PandoraPartyProject

シナリオ詳細

空色喫茶

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あなただけの空色の――
 ――カラン。とドアにつけられたベルが音を奏でる。
 木目調をベースにした店内は落ち着いた雰囲気だ。
「いらっしゃい」
 カウンターの中から店員が顔を出し、空いている席に座るように促す。
 窓から差し込む光優しい光に照らされた白いテーブルクロスは優しいドレープを描いている。
「ここは初めてだね」
 ことりと水が置かれ、店員がメニューを開く。
 載っているのは紅茶にクリームソーダ、パフェにゼリーにショートケーキ。
「メニューはこれだけ。だけどどれもお客さんの望む空色を映してお出しします。
 あちらのお客様は朝焼け紅茶に星空パフェ。そのお連れ様は春色空のクリームソーダに夕焼けゼリーですね」
 店員の言葉に先客のほうを見れば、白いカップの中に見えたのは朝焼けを閉じ込めたような紅茶に満天の星空を閉じ込めたようなパフェ。それから炭酸が弾けるたびに桜が舞い散るように姿を変えるクリームソーダと、穏やかな夕焼け色のゼリーがあった。
「お勧めはショートケーキです。朝方は少し酸味があってさっぱりとしていて、昼間は甘酸っぱさのバランスが良くて、夜は完熟濃厚な甘さになります。
 え、ケーキ自体の甘さは同じですが、クリームの上に乗った果物の色と味わいが変わるんです」
 その言葉に快晴のクリームソーダと昼間のショートケーキを頼めば、良く晴れた日のようなクリームソーダと、よく似た色合いの真ん丸な果物が乗ったショートケーキが運ばれる。
 早速クリームソーダを一口飲めば、快晴の空の下で風に吹かれるような心地よさが訪れる。ショートケーキは中に同じ果物を切った物が挟んであるようで、控えめなクリームとスポンジ生地の甘味の後、ふわりと甘酸っぱい味わいが広がった。
 上に載っている果物を口の中に放り込めば、ダイレクトにその旨味が楽しめる。
 甘酸っぱさのバランスが最高で、噛むと果汁がじゅわっと広がる。
 苺のような、ブドウのような、梨のような、不思議な果物。
 聞けば多かれ少なかれ、どのメニューにも果汁が入っているという。
 ここでしか食べられない不思議な果実と、それを使った見た目にも楽しい空色メニューを味わってみるのも良いかもしれない。

●不思議な気まぐれ喫茶店
「望む空色をしたメニューを出してくれる喫茶店に行ってみない?」
 穏やかに笑うフォレスに、何人かが首を傾げる。
「メニューを選んで、希望の空を伝えると、その空色をしたメニューを提供してくれる喫茶店があるんだ」
 聞けば今回はあと数日しか開けないという。
 次はいつ開くか分からない不思議で気まぐれな喫茶店に行ってみたい人は?

NMコメント

 美味しい甘味と奇麗な飲み物はお好きですか?
 今回とても短い期間の予定ですが、気になりましたらどうぞご参加くださいませ。

●目的
・空色喫茶を楽しむ
 メニュー
 ・紅茶
 ・クリームソーダ
 ・パフェ
 ・ゼリー
 ・ショートケーキ
 望む空色に、その季節や時間を思わせる味わいの飲み物や甘味です。

●注文方法
・お好みのメニューとお好きな空をお伝えください。

●その他
・のんびりとした時間を過ごすラリーですが、5/12で締めさせていただきます。
 期間は短いですが、どうぞごゆっくりお過ごしください。

  • 空色喫茶完了
  • NM名ゆーき
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月13日 22時09分
  • 章数1章
  • 総採用数8人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

古木・文(p3p001262)
文具屋

「こんにちは、とても素敵な喫茶店があると聞いたんだ。少しお邪魔してもいいかい?」
 穏やかに笑う文が案内されたのは、日の当たる窓際の席。
「さて、何しようかな……。
 紅茶と……あとは、うーん、困った。どの品も美味しそうだ。これは迷ってしまうねぇ」
 メニューにはシンプルに文字だけの紹介だけど、周囲を見渡せば先客たちの頼んだ品が見える。
「店員さんはショートケーキをお勧めしていたな。折角だし頼んでみよう。甘過ぎないと、いいのだけれど」
 文の呟きを聞いた店員は、注文票に書き込んでいく。
「どんな空が良いかお決まりですか?」
「空の色はどれも好きだよ。深い濃紺色の夜空が好きだけど、海辺が灰色とオレンジに染まる春の夕焼けも好ましい」
 同じに見えて、同じ空は一秒もない。
 絶え間なく変わっていく空はどれも色鮮やかに心に残る。
「少々お待ちください」
「店内の様子を見ながら待っているよ。他の人のメニューを見ているだけでも目が楽しいからね」

