PandoraPartyProject

シナリオ詳細

妖精女王は海の中

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夏には弱い
 ――ザブン、ザブン。
 波の音が心地よく響き渡る。
 夏の島の一角、木陰の下でフローラは頭を悩ませていた。
「春の島の管理は私がやるからいいのだけれど、夏はねぇ……」
「俺もできそうにない」
「お兄さまは冬の島をしてもらうつもりだからいいのよ……それに此処じゃ溶けてしまいそうだし」
「助かる」
 春の花を司る妖精女王(ティターニア)――フローラはともかく、雪を司るグレイシアにとっては、雪は降るとはいえ夏の島の気温は苦しいものだった。
 日陰で休んでは雪を降らせるグレイシアの姿には、流石に心苦しいものがあったのだろう。フローラは真剣に悩んでいたのだ。
 ――兄をこのまま夏の島で振り回してはいけない、と。
「とはいっても心当たりが……」
「……あるぞ」
「え?」
「ポセイドン……あいつは海の王になっている」
「え!? そうなの!?」
 ぐったりとした様子で告げるグレイシアのほうを勢いよく振り返り、フローラはグレイシアの肩をつかんで揺すった。
「ちょっとお兄さま!? それ早く言ってちょうだい!?」
「よ、酔うから……うっぷ、す、すとっ……うっ」
「おっと、ごめんなさいね」
 フローラが手を離すと、木に凭れてふう、と息を吐くグレイシア。
 まあ、それでだ。と続ける表情は優しく、それは『兄』として、『先』に王となったものとしての、次の王を導くための表情だった。
「……居場所を書いた紙を渡しておくから、探してきてくれるか、フローラ」
 パン、と手を叩けば上級妖精が現れ、グレイシアに紙を手渡す。恐らくは先を見越して書いておいたのだろう。つくづく狡い人だ。
 はい、と渡された羊皮紙を受け取ったフローラ。熟読していると、グレイシアはよっぽど調子が悪かったのか眠ってしまった。
(……お兄さまのためにも、早く見つけ出さなきゃ)
 フローラは羊皮紙と羽ペンを召喚すると、特異運命座標に向けた手紙を書き始めたのだった。

●兄妹らしく
「はぁ……」
 とわざとらしいため息をついてみせるのは、カストルではなくフィスのようだ。受け取った羊皮紙をコピーしたものをイレギュラーズに手渡すと、さて、と話し始める。
「今回は海の中に冒険に行くらしいよ。海の中に用事があるらしいけれど……ボク、わざわざ海に行くほどの用事って思いつかないかな」
 くるくるとステッキを振り、フィスは納得いかない様子。
「まぁ、ティターニアがキミ達をお待ちだからね。いってらっしゃい」
 はい、と背中を押すと、フィスはどこかへ行ってしまった。

NMコメント

 どうも、染(そめ)です。
 どんどん五月も終わっていきますね、そろそろ衣替えをしたいところ。
 日差しの熱さが夏を思わせてくれる昨今です。
 それでは、依頼の説明に入ります。

●目的
 海中神殿へ行く

 文字数が恐らく足りないだろうと思い、まずはポセイドンのいる神殿の前まで行って頂きます。
 海の中には危険な魚もいますので、無事にフローラを護衛して連れて行ってあげてください。
 魚達に紛れて妖精もいますので、話しかけてみるといいでしょう。

●世界観
 魔法世界『ブルーム・ブルーム』。
 花と魔法で満ちた世界。魔法で文明が築かれています。
 基本的には物理攻撃よりも神秘攻撃がメインの世界です。
 また、ファンタジーな世界ですので、妖精やドラゴンなど、ありえない生物がいます。

●NPC
・フローラ(ティターニア)
 妖精女王。引き摺るほど長い若草色の髪が特徴。桜色の髪留めが宝物。
 エルフのように長い耳を持つ。成長が遅いとはいえ、いつまで経っても凹凸のない身体に悩んでいる。
 今日は水着です。海の中をシャボン玉につつまれて進んでいきます。

・グレイシア
 前の妖精王。鋭い目つきと薄氷色の髪が特徴。ガタイがいい。
 エルフのように長い耳をもつ。シスコン。眼鏡。
 他国の妖精へ外交をしに行っていた。
 今日はお熱でお留守番。

・カナタ
 花冠師ギルド『Flowers Flag』のギルドマスター。齢19にしてトップクラスの実力を持つ温厚な青年。
 胃薬が手放せないのが最近の悩み。今回は護衛を手伝ってくれます。
 何かあればカナタへ。

●特殊ルール
 水中行動などの非戦を必要としません。
 シャボン玉につつまれて海中へ行くことができます。

●サンプルプレイング
 さぁ、海の中を進もう。
 フローラさん、あんまり魚に近寄っちゃいけませんからね。
 ほら、見られるものだけ……ってどこいった?!

