PandoraPartyProject

シナリオ詳細

大切なものの声

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●その声は
 物や現象や動植物。それらは長い時を在り続けることで命を得、意識を得、力を得ることがある。
 または、別の生き物の意識や命が物や現象や動植物に宿ることもあるかもしれない。
 もしも、そんな彼らと言葉を交わせるのなら。
 いつも腰に帯びる剣と話せるなら。
 普段よく吹く風に問いかけられるなら。
 傍らに寄り添う生き物の想いを聞けるなら。
 そんな世界があるのなら、あなたはどんな言葉を紡ぐだろう?
 感謝の言葉、伝えたかった想い、これからの願い。
 何を、ここで伝えよう?
 何を、ここで聞いてみよう?
 この世界では、それが叶う。
 誰かが吟うように囁いた。

●境界線で
「この世界では、色んな物や現象、普段は人の言葉を喋らない動植物と言葉を交わすことができます」
 境界案内人、デュナがイレギュラーズに世界の説明をする。
 そこに在る意識持つものは揺らぐ人の姿や他の生き物の姿を取り、意志疎通をすることができる。
 持ち主との絆を深めたり、普段は聞けないことを聞いたりできる。
「この世界では特に何が起こっているというわけでもないのですが、いつも身近でお世話になってるものと交流ができたらと思って」
 それでこの世界を探したのだと言う。
 少しだけ笑んだ彼女はお節介でしたか? と問う。
「お節介だったとしても、何かできればって思ったので」
 だから、と手を差し出す少女。
「あなたがそこに在るものに何か想いがあるのなら、それを伝えることで育まれる絆があると思っています」
 どうかそのお手伝いをさせてください、と少女は笑って手を取ったイレギュラーズを連れ出した。

NMコメント

 皆様、お久しぶりです。お初にお目にかかる方は初めまして。灯火(とうか)です。宜しくお願いいたします。

●シチュエーション
 物や現象や動植物が幻影のような姿を取り、言葉を交わせる世界です。
 地球によく似た風景や文化があります。皆様がどんなところに行きたいかなどプレイングしていただくと当たり障りのない範囲で描写させていただきます。

●プレイング
①皆様が何と言葉を交わしたいか。
②言葉を交わせるものはどんな姿でどんな口調で話すか。
③どんな場所で話すか。

②と③はアドリブOKとあれば雰囲気に沿うようにこちらで書かせていただきます。

●皆様へ
 最後までお読みいただきありがとうございます。
 今回は一章で終了する予定です。
 どうか楽しいひとときをお過ごしください。

  • 大切なものの声完了
  • NM名灯火
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月10日 15時38分
  • 章数1章
  • 総採用数8人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
白いわたがし

 星降る夜空がよく見える、砂の原の小さなオアシスで。
 白鹿の女性と小さな子供が楽しそうに笑っている。
 女性ーーポシェティケトは子供を『クララ』と呼ぶ。
 クララーークララシュルシュカ・ポッケという名の砂妖精も『ポシェ』と呼んで笑む。
「ね、クララ。普段も今のような姿になれたら楽しいけれど…」
「……ごめんね?」
「いいえ、謝ることではないわ。難しいのはわかってる」
 だから。
 普段じゃできないことをしましょう、かわいい子。
 優しく、愛おしい笑顔でクララの手を自分の手に導く。
「お手々、繋ぎましょう? 抱っこも。いらっしゃい、かわいいクララ」
「うん!」
 小さな手と優しい手が合わさり、重ねたままポシェティケトは。
 もう片方の腕にクララの体を抱え上げ、そっと歩き出す。
 精霊疎通があり、言葉を交わさずとも意志のやり取りはできたけれど。今のように言葉と言葉で意志を紡ぐことはなく、この時が二人にはとても新鮮に思えた。
 歩きながら、二人は話をした。
「星がきれいね」
「お月様はあめだまみたいだね!」
 長い、長い夜を。二人はずっとずっと話していた。
 こんな時間がもっと続けば良いと思いつつも、それができないことは二人ともよく知っていた。
「クララ」
「うん?」
「これからも、どうぞよしくね。ワタシのかわいい牙」
 あなたと一緒なら、鹿はたくさん頑張れるのよ。
 そう優しく微笑む彼女の傍らで、金の砂が舞った。

