PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<鎖海に刻むヒストリア>ブルー・プリュスの鬼哭

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幾層にも重なり合った天蓋の意匠は昏くお道化る事も忘れた慟哭の雨を降らせる。劈く一閃の白光より逃れるように船は進んだ。荒れる海は誰ぞの心を思わせ、盆より毀れたように乱雑に揺れたその世界は正しく敵の生み出す禍泡の内側に踏み込んだ事を認識させた。
「さて、」
 軍馬を模したシルバーの杖で甲板を叩いてからヴディト・サリーシュガーは同乗する者たちを振り返った。海洋王国より届いた救援要請を受けて鉄帝国より幾人もの軍人が出陣することとなった。そのうちの一人であるヴディト・サリーシュガーは事前に『絶望の青』について自身が個人的に有する斥候に調査を依頼していた。
 それと同様の情報が海洋王国より齎された事に驚きは禁じ得ないが、鉄帝国としても信頼できる以来であるという認識をした方がいいだろうとヴディド自身は納得していた。
 遥々と大海へと進みだせば、天気という言葉では言い表せられぬような不定の空が歓迎するように水滴を空より落とす。乙女の涙が如く降り荒むそれは刹那のうちに笑みへと変貌していく。其れだけでこの海域が危険域であることは誰にとっても理解できる。
「目の前に存在するものこそが真実である――ともすれば、『アレ』は我々の敵だね」
 こつりと音を立てて杖を握りしめたヴディトは溜息を混じらせた。天と地を分かつかの如く、落ちた白光の向こう側に揺らぐ木船が浮かんでいる。このような場所にまで、そんな装備では到達できるわけもない。ならば、それは『この海に眠る魂』ではあるまいか。
「幽霊船というのは我が目で見るのは初めてだね。君たちはどうだい?」
 くすりと唇に笑みを浮かべた後、ヴディトは『情報』を口にした。

 ローレットの情報屋が有する情報とそれは同様のデータだ。
 襤褸の帆は進み往くことも出来ぬ停滞。停滞の中に朽ちた船体を大いに揺らしたそれは、この海で逝った『嘗ての同士』達の姿ではあるまいか。
 絶望を関する大海に沈んだその存在は『幽霊船』と称するに相応しい。
 幽霊船には無数の亡霊が嘗ての如く、乗船し、生者の気配に過敏に反応し続ける。いのちとはそれ程に尊く美味であるという事か。
 彼らは自身らの夢と希望の途で朽ちた。それ故に、自身らの夢――この海の制覇を目論む者たちを激しく嫌悪する。それ故に、この海域まで『生きて辿り着いた』者たちに嫉妬し、嫌悪し、その命を愚弄する。
 リズミカルにその口を動かした頭蓋に並んだ歯がぼとりと落ちた。欠けたパーツにも気を配る素振りなどなく、それらは只、命を喰らわんと手を伸ばす。

「宛ら、漁だな。私達という餌を前にして飛び込んでくる亡者を叩き潰せばいい。
 これでもかと言う程に『鉄帝国的な解決方法』じゃないかな? ……さて、ぼやぼやとしている暇もないか。
 情報は生モノだ。普段なら避けて通る道だけれど……今日という日は『鉄帝国』の流儀に乗っ取るのも悪くはないだろう」
 つまり――正面より飛び込んで殴りつければ解決する、という事だ。

GMコメント

 日下部あやめと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●絶望の青
 嵐です。激しい落雷を伴い雨が降り荒んでいます。
 ヴディトと共に鉄帝軍の船で幽霊船へと近づくことが可能です。

●幽霊船
 乗組員15名程度の幽霊船です。クルーは皆、白骨化した骸骨姿です。
 カタカタと歯列を鳴らし、笑いながら生者に向けて攻撃を行います。
 パーツが壊れても動き続けます。(戦闘不能にしなければなりません)