 以上となります。ご参加お待ちしております。

  • 妖精女王は海の中完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月18日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
回言 世界(p3p007315)
狂言回し

リプレイ

●おてんば『姫』の再臨
「やァやァ愛しい女王様、今日は海の中へお出かけ?」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107) はフローラに手を差し伸べ、海の中へと誘い。フローラもその手に応じて海へと身体を沈める。
「あら、武器商人じゃないの。貴方は海が好きかしら」
「うん? そうだねェ、好きだよ海の中。我(アタシ)のトモダチ、白鯨の君が愛した場所。
 いつか誰もがかえる場所。我(アタシ)のかえる場所になるかもしれないところだからね」
「そうね、いのちのゆりかごだわ」
 顔馴染みにリラックスしたのかフローラはいつもの調子で微笑んで。武器商人も安堵して、さぁ此方へとエスコート。
(海の中…一番苦手なエリアだな…だが完遂して見せるさ)
 これまた顔馴染みのひとり、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は決意硬く。護衛を完遂しようという意志を鎌に込めて海を揺蕩う。
(暫く息苦しく、生きた心地がしない時間が続きそうだ……。
 一応本の世界で死んでも混沌に送還されるだけだから死ぬことはないから安心だが、水没死は経験したくないものだな……)
 ぷにぷにと分厚い泡の膜をつつきながら、危険な色をした魚は追い払って。時折海の深さに目を見開いては海をかき分けて進んでいった。

●安寧の海
 海の底には色とりどりの魚達。
(最近は混沌の海で命の張り合いばかりしていたので、比較的平和な海の世界に行きたいなあ、などと思いしもの)
 『探究者』ロゼット=テイ(p3p004150)は息をそろえて動く魚達に目を輝かせて。
(穏やかな海はうつくしかったりするのだなあ。などと、これまであまり感じて来なかった思いなど胸に去来するのだなぁと思いしもの)
 フローラが遠くに行っていないことを確認しては、あちらへいってみたりこちらへいってみたり、自由に動き回る。
 『凡才』回言 世界(p3p007315) はカナタと後方から見守って。
「……実は俺泳げないんだが、溺れる心配はないよな?
 泡に包まれるから呼吸は大丈夫そうだが簡単に破れそうで不安だ」
「あはは、まぁ簡単に壊れたりはしないと思うけれど、無茶なことをしたら壊れるだろうね。
 海の中だしまぁ妖精が手を貸してくれると思うよ」
「それなら安心だな。ところで海中の神殿というのは興味がある。
 浦島太郎に出てくる竜宮城みたいな感じだろうか……それとも、神殿というならもっと厳かな感じだろうか」
「うらしま……なんだって? まぁそれはともかく。
 俺も詳しいことは知らないから、女王様がもってる地図だよりだね」
 ほら、あれ。と指さしたカナタの先にはきれいな羊皮紙がひとつ。いつものフローラというよりかは、ティターニアとしてのフローラのほうが相応しいような気もした。
 そんなフローラだって、やっぱりリラックスはしていても少しドジったりしてしまうものだ。何せ、兄のための頼みごとを、護衛の妖精もつけずに海の中へと入ってしまうくらいなのだから。
 見かねたサイズと武器商人はフローラを落ち着かせるために声を掛ける。
「妖精鎌、あの魚は食べれるのだけれど知っていたかい?」
「いや……俺は知らなかった。フローラ様はどうですか?」
「あ、あら、私? 知らなかったわ。あれはなんというの?」
「じゃあクイズにしてみようか。三択でね」
「ここは数撃てば当たる作戦にするかな……マグロ?」
「おや、妖精鎌。大正解だね」
「あ」
「こぉーらぁー! 私にも一考の余地くらい与えなさい!」
 もう! と頬を膨らませるフローラ。おやおやと笑う武器商人と俺が悪いのかとたじろぐサイズ。
 冗談、なんてケラケラ笑い出すころには、また和気あいあいとしたムードに戻ってきて。

「あ、おきゃくさんだ~」
 ぷかぷかと妖精は泡を纏わずに揺蕩って。
「わぁ……君たちここで何をしているのかな、何か楽しい遊びでも思いついたのかな。
 それとも何かお仕事の最中だったりするのかな、もしよかったら教えてくれると嬉しいな。
 お手伝いできることならしてあげてもいいよ」
「わ~、ほんと!」
 それじゃあねぇ、と首を傾けた妖精。しばらくしてからあっと手を叩いて。
「ポセイドンさんのところにいくんだよね!
 それじゃあお土産をもっていってほしいんだけど、いいかなぁ」
 どれどれ、とロゼットが確認する前に、妖精たちの見事な連係プレーははじまって。あれよあれよという間に、ロゼットの両手にはさんごやら真珠やら泡やら沢山のおみやげが握らされていた。
 あと手紙。これにいたっては私用だろう。
「よろしくねぇ~」
 と屈託なく笑うものだから断れまい。もちろん、とロゼットは頷いて。光揺らめく水の中、仲間の元へと戻っていった。

