラは『ちょっとのお礼』で良いとサラを指さした。旅館の準備で整えられていた海産物をちょんと指さした精霊に「ちょい待ち!」と彼は歯を見せ嗤う。
「精霊が欲しがっても余るくらいのすげぇ量だな。
 だったらもうガンガン焼いていくしかねぇだろ!」
「ええ! どんどん焼くわよー! サラちゃんも待っててね!」
 ウィンクして腕まくりをしたジルーシャ。次々と焼かれる肉と海産物は食欲を大いに擽った。
 肉に魚、野菜にをはじめじゃがバター、イカゲソ生姜醤油、焼きそばを要領よく焼いていくBBQ奉行ジェラルド。ビールをまるで水の様に煽り、彼の勢いは留まる所を知らない。
「貝も焼こうぜ、折角の海だ。回線を楽しまない手はないだろ?」
「そうね! ええ、焼きましょう。って、ちょっと待ちなさい、貝ならねえ!」
 フレイが並べた貝に対しても物申すはBBQ奉行。テンションが上がって本性がチラリズムしているがジェラルドは気にする素振りはない。
「コラ! 肉と海鮮ばっか食べてんじゃないわよ! 野菜も食べなさい野菜も!」
 びしりと指さされたカイトと行人が肩を竦める。その膨大な量を適切に――ジェラルド曰く素晴らしい配分――食べ続けるベネディクトは「男八人となればこれ程の量になるか。残さないようにしなくてはな」と酒を片手に優雅な食事をしていた。
「うん、美味い! 酒にも合うな、これは。そっちはどうだ?」
「この海老は酒と絶対合うんじゃ? 食える時に食っとくもんっスよ! 後で後悔したって知らねぇからな」
 葵が皿へと乗せた肉を頬張りながら誠吾は呻いた。泡弾けた炭酸水を喉へと一気に流し込んで、彼は「くそー」と呟く。
「畜生酒飲んでみてー。なんでこっちの世界まで未成年飲酒禁止なんだよ」
 ベネディクトは葵が皿へと盛った海老を齧り美味いと大きく頷く。酒が飲めないのは仕方がないと誠吾を慰めるが、もはや留まる所を知らないカイトがふふんと鼻を鳴らした。
「それにしても海洋だからか、それとも海が近いからなのか、この景色にバーベキューは最高だな! 肉もうまいし、魚が新鮮だ!」
「そうだな。肉も野菜もまだまだたっぷりあるからな、腹一杯食って飲んで騒げ。
 あ、一般人には迷惑かけるなよ? いつもなら肉ばっかり食ってないで野菜も食えと言うんだが、今日は無礼講でいこうか。あとで脂もんばかりで胃もたれ起こしても知らんからな。そん時は医者のジェラルドに視てもらえ」
 フレイの言葉にジェラルドが「任せて」とウィンクを一つ。
「んーっ、このお魚おいしいわー♪ ほらほら、アンタも食べてみなさいな!」
 楽しそうにノリノリで食事を続けるジルーシャ。どうやらBBQは大盛り上がりだ。


