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シナリオ詳細

<鎖海に刻むヒストリア>『黒狼』奮起す

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●絶望を超える鉄の意志
「アンタ達が俺達を巻き込んだイレギュラーズか! おう、そこに居るのはリースリットだろ? 立派にやったな!」
 イレギュラーズは、豪快な声で自分たちに、そしてリースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)に語りかける大柄な男に声を失った。
 当のリースリットはといえば、驚いたように硬直し、少ししてから「ベルグハルト様?!」と声を上げた。
「覚えてくれてて嬉しいぜ。お前達が……ああいや、海洋のお偉方が鉄帝(おれたち)を巻き込んで大魔種にケンカ売りに行くっていうじゃねえか。こっちじゃ腕っこきがそりゃもう諸手を挙げて行かせてくれの大合唱よ」
 彼――『黒狼』ベルグハルト・ラヴィンの言葉はイレギュラーズも知る事実のひとつだ。
 廃滅病によるカウントダウン、それが削れていくばかりをよしとしなかったイレギュラーズは、破竹の勢いで後半の海へ攻め込んでいた。海洋上層部はこれに呼応し、鉄帝の助力を受けることで乾坤一擲の大攻勢を企図、もって『冠位嫉妬』アルバニアを土俵に引きずり出すことを目的としていた。
 そんな状況下、鉄帝は腕利きの軍人を遊ばせておく理由はない。何しろ『ギア・バジリカ事件』を生き残った精鋭が国内にいるのだ。なおのこと重用して損はないというもの。
「で、俺はお前たちと一緒に狂王種やら魔種やらとドンパチやる連中の露払いってワケだ。安心しな、俺の部下達は腕っこきばかりだ。少なくとも船同士の砲撃戦じゃ負けねえさ」
 ベルグハルトは戦闘経験旺盛な軍人だ。ラド・バウにも度々目撃されているゆえに、もしかしたら足繁く通うイレギュラーズなら顔を知っていてもおかしくはない。
 そんな彼が部下とみとめ、海戦に連れ出した者たちが精強でない由がない。
「でも、まあ……俺達が今からいく海域には幽霊船が3隻。一隻15人換算でも45人。流石に取り付かれずに戦うってのはキツいだろ?」
 ベルグハルトの言葉に、一同はうんうんと頷く。想定しているのは8人で対応できてせいぜいが30そこそこ。大幅に上回る戦力をおいそれと倒せるとは言えない。
「だからよ、俺がひとつあっちに乗り込んでかき回してやるから、残りはお前らと部下に任せたいワケだ。どうだ?」
 どうだ? ではない。
 鉄帝でも名のある軍人が軽々に敵勢力に突っ込み、果てたなどとなれば軍の士気は大幅に下るだろう。決して彼1人で行かせていい話ではない。必死に訴えかけたイレギュラーズに、少し考え込んだ彼は「じゃあ何人か付いてくるかい? こういうお嬢ちゃんならなおさら歓迎だ」
 こういう、で胸のあたりを広げてみせた彼の顔を見て、一同は「あ、腕は立つけど残念な人だな」と感じるのだった。


 一方、目指す海域にて。幽霊船団(といっても3隻だが)を率いる男はその細長い面を大きく縦に振り、得心したように笑っていた。
「戦争、戦争だ、鉄の船が迫ってくる! とても楽しい戦いになりそうだ!」
 その男……海メダカの海種、セレベスは号令一下、亡霊達へと奮起するべく声を張る。去るグレイス・ヌレ海戦でドレイクについて逃げ延びた彼は、この機会をこそ求めていたのだから。

GMコメント

 決戦です! 景気よくがっぷり四つに組んでいきましょう!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●勝利条件
 幽霊船団の損耗率75%以上の達成及びセレベスの撃破。
 条件達成までベルグハルトの生存。

●幽霊船団×3(船員×44)
 幽霊船(ワンダーサーペント)と呼ばれる、絶望の青で沈んだ船達の嘆きと怒りを籠めたそれです。
 船員はセレベスを除き、全員が幽霊に近い存在となっています。生者、こと絶望の青を越えんとする者への強い執念で動いており、同時にアルバニアを憎んでも居ます。
 全体的に知性が低いですが、代わりに統制がとれています。
 艦船射撃要員が各船3名。他、ロングカットラスによる白兵戦(Mアタック、AP減少系BS付与)と魔術による広域バフ要員がおります。
 船に乗り込んでドンパチやる場合、混戦となるので「射程外」の概念が薄い点にご注意ください。
 船を寄せての射撃戦ならその限りではありません。
 船への直接攻撃ですが、船底部は幽霊船とは思えないくらい頑丈です。ですが壊せないこともありません。
 セレベスが乗艦する船は海賊旗が特に大きいです。

●セレベス
 幽霊船団を率いる、海戦から落ち延びて絶望の青に来た海種。廃滅病のカウントダウンはあと僅か。死ぬか泡になるかの選択肢しかありません。
 他の船員より多少腕が立ち、ベルグハルトより腕前は落ちますが船員との連携やその他要素で上回る可能性を秘めています。
 射撃武器も所持。
 溜1・自付【ブレイク】、物攻大幅増の強化魔術も持ちます。

●『黒狼』ベルグハルト・ラヴィン
 友軍です。基本的にはセレベス艦へと向かい、乗り込むことを企図しています。鉄帝船での接近は危険なためイレギュラーズ艦船に同乗。大剣使いです。
 彼1人での制圧は不可能なので、3~4人の随伴を推奨します。
 この際、随行者が巨乳だとモチベーションが上がります。

●海洋・鉄帝戦艦
 幽霊船との砲撃戦を主に行います。
 かなり優秀で、そこそこ戦力を削れますが船を沈めるとなればイレギュラーズの一撃が不可欠。深追いさせすぎると沈むので、ベルグハルトの代わりに指示を出しましょう。

 そんなわけで、ご参加お待ちしております。

  • <鎖海に刻むヒストリア>『黒狼』奮起す完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年05月23日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
春告げの
ニコラス・T・ホワイトファング(p3p007358)
天衣無縫
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年

リプレイ

●思いがけぬ対面
「ハッ、数をどれだけ揃えようと、所詮ザコはザコよお。このグドルフさまに全部任せておきな。ゲハハハハッ!」
「『黒狼』とはまた粋な二つ名だ。協力するに吝かではないよ」
 波は高く、風は強い。
 ともすれば海に慣れぬ者なら不安で仕方がないこの状況、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)と『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
 『黒狼』ベルグハルトは、母国の軍艦上で向き合ったイレギュラーズ達の様子を見て(そして気圧されぬ彼らの表情に)安堵と自信を綯い交ぜにしたような表情を見せた。
 彼と対峙しただけで気後れするような者と轡を並べよと言われれば、彼だって御免被るところだっただろう。
「……いえ、驚きました」
 ややあって、『終焉語り』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)が口を開く。
「鉄帝国の軍人になっているというお話はお父様から聞いていましたけど、まさかこんな所でお会いする事になるなんて……」
「それは俺のセリフだぜ。……イレギュラーズになったんだから、ここで会わないワケも無いがな」
 リースリットの言葉に即座に言葉を返そうとして、ベルグハルトは逡巡する。イレギュラーズが、ここに居らずしてなんとするのか。しかも、立派な娘(こ)が、だ。
「さてはて、再会を喜ぶのもいいが、あちらはそうも気長ではなかろう。船の留守はこちらで預かるとしよう」
 互いに言葉に詰まった二人の間に割って入るように話を切り出したのは、『艦斬り』シグ・ローデッド(p3p000483)だ。続けて、『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)が「私も残りますよ!」と告げ、クルー達に丁寧に頭を下げていた。彼女はこれで、それなりに義理堅い性格なのである。挨拶は大事だ。
「海洋(こっち)の船は俺達に任せな! 野郎ども、行くぜッ!」
 『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)が海洋の戦艦上でひときわ大きく声を張り上げると、クルー達は威勢よく声を張り上げる。海洋で名を上げた者達の中でも一際――少なくとも居並ぶ面々の中では最も――その名を轟かせた彼の指揮下となれば、ただ漫然と船を繰るより余程エキサイトするというものだ。
「強え奴にゃ戦闘に専念して貰いてえ。俺に船の操作は任せてくれ」
 『天衣無縫』ニコラス・T・ホワイトファング(p3p007358)はカイトの堂々たる姿勢を見ながら、憧れとも歯がゆさともつかぬ表情を一瞬だけ浮かべ、それから精悍な「いつもの」表情へと切り替えた。彼の言葉を受けたカイトは、少しだけキョトンとしてから、首を90度傾けた。
「何言ってんだよ、ニコラスの操縦には期待してるんだぜ? 俺の『風読み』とお前の操縦で、死にぞこない共をギャフンと言わせようぜ!」
「……おう、そうだな」
 カイトの明け透けな態度は、偽りがないからこそ響く。ニコラスの心境に幾ばくかの余裕ができたのは、偽らざる事実である。
「セクハラ野郎との随伴は嫌だとよ。フラれちまったなあ? ま、代わりにおれさまが付いてきてやるよ──おれさまもそこらの連中なんぞよりよほど巨乳だからなあ。ゲハハハッ!」
「言ってくれるじゃねえか『山賊』の。俺はそういう奴も大歓迎だ。……ま、4人中3人が立派なナリなら文句は言わねえさ」
 グドルフは、冗談めかしてベルグハルトに絡む。だが、相手はといえばそれなり上機嫌。リースリットは知人だからさておき、『3人め』とは誰だったか……グドルフが首を巡らすと、そこには自慢げに胸を反らす『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)の姿があった。
「セレマさん、その格好は……?」
「風の噂で『黒狼』(キミ)は巨乳好きだと聞いた。ボクはそんな趣味は低俗だと思ったんだけどね。美少年(ボク)以上にちやほやされる鳩胸親父がいるとしたら許せないじゃないか」
 呆然と問うたウィズィニャラァムに応じたセレマの格好はなにからなにまで女性のそれだ。だが、その内部から醸し出される雰囲気とか声の調子はどことなく麗人のものを思わせ、セレマの性別をますます不確かなものとしていた。下品な目で見ていたベルグハルトは、真相を知らないので鼻の下を伸ばしているが。
「……これで満足かい?」
「全く、お前らは俺を喜ばせるツボをよくよく心得てやがる……なあリースリット?」
 ベルグハルトの満足したような表情に、リースリットは我関せずと顔をそむけた。ともあれ、彼のやる気が十分にあるのはいいことである。
「それでは、私達は皆さんを送り届けて……あのいけ好かない幽霊船を沈めますよ!」
「心得た。『黒狼』を送った後は好きにやらせてもらうとしようか」
 波を裂いて前進する鉄帝・海洋の軍艦。対するは、風を受けているかさえ怪しい幽霊船3隻。セレベスの号令一下、左右の幽霊船が鉄帝の船へと向かう。
 が、うち1隻は海洋の軍艦から放たれた一条の炎をそのマストに受け、海賊旗諸共炎に包まれた。
「ご自慢の海賊旗もざまあねえぜ!」
「やりやがったな、野郎!」
 カイトの先制攻撃でマストに打撃を受けた幽霊船が、相手の船を放置できるわけがない。まず、1隻。包囲が崩れ。
「行こうか、『黒狼』。ボクについてこれば間違いないよ――」
 幽霊船団の旗艦に飛び乗り、さらに船縁からふわりと着地したセレマを出迎えたのはカトラスによる斬撃だ。ぐらりとバランスを崩した彼を無視し、後続の4名へ殺到しようとした船員達はしかし、次の瞬間には再びセレマに向き直っていた。
「不意打ちとしては最高だよ」
「一番槍は取られちまったなぁ、ゲハハハッ!」
 マルベートとグドルフはセレマに続き、ベルグハルト、最後にリースリットが次々と飛び移る。
 敵の注目を集め、どこか嬉しそうに笑みを浮かべたセレマの姿が、既にこの戦いの行く末を予感させていた……というのは、なんとも皮肉な話である。

●戦場に徒花を
「配達人の真似事はここまででいいだろう。先ずは力の誇示……である。……思えば艦斬りの呼び名がついたのも、この技を使った時だったな?」
 シグは自らの姿を一本の剣へと変じると、カイト達が狙ったのとは別の随伴艦めがけて刀身を振り下ろす。炎を纏ったそれは、敵艦の甲板を横断し、進路上にあった兵士達を薙ぎ払う。
 あまりに強引な一撃は、甲板上の幽霊兵達に動揺を与え、正常な判断力を奪っていく。その一撃で倒れないのは脅威であるが、彼にとっては織り込み済みだ。
「このままあちらを旗艦に近付けず、一気に叩きますよ! 数に押されなければ私達(こちら)の精鋭が後れを取るワケがないでしょう!」
 ウィズィニャラァムはハーロヴィットを大きく振り上げ、それを砲撃要員に叩き込む。手元に当たり肩へと抜けた一撃は、狙った相手に浅くない傷と劇的な不調を齎す。手元に戻った得物を頭上でキャッチした彼女は、そのままもう片方の手を添え、まっすぐに振り下ろす。火花散る瞳が映したのは動揺したように動きを乱したさきの砲撃手。
「……本当に、猛者ばっかりで寒気がするぜ」
 ニコラスは彼女の振り下ろした一撃の帰趨を見ることはない。だが、相手方に大打撃を与えたのは間違いあるまい。なら、こちらもその奮闘に応じねば無粋というもの。
「野郎共、砲弾をありったけご馳走してやれ! あっちだって条件は一緒だ、ビビらずどんどんやれ!」
 カイトは三叉蒼槍を振り回し、幽霊船に突っ込む船のクルー達を鼓舞する。彼自身も炎による攻勢をかけ、甲板上の混乱を助長しつつ。
 旗艦と随伴艦の分断はもとより、ニコラスの狙いは斜め前方から横薙ぎにするような衝角突撃。相手の艦の土手っ腹を裂き、一気に打撃を与えられればなおよし。
「ひと当てした後はあっちの船に張り付いて妨害してやる、いいんだなキャプテン!?」
「おう! でも野郎共、腕っこき以外は無理するんじゃねえぞ! アイツラは死んでるんだ、付き合ってやる義理はねえ!」
 ニコラスの問いかけに、カイトは即座に応じ、敵艦の舳先に身を躍らせた。風を読んで先手を取る彼の動きは、数を頼りにした雑兵のカトラスで軽々に傷つけられるものではない。無論、何事にも絶対はないが……目立つ相手へ殺到した敵を翻弄する事ほど楽なこともない。畢竟、カイトの思惑通りに事が運んでいることになる。
 そしてそれは、『イレギュラーズの思惑通り』でもある。


