PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<果ての迷宮>ここを通りたいなら一億ダナモ払ってもらうぞい

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●果ての迷宮
 果ての迷宮。
 幻想国の王都《メフ・メフィート》。果ての迷宮と呼ばれる広大な地下迷宮。
 通常であれば厳重に兵士に封鎖されている迷宮であるが……。
「イレギュラーズのみなさん、どうぞっ!」
 兵士たちは、イレギュラーズを見て確認すると場所を開けた。
 イレギュラーズたちは、その腕を見込まれ、直々に迷宮の攻略という任務を課せられている。 そして、その期待に応えてきた。
「よっしゃー! 次はどんな冒険が待ってるんだろうな!」
『お騒がせ』キータ・ペテルソン(p3n000049)は情報屋……というよりは野次馬だった。きらきらとした目で迷宮を見ている。
「あ、あなたには許可は下りていません」
「見るだけ! 見るだけだって!」
 そんな押し問答をしてつまみだされている。
「無事に突破したら、どんな世界だったか教えてくれよー!」
 さあ、次の世界はどういう世界だろうか。

●NowLoading
 ……。
 セーブポイントからの再開は、果ての迷宮の特徴だ。この不思議な仕組みによって、イレギュラーズたちは、新たな世界から冒険の続きを始めることができる。
 そして、その世界は毎回、がらりと姿を変えてきた。

 転移したイレギュラーズたちがいるのは、どうやら巨大な洞穴だった。
 そして、熱い。
 どうにもここは、かなり巨大な火山であり、なおかつ、鉱山のようである。
 あちこちから、掘削の音が響いてくる。
「えっほええほ」
「えっさほいさ」
「掘っても掘っても、果てがねぇなあ」
「ほんとだなぁ」
「げえ、”にせ金”か。またはずれだべ」
 身長にしておよそ60cmほどの謎のひげの小人たち。何人かの鉱山労働者が、安っぽくきらきらした監督にせっつかれている。
「無駄口を叩いていないで働くんだな! む、そこのは、何奴だ!」
 気がつけば、イレギュラーズたちは背丈60cmほど謎の生物に囲まれていた。どれもがひげもじゃである。
「ええい、怪しいものどもめ! ひっとらえい」

 ……。

●ドワッフ王の謁見の間
 素直に応じたか、うまく逃げだしたか、それはイレギュラーズ次第である。捕まったものは、多少鉱山で働かされることになるだろう。
「罰金罰金! 王の直轄地に無断で入るとは何事か! 金を払ってもらおうか! ”ダナモ”金貨がない? ならば鉱山で労働ぞい!」
 とにかく、ドワッフ王はこう息巻いているらしい。
「何? ここを通って”せーぶ”がしたいだと? ああ、あの扉の奥に行きたいんだな? なら、通行料1億ダナモ払ってもらうぞい」

 ここは「ドワッフたち」の王国で、彼らはダナモ鉱石をせっせと掘っている。
 ここでの通貨はこの階層産のダナモ鉱石から作られる「ダナモ」。
 そして、現在の第16代ドワッフ王は先代王に代わって王位を継いだものの、ケチで、かなり横暴なようである。
 1ダナモだいたい1ゴールド。
 まっとうな手段では、一生かかっても先へは進めなそうだ。
 そう、まっとうな手段では……。

GMコメント

 いや、まっとうに稼いでもいいんですけどね?

●目的
 次の階層に進み、次なるセーブポイントを開拓すること。
 ひいては後述の「天秤」を作動させて、先へと至ること。
 革命を起こして丸ごと天秤を制圧するなり、なにか一計を案じてその隙に進むなりしてください。

『セーブについて』
 幻想王家(現在はフォルデルマン)は『探索者の鍵』という果ての迷宮の攻略情報を『セーブ』し、現在階層までの転移を可能にするアイテムを持っています。これは初代の勇者王が『スターテクノクラート』と呼ばれる天才アーティファクトクリエイターに依頼して作成して貰った王家の秘宝であり、その技術は遺失級です。(但し前述の魔術師は今も存命なのですが)
 セーブという要素は果ての迷宮に挑戦出来る人間が王侯貴族が認めたきちんとした人間でなければならない一つの理由にもなっています。

●名代
 プレイヤーキャラクターは『フォルデルマン』『レイガルテ』『リーゼロッテ』『ガブリエル』他果ての迷宮探索が可能な有力貴族等、そういったスポンサーの誰に助力するかを決めることが出来ます。
 誰の名代として参加したイレギュラーズが多かったかを果ての迷宮特設ページでカウントし続け、迷宮攻略に対しての各勢力の貢献度という形でされます。展開等が変わる可能性があります。

●場所
ドワッフ鉱山の中央のトンネルに、次への扉。
やや特殊な仕掛けで開く扉がある。

・金の天秤
 皿が一つしかない天秤。1億ダナモ相当のダナモ金貨を乗っけると、どういう仕組みか次への回想の扉が開く。不思議なことに、その他のガラクタではびくともしない。ただ、ダナモ鉱石ならば反応するようだ。
 一応ドワッフ王の兵士の管理地で、許可なき通行がないかどうか動向を見張られているのだが、1億ダナモ相当のダナモ金貨が天秤に乗せられた試しはなく、基本的にずっと閉まっているので、警備は名ばかり。いつも酒飲んでポーカーやってるレベル。

