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シナリオ詳細

勇者進水GC:逢魔合体ノワールクルーザーB

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ノワールクルーザー
 事件の始まりは幻想王国のワタツミ遺跡に隠し通路が発見されたことだった。
 古代より目覚めしレガシーゼロ『グッドクルーザー』が収められていた古き勇者の祠こと無人島ワタツミ遺跡にはホーリーエンジンの搭載や最終希望合体のアンロックに成功したときのみ開かれる通路があったのだ。
 通路の先にあったのは大量の金塊と、黒い古代船と、黒い棺。
 ことは慎重にあたるべきであるとして土地の領主ブレイブ・ペンドラゴン氏は海洋王国より雇った調査チームに解析を依頼。
 しかし世の重力は人の魂をもひくらしく、調査チームは反練達組織と海洋海賊組織による新規テロ組織『黒点同盟』に協力しペンドラゴン一族を裏切ったのだった。
 一方で幻想貴族ペンドラゴンと彼の養子扱いとして戦っているグッドクルーザー。そして彼の友であり同じ使命を持つイレギュラーズ――このCGチームは古代兵器や秘宝種の悪用を認められぬとして黒点同盟の壊滅を宣言。
 CGチームと黒点同盟による全面抗争が幕を開けたのだった。

 飛来する無数のグレネード。
 グッドクルーザーは肩に装備したビームランチャーを発射し、レイダーたちをグレネードごと迎撃。
 打ち込まれるサブマシンガンの弾を装甲で弾きながら走り出し、その拳でもって今なお銃撃するレイダーを殴り飛ばした。
「当機はグッドクルーザー! 希望の戦士であります! 抵抗はやめなさい。命までもとりはしません!」
 勇ましく名乗るグッドクルーザーにしかし、レイダーたちは反撃の手を緩めない。
「ならば――」
 グッドクルーザーは胸のエンブレムに手をかざし、まばゆい光を解放した。
「希望合体(パンドラフュージョン)――!」
 波を割ってやってくる古代船ブルーライダー。
 それを迎えるように飛び上がったグッドクルーザーは古代船と共に変形合体。巨大なボディと武装を人型戦闘艦ビッグクルーザーへと進化した。
 両腕や肩から放たれる無数の光線がレイダーたちをなぎ払う。
 その圧倒的な力量差は勝負を決着するに十分である……と、想われたが。
「相変わらずクソ真面目でバカ正直だなあ、GC」
 初めて聞く声。
 しかしずっと昔に聞いたような懐かしさをおぼえて、グッドクルーザーは思わず動きを止めた。
 途端、巨大な十字手裏剣がグッドクルーザーに直撃。
 転倒した彼の頭上で、黒い影が交差した。
「逢魔合体(デモニアフュージョン)――!」
 黒い秘宝種と黒い古代船が合体し、巨大なボディと武装をも人型戦闘艦ノワールクルーザーBへと進化。
 その協力なパワーでもって、グッドクルーザーを踏みつけにした。
「ぐああ……!」
 エンブレムを踏み砕かれそうになりながらも、なんとか腕で抵抗するグッドクルーザー。
「貴様は、一体何者……!」
「おいおいィ。俺を忘れたのかよGC。俺たちは同じ場所で生まれた大親友だったじゃねえか……ま、もう意味ねえけどな」
 ノワールは彼を見下ろし、皮肉げに笑った。
 その表情に、グッドクルーザーの記憶がぴりりとスパークする。
 肩を並べて戦った日々、拳を合わせて笑い合った日々、親友という感覚を、彼はおぼろげながら思い出した。
「GC、お前はマジでこんな世界が続くべきだとか思うのかよ。貴族はクソだし海賊は好き放題、どこの国も自分のことしか考えねえバカばっかりだ。争いも差別も貧困もまーるでなくならねえ。こんな世界は一回滅んで、いちから作り直した方がいいと思わねえか」
「それは……」
 右腕を回転ノコギリに変化させると、ビッグクルーザーの顔面へと振り下ろす。
 これで終わってしまうのか。
 敗北し、破壊され、二度ともどらなくなってしまうのか。グッドクルーザー!
 だがそんな運命を覆す、希望の光がいま差した。
 そう。
 まぎれもなく。

 ――あなたの到来である!

●グッドクルーザー救出作戦
 幻想貴族ブレイブ・ペンドラゴンによる緊急コールに応じたローレット・イレギュラーズ。彼らの下されたのはグッドクルーザー救出の依頼であった。
「黒点同盟……彼らは練達から離反したテロリスト集団だ。
 世界のルールに挑み元世界への帰還を目指す練達の姿勢に反対し、高度な技術力によって混沌を武力支配をすべきだと主張し力をつけ始めている。
 まだいち幻想貴族の戦力で押さえ込みができているが、ワダツミ遺跡で発見された黒い古代船と秘宝種が彼らの手に渡り、あろうことか迎合してしまった。
 これらは世界に対する怒りや欲望を力に変え、巨大なロボット『ノワールクルーザーB』となることが先ほど判明した。
 このままでは彼らのレイダー拠点制圧に向かったグッドクルーザーが危ない。
 ただちに現場へ急行し、グッドクルーザーを救出。そして力を合わせてレイダー拠点の制圧を行って欲しい」

 一切の記憶もなく古代遺跡から目覚めた。グッドクルーザー。
 彼は魔を払う使命だけを与えられ、しかしイレギュラーズという仲間達から勇気と正義を教わることで世界と戦う力を得た秘宝種である。
 そんな仲間を失うわけにはいかない。
 いざ、海洋の隠れ拠点『エリアD041』へ出撃せよ!

GMコメント

■■■オーダー■■■
・成功条件:グッドクルーザーの救出
・オプションA:レイダー拠点の制圧
・オプションB:ノワールクルーザーの撃退
・オプションC:グッドクルーザーに『かつての友と戦う勇気』や『自らの信じるもののために戦える正義』の心を教える

※成功すると幻想名声が付与されます。
 ですがシナリオの結果によっては練達や海洋に名声が付与されることもあります。

■■■シナリオパート■■■
 シナリオは前半と後半の2パートに大きく分かれます。

●前半パート:レイダーとの戦い
 今まさに倒されようとしているグッドクルーザーを救出し、一旦ノワールクルーザーを追い払います。
 この時点で決定している状況は以下の二つです。
☆ノワールクルーザーに踏みつけにされ、グッドクルーザーはトドメをさされそうになっている。
☆グッドクルーザーは倒されかけ、パンドラ復活状態の微少なHPで残っている。
☆希望合体状態は解除されている。

 ノーワルは周囲のレイダーに戦いを任せ拠点の奥へ引っ込んでしまうため、ここからの戦いはしばらくレイダーたちが相手になるでしょう。
・レイダー
 黒点同盟に所属する略奪者たちです。
 練達の兵器や豊富な人員を強みとしており、ビームガンやレーザーブレード、パワーアーマーなどを装備して襲いかかってきます。
 ですがこの拠点のレイダーたちは小さな村や島を襲うための人員であり、ちゃんと武装したそれなりのレベルがあるイレギュラーズたちに勝てるほど固体戦闘力が高くありません。
 勢いよく蹴散らしましょう。

●後半パート:ノワールクルーザーBとのチェイスバトル
 皆さんがレイダーを蹴散らし基地制圧をある程度終えた段階で、拠点に残された財産や重要資料その他を古代船に乗せ、ノワールは撤退します。
 これに成功されると新たなレイダー拠点のすみやかな建設を許してしまうため、なんとしても阻止しなければなりません。
 グッドクルーザーの古代船にのり、ノワールを追いかけましょう。

 ここでの戦いは古代船と逢魔合体したノワールクルーザーBが反撃に出るという形で起こりますが、この段階までにグッドクルーザーに勇気と正義を教えていたなら、彼がもつ力によってこちらも強力な攻撃『最終希望合体』を仕掛けることが可能になるでしょう。

・最終希望合体(ファイナルパンドラフュージョン)
 希望の戦士イレギュラーズから勇気と正義を教わり真の勇者へと覚醒したグッドクルーザーにアンロックされた秘められし力。
 古代船クルーザーの他、イレギュラーズたちが持ち寄った小型船たちを変形合体させることでごくわずかな時間だけ巨大ロボット『ファイナルビッグクルーザー』へと変身できます。
 このときの彼は内部に乗り込んだイレギュラーズたちの戦闘スタイルを反映させた合体攻撃が可能となります。
 冠位魔種すら退けた希望の戦士たちが力をひとつにしたならば、どんな敵も必ずや討ち滅ぼすことができるでしょう。

■船について
 1PCにつき1隻まで小型船系アイテムを装備していた場合に限り自分の船を持ち込むことが可能です。
 誰も持っていない場合普通の小型船を三隻ほど借りた扱いになります。
※もし装備しているアイテムが未特殊化アイテムだったとしても、『俺の船はこういうデザインだぜ』とプレイングで主張してかまいません。是非キャラを出していきましょう。

■NPC紹介
グッドクルーザー
魔を倒すという使命だけを与えられた古代の眠りより目覚めたロボット。
イレギュラーズを『希望の戦士』と呼び、勇気や正義を教わっている。
https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3n000117
https://rev1.reversion.jp/scenario/replaylist?title=%E5%8B%87%E8%80%85%E9%80%B2%E6%B0%B4&penname=&type=&attr=

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 勇者進水GC:逢魔合体ノワールクルーザーB完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年05月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
リサ・ディーラング(p3p008016)
蒸気迫撃

リプレイ

●友情は落ちたガラスのように
 迫る回転ノコギリ。グッドクルーザーが表情をこわばらせた――その瞬間。
 ノワールクルーザは地面を蹴って飛び退いた。
 それまでノワールのいた場所を粒子砲の光線が抜けていく。
「この光は……皆さん!」
 ハッとして顔を上げたグッドクルーザーに、ゼファー(p3p007625)が槍を高く掲げて見せた。
 海を猛烈なスピードで進む棺型の船。オールを漕ぐ『彷徨う赤の騎士』ウォリア(p3p001789)によって加速したそれは、海賊拠点の船着き場へと強引に乗り上げた。
 エナジーセルを再装填したエナジーランチャーをかついだレイダーたちが身構え、激しい銃撃を浴びせてくる。
 が、船から飛んだゼファーは回転した槍で光線を弾き急接近。その勢いを殺すことなくレイダーを殴り倒すと、大回転をかけながらレイダーたちを蹴散らし始めた。
「どうせ突っ込むなら派手に目立って、思いっ切り風穴を開けるもよし、狙いを惹き付け道を作るもよし。
 どっちにしたって、ええ。先ずは大暴れしてやりませんとねぇ?」
 ブレーキをかけ、レイダーたちへ槍を突きつけてみせるゼファー。
「何とも爽快な戦じゃないかフロイライン」
「オーケイ、先陣はお任せあれ。置き去りにならない様に確りついて来なさいな」
 剣を抜き突撃してくるレイダーたち。
 ウォリアは船から下り通常の五倍はあろうかという巨大なオールを担ぎ上げるとレイダーを横殴りにした。
「炎と風、互いに存分に力を振るうとしよう」
 ごう、と目の奥から赤い炎を燃え上がらせるウォリア。
 『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)の援護射撃を受けながら、二人はレイダーたちへと突撃した。
「ノワールクルーザー……黒いグッディ……?」
「何やらピンチの予感っす!」
 DJブース付小型船マイティクルーザー号を船着き場へと乗り上げさせる『Punch Rapper』伊達 千尋(p3p007569)。
 同じく小型蒸気船を乗り付けた『ザ・ハンマーの弟子』リサ・ディーラング(p3p008016)が船の手すりから身を乗り出してボウガンを発射。
 船から飛び出しレイダーを蹴り倒した千尋と共に海賊拠点へと攻め込んでいく。
 ズザァと砂浜部分を滑るように停船した『暴風バーテンダー』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)の船『S.B.水上デリバリーサービス』。本来出張店舗として機能するこの船を、モカは強襲に用いた。
 従業員通用口から現れ、剣を突きつけてくるレイダーたちへと胸を張る。
「どうやら、こうまで歓迎されないデリバリーは初めてだな」
「好き勝手はそこまでだ!」
「まずはグッディを助けるよ!」
 船の屋根から飛ぶ『帰ってきた牙』新道 風牙(p3p005012)と『雷虎』ソア(p3p007025)。
 二人はダブルキックによってレイダーを蹴り倒すと、風牙は槍をソアはスパークする爪をそれぞれ突きつけるように構えた。フッと唇をわずかにゆがめるように笑うモカ。
「反撃開始だ、グッドクルーザー!」

●勇気のありかと正義のゆくえ
「ほう、出来損ないの鉄くずだけかと思えば……」
「雑魚が何人増えたところで邪魔なだけですね。さっさと終わらせましょう」
 長い銀髪の刀使いと金色の眼鏡をしたローブの男が積み上がったコンテナハウスから出ると、武器を取ってグッドクルーザーの前へと飛び降りた。
「まずは貴様から片付けてやる」
「くっ……!」
 助けが来たとは言え絶体絶命のピンチであることにはかわりない。
 刀がグッドクルーザーめがけ振り下ろされようとした――その時。
「グッディに何してくれてんだオラァ!」
 間に割り込んだ千尋が両腕を交差し、レイダーの刀をその腕でもって受け止めていた。
 無論刃はざっくりと肉を切り骨に達しつつあったが、はをくいしばってこらえる。
「痛っ……てえなあ!」
 反撃に蹴りを繰り出した千尋を、レイダーは飛び退くことで回避。
 千尋はすぐそばに落ちていた鎖をぐるぐると腕と足に巻き付けると、魔術師レイダーへと身構えた。
 そこへ魔術を打ち込もうと構えるローブ姿のレイダー。
「チヒロさん伏せて!」
 積み上がった木材の裏から様子を見ていたリサは杭打ち機の安全レバーをあげ、魔術師めがけて杭を発射。
 杭は空中で四つに分裂すると内側に大量に詰め込まれたフレシェット弾が拡散。ヌオオと言いながらその場に伏せた千尋の頭上を越え、魔術師たちへと大量の釘が降り注いだ。
「グッドクルーザー、状態はどうっす!?」
 リサは素早くグッドクルーザーへ駆け寄り、彼の状態を観察した。
 あちこちでバチバチとスパークを起こしているが、これ以上戦えないというほどではなさそうだ。
「今私ができるのは応急処置程度っす。本格的なヒールはできないっすけど……」
「いいえ」
 グッドクルーザーはゆっくりと首を振り、そして立ち上がった。
「充分です、希望の戦士リサ」
 彼の当てた自らの胸は、淡く赤く、まるで鼓動のように点滅していた。

 あちこちの建物から黒衣の集団が現れ、ナイフやレーザーガン、ヒートホークといった武器を手に展開する。
 一方で風牙とソアはレイダーたちへ爪と槍を突きつけ、キッとにらみつける。
「コソ泥ども! この新道風牙の剣を存分に味わっていけ!」
「ぬかせ、救済主義の偽善者どもめが!」
 レーザーガンを連射するレイダーの攻撃を風牙は槍の回転によって防御。
 懐へ滑り込むと槍による豪快ななぎ払いによって吹き飛ばす。
 そんな風牙の頭上を飛び越え、宙返りをかけたソアは別のレイダーに爪による上段斬りを仕掛け、さらなるスピンで周囲のレイダーたちを切り裂いていく。彼女の爪の跡が電撃によるラインでひかれ、レイダーたちをバチバチと吹き飛ばした。
「チッ、すばしっこい奴がいる」
「囲んで取り押さえろ。計画の邪魔になるまえに始末する」
 痛いほどに突きつけられる殺意と敵意。
 ソアはその中心にあって、表情を曇らせた。
(ボクには正義というものは分からない。
 ううん、分からなくなった。
 薄ぼんやりとしたイメージで持っていたものが人を知って霧散しちゃった。
 だから今のグッドクルーザーの気持ちは分かる気がするよ、その迷いが……)