成否

成功


第1章 第2節

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者

 早朝の森の中には、自然にありふれた川のせせらぎや葉擦れの音、小鳥の囀りが響いていた。
 当たり前にある自然の音。それ以外は無く。
 人がほとんど入っていないような、静かな森だった。
 木漏れ日が小さな日溜りを作る。その中に、ヨハンは静かに佇んでいた。
「仲良くお話できるのでしょうか、僕たち」
 静けさにこぼれる不安の吐息。
 どの世界でも食物連鎖は自然の摂理。奪い奪われを繰り返す生命の原理。
 人は、そうでなくてもほとんどが奪う側だ。そんな自分が奪われる側に感謝だなんて、身勝手かもしれない。
 それでも、と顔を上げれば。
「!?」
 ヨハンの周囲を人がぐるっと囲んでいた。
「仲良くはできないよ」
「それでも」
「私達は」
「君を恨まない」
 幼い子供が、可愛らしい少女が、優しげな青年が、皺の老人が。言葉を紡ぐ。
 それを聞いて、あぁ、そうかとヨハンは納得した。
 彼らは普段自分達が食べたりしている動植物が人の形を象ったもの。こちらに言葉を紡ぐための姿。
「だとしても。ありがとうという言葉を伝えたい。報いるためには世界に貢献することーー」
「いらないよ」
「誰も、報いるために生きてはいない」
「皆、必死に生き抜こうとしてるだけ」
 笑う彼らは報いる生き方を否定した。
 それでも。
「ありがとう」
 ヨハンに、そう返す。
 その言葉に、ヨハンは嬉しくなる。
 でも、報いたい。そういう生き方もあるのだと笑った。

成否

成功


第1章 第3節

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽

 遠くで祭り囃子が聞こえる黄昏の道。
 人の形を取った人馬の女性と小さな少女が手に食べ物を持ちながら歩いている。その様子は母子か年の離れた姉妹のようである。
 小さな少女は、元は二股の猫で。大喰いだった。
「お前のことだ、腹空いてるだろう?」
 何か買い食いしながら話そう。人馬の女性ーーラダがそう言って、ちょうどやっていた祭りの屋台でいくつもの食べ物を購入して。そのほとんどは少女ーーすあまに食べられてしまっていた。
「美味しい美味しいっ」
 姿が変わっても変わらぬ食欲に苦笑して。
 ラダは、この機会だからとずっと聞きたかったことを聞こうと思った。
「なぁ、すあま。お前は、私に引き取られて良かったのか?」
 ずっと胸のうちにつっかえていた問い。
 自分の勝手で家族から引き離したようなものだった。
 引き取ってからはなかなか上手くやれてるとは思っていたが、本心はわからなかった。
 だから。
 すあまはじっとラダを見上げ、そしてふわっと笑んだ。
「わたしは、ラダと一緒にいられてうれしい」
 すあまがたどたどしく言葉を紡ぐ。
「みんなと離れたのは、さみしいけど。ラダがあたたかいから」
 だいじょうぶ、と笑う少女が手を繋ごうとラダの手を求めて。
 ラダはそれに応じて。
 ラダも嬉しくて笑った。
「なぁ、すあま。知人の所に一匹、お前の兄弟がいるんだ」
 そのうち顔を見に行こう、と見下ろして。
 少女の喜ぶ声が夕焼け空に響いた。