*まっとうな手段や、気づかれない手段で1億Gためて素直に払った場合は別に咎められません。

一億ダナモのサイズはアタッシュケース10個分くらい。結構重い。が、運べない……こともないだろう。たぶん。

・ドワッフ王 王宮
転じて、ドワッフ王がいる間の王座の間の警備は、比較的厳しい。
ドワッフの一体一体はそれほど強くはないが、数もたくさんいるのである。
不満のあるものも多いというが。

●強制労働
不法入国を見とがめられたイレギュラーズたちには名ばかりの強制労働が命じられている。

強制労働の内容は
・掘削
・食事作り
・その他、コイン磨き等(何かあれば)
などなど。
ドワッフにとってはつらいが、イレギュラーズたちにとってはゆるいものであるし、
何か工夫したら、目をしのんで適度にサボれるだろう。賄賂もきく。

*捕まっていなければ強制労働させられないし、
ドワッフたちにはいまいちイレギュラーズたちの見分けがついていないので、
追及は緩め。

ドワッフ地下鉱山。
世襲により横暴なドワッフ王が君臨している国である。
ドワッフたちは少数の上級ドワッフと多くの下級ドワッフに分けられ、下級ドワッフは強制労働させられている。何度か反乱を試みているものの、そのたびに失敗してきたのでもうあきらめムード。
上級ドワッフと下級ドワッフは見た目で分かる。安っぽくきらきらしている服装のドワッフが上級ドワッフだ。
よそ者は珍しがられるが、お金をたかられる。
彼らはがらくたが好き。小銭が大好き。
一緒に働いてたら少しくらい下級ドワッフと仲間意識が芽生えるかもしれない。
ごくまれにちょっと優しい、同情的な上級ドワッフもいる。

<扉について>
「扉を開けるなんてとんでもねぇ! 異世界への扉が続いてて、ヘンなところにワープして、上から落っこちちまうんだべ」
「奥には大蛇が眠ってるってきいたべ」
「おっかねえおっかねえ、俺たちはここで石を掘ってるほうがいいべ」
「でももっといいもんくいてえべ」
「先へ行きてぇって、変わってるなあ」

ドワッフたちはおとぎ話から扉を開けるのを恐れている。
(これに特に深い真実があるわけではなく、あまり新しいことをやりたがらないし、外に行きたがらないという意味。新しいことを嫌っているのだろう……)

・ドワッフは、光物が大好き。正当に価値あるものより金メッキなどの”なんか安っぽく価値のあるもの”の方が大好きなようだ。あと、ビーズとか女児っぽいきらきらとか。
金銀ににた鉱石は屑鉱石としてあまり重視されていない。

●ドワッフたちの噂
・先代のドワッフ王は良いやつだったんだけど、今のはボンクラだべ。理由? とくにないんでねかなあ。
・謁見の間にはドワッフ王のダナモ像が置いてあるべ。あれなら……けど、謁見の間は警備が厳しいべ。
・ドワッフ王の大臣はかつての主君に心酔していたが、いまの王子の横暴を止められず、心を痛めているらしい。
 みたいなきなくさい話がよく聞こえてくる。
・ドワッフ王は相当地下の金庫にダナモ金貨をため込んでいるらしい。毎晩数えるのが趣味なんだと。1樽、2樽ってな。頭が悪いから10以上は数えられねえべ。減ってたら気がつくと思うけど、ちょっとくらい貰ったって気が付かねぇかな?
・上級ドワッフも似たようなもんだべ。中には良いドワッフもいるけどな。
・ドワッフたちはお酒が大好き。
・いっそ自分で鉱山を発掘してみっか?
すごく掘ったら1億ダナモたまるかもしれねぇべ。
・ここで商売してみっか?
いや、すぐとはいわねぇけど、1億ダナモたまるかもしれねぇべ。

●その他
(即クリアとか)あんまり便利すぎるものがあれば
ちょっと調整が入りますが、
ロールプレイやアイテムの活用の幅なんかは大目にみるので、
各自工夫してみてください!

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

  • <果ての迷宮>ここを通りたいなら一億ダナモ払ってもらうぞい完了
  • GM名布川
  • 種別EX(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年05月10日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

エマ(p3p000257)
こそどろ
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
シラス(p3p004421)
超える者
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ホリ・マッセ(p3p005174)
小さい体に大きな勇気を
サイモン レクター(p3p006329)
パイセン
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女

リプレイ

●迷宮挑む彼らの背には
 果ての迷宮の攻略は、幻想を建国した勇者王の悲願である。
 ゆえに、この挑戦は幻想において大きな意味を持つ。
「僕はかっこいいイケオジの味方!」
『ムスティおじーちゃん』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)はフィッツバルディ公の名代として参加する。
「おっと、シラスくんも同じかな?」
「ああ、やっとフィッツバルディ公に貢献する機会が回って来たぜ」
『ラド・バウC級闘士』シラス(p3p004421) は笑みを見せた。
「自分はガブリエル伯爵んところだぜぇ」
『小さい体に大きな勇気を』ホリ・マッセ(p3p005174) は胸を張った。
「誰の名代にしろ、とりあえずの目的は迷宮踏破、ということで一致しているわけだ」
『パンドラの匣を開けし者』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)は迷宮のセーブを起動した。
「ま、そういうことだ。どんな世界か知らないが、仲良くやろうぜ」
『吸血鬼を狩る吸血鬼』サイモン レクター(p3p006329)はにっと笑う。
 フォルデルマン、レイガルテ、リーゼロッテ、ガブリエル……。
 誰の勢力に味方して、どういう成果をあげたのか。
 これもまた、水面下で行われているひとつの戦いであった。

●新しい階層
「さて、初の「果ての迷宮」どんなもんだろうな。自分的に初挑戦なんだぜ。では、レッツらっゴォー」
 ホリはセーブポイントから飛び出すと、手にしたスコップで道を開いた。ミーアキャットの獣種であるホリは、小さな体では信じられないほど手早くざくざくと地面を掘っていく。
 新しい世界に対する恐れはホリにはない。
 今回の世界は、果たしてどんな世界なのか……。
「えぇー……ナニココ!」
『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)の視線の先には、不思議な生き物、ドワッフたちがいた。彼らは群れをなし、わっせわっせと働いている。
「なんか、のどかだナァ……」
『Ende-r-Kindheit』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)はちょっと拍子抜けしたようだ。ひとまずのところ、血なまぐさい事態にならないようで、ほっとしてもいるのではあるが。
「……おんやぁ? 小人の国かよ」
「あれ? ここってむっちーがいっぱい?」
 秋奈が小首をかしげた。
 どうやら、ここはドワッフたちの国だった。
「僕に似たちっこい人がいっぱいいる! 可愛い!」
 彼らドワッフはムスティスラーフととてもよく似ている。背丈が同じくらいなだけあって、紛れても違和感はない。
「これまた全然聞いたこともない見たこともないところにつながりましたね。ひひっ」
『こそどろ』エマ(p3p000257)はホリに続き、新しい階層へと至った。不安定な足場の上でも、エマは姿勢を崩すことはない。
『深海の金魚』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の髪が伸び、がれきを放り上げると道を開いた。エクスマリアは続く仲間を気にして、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)に手を貸した。
「ありがとう」
「センパイ、大丈夫?」
 心配そうなミルヴィに対して、イーリンは首を横に振った。
「大丈夫。少し、この世界の仕組みについて思いをはせていたの」
「他の階層でも、あったそう、だが……一つの世界、一つの文明を創造し、果ての迷宮という、巨大な"おもちゃ"の、部品とする、とは。スターテクノクラート、途方も無い存在、だな」
「……そうね」
「或いは、神さえその被造物、か」
 エクスマリアの表情は変わらない。途方もない存在の意思の存在に、金の髪の動きが疑念を示した。
 果ての迷宮。
 ”この世界”とは。先にあるものとは。

「むむ、新入りか?」
「いや、大きいのもいるぞ! なんだなんだ、怪しい奴め!」
 ドワッフたちに取り囲まれるイレギュラーズ。
 とはいえ、ドワッフたちは熟練した兵士とは言いがたい。あまりにも隙だらけだし、それに、それほど危険はないようだ。
「おい、自分は簡単に捕まら……うぇえええぇぃっ!!」
 ホリはトンネルを掘って素早くどこかへと消える。
「素直に従う私ではないのだ!」
 秋奈は素早く姿を消す。
「!」
 エクスマリアはとっさに天井へと身を潜め、サイモンは物質透過でその場を離れる。ミルヴィが姿勢をかがめて話を聞く様子を見せると、ドワッフたちはどぎまぎしたようにちょっと下がった。
(やっぱりなーんか、この生き物は緊張感に欠けるっていうか……)
 集まってくるドワッフに、それほど危険は感じられない。
「俺は……まあ、様子を見るか」
「うんうん、仲良くしたいよね!」
 ムスティスラーフとシラスはその場にとどまった。

●ドワッフ王の要求
 司書とはなあに、とドワッフたちに無邪気に聞かれ、イーリンは記録の手を止めた。そうね、としばらく応対し、去って行くドワッフの背中を見つめる。
「平和な世界よね、考えることを止めて……日々の物とキラキラにだけ目を向けて」
 ドワッフたちは日々を気ままに生きて、ただ毎日を繰り返す。彼らは、ここで停滞しているのだろうか。……気の遠くなるほど、長いほど。
「彼らに知慧をと願うのは、あまりに傲慢かしら」
「牧歌的な種族なようで愚鈍さは好ましいが、はてさてこれが試練とは相も変わらず珍妙な事だな」
 ラルフにかかれば、ドワッフたちを言いくるめることなどたやすいこと。”強制労働”とやらは問題にならない。
「とはいえ元の世界を混乱に陥れたシンジケートの主の血が騒ぐね」
「始めましょ」
 イーリンが立ち上がった。
「神がそれを望まれる」
 さあ、この階層に、変革をもたらすときが来た。

