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シナリオ詳細

続・勇者の正義

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 黒い翼が空を覆い、魔物が地を這う世界に光明があった。それこそが勇者。勇者だけが魔王を倒すことができると言い伝えられている。
 だが、今いるのは勇者候補のみ。正式な勇者として認められるには、賢者から聖剣を受け取る必要があるのだ。
 そのたった一人の勇者候補であるルーはなんとしても聖剣を手に入れるのだと力を入れていた。それは彼の幼少期に遡る。

 ——

 ————

 「お父さん、お母さん、かくれんぼ? うん! やる! お父さんもお母さんも早く見つけてね!」
 クローゼットの中に隠れた僕は全く知らなかった。両親が僕を魔物から遠ざける為に、突然かくれんぼなんて言い出したなんて。
 逃げてきた両親が僕の目の前で魔物に殺された。魔物はピチャピチャと血を啜り、臓物を引きちぎっては食べた。
 吐き気を催すのを必死に堪えながら、僕は震えながら、それを見ているしかなかったのだ。

 ——なんと非力なんだろう

 ——なんと無力なんだろう

 ——なんで僕の両親が死ななきゃいけないんだろう

 魔物は僕の両親を食べ終えてノソリノソリと周りを物色したが、僕は幸運なことに見つからなかった。僕は両親の願い通りに生き延びたのだ。

 ————

 ——

 ルーの胸には魔物を同じように殺してやるという復讐心が灯った。それからは魔物に復讐してやる一心で強くなってきた。人の中では一番強いという自負もある。
 だから、ルーは信じてた。聖剣を手に入れられるに違いないと。だが、賢者に僕の正義を語っても、賢者は首を横に振るばかり。
 聖剣を誰かが手にできなければ、この世界は滅んでしまう。

 神は祈った。世界を誰か救ってください、と。

 カストルは特異運命座標に声をかけて回っていた。
「世界が一つ滅びそうなんだ。その世界では魔王と勇者が戦うはずなんだけど、勇者候補はいたんだけど、勇者にはなれなくて……。このままじゃ、魔王が世界征服を果たしてしまう寸前なんだ。だから、どうか、力を貸してほしい」 

NMコメント

はじめましての方もそうでない方もどうぞご贔屓に。綴です。
うっかりラリーを途中で止めてしまったマヌケさんは僕です。ということで、前編の『勇者の正義』の2章、3章に当たる部分を、このラリーでは行います。
前編出ていなかった方も章の途中からでも、今までいたていで、気軽にご参加ください。

●世界観
魔王がついに王都へと攻め込み、沢山の異世界から来た勇者が魔王軍と戦うお話です。

1章:魔王戦
王都での魔王との戦いになります。手に入れた聖剣を使って魔王を倒して下さい。魔王は負の感情を吸うことで、更に強力になります。また、魔王の周囲には50匹程度の魔物がいて、30分に一匹程度増えていきます。魔物達は、主に魔王をより強くするために王都の人々の負の感情を増加させようとしています。有り体に言うと残虐です。進軍はその為、早くはありませんが、救わなければ死ぬ命も多くあることだけは頭にいれておいて下さい。
 尚、途中参加の方は、聖剣をもらったていで動くこともできます。
 また、聖剣の機能に識別をつけなかったのですが、ついているものとします。

3章:秘密

NPC
勇者候補:ルー
ルーは目の前で魔物に両親を殺されました。今までは復讐心だけで、魔物を倒し、勇者候補として認められました。ですが、正義を賢者に認めてもらうことができず、聖剣を手にできずにおります。ですが、サイズとの出会いにより復讐心を抑制する鎧を身につけています。

是非、勇者になって思いっきり活躍しましょう!