●友軍 ヴディト・サリーシュガー
 リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー (p3p000371)さんの伯父さんであり養父。
 鉄帝の軍人であり、軍馬の飾りの仕込み杖を所有するサリーシュガー家の当主。
 素早さを活かした戦い方を得意としており、ギフトで『人の悪意、嫌な気配が黒ずんだ霧のように見える』為、危機回避を得意としています。

●重要な備考
<鎖海に刻むヒストリア>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。

  • <鎖海に刻むヒストリア>ブルー・プリュスの鬼哭完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年05月21日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
すずな(p3p005307)
忠犬
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
メーコ・メープル(p3p008206)
ふわふわめぇめぇ

リプレイ


 落ちる雷は硝子片を散らす様に海面を揺さぶった。棘が如く立つ白波は何人たりとも拒絶するが如く、昏い世界を縦横無尽に駆け巡った。
「舵を手放すな――!」
 海とは猛獣だ。紆濤が船体を攫わんとその両腕を伸ばし続ける。号令を上げ、吼えるが如く堂々と眼前ある昏き禍泡をしかと見据えた『二代野心』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は「幽霊船か」と低く唸った。
「もはや幽霊船なんざ見慣れたもんだが、邪魔をされるのはいい加減面倒臭いな」
 この海域は悍ましく波濤がのた打ち回っては巨躯の鯨が水面へと鰭を叩きつけたかのように苛烈を極める。それ故に、船は玩具のようにその窓を蒼黒く染めぐるりと引っ繰り返るのだ。だからこそ、『見慣れた』という言葉が飛び出したのだろうが、危機迫る状況下で往く手を阻むというならば容赦はせんとその掌に力を込める。
「さあ、やる事はシンプル。嵐の中の幽霊船で骸骨退治、だね!」
 晴れの穏波を思わせた『蒼銀一閃』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)の瞳にも闘志が宿る。彼女の言葉を聞いてシルバーの杖で甲板を叩いたヴディト・サリーシュガーはしかと頷いて見せる。
「ああ、シンプル、そして実に『鉄帝国』だ」
「鉄帝国的な解決方法、本当にわかりやすいっす!
 ヴディトさんはリュカシスさんに良く似た御方……もしもーし? リュカシスさん緊張してないっすか?大丈夫っすか?」
 シンプル故に、工夫も可能だと『薬の魔女の後継者』ジル・チタニイット(p3p000943)はホワイトベリルの様につるりとしたその美しいかんばせに笑みを浮かべ――そして、傍らに立っていた『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)の様子伺い見遣る。
 ヴディトとリュカシス。そのファミリーネームは同じだ。血縁関係である事――そして、リュカシスから見れば上官にもあたる『伯父』との共闘は彼にとっても一大イベントだ。
(同じ戦場に伯父上がいらっしゃるなんて、これはとても凄いことだぞ……!)
 火炎纏いし槌を握りしめる掌が僅か、震える。それを武者震いと言うのだと彼は歓喜に打ち震える。
「伯父上と肩を並べる事ができて嬉しいです」
 ――それにこれは格好良いところを見せる千載一遇のチャンス!
「ああ、期待しているぞ」
 荒波を物ともせず凛と立つヴディト。舷を煽った波に屈することなく『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は生まれ故郷有する国軍の船に乗る機が来るとはと歓喜に打ち震える。鉄帝国は機械の躯を持つ者が多い。それ故に潮風は好まないとオリーブは肩を竦めるが、抉るような白波に屈することは実に『鉄帝国』的でないのだから。
「酷い嵐だね! だが戦闘の空気としては悪くない! さぁ! 仕事といこう!」
 結い上げた紅の髪に雷電が伝う。神鳴の気配を孕ませて、『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)が甲板を蹴り上げる。無垢なる白を揺らして見せた『すやすやひつじの夢歩き』メーコ・メープル(p3p008206)の自慢の綿毛はぺしゃりと水分を含み重くなる。美しき羊の娘は臆することなく警笛を響かせた。
「嵐による歓迎とは、なかなかに苛烈ですね……ただでさえ船上は安定しないのに、この海上の荒れ具合――注意せねば!」
 邪念宿ることなく清廉なるその刃は鈴鳴るようにしゃなりと引き抜かれる。蹌蹌と蠢く頭蓋など『斬城剣』すずな(p3p005307)にとっては敵ではない。冴え月一刀両断するように、正統なる一迅を乙女は振り下ろした。
「私達はこの先へと往かねばいけません! 例え嘗ての勇士が相手だとしても――押し通らせて頂きます!」