 なにはともあれ、ドワッフ王の要求は1億ダナモという大金だ。
「ダナモ金貨……1億……いちおく……?」
 エマは金額の大きさを想像して首をかしげる。
「やれやれ、1億とはずいぶんとふっかけられたもんだな」
 サイモンはにやりと笑うと、二対の牙がきらりと光った。
「悪いがまともに稼ぐつもりはねぇ、あのバカ王がためこんでるダナモから失敬しちまおうぜ!」
「それがいいでしょうね。私はやはり盗人ですからね、ここはパパっと盗む方向で行くとしましょう」
 エマがえひひと笑った。
「……」
 エクスマリアの髪が、上下に静かに同意を示した。
「手段はいろいろ考えてあるわ。……国家を転覆しての制圧も。無理ではなさそうだけど。穏便に、当面のところは発覚しないように事を進めるというのなら……」
 イーリンがメモをしていたのは、ドワッフたちの人員の配置や、見張りの様子だ。もちろん、見られても悟られないようにカモフラージュはしていた。
「ウーン……お金集めカァ」
 ミルヴィはちらりとイーリンの方を見る。
「苦手じゃないケドセンパイはドロボーするってゆーしなんだかなー。ここの人達ものんびりしてるしこのままでいて欲しいナァ……」
 どうも憎めないドワッフたち。
 いくらでもだませそうではあるが、あまりひどい目に遭って欲しくもない。そうミルヴィは思っていた。
 ……誰も泣かない世界。それが、ミルヴィの理想だ。
「それじゃ、まっとうに行きましょ。商人としてお金をまきあげ……げふん、調達するわ!」
 秋奈は正攻法(?)でいくらしい。
「合法だからね! ふふん」
「商売、か。ふむ」
 ラルフが頭の中で考えを巡らせていた。
 かつて、科学世界で数多の災厄を引き起こしてきたラルフだ。算段はすでに「どうやって成功させるか」といったようなものではなく、「どれくらいの時間があれば、目標に達するか」といった計算だ。
「なんか悪いこと考えてそうだナァ……。早く済むに越したことはないカナ……。よし、じゃあ、商売の手伝いするよっ」
 ミルヴィはとりあえず2人の商売を手伝うことにしたようだ。
「俺はまずドワッフたちと働いて、情報を集めてみるよ」
「うんうん。真面目に働いてみるね。ドワッフ、可愛いし!」
「掘ることにかけては、朝飯前ってやつだぜ」
 シラスとムスティスラーフとホリは、まずはドワッフたちに混じって働き、様子をうかがうようだ。

●コツコツ働く!
 ドワッフたちの強制労働は厳しいものだ。……ドワッフたちにとっては。
「コインを磨くのか? 貸してくれよ」
 シラスが器用に布を動かすと、またたくまにくすんだコインは汚れが取れて、ぴかぴかのコインになる。
「へえ……兄ちゃん、器用だなあ」
「みんなの分も片付けてやるよ」
「いいのか!? やったー!」
 シラスはつぎつぎとドワッフたちのコインを磨き、ついでに簡単な道具の修繕もやってやるのだった。シラスの周りには、たちどころにドワッフたちの群れができる。
「兄ちゃん、このツルハシなんとか直せねぇかなあ」
「刃こぼれしちまってよぉ……」
「これは、……よっと、こんなところかな」
「おおお……」
 普段様々な依頼をこなすイレギュラーズたちにとっては、彼らの仕事は楽なものだ。
「おお、お前さんたち、よく掘るなあ」
 掘削を得意とするホリなど、たちどころに鉱山を掘り尽くしてしまっている。
「いやぁっ、つい、色々と掘ってしまうもんだぜ」
 スコップを持ち、数十分。あっという間にホリは宝石や鉱石を抱えて戻ってくる。
 実はただ働いていたばかりではない。地底深くまでつながる穴は、ひそかにホリの地下製作技術によって、イレギュラーズたちが一休みができるほどの巨大な快適空間となっていた。
「すごい! 10年に……いや100年に一度の逸材だ!」
「こっちもすごいぞ! ツルハシをふるのに、手を全く使ってない!」
「ふふん!」
 ムスティスラーフの周りを、つるはしが自動的に漂って掘削を繰り返していた。
 我が見えざる手。離れた物体を動かすムスティスラーフのギフトである。
「僕のギフトは疲れないようにするための物だからね。元々持てさえすれば動かすのは楽チンさ」
 感心したようにムスティスラーフを見るドワーフたちだった。
「だから、たくさん手伝えるよ!」
 ムスティスラーフは人の良い笑みを浮かべた。
「おーい! こっちはこれ以上は掘れないぞ! 引き返すんだ!」
 ドワッフたちがばたばたと戻ってくる。堅すぎて掘れない岩盤があるらしい。
「はあ、迂回するか。せっかく大分楽になったと思ったのに、これはノルマは厳しいか……」
「まーた親方に飯を減らされる……」
「何かあったの? よーし、まかせて!」
 ムスティスラーフは岩盤にやってくると、突き出した柱をぎゅうと抱擁する。
 そして、『むっちボム』。
 ツルハシで歯が立たなかった岩盤があっというまに崩れていく。
「うっそだろ!?」
「よーほー!」
「これで怒られなくて済む!」
「万歳、むっちー! 万歳!」
「おいおい、自分も忘れてもらっちゃ困るぜ」
 素早く穴に消えていったホリは、あっという間に鉱石で荷車をいっぱいにしていた。
「んで? ノルマってのは後どれくらいなんだ?」
「後どれくらいって……なんだ、この量!? もう3日分くらいは掘ってるぞ!」
「これでもう親方にどやされなくて済むぞ!」
「ホリ、万歳! ホリ、万歳! むっちー! 万歳!」
「しっ。おい、誰か偉そうな奴が来るぞ」
「うわー、上級ドワッフ親方にばれた!」
 シラスの警告に、ドワッフたちは身を縮こまらせた。
「何を騒いでいるんだ?」
 やってきたドワッフは、どうやらお偉いさんのようだ。騒がしいところを見に来たようだが、すかさずムスティスラーフが前に出る。
「みんなの頑張りで、仕事が早く片付いたんだよ。だから、これから宴会! 一緒にどう?」
「むむっ、酒か」
「ノルマはこなしたし、ちょっとだけさ。黙っててくれねぇか?」
 ホリはそっと小さな鉱石を上級ドワッフの手に乗せる。賄賂だ。
 ドワッフはホリから賄賂を受け取ると、ゴホンと咳払いをして懐にしまった。
 見てみぬふりくらいは、ということだろう。
「よっしよっし、ありがとよ」
 シラスはコイン磨きの傍ら、相手をじっと観察する。……仕事ぶりは適当そうだ。危険はないだろう。
 こうして、ひと汗かいた後に宴会が始まったのだった。
 上級ドワッフも宴会に加わり、酒に表情が徐々にとろんとしてくる。
 ノルマをこなしているならまあいいか、ということで、上級ドワッフたちもサボりを咎めない。余裕のでたドワッフたちはトランプを始めた。
(なるほど、トランプが好きなのか……)
 そういえば、エクスマリアが油断した見張りがトランプをしていたといっていた。
 絵柄は違うがルールは似ている。そして、彼らはそれほど強くない。なら、一発逆転の手も使えそうだ。