「まあ基本的に問題なんて起こったりはしないよなぁ」
 世界が語る。カナタは頷く。時折毒をもつ魚が襲って来たりはしたけれど、サイズや武器商人の護衛のかいあってフローラはピンピンしていた。
「狂暴な海生生物が襲ってきたりとかしなければ大丈夫なはずだ。むっ、向こうから何か巨大な影が……おいカナタ、アレは大丈夫だろうな?」
「あれはそういう生き物だよ。海の妖精たちの乗り物になっているらしいけれど、俺も詳しくは知らないんだ」
「今度はあっちに如何にも人喰いザメですみたいな風貌の奴が来たんだがアレは?
 ……超危険だって!? くそっ、一人なら迷わず逃げだすが今日は護衛役、生憎尻尾を巻くわけには行かない。こうなりゃやるしかないな……いくぞカナタ! 手を貸せ!」
 人食いザメというワードにつられて、六人は臨戦態勢へ。
「俺は何をすればいいの?!」
「囮となって相手を引き付けてくれ! その間に俺達だけで逃げるから!」
「それでもフルールかこの野郎!」
「いや冗談だ、ちゃんと追い払おうから安心して囮になってくれ」
「わかった!」
 カナタが引きつけているうちに、武器商人は宇宙に浮かぶ惑星の如きひかりを纏って。金と銀の色彩を放つその輪は眩く、フローラをしっかりと護る。
 サイズが放った魔的力は人食いザメの腹へと当たって、怯えた鮫は一目散に逃げだして。
「はぁ……発射することになるとは思ってなかったけど、追い払えたから良しとするか」
「お疲れ様。もう少しだけ気を引き締めていこうか」
「カナタ、無事かー?」
「ぶじ……な、わけあるかぁ!」
 混沌で言うところの心のパンドラ消費に近いだろうか。ぜえぜえと銀髪を乱して。世界が回復を施すと、安心したようにまた歩き出す。
「良い逃げっぷりだったわね」
「この者を追い抜かすなんてね」
「皆していじめるのやめて!?」
 カナタの悲鳴に一同は笑って。さぁ、もう少しだ。気を引き締めていこう。

●こうしてたどり着くのだが
「そういえば、王様はどんなヒトなんだい?」
 可愛い隣人たち、と声を掛けて。武器商人はあたりを流れていく妖精たちにこえをかける。
「んー? びびりだよ~」
「こころがよわい」
「おっきいのにたいどがよわい」
「よわい」
 酷評。
「あら……まだ彼はあんな感じなのね」
 道に光を灯していたサイズもふむふむと頷いて。
 ポセイドンはなかなか気の弱い人物らしい。
「ポセイドンとはどんな関係なんだい?」
「幼馴染よ。にいさまと同い年なの」
 体躯は大きいのにとてもナイーブだということ。
 かわいいものが好きだということ。
 甘いものが好きだということ。
 温厚すぎて喧嘩ではすぐ負けてしまうということ。
 などなど、どんどん性別が男なのかも妖しくなってきたところで神殿が目前に迫る。
「あ、あそこ! あそこに行くのよ」
「……何とか神殿に辿り着けたか。
 そういやここに来る目的を聞いてなかったが一体ここで何をするんだ? 宝探しでもするのか?」
 フローラは先頭に立ちくるりと振り返って。
「ノンノン。ナンセンスだわ!」
 ちっちっち、と指を振って。どうやら完全に元気になったようだ。
「彼は多分普通に交渉に応じることはないから、魔方陣を書いて無理やり連れて行くのよ」
「おや、まァ」
 ケラケラと笑う武器商人。頭を抱える世界。ため息をつくサイズ。わぁと驚くロゼット。止めようとするカナタ。
 様々な反応を得たところで、フローラはさて、と神殿の床に透明なペンキをたらしていく。
「皆も手伝ってちょうだい!」
「ひょっとしてこのもの、異世界では合理より楽しさを重視する傾向があるのかも、などと思う。
 異世界、だからなのかもしれないなあ、なんて、思いしもの」
 まっさきにペンキをとったロゼットは頷くと大きく丸を描いて。
「……はぁ、わかったけどさ。これってどうやったら魔方陣になるんだ?」
 というサイズの声につられて、世界や武器商人、カナタも手に刷毛をとって。
「適当よ」
 というフローラの声にまた肩を落として。六人で床に適当に魔方陣を書き終わるころには、すこしずつ日が傾き始めていた。
「さぁーてできたわ! 武器商人、チャイムを押してくれるかしら」
「はぁい。これかな」
 ポチっとおして。それから一分後、気の弱そうな顔をした男がそっと顔を出してのぞき足を一歩踏み出して、
「……どちらさまでしょうかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!??」
 消えた。
 叫びながら消えた。
「……さて、夏の島に向かいましょうか」
「いやちょっと説明は!?」
 という世界の叫びは無視されて。こうして一同は、一旦ブルームブルームに戻ることになったのだった。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM