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シナリオ詳細

<鎖海に刻むヒストリア>鋼鉄の亡霊

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鋼の亡霊
「船長っー!! 幽霊船です!」

 船の見張りは、靄(もや)の向こうから現れた威容を見て叫んだ。

「幽霊船だと……!?」

 船長は、望遠鏡を靄の向こうに向ける。
 果たして、そこに恐るべき艦影があった。
 波濤を破って、その威容を示した。

「……でやがった、“ストロングバックス”だ!」

 それは海の底から現れた鋼鉄の墓標と人は言う。
 “ストロングロックス”と名付けられた甲鉄艦である。
 『絶望の青』に現れたその甲鉄鑑は、卓越した冶金技術で建造されていると思われる。
 もしかしたら別世界からの漂着物、あるいは超古代の遺失兵器なのかもしれない。
 錆びつき、フジツボにも覆われたその姿は、長い間海底に沈んでいたことを物語っている。
 だが、この赤錆びた鋼の怪物は、いまだ戦うことをやめようとしない――。
 見果てぬ『絶望の青』を往こうとする海洋の船を遭遇次第攻撃し、海の藻屑と変えるという。

「噂が本当なら撃ってくるぞ! 総員退避っ!」

 その噂通り、砲門を開き、砲撃を開始した。
 三連装三基のターレット型の主砲が向けられると、一斉に火を噴いた。
 轟音が響き、太い水柱が立ち上がる。
 衝撃の波だけで、船体はひっくり返りそうになってしまう。
 当たれば、ひとたまりもない。船員も船長も、自身の最期の時を予感した。

●甲鉄艦を討て!
「大変なのです! 幽霊船が出たのです!」

 『新米情報屋』ユーリカ・ユリカ(p3n000003)は慌てた様子で冒険者たちの前にやってきた。
 大号令によって多くの船が開拓を進める『絶望の青』では、幽霊船(ワンダーサーペント)の報告例はいくつがある。
 大抵は朽ちかけた船体に亡者の乗組員というのが定番だが、今回出てきたのは“ストロングロックス”と名づけられた甲鉄艦である。
 錆が浮いているとは言え、装甲を持ち、三基三連装の主砲のほか、対空兵装も装備しているらしい(左右には装備していた副砲を撤去した痕跡が認められる)。

「そんなのとまともに撃ち合ったら、敵わないのです。だから、乗り込んでぶっ壊す作戦が検討されているのです」

 ユーリカは言う。
 海洋と鉄帝が合同で軍船を出し、この甲鉄の亡霊船に対処するという。

「軍人さんたちの話では、左右にある副砲の跡から乗り込んで、弾薬庫を爆発させればいいらしんですけど……そこに切り込む人員を募集している、ということです」

 装甲を有しているとは言え、すべてを覆ってしまうと船足は遅くなってしまう。
 そのため、ストロングロックスは重要部分だ毛を防御する構造のようだ。
 副砲を撤去した場所から、内部に侵入し、弾薬庫に火を付けて誘爆させる。
 それが海洋と鉄帝による合同作戦の内容だ。
 いかに無敵の亡霊艦といえど、内側からの爆発を守ることはできないだろう、ということだ。

「鉄帝の船が砲撃を引きつけ、海洋の船で節減することになるのです。中に乗り込んだら、亡霊さんが出てくること思います。危険な依頼だと思いますけど、引き受けてくれる人を募集するのです」

GMコメント

■シナリオについて
 皆さん、こんちわ。解谷アキラです。
 『絶望の青』に出現した甲鉄亡霊艦“ストロングロックス”を沈める依頼となります。
 どうも海の底に沈んでいたっぽいですが、また沈めてやってください。
 作戦は以下になります。二手に分かれるといいでしょう。

・鉄帝の軍船が惹きつける
 鉄帝の軍船が囮役を引き受けてくれます。
 ですが、装備はストロングロックスが圧倒しており、主砲が命中したらひとたまりもありません。
 この鉄帝の軍船に乗り込んで砲撃から何らかの方法で船を守る、あるいは代わりに遠距離から攻撃して惹きつけるなどの作戦がありえます。
 こっちはこっちで命がけになるでしょう。
 防衛の人員が少ないと撃沈されます。