 巨大な十字手裏剣が飛来し、千尋たちが吹き飛ばされる。
 大勢のレイダーが剣をとり、グッドクルーザーへと迫った。
「オイオイGCィ、新しいお友達か? こんな傷のなめ合いで世界がどうにかなると思うのかよ」
 戻ってきた手裏剣をキャッチし、剣へ変形させるノワール。
 と、そこへ高所より飛び降りてきたモカの蜂針乱舞脚が炸裂した。
 ノワールを中心に駆け抜けたモカの残像が、集まったレイダーたちを一斉に崩壊させる。
「一理ある。ノワールクルーザー」
 拳と片膝を地に着けた姿勢で止まったモカが、ゆっくりと立ち上がった。
 グッドクルーザーに背中を見せつけ、そしてノワールへと指を突きつける。
「だがな……世界は急には変わらんのだ。
 私たちは一手一手、世界を良くしようと棋譜を進める。
 ノワール。あなたがやろうとしているのは、チェス盤をひっくりかえし勝利を騙る行為にすぎない」
「王国どもの作ったチェスゲームの駒になれってのか」
「そうではない。いや、仮にそうであったとしても……」
 指を突きつけた姿勢のまま、ぐるりとモカは反転。グッドクルーザーへと指を突きつけた。
「グッドクルーザー、悪に染まった友と戦うのは辛かろう。だがあなたは正義を貫け!」
「正義を……」
「そうだよグッドクルーザー、あなたも希望の戦士でしょう?」
 駆けつけたソアたち。
 ウォリアはレイダーの足を掴んでぐるぐると振り回すと、近くの建物めがけて投げ込んだ。
 脆い木造建築であったのだろう。無理に積み上げたコンテナハウスががらがらと音を立てて崩れていく。
 ウォリアは熱気の息を吐いた。
「この世は愚者しかいない。自分以外は、と思う者すら」
 振り返り、めらめらと陽炎をあげる。
「だが、この儘成らぬ世界でも。
 諦めずに明日を勝ち取れる者こそが、「正義」の名に相応しい。
 立て、鋼の勇者。守りたい者の為、守らなければならない明日の為」
 正義とは本来、世界のためには存在しない。
 みんなと自分の間に存在する、形無き力だ。
 それゆえに、同じ正義をもっていても違う個人であればその姿を変える。
 行くべき道は、自分自身で知り、そして進むしかない。
 それをひとは、正義と呼んだ。
「ま、確かにロクな世の中じゃありませんしね。ぶっ壊したくなる気持ちも理解出来なくはありませんとも」
 槍によってレイダーたちをなぎ払い、こつこつとヒールを鳴らして歩くゼファー。
 『使命なく生まれた者』と、『使命だけを持たされて生まれた者』。ゼファーとグッドクルーザーの間に、視線が交わされる。
「だけれど、ねえ」
 『使命以外の全てを授かった者』と『使命以外の何も持たされなかった者』。
 ゼファーはどこかシニカルに笑うと、ノワールへと振り返った。
「目覚めた後、真っ新になった貴方が。
 実際に見て、聞いて、触れた世界はどうだったのかしら。
 其れは、無かったことにしてしまっても良い程度のものだった?」
「戦士ウォリア、戦士ゼファー……」
「ハッ。くだらねえ! なにが正義だ!」
 ノワールはどこか強がるように叫ぶと数歩後じさりして反転。港へと走り出した。
 手を伸ばすグッドクルーザー。
「ノワール……!」
「追おう、グッディ!」
 風牙や千尋が彼の両サイドに立ち、コンと腕を叩いた。
「まだ、言ってやることが残ってるだろ」