 暫くしてテーブルの上に置かれたのは、深い濃紺色の夜空を閉じ込めた紅茶に、柔らかな色合いの春の夕焼け色の果実が乗ったショートケーキ。
 ショートケーキは季節と時間のおかげで柔らかな甘酸っぱさで、心配していたような過ぎた甘さはない。口直しに飲む紅茶も、ほんのりと酸味があって口の中がすっきりとする。
「うん。美味しい物が食べられて、長閑に時が過ごせるなんて……今日は来て良かったなぁ」

成否

成功


第1章 第2節

エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心

 エルシアは悩んでいた。
 エルシアにとって、空の色は大樹の緑、所によって青や白。木漏れ日差し込む樹冠こそ、森育ちのエルシアの慣れ親しんだ空だ。
 だけど特異運命座標として召喚されてからは、樹冠よりも上の世界を『空』という人が多く、エルシアは自分の常識が間違っているのではないかと不安になっていた。
(ここは、空を映す喫茶店とお聞きしました。ここでなら、私の『空』を知ることが出来るかもしれません……)
 微かに震える声で紅茶とパフェとゼリーを注文したエルシアは、静かに目を閉じその時を待つ。
(木の葉の色をしていたら、私の『空』も空でいい。していなければ、樹冠は空じゃない……)

 きゅっと固く目を閉じて祈るように待っていると、かたりと何かが置かれた。
「お待たせしました」
 その声に恐る恐る目を開けると、まず目に見えたのは白い生クリームとふわふわのスポンジ。そしてその上に乗った――。
「緑の、空……」
 泣きたい気持ちだった。もしかしたら、涙が浮かんでいたかもしれない。
「私の『空』も、空なんですね……」
 空が緑なのは、自分の中だけかと不安だった。だけど、緑も『空』だとケーキが教えてくれる。
「一般的には空が青いということを理解しておくことは大切ですけど、お客様の中の空を壊す必要はありません。緑の空もとても素敵ですよ」
「はい……。有難うございます……!」
 エルシアの『空』は、どこか懐かしい、優しい甘さだった。

成否

成功


第1章 第3節

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸

「甘くて美味しい物が食べれる場所はここかな?」
 カランカランとベルを鳴らして入ってきたランドウェラは、ご機嫌な様子でカウンター席に座った。
「戻って早々素敵な場所が出来てるって、僕は運が良いねぇ。
 ええっとどれにしようかなー……」
 メニューを開いてしばらく悩むと、大きく頷く。
「よし、パフェにしよう。色んな果物あるから種類的にはこれが一番楽しめるはずってね」
 メニューが決まれば次は空だ。
「空かぁ……。
 空というそのものが以外と食べれそうだよね。雲とか星とか。ふわふわして甘そうな気がするんだ」
 そう考えると空自体の味も気になって……――。
「おっと話がそれてしまった。
 んー迷う。どうせならメニューの数だけ空の色を言いたい所だが、僕のお腹がもたないや」
 たっぷりと悩んだランドウェラが選んだのは、冬の夜空だった。

 目の前には良く冷えた夜空色のパフェ。
 濃紺の果実は噛むと甘い果汁が溢れ、果実を使ったアイスは所々に金色の星が散らばっている。
 途中雲のように敷かれていたのは極薄のホワイトチョコだろうか。
 夜空を彩る果物と生クリームの夜明けで冷えた舌を休めたら、最後はほのかな甘さの夜明け色の果物でおしまい。
 味と触感だけでなく、深い星空から夜明けに変わる色合いが、目にも楽しい一品だった。
「ごちそうさま。美味しかったよ」
 次、また開いてるときがあったら来るね。とランドウェラは満足した様子で立ち上がった。