・海洋の軍船で乗り込む
 まともに応戦しても敵わないので、海洋の快速船で接舷して乗り込み、副砲の跡から内部に潜入して弾薬庫をふっ飛ばすという作戦が立案されています。
 副砲から弾薬庫までのルートは割り出されており、迷うことなく到達できます。
 ですが、亡霊の乗組員との戦闘は避けられないでしょう。遭遇する人数は20~30人程度と予測されます。
 弾薬庫をふっとばす爆弾は用意してもらえます。切り込み部隊の代表者1人に託されます(時限式で1~15分の間で設定できます)。
 誰が持つか相談して決定しておいてください。
 沈んでいて水浸しでも、弾薬庫は何故かちゃんと誘爆しますので心配いりません。

・その他
 その他の方法についてはアイデアがあれば構いません。たとえばですが、上空から乗り込もうとすると対空装備の的になります。それでも敢行するというプレイングも考慮しますが、場合によっては厳しめの判定になることは覚悟してください。
 では、よろしくお願います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <鎖海に刻むヒストリア>鋼鉄の亡霊Lv:15以上完了
  • GM名解谷アキラ
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年05月21日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)
うつろう恵み
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者

リプレイ

●現れた甲鉄艦
 この広い大海原に、錆びた亡霊艦が出現した。
 航路上の怪物によって、海洋の大号令は大きく後退するかもしれない。
 その事態を打破するため、鉄帝からも軍船が派遣されている。
 しかし、真の切り札は討伐のために駆けつけたローレットのイレギュラーたちだ。
 海洋、鉄帝の二隻の軍船とともに、甲鉄亡霊艦ストロングロックスを追う。
 出港から、およそ一時間ほど――。

「出ました! 甲鉄艦ですっ!!」

 望遠鏡を覗いた見張員が叫んだ。
 荒天の中、波濤を蹴散らして現れたのは、錆びついた鉄の艦だ。
 そびえる仏塔型艦橋と、三連装三基の主砲。
 艦橋脇から、シュモクザメの頭のように光学式測距儀が張り出している。

「大きな船……元々はどんな風に、海を走っていて、どんな記憶を持っていたのでしょう、か」

 思わず、『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)は言葉を漏らした。
 今まで見たこともない巨艦である。
 その主砲から撃ち出される主砲は、どれほどのものであろうか?
 海洋の快速線に乗り込んだフェリシアの役割は、この甲鉄艦に切り込み、内部から爆破するという作戦である。

「鋼鉄の墓標とはなかなか洒落てるねぇ」

 『闇之雲』武器商人(p3p001107)もまた、フェリシアと同じく切り込み部隊だ。
 武器商人の手には、内部から破壊するための爆弾がある。爆破担当だ。

「あれが自分の墓標とならぬよう、気をつけたいところだね。ヒヒヒヒヒヒ……!」

 何を考えているのか、前髪に隠されたその表情からうかがい知ることはできない。
 切り込み組を乗せて、快速船はストロングロックスへ接舷しようと舵を切った。

「うきゅ……漂着物か遺失兵器かもしれないヤバそうなものまで幽霊船になるとは……」

 『ファニーファミリー』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)は、近づきつつある巨体を眺め、改めて脅威を感じていた。

「恨みはないけどもう一度安らかに深海で眠ってもらうっきゅ」

 森アザラシの肉体を抱きながら、戦いに臨む覚悟を決める。
 そして、ストロングロックスのの主砲塔が錆びついた軋みを上げて旋回した。

●砲撃戦!!
「撃ぇ―――!!」

 鉄帝の軍船が砲撃戦の火蓋を切り、甲鉄艦もこれに応戦する。
 爆音が響き、突き上げるような水柱が上がった。
 快速船の切込みのため、鉄帝とイレギュラーズの小型船がストロングロックスを惹きつける役目を負っている。かの亡霊甲鉄艦も、接近する船よりも砲撃してくる鉄帝軍船への応射を優先する。
 ここまでは手はずどおりであろう。

「海は……嫌いなんだがなぁ……。磯臭いし……。泳ぎたくないし……。でも置いていかれたくはないし……」

 撹拌された水柱から上がる、潮の匂いが『迷い狐』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906) の鼻孔をついた。乗っている小型船も、弾着に合わせて大きく揺れる。
 激しい揺れが、海面を叩いた途方もない衝撃の凄まじさを物語っていた。