 中身のない伽藍は歯列をぶつけ伽藍伽藍と音鳴らす様に笑い続ける。その奇異なる光景がこの世ならざるものである事をより一層と強調した。一度海に還ったならば、その蒼に抱かれて眠っていろとエイヴァンは氷弾吐き出すその堂々たる斧銃で伽藍共を指し示す。
「無念だろうが何だろうが、得られなかった未来にすがろうとする奴等が、今を生きるやつらの枷になるなんざ――海の男の風上にも置けない!」
 大波は怨嗟の声が如く特異運命座標を襲い来る。凛と立つ、その巨躯を曲げる事無く軍人(うみのおとこ)たる意地をその胸に。声張り上げる彼がその胸ぐらへ飛びこむ伽藍共とは別に、胡乱と周囲を見回す者をメーコががらりがらりと警笛ならし呼び続ける。
「こっちだめぇ」
 嵐の中でも尚、その鐘の音は響き渡る。ひつじさん、ひつじさん、おおかみさんが来ています。愛らしい少女は狼を避ける事無く手を伸ばす。
「敵からの攻撃はメーコにお任せめぇ。代わりに、攻撃と回復は皆にお任せしためぇ」
 重くなるフリルのワンピースを揺らし、がらりがらりと響く音。それを切り裂くように吹いたのは冴えた風、その一閃の音。シャルレィスが踏み込む一刀は嵐が如く血潮を躍らせる。降る雨に打たれても尚、蒼き切っ先は煌めき雷が如く敵を切り裂いた。
(…きっとこの骸骨たちも元は絶望の青に挑んだ勇敢な船乗りたちだったんだよね。
 でも、だからこそ、敬意を持って全力で! ――この剣を手向け代わりに、歪んでしまった存在を終わらせよう)
 この海域は海洋国民の待望たる場所であるらしい。まだ見ぬ前人未到(ネオ・フロンティア)――暗雲立ち込める空に晴れ間が差す事を彼らとて願っていた。困難に打ち勝ち、新たな未来を切り開かんと願い、志半ばで海に沈んだ伽藍の悲しさにシャルレィスは唇を噛み締めた。
「貴方達が夢見た先には私たちが絶対にたどり着くから……!!」
 ――それは、蠢く大いなる災いを退けんとする強き意志。鮮烈なる蒼の気配に負けじと咲き誇るは紅の稲妻。
「もうお休み……。十分君達は働いたさ……。
 果てならば、この『雷光殲姫』がしっかりと見てこよう――!」
 電磁加速をその身に有する。赤き電がぴりり、と華奢な体に纏わりついた。マリアの結った紅色が大仰に揺れた後、その身は『跳』んだ。真っ直ぐに紅雷を有した蹴撃が落とされる。紅の雷へと、白きいのちの雷源が交わった。身を捻り上げ、宙を踊るように甲板を蹴る戦乙女を見上げた伽藍の胸元に清廉なる剣撃が鳴り響く。
「なんと悍ましい――これが勇者達の成れの果てですか」
 その愛らしいかんばせを歪ませて。呪い憑きの少女はすう、と目を細める。殺気をその身に纏わせて、刹那を切り裂くが如く弧を描いた斬撃の影が幾重もの重なり続ける。泥濘感じさせた甲板を滑るように進むは敵のその胸。
 壱、弐、参、そして――肆。重ねた一撃は立ち塞がる者を許すまじと修羅が如く勢い孕む。
「イレギュラーズの苛烈さに『船』が負けてはくれるなよ」
 そう自身を乗せた鉄船へと語り掛けるヴディトはとん、と甲板を杖で叩き、その姿を晦ませる。敵を惹きつけ、総てを忽ち巻き込む嵐が如き戦い方は彼のお眼鏡にもかなったらしい。