成否

成功


第1章 第4節

アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手

 客席に誰もいない劇場の舞台にアリアがぽつんと立っている。
 こんな場所を意外とすんなり借りられたことに驚きつつ、傍らにヴァイオリンのケースを置いた。
 開けてみると見慣れた愛用のヴァイオリン。
「おおう……まさかお喋りできるとは!」
 この世界では物などと話ができると聞いてやって来たアリアは。
「こんにちは!」
「こんにちは!」
 挨拶をすれば自分と同じ声で返ってくる。
 ふと見上げるとアリアと同じ姿の少女が立っている。半透明で、実体が伴っていないような。
 アリアの姿をした少女がにっこりと笑む。
「どうしたの?」
「あっ、自分のヴァイオリンとお話しできるのが不思議だなぁって」
 妖精さんの悪戯かなぁと笑う。
 それから。
「あ、もし本物なら教えてほしいことがあるんだけど!」
「なぁに?」
 この前から練習している組曲がどうもしっくりこない。どうすれば人の心を打つ演奏になるかな、と首を傾げて。
「それはね?」
 半透明の少女がアリアに助言をする。優しく、丁寧に。
 教えてもらうとすぐに試したくなって。
「ね、早速練習するね!」
「うん、私も弾いてほしい!」
 舞台の中央に立ったアリアはヴァイオリンを構える。傍らに少女を伴って。
 奏でるは行き詰まっていた組曲。
「わぁ……! こんな感じだよ! 早速このまま練習だぁ!」
「うん!」
 劇場に音を響かせて、一人と一挺は時を忘れて。
 喜びに胸を奮わせて、劇場は奏楽に満たされた。

成否

成功


第1章 第5節

ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)
夢為天鳴

 優しい光が溢れる深緑の森で。
 ユースティアと二頭の真っ白な狼が佇む。
「結祈燈、結祈飾」
 ユースティアは彼らに呼びかける。
 彼らの本当の姿は二振りの愛剣。いつも共にあり、共に乗り越えてきた大切な家族。
 そんな彼らに、言葉を交わせる今だからこそ自分の気持ちを伝えられる。
「何?」
「なぁに?」
 ひとつは厳しく、もうひとつは柔らかく、共に優しさを秘めた言葉で続きを促す剣達。
「私は、未熟で、前に進むしか考えない愚昧者」
 記憶を失って、それでも前に進む理由ができた。誓いもある。
 そうだとしても。やはり不安は心のどこかにあって。
「私は、アナタ達に相応しい担い手なのでしょうか?」
 記憶を失う以前。元の自分だったならまだしも。その不安は一人では拭えなくて。
 その一端を、ぽつりと彼らに打ち明けた。
「相応しいとか相応しくないとかではない」
「ユフィが私達と共に在りたいかではないの?」
 白狼達はユースティアの不安を察しているのかいないのか。
 寄り添うようにその身を少女に擦り付ける。
「ユフィは記憶を失ってもユフィのままだ」
「あなたの手にあることが私達の望み」
 本来の姿では絶対に叶わぬ触れ合い。
 ユースティアはぎゅうっと二頭を抱き締めた。柔らかくて、温かい、日溜りの匂いがした。
「……ありがとう」
 顔を白狼達に埋めて呟いて。
 パッと顔を上げれば笑顔があって。
「アナタ達から愛想を尽かされないように精進しませんとね」

成否

成功


第1章 第6節

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳

 人が入ることをやめた山奥に、寂れた寺跡があった。
 久しく人の出入りがなかったお堂はボロボロで。輝きを失った仏像や仏具が転がっている。
 貴道は物と話ができると聞いて考えていた。
「物……物なぁ、特に思い入れのある物なんざーー」
 そこまで言いかけて。
 ふと思い出したのは。
「いや、そういやコイツがあったな」
 そう言って取り出したのは、1尺ほどの木彫りの仏像。それがかなりの量である。
 それは、貴道が勝負で勝った証。
 その仏の数だけ貴道は戦いで勝利し、そして相手の命を奪った。
 命を奪った者に対して、罪の意識や贖罪などは一切考えていない。それは単に勝負の結果でしかなく、向こうもそれを承知で勝負を受けたのだろうから。
「お互いに命を懸けて全力で戦ったのなら、罪など考える必要はない」
「だが、武人達の死を悼んでくれてありがとう」
「我らは本人ではないが、代わりに伝えよう」
 木彫りの仏像から、かつて貴道が戦い勝利した武人達の幻影が現れ、口々に言う。
 供養のために彫った仏像だ、どんな形であれ彼らの死を悼んでいることには変わりはない。
 だが。
(物と話せると聞いて、ほんの気まぐれで選んだものなんだが……)
 内心苦笑しながら、彼らに応える。
「もうアイツらと戦えないのは残念だ」
 貴道がそう笑むと、幻影達もそうだと応えて。
 今まで戦った者達のことを、この日貴道は思い出していた。