成否

成功


第1章 第4節

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚

 ノリアの前には他とはちょっと違う空のパフェとショートケーキがあった。
「海の中から見たら空はこうなるのか」
 なんて店員が感心している。
「だって……海の中育ちのわたしから見れば、海面より上のものは、何だって、“空”、ですの」
 海種であるノリアは当然のように海の中で育った。そんな彼女にとって空は海面より上を指す。
 砂浜も、森も、その遥か上も全て”空”なのだ。
 だから、ノリアの空を映したパフェやケーキは賑やかなことになっている。
 豊かな恵みをもたらすブラウニーの大地にきな粉の砂埃の舞う赤茶けたチョコホイップの山。
 サクサクとしたコーンフレークの上に乗ったホワイトチョコホイップとバニラアイスを包み込む抹茶の森。その上に乗った建物の形をしたウエハースと、夏の青空色の果実に人や動物の形のシュガークラフトが可愛らしいパフェ。
 幾重にも重なるスポンジの地層の間には生クリームの雪原と、海面越しに見た青空色の果実と苺の化石。上に乗った抹茶の森とキラキラと光る青い空色のソースが目を引くショートケーキ。
「どれも、わたしが“空”に出て、はじめて知った、いくつもの心にのこる光景の、ひとつなんですの」
 今では“陸”と“空”を、頭では区別できるようになったとはいえ、まだ「慣れた」とまでは言えないノリア。だけど今は気にしない。
(だって……どちらだとしても、“甘くておいしい”ですの!)
 ノリアの空は、賑やか美味しい!

成否

成功


第1章 第5節

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

 リゲルの目の前に置かれたのは、雲一つない広きに渡る真っ青な空色の紅茶とゼリー。
「本当に真っ青だ」
 澄み切った青は、不思議と力強さと爽快さを感じられてエネルギーを貰えるような気分になる。
 紅茶を一口飲めば、しっかりとした紅茶の味とともに感じる爽やかな風に吹かれたときのような心地よさ。
(ポテトやノーラとこんな空の元でピクニックできたら幸せだろうな)
 心地よい青空の下で、空と同じ色の綺麗な青色の紅茶を淹れたらきっと二人共驚いて、それからとびっきりの笑顔を見せてくれるに違いない。
 その笑顔を想像するだけで心が温かくなる。
 この店では果物の果実を使っているが、他の……花の色から抽出出来ないかとリゲルは考える。
(いつか挑戦してみよう)
 プルプル揺れるゼリーは甘さ控えめであっさりとしている。
 紅茶に金平糖、ゼリーにアラザンを浮かべたら、星空みたいになってキラキラと輝き綺麗かもしれない。

 少し冷めた紅茶を飲みながらリゲルは海洋の空を思う。
 本来は鮮やかな青空のはずの海洋の空だが、絶望の青に足を踏み入れて以来嵐や曇り空ばかりを見てきた。だけど空は移ろい変わるもの。アルバニアとの決着の日も近い。
 そうすれば、重い空気を孕んだ非日常から解放される。
「戦いの後には、こんな青空を目にする機会も増えるだろうか」
 どこまでも澄み渡った真っ青な空。
 その下で笑顔で過ごせる日を楽しみに、リゲルは紅茶を飲み干した。

成否

成功


第1章 第6節

ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種

 その日ユーリエは朝から晩まで大忙しだった。
 友達の手伝いから迷子のお家探し。果てにはお世話になっている先生の頼み事で素材探しまで。
「んー……! 今日もいっぱいお仕事した!」
 ぐっと背伸びをするのは当然のことだろう。そして、疲れた体を癒すべく、甘い物を求めるのも。
「こういう日は、喫茶店でのんびりと甘い物を食べて過ごしたいな~!」

 そしてやってきたのがこの喫茶店。
「すみません。こんな時間ですけどやって、ますかー……?」
「はい、やってますよ」
 遅い時間だったので心配だったけど、まだやっていたようだ。
 席に案内されてほっと一息ついたユーリエは、大好きなショートケーキがあることを確認して嬉々として頼んだ。