 夜になれども、落ち着くことはない。離れでは布団が敷かれたいわゆる修学旅行状態で男八人話をしていた。
「せっかくの大部屋っス、ただ静かにオヤスミはねぇよな。むしろお楽しみはこっからっスよ」
 にやりと笑う葵に行人は「そういうと思った」と売店で買い物してきたと酒や乾き物を隅に寄せたテーブルへと並べる。
「良い物を少しずつ食べる、っていうのの良さが解るようになってからこの手の料理はとても楽しめるようになったなあ……」
「……腹を満たして、湯につかったら寝るだけの筈なんだが、皆寝るつもりないな?」
 誠吾の視線を受けてくい、と酌をする様な仕草を見せたのはフレイ。ジェラルドはと言えば温泉の心地よさを堪能して来たかのように外を眺めて息をついて――
「あーいいな温泉、日頃の疲れが軽くなるようだ。このまま酒飲みながらごろごろして……――ブッ!」
 顔面に何かが当たった。にっこりと微笑んだジルーシャが「夜はこれからが本番よねぇ~~」とにんまりと笑みを浮かべる。
「さあ、どこからでも掛かってこい!!」
 天義の騎士は何も恐れないと言わんばかりのカイト。酌をしていたが、彼はこういう事には全力だ。
 その様子を遠巻きに眺めていた誠吾はふと気づいたようにベネディクトに頷く。
(なるほど?)
 卿程のものが参加するというならば、これに参加せぬ手はないのだろう。
「さて、話に聞いていたがこれも男子会とやらの定番なのだろう?」
「ああ。旅先の夜は、誰からともなく枕が飛んできてな。叱られるまで遊んだもんだ」
 懐かしい修学旅行を思いながら誠吾は枕を手にベネディクトの傍へ行く。学生であった彼にとっては修学旅行は懐かしい思い出の一つだ。
「偶にはこういうのも悪くはないだろう? 良し、やるぞ、誠吾!」
 頷いた誠吾がまず狙ったのは酒を飲んでいる面々だ。ばしり、と当たった行人はゆっくりと手にしていた酒をテーブルにおいて枕を構える。
「はっはっは、良いのかい。投げちゃうぜ……?」
「ええーい、食らいなさい! 必殺――パフュームアタック!」
 キャーンと声を上げて枕をぶん投げるジルーシャ。その枕はなぜか逸れてフライの顔面へと飛び込んで行く。
「俺はやらんやらん――――って、よくもやったなこのやろう!」
 ばしゃ、と酒が掛かった顔面。そのまま立ち上がったフレイがジルーシャを狙うが、その狙いは逸れ、葵の許へ。
「やるっスね……なら、コイツをくらっとけ!」
 誰が味方で誰が敵かはもはや分からない。しかし、攻撃の手を休めれば負けが確定してしまうのだ。それは解せぬと言うように自身の持ち得る力を発揮して葵は枕の連弾を放ち続ける。
「何すんのよ!! 子供じゃないn……! やめ!! やめてよちょっと!! アンタら覚悟は出来てるんでしょうね!?」
 がば、と立ち上がったジェラルド。ついつい、口調が『何時ものもの』に変化したが、ここまで『投げられて』身を引く程、ノリが悪いわけではない。
「秘技布団ガード!! ふはは、これぞ鉄壁! 攻撃はできないが前方向の攻撃は全て無力化! 背後からの攻撃には弱いグワー!」
 全方位からの枕アタックにカイトの布団ガードは敢え無く撃沈していく。背後より投げたベネディクトを援護する誠吾がにい、と唇を釣り上げ笑えば、カイトは枕を手にしたまま『奥義』を繰り出した。
「くっならば無駄に6枚ある羽ガードだ!! どうだー! とりゃー! ――なに! 連携技だと!?」
 全力で投げ続けるジェラルドに、抵抗を見せた行人。その渦中に居るカイトは枕の山に沈んでいく。
「よーし、限界まで投げるぞ。勝ちたければ俺を倒してみろ。
 伊達にタンクをやってるわけではないことを証明してやろう。え、ちょい、全員で来るの!? ま、待て、あだだだだ!」
 年甲斐もないと言われても構いやしないと行人は只管に投げ続ける。いきなりの一斉放射に流石のフレイも手をひらりと上げた。
 そろそろ、HPも底につきそうだという頃に、枕投げは勝者を決める事無く終了し、もう一度と温泉へと足を運ぶ。

「陽とロギに辛い思いはさせたくねぇしな……待ってろ、絶対生きて帰ってやる」
 そう、明日を思い決意する葵にベネディクトは頷いた。明日は大一番の勝負が待って居る。それも、命を賭けたと言ってしまえるほどに鬼気迫る戦いだ。
「皆、必ず無事に帰って来るんだぞ」
 その言葉に誰もが神妙な顔をして頷いた。
 早々と寝静まっていく仲間たちの中からそっと抜け出して、フレイが窓を開け放った隅へと向かえば、行人が手を振っている。
「まだ一杯?」
「ここからが『お楽しみ』よね」
 くすりと微笑むジルーシャに摘まみを齧っていたカイトが頷いた。誠吾や葵、そして健康的なベネディクト卿はしっかりと夢の中だ。
 ここからが悪い大人の晩酌タイムという所か。
 盃を掲げるジェラルドとフレイは美しい月に目を細める。
「今日はとても楽しかったよ。万が一があったら、俺を覚えていてくれよ?」
 行人の言葉にフレイは「万が一、なんてない」と確かめるようにそう言った。
「そうだな。勝利してこよう」
 美しいこの月を見られるこのリッツパークと旅館を守る為にも。勝てば祝勝会や幾らでも男子会を楽しめる。
 酒を飲み干してジェラルドはふうと小さく息を吐いた。
「良く飲んだわね。シジミ出汁が二日酔いに聞くんですって……。
 明日朝食に出して貰えないか宿の人に聞いてみようかしら?」
 くす、と小さく笑ったジェラルドにジルーシャは「グレープフルーツジュースも良いのよ」と小さく笑みを浮かべる。

 ――翌朝、フレイは唸っていた。
「あだだだだ……うぇ、飲みすぎた。これ二日酔いだな、絶対。酔い醒まし酔い醒まし……」
 今から戦いが待ち受けていると言うのに――!

 さあ、これから『決戦』だ!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 さも全体依頼か?ってタイミングでお返ししたかったと供述しており……。

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