「んで、あの扉ってのは結局なんなんだ?」
 ホリは手近なドワッフに尋ねた。
「あれはもともと開かない扉なんだ。それに、奥にはすごい強い魔物がいるとか」
「ずーっと昔、行った奴が帰ってこないとかな。おっそろしいところなんだべ」
「へぇ、そういう事だと言うことか。では、こっちからは一言。為せば成る、為さねばならぬ……ってことだぜ」
「為せば成る、かあ。身にしみるねぇ……」
「うーん、あんたが言うならそうなのかもなあ……」
 ホリの言葉に、ドワッフはしみじみ頷いている。
(あ、あのドワッフは好みだなあ~!)
 ムスティスラーフはひとりの上級ドワッフに近づくと、わざとぶつかる。
「おっと」
「わわっ、ごめんね! お詫びにお酒をどうぞ。さあ、たっぷり飲んで飲んで!」
 ムスティスラーフが渡したのは『ラブポーション』入りの特製の酒だ。
「ありがとよ。ううっ……なんだこれ……」
 くらりとする上級ドワッフ。筋肉質なムスティスラーフから、むわっとした色気が漂ってくる。
「疲れちゃった? ちょっとあっちで休む?」
 そう言って、ムスティスラーフと上級ドワッフはテントへと消えていったのだった。

●なんちゃってマネーオークション
「相場なんてわかんないし入札形式の方が良いかしら」
 秋奈はガラクタを寄せ集めて、小さなオークション会場を作っていた。
「んー、元手はどうするのぉ?」
 ミルヴィが首をかしげる。
「とりあえずは持ってきた金貨使おうかしら。ぐふふ」
 秋奈が取り出したのは、なんちゃってマネー。1000枚の偽金貨だ。
「ここの人たち、ガラクタが好きみたいだよねっ♪」
「これでも信仰蒐集のカリスマ持ちなんだからイチコロよイチコロ」
 秋奈はピン、と金貨をはじいた。
「これで扇動するのよ、コトを大げさに言ってね」