「別世界からの漂流物とか古代の遺失兵器とか……! ロマンですよっ! ルルの心がぴょんぴょんしますっ」

 一方、『暗躍する義賊さん』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)は心を踊らせていた。
 大艦巨砲こそ、海のロマンである。大海戦こそ、大海原の夢だ。
 鉄帝の軍船は、彼女たちの指示で遠方からの砲撃に徹してもらっている。
 その間、ルルリアが出現させた組み立て式小型船を出せるだけ出し、ストロングロックスに乗り込む快速戦の盾とするのだ。

「さて、仕事にかかるとしよう」

 防御側の小型船の操船を担当するのは、『飢獣』恋屍・愛無(p3p007296)である。
 航海術を心得ている愛無は、小型船を囮としつつ巧みにストロングロックスの照準を誘う。
 その間、切り込み部隊を乗せた快速船が迫ろうとする。
 測距儀がぎらりと光ったかと思うと、主砲が旋回して標準を合わせ、砲口から火が噴いた。
 大気を揺るがす砲声と衝撃に続いて、海洋快速船めがけて砲弾がやってくる。
 巨大な水柱が、次々と上がっていく。ちょうど快速船を水柱が挟む形だ。これは夾叉といって、数値を修正せずに撃っていい、事実上の命中と見なされる。
 続いて、第二斉射! 命中!! ――かと思われた。

「残念、幻影だ」

 命中したのは、愛撫のドリームシアターが生み出した幻影である。
 囮として亡霊甲鉄艦を十分に惹きつける役割を果たしたのだ。
 しかし、ストロングロックスは、艦首をその群れに向けて速力を上げた。
 巨大な船体で体当たりして沈めてしまおうというのである。
 その瞬間、激しい閃光が周囲を包んだ。視界が、真っ白な色に埋め尽くされる。
 リアナルがセットしておいた星夜ボンバーである。

「派手に行こう! 手数には自信があるんだ!」

 続いて、小型船に乗り込んでいた『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)が、紅の電光をその身にまとわせている。周囲の電流を集めて磁場を作り、おのれの力を強化したのだ。

「そりゃっ!!」

 リアナルも、ストロングロックスの主砲めがけて魔光閃熱波を放つ。
 ありったけの力を込めた、全力の魔法投射だ。

「……ショック感電で誘爆とかしねぇかな……。しねぇよなぁ……。多少柔らかく……ならないよなぁ……」

 甲鉄艦の主砲、特に前盾はもっとも装甲が分厚い部分とも言われている。
 電撃の直撃がどれほどのダメージを与えるのかは、不明だ。
 それでも、仲間たちが切り込むために攻撃の手を休めるわけにはいかない。

「このまま攻撃ですよ!」
「わかった、任せろ」

 ルルリアの指示で、愛無が小型船を操船して距離を保つ。
 ストロングロックスの進路に巧みに囮を配置してその船足を止め、一方的な攻撃を試みる。

「ルルの愛銃で風穴をあけてみせます」

 ルルリラが漆黒魔銃テンペスタを構え、虹の軌跡を描くリリカルスターを発射する。
 キラキラキラキラ~☆ 荒天の砲撃戦の中にそぐわぬファンシーな発砲音であった。
 それでも命中し、側舷の装甲に上がって星が砕けた。
 この攻撃を受けたストロングロックスが、怒りの応射を始める。
 ドッ!! ドッ!! ドッ――!!
 砲炎が上がると、3つの砲弾が弓なりに落ちてくる。

「このぉぉぉぉっ!!!」

 マリアが雄叫びを上げて飛び上がる。
 なんと直撃コースで飛んできた砲弾の側面に、飛び蹴りをかまして弾き落としたのである。紅い雷を発しながらの稲妻の蹴りであった。

「ふふ! 私は非力だけど虚仮脅しくらいは出来るのさ!」

 そのまま蹴った反動で空中で反転し、しゅたっと小船に降り立つマリアであった。
 その間、リリカルスターでストロングロックスの標準を引き付けつつ、主砲三基三連装のひとつに狙いを定めていたルルリアが、ファントムチェイサーを放つ。
 亡霊甲鉄艦が向ける悪意の砲口、その中までは装甲で防御できない弱点である。
 ちょうど撃ち出されようとしていた砲弾とぶつかり、凄まじい内圧によって砲身が破裂、耳をつんざくような爆音が海を揺るがした。