●勇気は力の名前ではない。しかし力と等価になるときがある。
 分離変形した黒い古代船に飛び乗り、ノワールクルーザーは海へと走り出した。
「クソッ。まあいい。拠点の一つが潰れただけだ。ここさえしのげば……」
 が、後方から追いかけるウォリアの船に気づき、ハッと振り返った。
「速度をあげるぞ」
 棺型の船の座席にてオールを掴み、豪快にこぎはじめるウォリア。
 これによって加速した船はノワールのブラックライダーへと激突。船首に立っていたゼファーが勢いよくノワールクルーザーへと肉薄した。
 黒い剣でゼファーの攻撃を受け止めるノワール。
「ここで逃がすわけにはいかない……っていう依頼なのよね。そうでなくても追いかけたけど」
 ゼファーを追い返そうと掴みかかるノワール……のすぐ横を、大斧がすり抜けるように飛んでいった。
 ウォリアが斧をぶんなげ、ノワールクルーザーの船へダメージを与えたのだ。
 船はバチバチと火花をあげ減速。
 更にモカの出張船がモーターを唸らせて追いつき併走状態となった。
 モカはフックを投げ縄のようなフォームでなげるとブラックライダーへと引っかけ、船を強引に横付けしていく。
「風牙、ソア。飛び込め」
「さんきゅう!」
 屋根部分に乗っていた風牙とソアが助走をつけてブラックノワールの船へと飛びうつり、同時に斬撃をたたき込む。
「調子に乗ってんじゃねえ!」
 ノワールは古代船と再び変形合体しノワールクルーザーBとなると、黒い大剣によって彼女たちをなぎ払った。
 海に投げ出されそうになったソアたちだが、それをグッドクルーザーの船がキャッチした。
「皆さん、無事ですか!」
「今度はこっちが助けられちまったな、グッディ」
 へへ、と笑って起き上がる風牙。
「なあグッディ。あいつの言う通り、この世界はクソみたいなのの方が多いかもな。
 けど、そんなのばっかじゃないことは、グッディも見てきただろ?
 オレたちだけじゃない、今まで一緒に戦ってきた人たちの勇気を、さ」
「そうだね。あの意地悪ロボットの言うことも正しいのかも知れない」
 ソアは立ち上がり、再び電撃を纏い始める。
「けどボクは知ってる、あなたも知ってるはずなんだ、見てきたでしょう?
 たとえ陰ることがあったとしても人間はまさに光なんだ。
 それをこれからずっと一緒に証明して見せようよ」
「そうだぜグッディ!」
 船から大音量でエモーショナルミュージックを流しながら、千尋が腕組みしながら船を横付けしてきた。
「よくわかんねえけどお前あの黒いの昔ツレだったんだろ?
 お前はアイツの言う通り世界が滅んでもいいと思ってんのか!
 そしてアイツにそんな罪背負わせちまっていいのかよ!」
 千尋の目の奥には、深い悲しみに歪んだかつての友の思い出がよみがえっていた。
 憎しみや怒りに狂い、復讐に燃える友の姿。それを見過ごすことなく、拳を握った記憶。
「ダチとマジで戦う辛さは俺にもわかる……。
 けどな! お前の気持ちを伝えるんなら今は踏ん張れ! 戦え!
 戦うって姿勢でお前の正義を示すんだよ!
 これは倒すための戦いじゃねえ、想いを伝えるための戦いだ!」
「想いを……伝える……?」
「そうっす。グダグダとした世の中なんていつものことじゃねえかっす。
 お友達の言う通りの事は現に起きているっすからね。
 だからこそ人にとって良い事を為す正義はとても格好良いと思うんすよ!」
 千尋の後ろでグッと親指を立ててみせるリサ。
「グダグダ管巻いて勝手に絶望している馬鹿を叩き起こして、世界の良さをもう一度見せようじゃねぇかっす!」
「そうさ。お前が倒れない限り、お前の正義は折れねえ!
 それでも立てねえってんなら、俺達が支えてやる!」
「……!」
 と、その時。グッドクルーザーの胸にあるコアと古代船のコアが強く発行、点滅した。
 高鳴る胸の鼓動のように、熱く激しく、そして何かを叫びたがっているかのように。
 不思議と。グッドクルーザーと仲間達の脳裏にその言葉が自然と浮かんだ。
「「最終希望合体(ファイナルパンドラフュージョン)!!」」

 青き輝きを胸に飛び上がるグッドクルーザー。
 分離変形した古代船ブルーライダーが彼の周囲に配置された……と同時に、ウォリアの棺船、モカの出張船、千尋のDJシップ、リサの蒸気船が飛び上がりそれぞれ変形。
 複雑な変形過程を経て、ここにファイナルビッグクルーザーが誕生した。
「船が増えたくらいでよォ……!」
 巨大な十字手裏剣を投げつけるノワール。
 しかし、ファイナルビッグクルーザーに合体した棺型チェストプレートとドラゴンを彷彿とさせる甲が燃え上がる炎によって手裏剣を弾き飛ばし、左腕に装着された縮退霊子加速砲を発射した。
「ぐおっ……!」
 怯んだ所にウィングブースターを展開。
 急速に接近をかけると、ゼファーの槍を彷彿とさせる右腕によって強烈な突きを、風牙の槍を思わせる足で蹴りを、更に『Stella Bianca』のゴールドロゴが輝く腰によってさらなるスピン。リサを思わせる蒸気を豪快に噴出し、トドメの蹴りをたたき込んだ
 その巨大なボディからは想像もつかない連続攻撃に思わず吹き飛ばされるノワール。
「あんなに絶望みたいな敵だったノワールがちょっぴり小さく見えるよ。グッドクルーザー、負ける気がしない!」
 ソアは自らの精霊としての力をファイナルビッグクルーザーに行き渡らせると、激しい電撃を胸元へと集中。
「おいオメーノワクルコラァ!
 一人で世界を知った気になってんじゃねえぞオラァ!
 グッディの想いをその身で受けな!
 『MUGEN ROAD』だァーーーーーッ!!」
 巨兵となったグッドクルーザーの中にそれぞれ乗り込んだ八人のイレギュラーズ。
 千尋はレバーを握りしめ、気合いとともに押し込んだ。
 放たれる正義の光。
 ノワールは光に包まれ、そして……。
「なんだよGC……やるじゃん……へへ」
 わずかに笑い、大爆発の中に消えた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――任務完了
 ――ノワールクルーザーの行方は、いまだ分かっていません

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