「さーさーお立ちあい。耳の穴かっぽじって聞いてなさい!」
「おおっ、なんだなんだ!?」
 物珍しさからか、秋奈の店にドワッフたちが寄ってくる。
 威勢がよく、不思議な秋奈の語り口に、ドワッフたちはざわざわとなった。
「絶望の青越えも宵のうち。聞かざる時には物の出方もさっぱり分かんない!」
「おおっ、なんかすごそうだぞ!」
 これがカリスマというやつだろうか。
「幻想の街の鐘が鳴っても、魔種が来たって鐘に棒を当てれば、鐘を鳴らすのか、魔種が鳴らすのかその音色が分からぬが道理なのです」
 神妙に秋奈は言葉を止め、辺りを見回す。
 秋奈の持つ金貨に、そして秋奈に注目が集まる。
 観客がすでに夢中になっていることがわかる。そうすれば、あとは転がすだけだ。
「さて取り出したるはこの金貨。混沌でかつて天才彫刻家として名をはせた「ユリーカ・ユ・リカナイナイ」が制作したとされる金貨なので!」
「ユーリカ・ユ・リカナイナイだって!?」
「知っているのか?」
「……わ、わからん!」
「でもなんか、……なんか、すごそうだぞ!」
「らどばう英雄シラースの肖像が掘られたこの金貨! 私にはさっぱり価値が分からない」
 あたりはざわざわとざわめいた。
 なんて怪しい金貨だろうか。
 そして、それはドワッフたちにとっては、とっても素敵なガラクタである。
「しかし皆さま、皆さまならこの価値を分かってくださると信じてます。どうかお立ち会いー!こんなに希少で珍しい天下の英雄の金貨。大樹ファルカウのてっぺんから、真っ逆さまに飛び降りたと思って……さぁ買った! 1ダナモ金貨からスタートよ!」
「1ダナモ!」
「10ダナモ!」
「むむっ、なら100ダナモだ!」
 奇妙な熱気に飲まれて、あっという間に値はつり上がっていく。
(元値はいくらもしないんだろうな)
 コイン磨きのついでに商品を磨くのを手伝っていたシラスが、ちょっとだけ偽金貨を改めている。
「1万ダナモ!」
「そ、そんなに!? ならこっちは」
「はいっ、売った!」
「ああーーー!」
 秋奈はぱんぱんと手を叩く。
「ああっ、買おうと思ってたのに!」
「さあ、次! 価値があると思ったら買ってきなー!価値が分かったらドンと買っちゃいな買っちゃいなー!」
 こうして、あたりはものすごい熱気に包まれたのだった。

●古物商ラルフの審美眼
「あちらも盛り上がっているようだな」
「元手ほぼゼロからよくやるなァ……」
 ミルヴィとラルフは、また別の場所に店を開くようだ。
「ガラクタでいいんだっけ? これ、使えそうか?」
 ホリが埋まっていた掘り出し物を持ってくる。
「えひひっ、これもどうぞ。運んだのは私ではありませんが」
「ん……」
 エクスマリアが大きながらくたを置く。
「ふむ」
 ホリやエマたちが集めてきたガラクタは、文字通りの掘り出し物だ。ラルフはじっと品を持ち上げ、品を改める。来歴が分からないものは適当に盛るとして……明らかに特徴的でばれそうな盗品は、傷をつけて隠蔽することにしよう。
「ふむ、商品としては、まずこんなところか」 
 開店だ。
(馬鹿親父の詐欺商法の手伝いしたかないケド、おやぢによる被害を早く終わらせるためにっ)
 ミルヴィはギターを取り出し、弾き語りを始める。
「ああー、ここにあるは世にも珍しい神秘のお宝~♪」
 こちらもずいぶんと好評で、きれいな演奏とミルヴィの魅力に惹かれて次々とドワッフが足を止めていく。
「さあさあ、ここに並びし愉快な品の数々、良かったら見て行かないかね?」
 秋奈の店が熱気に任せて一気に売り上げる店であるならば、ラルフの店は、一日を通して安定した売り上げが出る店といったところだろうか。
 なかなかに盛況である。
「これ、お客さんに似合うと思うナァ……ネ?」
 サファイアのようなミルヴィの蒼の瞳が、妖しくきらめく。
 リリスの眼。
 操られたように、ドワッフは財布を開いた。
 美女に見つめられてそんなことを言われては、いくらケチなドワッフであっても、ついつい財布のひもも緩むというものだ。
 だが、盛況になればまた厄介な客を呼び込むもので……。
「待て、これはちょっと価格に見合わないぞ!」
「そこに気がつかれるとは、お目が高い」
 うるさそうな客が来た。だが、ラルフは眉をわずかにあげると、即座に相手の審美眼を褒め称えるのだった。
「実は特別な客のための、特別な品がありまして……」
 そう言って、ラルフは店の奥から恭しく新たなガラクタを持ってくる。
「この一品こそ、目の肥えた貴方に相応しい」
「そんなものがあったのか。よし、買おうじゃないか!」
「お買い上げどうも」
 相手を手玉に取り二束三文のがらくたを、かなり良い値で売ってゆく。
「待て! この商品はうちのとすごく似てないか?」
「ふむ?」
「丁度うちからなくなったもので……」
 エマたちが盗んできたものだろう。ラルフは顔色一つかえずに品を眺めた。
「んーー、見せて見せて」
 ミルヴィがその店の商品だというサインと、並んだ品をじっと見比べる。
(なるほど、間違いなく盗品ねっ)
 だが、ラルフはそういったことは想定内だ。
「成程、これはよく似ている様子だがここをよく見て欲しい、小さな彫りのような物があるだろう?」
「げっ、ほんとだ……」
「ここのサインも違うようだ。ゆえに違う品物だな」
「ううーむ。難癖つけて悪かった。買っていくよ。なんかこっちの方が質が良い気がするし……」
(よくやるわァ……)