「やったぁっ!」

 狙い違わぬ命中弾に、ルルリアも小躍りする。

「愛無、このまま引き付けて。あんまり当てにして欲しくないけど、無いよりはマシかな!?」
「任せろ。舐めてほしくないものだ。人でなしの手腕を」

 マリアの着弾予測の指示を受け、愛無が巧みに小型船を操縦してストロングロックスを翻弄する。
 その間に、味方を乗せた快速船が接舷に成功したのである。

●甲鉄艦内部の戦い
「鉄帝の軍船が囮になってくれるとはいえ、あまり時間を掛け過ぎるとまずいわ。可能な限り急いで爆弾を設置して、この幽霊船を沈めないと!」

 切り込み部隊の先陣を切るのは、『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)である。美しい銀の髪をなびかせ、華麗な剣技によって甲板を進んでいく。
 乗り込みにはなんとか成功した。このまま快速船が節減していられる時間はそう長くはない。
 甲鉄艦の内部への道は、しっかり頭に叩き込んでいる。鉄帝と海洋、そして仲間が用意したこのチャンスを無駄にはできない。
 そんな彼女たちの行く手を阻むのは、水漬く屍となった水兵たちの群れであった。

「手間取るわけには……!」

 通路いっぱいに押し寄せる骸骨水兵を、細剣に炎をまとわせながら無数の残像を引いて次々と貫き、斬り伏せる。
 肉がこそげ落ち、骨だけとなってもなおも戦おうとするその姿を哀れとも思うが、今は容赦することもできない。
 心の中で手を合わせると、アルテミアは仲間とともに進む。

「弾薬庫までは……こっちっきゅ!」

 副砲撤去跡まで鴉のファミリアを先行させ、レーゲンが仲間たちを手引する。
 アルテミアの奮戦によって、道は切り開かれている。
 しかし、うかうかしてはいられない。
 小型船の仲間たちが決死の覚悟でストロングロックスの注意を引いてくれているが、手間取っていてはその圧倒的戦力差によって味方の船も撃沈されかねない。

「あの……床、抜けたりしないですよね……?」

 フェリシアが行き先を心配する。
 海の底に沈み、朽ちかけていた亡霊甲鉄艦である。
 海水の腐食によって床板が抜けることも十分考えられるだろう。
 急がねばならないが、慎重さも必要とする。

「そうね。気をつけていきましょう」

 骸骨水兵を斬り払ったアルテミアも、そっと前方の床を踏んで確かめる。
 脆くなっているところがあるが、気をつければ大丈夫であろう。
 錆と潮の臭いが充満した艦内は、それだけでも長居したくない場所である。

「また敵が来るっきゅ!」

 新たな敵の接近を感知したレーゲンが仲間に警戒を促した。

「……おっと、食い止めないとね。下がってフルフトバーの方」
「助かったっきゅ!」

 武器商人がルーンシールドを展開して殺到する新たな骸骨水兵を食い止めた。
 その間、レーゲンは物質透過の能力を使って先行する。ひまわり油も、破壊工作用にばら撒いて置いた。
 アルテミア、フェリシアがこれに応戦の構えを見せる。

「弾薬庫まではもう少しよ!」
「はい、頑張ります!」

 食い止めた骸骨水兵に、アルテミアが高速で駆ける。
 血意変換によって、身命を賭しても一気に突破しようというのだ。
 これに、沸き上がってくる通路上に現れた幽鬼の群れをタイトニングでまとめて貫いた。
 ほどばしった電光が、まとめて数体を撃ち払う。

「弾薬庫は……ここね!」

 行く手を阻むものを斬り払いながら、アルテミアはその水密扉のまでやってくる。
 主砲弾薬庫は、砲塔から下層に砲弾を乗せる昇降機とその上に弾薬を詰める作業室があり、これを砲室まで運搬して装填する手順となっている。
 この一式の砲塔を、バーベットという円筒形の装甲部に差し込むように設置している。
 その弾薬庫に、爆弾をセットしてふっ飛ばすというのが予定されている手はずだ。
 と、扉がガコンと開いた。