  • 続・勇者の正義完了
  • NM名
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月17日 16時26分
  • 章数2章
  • 総採用数17人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

 勇者達の活躍により、王都の人々の多くは守られ、魔物は消え去り、魔王は倒れた。これで平和がやってきたと思ったのだったが、これは終わりではなかった。
「我は不死の存在。魔王の魂は次代へと受け継がれる。ルー、貴様だ!」
 魔王の亡骸から黒い塊が飛び出したと思ったら、ルーに飛びついた。
「よい魂だ。復讐心を燃やせ。我を憎め。もっとだ!」
「僕はもう今までのように復讐心に縛られない。人を守るんだ。僕のような人を増やさないために!」
 ——ルーよ。よくぞ、その結論に至った。汝は勇者に相応しい。
 ルーや勇者達の脳内に賢者の声がしたと思った瞬間、サイズに作ってもらったルーの剣が光出す。
「今更、勇者になるというのか!?」
「今からでも遅くない。俺は魔王になど取り込まれない」
 ルーが剣で魔王の魂を断ち切る。
「……ぐっ……。お前の代わりなどいくらでもいるわ!」
 そういうと、魔王の魂は恨みの深い王都の民を縛りつけ、体を乗っ取ろうとし始めた。
 再び賢者の声が頭の中に直接送られてくる。
 ——どうか、この負の輪廻を断ち切ってください。この世界から魔王を消して欲しいのです。そして、勇者も魔王もいらない世界へと導いてください。


第2章 第2節

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚

 ノリア・ソーリアは鎮痛な顔で一人、王都に佇む。それは魔王の魂にとっては好都合であった。ノリアを魔王は乗っ取ろうとする。
 だが、その瞬間、魔王の記憶が蘇る。それは勇者だった自分だった。

 ——

 ————

 愛する妻を殺した魔物が憎かった。それを束ねる魔王はもっと憎かった。
 聖剣を手に入れて、憎い魔王を倒した。それでも自分の心に吹き荒ぶのは虚しさだけだった。
 そこにつけ込んできたのが魔王の魂だった。力さえあれば、力さえあれば……と手を伸ばしたのが間違いだったのだ。
 そこからは地獄だった。ずっと聞こえ続けるのだ。人々の怨念、憎悪、醜怪——そういったものが延々と聞こえ続けるのだ。
 魔物は俺から産まれ続け、それが憎くて仕方なかった俺はいつの間にか魔物の方が人間よりはマシなのではないかと思えるようになった。
 
 ————

 ——

 魔王の魂はノリアを憎んだ。だが、ノリアの聖剣である透明なドレスはそれを倍の慈しみにして魔王に返す。それは魔王にとっての悪夢の始まりで、魔王の魂の終焉だった。
 ノリアは魔王が哀れだった。魔王が魔王になったのにも、なんらかの理由があるのだろう。ただ否定して滅ぼしても、それで癒されることはないだろう。だから、受け入れた。
 ——それで、魔王のかなしみを、癒せるのなら……。
 一つの魔王の魂は春になり雪が溶けるように消えていったのだった。憎しみから漸く解き放たれて……。

成否

成功


第2章 第3節

黒鴉 拓哉(p3p007827)
!!すらがびた

「だから! 難しい事は! 分からないっす! もう怒った! 此処からはお説教の始まりっすよ!」
 黒鴉 拓哉は黒髪を乱暴に掻きむしり、柔らかな頬をハムスターのように膨らます。如何に見た目は可愛らしくとも、それは拓哉の激怒の現れだ。
 拓哉はオーラを熱く高まらせる。それで怨念や恨み辛みに縛られていそうな人を包み、オーラに反応する者を探す。反応すれば、それは魔王の魂に蝕まれている人に違いないからだ。
(魔王の蒸し焼き……美味しくはなさそうっす)

「アァ……何をする! 俺は魔王の力で、俺を見下してきた奴らを殺してやるんだ!」
 襤褸の服を着た男は両手を振り回し、拓哉に襲いかかる。デタラメな男の攻撃を拓哉はあしらう。向かってきたところを足払い。男がどうっと倒れ込んだら、そのまま馬乗りになる。
「気持ちは分かるっすよ? 勇者とか魔王とか居て、神や賢者まで居るのに何も変わらないなんて辛いっすよね、アンタ達も。でも先生は沢山居るんすから勉強する事は出来るっすよ」
「先生なんてどこにいるっていうんだ!」
「人生の先輩はみんな先生っすよ。喧嘩はおしまい! 俺も沢山暴れたから、後で怒られちゃいそうだし、沢山、一緒に怒られてあげるっす」
「うっ、うっ……俺はこんなガキにも能力も人としても劣るのか」
 拓哉は少し唇を尖らせる。
「そりゃあ、まだ背は低いっすけど、そのうち大きくなるっす! まだまだ成長途中っすよ。俺もアンタも」