「なかなか賑わってるようだぞい」
 やってきたのは、上級ドワッフに囲まれた王様である。
(おおっ、大物が釣れたわ)
 どうやら評判になったミルヴィの演奏と踊りを見に来たらしい。
「これはこれは。高貴な方々」
「涙ぐましく稼ぐようにしたようですな。何年かかることやら」
 側近のドワッフが嫌味を述べる。
「ええ、我々も先へと進みたい。お力添えいただければ幸い」
「王、まっとうに稼いでいるのなら何よりでは?」
「うーむ。何か企んでいるかと思ったが、商売とはたいへん結構ではないか」
「そうそう。まっとうに稼ぐのって大変なのよネェ」
 ミルヴィが悩ましげに首をかしげる。
「どれどれ、手伝ってやるとするか」
 そう言ってドワッフの王様はガラクタを買っていくのだった。
「ドワッフの王様太っ腹~♪」
 ミルヴィがギターにきれいな歌声を乗せる。
「あちらでもオークションが開催されているそうで」
「何っ……!」
 そうして、ドワッフ王は嵐のように去っていった。
「んー、あんなのが国のトップだとたいへんそうネェ……」
「まあ……今は”平和”だというところかな」

●あるところからいただきましょう
「財宝の保管場所だけれど……”新しい空間”を作ればいい」 
 イーリンの頭には、ひとつのインスピレーションがひらめいていた。
「新しい空間……ああ! 自分が掘ったトンネルか。そこに保管するなら、運び入れる手間も危険も少ないな。真面目に働くついでに準備しておくか」
 ホリがスコップを構え、空間を拡張していく。
「なに、あいつら、10までしか数えられないってことは、それ以外は持っても問題ないってことさ。見つからなければな」
 ホリが拡張したというトンネルは素晴らしく頑丈だ。この短時間の間にこれほどの空間ができるとは思わないだろう。
 扉へと運び込むためのトンネルが出来上がるはずだ。

「盛り上がってますねぇ」
 こそどろエマの本領発揮である。まるで影のように、難なく通路を進む。
 秋奈やラルフとミルヴィの商売の喧噪を背に、エマたちは道を歩んでいた。
「……見張りを、把握してきた。報告通りで間違いない」
 エクスマリアが天井から髪でぶら下がり、着地する。
「本職のエマ程でなくとも、多少の役には立つと、いい、が」
「ありがとう。十分よ」
 イーリンは周辺地形と警備のメモを、エマとエクスマリア、そしてサイモンに渡して説明する。「よし、俺は……こっちのルートから行けそうだな」
 壁抜けをするサイモンは、別ルートから単独行動となる。
「ええ、気をつけて」
「まずは樽に入っている金貨をいただいてしまうとしましょう」
 目の前にいるのに、エマの気配はまるでない。足音も無音だ。
 ワイズキーによって、鍵は、ないがごとし。閂のかかった扉も、エマが近寄って、絶妙な角度で揺らすと見事に開いた。
(油断しすぎですねぇ……やりやすいといえばやりやすいですが)
 通行のついでに、商売に気をとられている屋台の裏から、ハムを失敬。
 鮮やかな手つきである。
「さすがの手際よねぇ……少し齧るだけで貴方の凄さわかっちゃう」
 エクスマリアは壁にとりついて、じっと止まっている。
 イーリンは気配を遮断し、ゴーグルを用いてエマの動きを見ていた。エマの合図に合わせて、エクスマリアが合図し、3人は空間を進んでいく。
「金庫はこっちですねぇ」
「突破の条件は、天秤の皿に1億ダナモ相当を載せる、だった、な。……貯まるだろうか」
「いざとなれば金の像を盗むことになるかしら。……最終手段ね。発覚するだろうから」
「1億なんてまともにやってられませんしね! 他にも盗んでほしいものがあったらリクエストを受け付けますよ、なんて」
「……ガラクタを仕入れてくれと……言っていたな」
「そうでしたそうでした」
 ついでに怪しげなお宝も確保していく。
 金貨のほかにガラクタを集めて、これをラルフが危なげないように加工して売り……。元手なしにぼろもうけ、というわけだ。
 エマは樽に穴を開けると、砂利で埋めてダナモ金貨を抜き取る。
「どうにも危機感のなさそうな人たちですからね、バレないバレない。えひっひっひ……」
「少しずつ盗むのもいいけれど……あの樽は……作りも粗雑で、楽そうね……」
 イーリンは樽のスケッチをとる。もっと本格的に行うならば……。

●ひと時の休息
「お疲れ様っ!」
 戻ってきたイーリンとエマ、エクスマリアをミルヴィが出迎えた。
「おっ上手くいったようだな」
 そこへちょうどサイモンが戻ってきた。ザックにたくさんの金貨を詰め込んで。
「成果は上々ってところだな」
「うんうん、けがをしてなくてよかったっ♪」
「たくさん仕入れてきたので、じゃんじゃん売ってくださいねぇ」
「……とりあえず……置物と壺だ。良さは……よく分からないが」
 エクスマリアが美術品を下ろす。
「ま、適当に理屈をつけてうまく売るんだろうな」
「保管場所は作ってもらった場所で問題ないわ。これほどまでにしっかりした、知られていない空間があるのは素晴らしい」
「ひんやりしていいだろ、土の中」
「……」
 エクスマリアがこくりと頷く。今も空間を拡張していたホリが土まみれで誇らしそうに胸を張った。
「今日できた場所ですからねぇ、えひひっ……狭いところは落ち着きますね」
「暗がりは俺も得意とするところだ」
「センパイ、大丈夫? 何か困ってない?」
「困ってること……そうね……このスケッチと似たような樽があるといいんだけれど。あとは運搬用の物品ね……」
「しっかし、正攻法で大分稼いだんじゃないか?」
「ふふーん、旅芸人だからねっ!」
 ミルヴィもおひねりでずいぶんと稼いだのだ。
「芸は身を助けるといったもんですねぇ………そういえば、シラスさんが何か面白いことを起こすようですよ」
「それは、気になるわ」
「そういえば、手に入れたおひねりを元手に、ちょっと貸してくれって言われたっけナァ……。ガラクタ……こほん。商品もいくつか貸してくれっていってたっけ」
「なんだなんだ、勝負って聞いたが!?」
「よしっ、応援しに行かなきゃねっ♪」