 マルベートは、仲間達から付かず離れずの距離を保ちつつ、乱戦のなかを駆け回る。目につく船員に悪意を込めて魔槍をつきつけ、近づく相手の敵意を引き受ける。その所作は、両手の得物と相俟って食事を楽しむ貴人にも似る。
「それにしても海戦は楽しいものだ。鼻を擽る潮の匂い、波の音、剣劇の音、怒号、火薬の香」
 ――そして、破滅を匂わせる腐臭。話題でだけは聞いていた『それ』はしかし、彼女を怯えさせることも驚かせることもなかった。ただ、苛烈な戦いの中でのスパイスでしかないのだ。
「ベルグハルト様、敵指揮官を早急に抑えましょう。あれを余所見出来ない状況に追い込めれば、味方の敵艦対応が楽になる筈です」
「面白ぇ提案だぜリースリット。乗った」
 リースリットは周囲の状況を見回し、セレベスへの突入経路が確保できるという確信に至る。真っ先に船員の注意を引きつけたセレマ、縦横無尽に動き回り状況をかき回すマルベートの2人の活躍は、セレベスの指揮をもってしてもなお、イレギュラーズ優位を崩しきれない。攻めるなら、今だ。
「おいおい、テメェだけ美味しいとこどりは勘弁だぜ?」
 その話を脇で聞いていたグドルフは、斧を振り回しながら叫ぶように声をかける。彼の周囲にあった船員は、思いの外よく戦っていた。いたが、彼によって船外に放り出されれば、楽には戻ってこられぬだろう。
「ははは、こうも皆に群がられているとサークラ女子感あるね。周囲を壊滅させるところまでそっくりだ」
「……なら、『黒狼』の前にお前を壊しゃいいのかね?」
 仲間達の動きに、そして殺到する船員に満足げに笑っていたセレマは、横合いから聞こえた問いかけへの反応が一瞬遅れた。
 セレマの眉間目掛けて放たれた銃弾は、一切の妥協も減衰もなく叩き込まれる。空港の向こうで命中を確認したセレベスは、続けざまにイレギュラーズへと銃弾を叩き込んでいく。
「戦争してるんだぞ、戦争だ! お前達だって戦いたくて死にきれんのだろうが! もう少し背筋を伸ばせ! 剣を掲げろ! 海の男だろう!」
 そう吠え、堂々と歩を進めるセレベスの目は狂気と怒りで濁っていた。彼の視界の外、眉間に打ち込まれた筈の銃弾を指先で弄ぶセレマはその姿を心底、不快そうに観ていた。
 むさ苦しく、臭く、おおよそ品性というものからかけ離れたその姿。
「死に損ないを集めてお山の大将気取ってる奴が戦争を語るかよ、確かにこいつは潰しときてえな」
 ベルグハルトもセレベスの間合いに踏み込み、一瞬だけ睨み合い……間をおかずして、両者は互いの得物で切り結ぶ。当然のように剣を引き、後退したセレベス目掛けグドルフが追いすがる。
「ザコ相手にじゃれ合うのはうんざりだ、ちったぁホネのあるとこ見せてくれや!」
 セレベスの表情に余裕はない。間違いなく、焦っている……それでも片手を振って船員達を統率する姿勢は曲がりなりにも船長、ということか。
「後は任せる。私は少し……『攪乱』を行ってくるとしよう」
「シグさ……いや、いいでしょう。無理はなさらないでくださいよ!」
 敵旗艦の様子を一瞥し、自らの船も(多少の破損こそあれ)航行可能であることはシグにとってこの上ない好機だった。ウィズィニャラァムも、彼を止めることは無粋と割り切り、ハーロヴィットを構え直す。
 彼にとって『余裕が生まれた』今は、彼女にとって『最高潮の時』である。たとえ残存する敵が倍でも、今の自分なら張り合える。そんな万能感が全身を満たしていた。
 シグが何を思って動いたのか……それは幾ばくも経たずして大きく揺れた相手の船体と、吹き上げられた水柱からも明らかだ。
 試せるならば手をつける。成算があれば徹底的に拘泥する。そしてそれが、多くの場合成立する。彼のやることは、大抵そんなものである。
「操舵手は潰したぜ、もうここから逃げられねえな」
 ニコラスは、突撃していったカイトを援護するため次々と爆弾を生み出し、相手方の甲板に放り込んでいく。そこそこの範囲をカバーするそれは、非戦闘要員がいれば容易に潰し、そうでなくとも痛撃となりうるもの。カイトの撹乱で十分な実力を出せぬままの彼らに、その被害を軽減する術はなく、頼みの綱のセレベスの指揮も、この状況では届かない。
「このまま沈むまで打ち込んでやれぃ! 死に体の相手はすっきりと死なせてやらないとな!」
 この状況に興が乗ったのはカイトも同じだ。敵旗艦での戦闘は激しいが、増援を交えること無く戦闘が続いているのは僥倖の一言。
 セレベスと切り結ぶグドルフ、抜け目なく治療し、合間に攻めに回るリースリット、撹乱するセレマとマルベート。余裕綽々とはいかないが、それでも優位は明らかだ。
「貴方がこちらにかまけている間に、お仲間は殆どこちらの仲間が倒してしまいました。……どんな気分ですか?」
 リースリットは魔晶剣を振るって雷撃を散らし、当たるを幸いに船員達を打ち倒す。当然、その余波を受けたセレベスの身が無事であるはずもない。セレベスは舌打ちひとつ交え、強烈な踏み込みからの斬撃をグドルフに放つ。
 グドルフは胸板でそれを受け、堂々たる態度で剣を振り下ろす。
 膝から崩れ落ちたセレベスは、それでも相手へ一矢報いようと剣を持ち上げ、しかしベルグハルトに腕を切り飛ばされ、グドルフの前蹴りで無様に甲板に転がった。
 ……廃滅病で命を落とす事無く、戦場に最後を求められただけこの男は幸せだったのかもしれない。
「やるじゃねえか。何もかも全部終わったら、イイオンナのいる店で一杯やらねえか。ええ?」
「ああ、悪くねえな。じゃあそこの綺麗所……を……?」
 グドルフの提案に笑みを深めたベルグハルトは、マルベートと、それからセレマに視線を戻した。だが、どうだろう。セレマはすでに体格を本来のソレに戻している。化粧は落ちていないが、明らかに男性と思しき姿見だ。尤も、『美少年』なので事実は闇の中だが。
「ボクは美少年(ボク)が大好きなんだ、悪いね」
 その言葉に名状しがたい表情を浮かべたベルグハルト、その様子を呆れ顔で見守るリースリットとウィズィニャラァム、海洋の戦艦上で凱歌を上げるカイトとニコラス……それぞれの心持ちは別として、この海域での激戦は続く。これはその、ひとつの勝利だ。

成否

成功

MVP

セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 数は多めにしたはずなんですが、このイレギュラーズの編成だと足止めが精一杯だった感が強いですね。
 普通は接舷しての近接戦とか船の保全でやらねえよなとか、そんなことはなかった。怖い。
 MVPは最後の最後まで味方のモチベーション増強に寄与したセレマさんに。
 ……そうか、これが『美少年型』ってやつか……。

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