 ――伯父上は伯父上の戦い方で、どうか存分に。

 甥の言葉にヴディトは哂った。嗚呼、苛烈なるは実に『鉄帝的』ではないか。
 エイヴァンとメーコが惹きつけ離さぬ敵を切り裂く苛烈さに、そして、敵陣の中で尚、その膝をつかぬ様にと癒すは天の救済。
 ジルはその宝石染みた頬を僅かに高揚させた。ボーリングのピンが如く斃れる伽藍の中に鮮烈に輝くは未来(あす)を思わす白光。
「初っ端から飛ばしていくっすよ! ――陸へ帰りたいのならば、光へ手を伸ばして!」
 陸(おか)は遠く、尚も、求める場所。いとしいいとしいと泣いた命に手を差し伸べるは薬師の出来る唯一の慈悲なる気配。
 ざあ、と降り荒むその中で、オリーブは鋭利なる乱撃を放ち続ける。上質なる長剣は男の掌によく馴染む。視線はちら、とヴディトとリュカシスへと向けられた。同郷として、リュカシスにとっての大舞台――それを決して『下らぬショー』にしてはならぬと彼は伽藍の波の中声を張る。
「サリーシュガーさん、今です!」
 にい、と少年の口元に笑みが乗る。我楽多をその身に纏う鉄躯に纏わせたは朗々と尾を引く焔。少年の夢が如く、決して燻る事のない美し焔はオリーブの言葉と共により苛烈に燃え盛る。
「これは――……鉄帝式の餞です。残さず倒しきりましょう」
 眩すぎる月光は死者の往く道を惑わせる。レテの川の船頭は美しきはエンピレオの薔薇を咲かせて――その力を、一撃へと纏わせた。
 これは果たすことを掴む為の、赫々たる焔だ。