 やってきたのは、どんな気分もすっきりさせてくれるような広い広い青色の果実が乗ったショートケーキ。
「わぁ……!」
 どんな悩みも風と一緒に吹き飛びそうなその青色は、ユーリエが一番好きな空。
(妹と見た、あの日の空を思い出すなぁ……)
「あっ! 赤色の空も好きですよ! 赤といえば苺の赤色……! って違いますね、えへへ……」
 わたわたと慌てたあと照れ隠しに頬を掻くユーリエに、店員は笑いながら鮮やかな夕焼け色の果物を一つおまけにくれた。
「良いんですか!? いっただきます!」
 驚きながらも有難く受け取ったユーリエは、早速ショートケーキをパクリ!
 甘い果実と生クリームが、口の中で幸せを織りなすのだった。

成否

成功


第1章 第7節

ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲

「望んだ空色を映したメニューを出してくれる喫茶店だなんて初めてだな」
 ゲオルグはメニューを見ながら面白そうに呟いた。
 同意するように小さく頷いているのはふわふわ羊のジーク。
 円らなジークの瞳はお隣のショートケーキに釘付けだ。
 すでに注文を終えているゲオルグは、微笑ましくその様子を見守りながらジークをそっと撫でた。

 暫くして来たのは星空のクリームソーダと果実が二つ乗った夜のショートケーキ。
 ジーク用に小さな小鉢に入ったクリームソーダと取り皿があるのが嬉しい。
「あぁ、それはジークの分だ」
 嬉しそうに小鉢を抱えるジークの姿にゲオルグも嬉しくなる。
 とはいえずっとジークを見ていたらアイスクリームが溶けてしまう。
「本当に空を写し取ったようで奇麗だな」
 星空のクリームソーダは、炭酸が弾ける度に小さな星がキラキラと輝き消える。
 飲んだ分だけ星空が減ってしまうから、飲んでしまうのが勿体無い。だけど一口飲めば、強すぎない炭酸が静かな夜空に輝く星を見つけたかのように、口の中で弾けるのが心地良い。
 夜のショートケーキは星空を散りばめた見た目も良いが、一口食べる毎に広がる濃厚な甘さが堪らない。
(これは気を抜いたら一気に食べてしまいそうだ)
 あえてゆっくりフォークを動かすゲオルグの前では、ジークが貰った果実を幸せそうに齧り付いている。
「幸せだな」
 美味しいものを二人で分け合えば、幸せは二倍以上になるようだ。

成否

成功


第1章 第8節

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
泳げベーク君

 喫茶店の話を聞いたベークは、なんとなく行ってみようかと思った。
「そうですね、たまにはそう言うのもいいでしょう」
 普段喫茶店になんて足を向けないけど、この時はそういう気分だったのだ。
 ちょっとゆっくり、休める時間が欲しかったのかもしれない。
 勿論行くのは人の姿でだ。喫茶店なのでたい焼きはないと思うが、万が一商品に間違えられても困るから。

 シンプルなメニューに思わず瞬いたベークだが、選んだのは紅茶だった。
「甘味はあんまりですねぇ……。
 なんでというかあれです。僕自身少し苦手意識があります。同族嫌悪とは違うんですが、鏡見てるみたいで……」
 普段ギフトの影響で巨大なたい焼きにしか見えないベークは、纏う香りも甘いたい焼きの香りだ。それ故(食料的な意味で)狙われることも多く、いつの間にか甘味に対して苦手意識を抱いていた。
「さっぱりしたやつが好きですね。
 と、空……? 空、ですか。
 やっぱり、青空が好きですかね。水平線と混じるような、透き通った青空が好きです」
 どんな空が良いか聞かれて思わず答えたが、ベークの中で空と紅茶のイメージがマッチングしない。
 一体どんな紅茶が来るのかとちょっとわくわくしていたら、本当に透き通ったイメージ通りの青空色の紅茶が来た。
 味はほんのり甘いけど、すっきりとした果汁のおかげでさっぱりとした後味。
「案外、合うんですね」
 新しい発見にちょっと嬉しくなったベークだった。

成否

成功


第1章 第9節

「あ、もう品切れか」
 店員の手元にあった籠の中はもう空っぽ。
 結構数はあったはずなのに、それだけ人が来てくれたのだ。
「有難いことだ。今回はもう閉店だな」
 ドアノブに「closed」の看板を掛けたら後はゆっくり閉店準備。
「さて、しばらくゆっくりして、またそのうち開けますか」
 心の中の空を映す不思議な喫茶店は、静かにその灯りを消した。

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