成否

成功


第2章 第4節

メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女

「ようするに魔王に体を乗っ取られそうになっている人たちから負の感情を無くせばいいのよね」
 メリー・フローラ・アベルはそう言って、口角をニィッとあげた。つまりは簡単な話だ。怪しい奴全員の意識を失えばいい。
 一時的ではあるが、効果的だ。意識さえなければ、負の感情を抱くことすらできないのだから。
 メリーは只管に王都の民に慈術をかけ続ける。その姿は悪魔のようにみえたという。
 だが、それとて一時の姿。魔王の魂さえいなくなれば、ちゃんと回復する手段として緑の抱擁を用意してあるのだから。その時は、きっと聖母のように、感謝されることだろう。
 その時のことを思いながら、今は怪しい人を気絶させることに注力するメリーであった。

成否

成功


第2章 第5節

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者

 ヨハン=レームは聖剣を漸く手に入れたルーに話しかける。
「そう、いくらでもいるのですよ、魔王の代わりも……勇者もね。次の世代に受け継がれていくのは魔王だけではない。魔王、お前がいなくならない限り、勇者も滅したりはしないのです」
「僕はもうそんなことを終わらせたい!」
 ルーがそう口に出すと、ヨハンは苦笑する。
「短い期間で大分変わりましたね。僕の仕事は不可能を可能に変えること。一時しのぎで終わっては困るのです。勇者ルーのお仕事も賢者サマのお仕事も増えるの、しんどいでしょう?」
 次はルーが苦笑させられる。
「はい、そうですね」
「はは、残業を押し付けてはいけませんね。この辺がお仕事としても英雄譚としてもキリが良いですし……」
 サイズはルーの聖剣を熱心に観察している。元々、邪の魔剣であるため、聖剣付与されたことによって、聖と魔を帯びた矛盾剣となっていた。聖剣と二刀流できるように作っていたのにも関わらずだ。
「だが、魔王船はなかなか難しい。ルーの聖剣は負の連鎖を断ち切るには丁度いいと思う。だが……気を付けろルー、俺が見た感じ、もはやその剣は力が強すぎて修理は出来ないし、刃には余る過剰の力で、耐久性もギリギリだ……。使い所を誤れば力の余波で魔王以外の者…この世界の住人を殺してしまうだろう……」
 ルーはサイズの言葉にゴクリと息をのむ。以前のルーなら、それも仕方ない犠牲だと思っていただろう。だが、今のルーは一人の犠牲だって出したくないと思っている。サイズはルーの変化をしっかり見極めた上で、重い口を開く。
「チャンスは数回あるかないか……可能なら一発で決めろ。お前が自棄にならず、未来を諦めず足掻く限りは力を貸そう……」
「サイズさん、ありがとうございます!」

 魔王の魂の前でヨハンが気炎を吐く。
「仕上げといこうか!!」
「おー!!!!」
「ルー、我のものになる気になったか」
「そんなのはお断りだ! 魔王も勇者もいない平和な世界を作るんだ!」
「世迷言を! 知っているだろう! この世の中が如何に理不尽で、如何に腐っているかを!」
「知っている! でも、それだって少しずつ変えていけばいいんだ! 僕は決して理想を諦めない! みんなに教えてもらった事を胸に、必ず平和な世界を作るんだ! 復讐なんて起きない平和な世界を!」
 ルーが聖剣で一刀両断し、人々と魔王の魂とを切り分ける。そこにサイズが短剣を魔王の魂に向けて次々に投げる。短剣は魔を吸って魔王の魂を固定する。
「その魂が不滅であるならば遥か時空の彼方に吹き飛ばすのみ! 聖剣ソードレス全能力解放! 貴様をこの世界より追放する!!」
「何も持たぬものに何ができる!」
「こんな裏技もあるんですよ!」
 ヨハンは魔王の魂ごと聖剣に変える。
「チェストーー!!!!」
そしてヨハンは聖剣となった魔王の魂を空遥か彼方へと吹き飛ばした。聖剣に封じられた魔王の魂は星になって消えていった。

成否

成功


第2章 第6節

 勇者達の活躍によって、この世界は勇者も魔王もいない世界へと変わった。これからも理不尽なことは起こり続けるだろう。だが、人と人とが協力していけば、必ずや、争いのない平和な世界を作れるだろう。少なくとも、そんな理想をもった一人の若人がいる限りは。

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