「……よいしょっと。開いたっきゅ!」

 物質透過によって先に侵入していたレーゲンが先回りして内部から開いてくれたのだ。

「助かりました。中の様子は……?」
「まだ何匹か残ってるけど、他から駆けつける前に設置できるっきゅ!」

 レーゲンの報告通り、まだ弾薬庫には運搬役の骸骨水兵が10体程度残っている。
 武器商人が爆弾を安全に設置するためには、これらを相当する必要があった。

「なら、任せてください!」

 フェリシアが絶望の海の歌を歌う。その歌声は、冷たい呪いを帯びた旋律――。
 どこまでも深く、透き通るような響きだった。

「じゃあ、我も喉を披露しようかねえ」

 武器商人も、破滅の声を上げた。
 聞く者に、存在させてはいけないと内面から沸き上がる怒りを掻き立てる。
 その声によって集まってきたところを、フェリシアの歌声が骸を崩壊させていく。

「今のうちに、設置しないとね。これまでざっと20体は片づけたから……タイマーは8分ってとこかな」

 武器商人が、弾薬の間に爆弾を設置し終える。
 つまり、脱出までの猶予は8分となる。
 このタイムリミットを切ると、亡霊甲鉄艦ともども海の藻屑となるだろう。

「さっ、急ぎましょう!」
「レーさん、物質透過で先行できるっきゅ。敵がいたらうまくショートカットして道も作れるっきゅ」
「わかったわ。じゃあ、わたしの指示通りにお願いできる? 念の為に構造を把握しておいて正解だったわ」

 レーゲンが壁の中を進むと、アルテミアたちも続いた。

●亡霊甲鉄艦の最期
「そろそろ時間だけど、大丈夫か? 中でやられちゃってるってこと、ないよなぁ……」

 リアナルが小型船の上で爆弾設置に向かった切り込み部隊の仲間たちを心配する。
 爆破に失敗するという、万一のこともありうる。
 わりと後ろ向きなことを考えつつ、いざとなったらその身を捨ててでも救助する構えを見せている。
 その間も、ストロングロックスは砲撃を続け、海を撹拌しているのだ。

「心配いりませんよ。さっきから二番砲塔が撃ってないです」

 ルルリアが言った。
 交戦中に損傷を受けてない砲が撃ってないとなれば、その人員が一掃された可能性があるということ。
 一番砲塔は、ルルリアが砲身を炸裂させているから、本来休んでいる暇はないはず。

「快速船が離れ出しだぞ。よし、ストロングロックスを惹きつける!」

 愛無がそれに気づき、小型船の舵を切った。
 無事離れるまで、気が抜けない局面だ。

「さあ、もう少し! 援護にいくよ」

 弾道予測も行えるマリアからの指示を受け、快速線が離れるまで、快速船の離脱を支援する。

「こっちは成功したわー! 全力で離れてー!」

 快速船から身を乗り出したアルテミアが叫び、乗り込んだ者たちが総出で手を振って退避の合図を送る。

「あと、30秒。29、27、26、25……」

 武器商人が爆弾爆破までのカウントダウンを始める。

「わかったー、全速で退避ってことで!」

 リアナルが承知した旨を伝えると、防御側の小型船を反転させる。
 快速船も、帆に風を掴んで一気に船足を早めた。

「5、4、3、2、1……ぼんっ!」

 数え終わると同時に、爆音が響いて甲鉄艦の戦隊が膨れ上がった。
 そして、凄まじい炎が船体から噴き上がる。
 活火山の噴火を思わせる爆発を繰り返し、甲鉄艦は第二砲塔部分からひしゃげてへし折れ、V字になって海中に沈んでいく。
 ストロングロックスの最期のときだ。
 炎と黒煙に包まれながら沈みゆく姿を、戦いに参加した者たちがいつまでも見送っていた――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)[重傷]
光の槍
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)[重傷]
希うアザラシ
アルテミア・フィルティス(p3p001981)[重傷]
銀青の戦乙女
マリア・レイシス(p3p006685)[重傷]
雷光殲姫

あとがき

 見事、亡霊甲鉄艦は爆沈しました。
 皆さんも、任務を成し遂げて帰還を果たしました。
 巨大な亡霊戦艦との対決、いかがでしたでしょうか?
 戦艦が沈むときは、せつなくて悲しい。
 しかし、依頼は無事達成され、絶望の青での戦いに大きく貢献していただきました。
 それでは、またの依頼でお会いしましょう。

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