成否

成功


第1章 第7節

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸

 夜の世界。
 人がいない暗闇の中、寂れた神社にランドウェラが佇む。
 傍らにいるのは、電気を纏う人形。ランドウェラが異世界より持ち込んだ刀であるもの。
「一緒にこんぺいとうでも食べるか?」
「おう、貰うぜ!」
「はいはい。って人形の姿で食べられるのか」
「知らん」
 人形はこんぺいとうを受け取ると、口のようなところに入れてガリガリと噛み砕く。
「味がわかんねぇな」
 ぼやくように言う人形ーーカミナリに苦笑して。
「で。僕は君を武器として使ってない、ただの飾りになっているのだけど。やっぱり武器として使った方が良いのかい?」
 それはこの世界に来て刀に尋ねたかったこと。
「そらぁな。これでも刀だ、斬るために存在する」
「えー? ほら、せっかく一緒に来た数少ない仲間なのに壊れたら怖いじゃないか」
「壊れねぇようにヤナギが巧く使えば良い話だろが」
 ランドウェラがカミナリと呼ぶ刀の言うことは至極真っ当で。
「……ああ、そっちで僕のことを呼ぶのか。今はランドウェラだ」
 ガリガリとこんぺいとうを砕く音が響く。
「おい、無視するな。あ、ロードでもロウスでも良ーー」
「うっせ、ヤナギ! 早くこんぺいとうよこせ!」
 ぽこぽこと人形が足の脛を叩く。味はわからなくとも、感触は気に入ったようだ。
「こら、叩くな。やらないぞ?」
 ぴたりと止まるカミナリにランドウェラは。
「これからどう扱うかは分からないけどこれからもよろしく頼むよカミナリ」

成否

成功


第1章 第8節

マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー

 マギーは華やかな街を歩く。
 付き従うは、彼女がいつも持っている鞄が変化した執事のような少年。
 その鞄はマギーが実家を出る時に持ち出してきたもので。乳母から聞いた話では父親が若い頃に使っていたものらしい。
「そう言えば若い頃にやんちゃしたと聞いたことがあるので、その頃のお話を聞いてみたいなって……」
「ご主人様……いえ、元ご主人様の昔のお話ですか?」
「はい、どんなエピソードがあったのか、あなたなら知っているのかと……」
 聞いてはいけないことなのかな、と首を傾ぐ少女に。
 少年はくすくすと笑んで。
「聞いてはいけないことではないんです。ふふ、思い出すとちょっと笑ってしまいますね。聞いてみたいですか?」
「はい! だって、これからわたくし……いや、ボクが経験するかもしれないですしね」
 イレギュラーズになったからには、綺麗事だけでは済まないこともあるだろう。
 自分も何かしらやんちゃをするのかもしれない。
 その参考になればと思うのと、父親に対する好奇心もあって。
「それなら、何か買っていきましょう。飲み物と、お菓子を。どこかで腰を落ち着けてお話しましょう」
 少しだけ長いですからね、とウィンクを投げて少年が言う。
 執事風の少年ははぐれないようマギーの手を取って露店へ向かう。
 手を引かれたマギーは、少年といっぱい話をしようと思う。
 新しい相棒として、認めてもらえるように。
 長い時間を共に在れるように。

成否

成功


第1章 第9節

●終わりに少女は微笑んで
「どうでした? 大切な何かと言葉を交わしてきましたか?」
 境界案内人のデュナが笑んで、イレギュラーズに問う。
「楽しい時間、優しい時間、かけがえのない時間。一緒に過ごして、何かしら変化はあったでしょうか?」
 それなら良かったと、頷いて。
「それでは、皆さん。帰りましょうか。混沌の世界へ」

PAGETOPPAGEBOTTOM