 青巒の空とは言えず、漣ではなく響くは鬼哭と獣の如き風のうねり。頬を叩きつける雨をも構わず、メーコはちら、とジルを振り向いた。ふわりとした乙女のかたまり、可愛いレェスに夢見る瞳、リボンを飾った愛らしさ――そして、その中に抱くは倒れぬという強き意志。
「どんなことがあっても倒れないメーコにお任せめぇ」
「回復はお任せくださいっす! ――巡って僕の力になって貰うっすよ!」」
 愛らしいそのかんばせに返すは絶対的自身の翼。幅広く、形成されるその両翼は決して削れぬジルコニア。美しき光を返し、伽藍に刺さり、そしてそのいのちを喰らう。魔力の巡りを感じ取る。識れば識る程に、道程で惑うことなく前を向くことが出来る証左が如くジルは堂々と眼前指し示す。
 揺らぐ船は母の羊水の様にどっぷりと昏き波濤で足元を脅かす。其れさえ、苦とせぬヴディトが鋭く差し込む一打に続き、赫き焔が虚ろな伽藍に赤と落とし込む。
「伯父上! 次は――!」
 振り仰いだリュカシスにヴディトが返した頷きは『この儘、鉄帝国的に倒し切れ』と言う実にシンプルな解法。鉄帝国には負けてられぬとその身を骨にし、粉にして、エイヴァンは押し入る波が如き伽藍洞を受け入れた。頭蓋の音を聞きながら、膂力生かして波を返す。
「酷い『波』だが乗り熟せないで何が、海洋軍人だ?」
 くつくつと喉奥より漏れた笑みは喜色を交え、振り下ろされた一打に頭蓋ががしゃりと砕き墜ちる。それが『勇士の慣れ果て』ならば、どれ程に刹那いものか。シャルレィスは唇を噛み締めた。蒼き波動を擁いては、その切っ先は狂わない。
「どうだ……ッ!! 私達という嵐は、絶望の嵐なんかよりずっとずっと激しいんだから……!!」
 降る様な乱撃に、重ねたは確かな決意。頬を掠めた一撃など、黒雲より落ちる獣が如き雷電など、誰かのいのちの結末など――彼女は負けぬと怨嗟の海原で声を張り上げる。
「私はシャルレィス・スクァリオ! 絶望の青の先へ行く冒険者だ! かかってこい!
 お前たちの嫉妬も嫌悪も、全部受け止めてやるッ!」
 そうだ、とすずなは目を伏せた。どのような修羅であれど『こうなっては終い』なのだ。彼は、射干玉の色を持った剣豪はこのような伽藍洞の頭蓋になど負けやしない。すべてを切り伏せ、虚無になど構う事はない。
「残念、肉があろうとなかろうと――首落しは得意なんですよ。
 勇敢であっただろう貴方方の堕落した姿、見るに堪えません。――疾く終わらせてあげます、お覚悟を!」
 ヒュウ、と。風斬る。
 靭やかなる刹那の刹那。瞬く、刃の太刀筋は冴え冴えと月をも穿つかの如く。天蓋飾った月も頸堕つ、鮮烈なる一閃は、流麗なる音を立て、伽藍の首を奈落の果てへと落とし込む。
 その冴えた一撃残る間合いへと赤き雷が落ちる。この海に落ちた神鳴りよりも尚、研ぎ澄まされた紅の色はマリアというおんながその身、そのすべてで練り上げたいかづち。
「――さあ、こっちだ!」
 JK(ジェットクラッシャー)の作り出した砂鉄は、破邪を孕む。指先作り上げたピストルは、少女の僅かな悪ふざけ。真白の軍服包み上げた赤き稲妻の気配のまま、マリア・レイシスは幾重も伽藍を吹き飛ばす。殲滅するは鮮烈なる紅雷。
 ちり、と掠めた伽藍の一撃など、無に帰す様にジルは恐怖を打ち払う。聖なる哉、我が聲は――
「この船で沈みたくはありませんからね。乗るならば、泥船ではなく鉄がいい」
 オリーブの拳が一気呵成伽藍をがしゃりと破る。上質なる剣を振り下ろすその両腕に宿すは絶対的な力。祖国を脅かすものは許さぬという気概は只、敵を破る絶対的な力となった。
 穏やかな口ぶりに隠した破壊の一撃のその刹那、リュカシスは「オリーブサン!」とその名を呼んだ。
「――はい、『こちら』ですね」
 身を反転させる。背後より迫る伽藍を殴りつけた拳に僅かな振動が走る。がしゃり。玩具のように堕ちていく。頷くリュカシスは緊張するようにその掌に力を込めて、伽藍を上から叩きつけた。

 襤褸の様に崩れる頭蓋を眺めてはジルは風呂敷にそれを包み込む。エイヴァンは「どうするんだ」とその様子を眺めて言った。真白の指先は、色褪せ潮を帯びて崩れる窪んだ頭蓋を撫でる。眼窩にはもはや瞳と言えるものも存在せず、脳も臓さえ何もないとしても。
「……きっと、彼らだって陸に還りたかったんすよ」
 砕いた白き粉となって、故郷の空を踊れ。そして故郷の海に沈んで溶けて、眠るが如く。ジルのその言葉にエイヴァンは低くそうだな、と声を漏らした。
「それにしてもヴディトさんとリュカシスさんの連携は凄かったっす。闘技場で見たいっすね」
 にんまりと微笑む彼女の言葉へとリュカシスは美しい月色の瞳を丸くさせ、誇らしげな笑みを見せた。伯父の評価を気にするように、ちら、と伺い見たその傍らで、ヴディトは「鉄は打てば打つ程強くなるだろう」とそっと指先で顎を擦った。
 以前と吹き荒ぶ風の獣は、幾分か大人しくなったかのようにも感ぜられる――沈みゆく襤褸の船を一瞥し、マリアは目を伏せる。
 どうか、兵共に安らかなる眠りを。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度はご参加ありがとうございました。
 オーソドックスなシチュエーションではありますが、皆様の素敵な戦いを見せていただくことが出来て感激です。

 また、ご縁がございましたらば。

PAGETOPPAGEBOTTOM