●一世一代の大勝負
「なあ、面白えもん見たくねえか?」
 シラスが、すっかりドワッフたちと仲良くなった頃である。
 シラスは大勝負を持ちかけていた。
「お、王への挑戦だって!?」
「ああ。ドワッフ王を相手にトランプで勝負だ」
「お立合いお立合い! ドワッフ王と 『ラド・バウC級闘士』シラスの世紀の大勝負! 果たして! 稀代のギャンブラーとして名を遺すのはどっちなのか!」
 会場へと行ってみれば、秋奈が呼び込みをかけている。
「あっ、いたいた!」
「なるほどなるほど。先へ進みたいから、ギャンブルで稼ぐという……涙ぐましいのう」
 シラスの元手は、鉱山での稼ぎと手持ちのビー玉。そして、商売で稼いだ仲間からの寄付である。
「応援しに来ちゃった! 僕も仲良くなったドワッフさんにちょっと出してもらったよ」
 ガラクタを満たした壺の上辺をキラキラに敷き詰め、見た目は沢山に見せているのだ。
「出資した分、応援している」
 ラルフがガラクタを足した。
「ありがとな」
「売れ残りじゃないのぉ? っと、応援に来たよ~!」
「さあさあ、お立ち会い、お立ち会い。一世一代の大勝負だよ!」
「むむっ、短時間でこんなに金を集めたのか……」
 ドワッフ王は顔をしかめる。
「俺たちも本気だってことさ」
 まあ、実のところ、底上げされているわけだが。
「そ、それは何かぞい!?」
 シラスがはじいたのはビー玉だ。読みの通り、いたく気に入ったらしい。
「とっておき、さ。どうだ、鉱山じゃ手に入らないお宝だろ? 特別に賭けてやってもいいぜ」
 こうして、勝負が始まった。
(この間にもうひと稼ぎしてくるか)
(ですねぇ)
 というわけで、サイモンとエマはそっとその場を離れたのだった。

「むふっ、むふっ、フォーカード、ワシの勝ちっ!」
「ああっ! チャレンジャー、シラス! 急転直下の大ピンチ! 上の階へのチャレンジの夢は儚くも露と消えてしまうのか~!」
「~♪ ~♪」
 秋奈の口上に、ミルヴィがギターを合わせている。ギャラリーも増えて、ずいぶんと大盛況である。
「おお! さっすがドワーフ王でございます!」
「というわけで、そこからそこの樽はいただいていく」
 ほくほく顔のドワッフ王に、シラスは考え込むそぶりを見せた。
「……埒が明かない、レートを倍にしないか?」
「せっかく地道に稼いだ金をどぶに捨てると申すか。それで、5倍か?」
「50倍だ」
 あたりはざわざわとざわついた。
「待て待て、そんなことをしたら、い、一生地下暮らしになるぞ!?」
「やめておくんだ! ワシらは君に多く助けられた。そんな無謀な勝負は……」
「そうだよ! あんちゃんいい人だしよぉ!」
 ドワッフ王も、ずいぶんと受けるか迷っているようだった。
「偉大なドワッフ王は、恐れ知らずは獅子のごとし! きっと、挑戦者からの勝負を受けられるでしょう!? そのお気持ちは、民草はただ推し量るばかり……」
 秋奈が焚きつけると、ドワッフ王はようやく身を乗り出した。
「ふむ、それもそうだ。男同士の勝負に、外野はとやかく言うものではないぞい」
「ああ、二言はないな」
 ドワッフ王は、シラスが欲をかいたのだと思ったろう。
 それは、焦って欲をかいたフリだった。この未来は確定しているからだ。
「運命とは、まさに自分で引き寄せるものだね」
 ラルフがつぶやいた。
「降りるなら今のうちぞい」
「まだだ」
 レイズ、レイズ、レイズ。どちらも引かない。
 ドワッフ王の額に、脂汗がにじむ。
 シラスは、掛け金を乗せていく。
 この1勝負で、いったい何樽分のダナモ金貨が動くのだろうか。
 これは、無謀な駆けではない。
 観戦してるドワッフ達に煽らせて勝負を降りさせない。見栄っ張りの王様であれば……断れるはずはないと踏んでいた。
「どうじゃ!」
 天上まで上げてやってから、カードオープン。
「またしても、フォーカード! ぐへへへへ! これに勝てる手があるとでも!?」
 だが。
 これはさいころ任せの運などではない。シラスが仕込んだ、いかさまだ。シラスはこの大勢のギャラリーの中で……やってのけた。
「おっと、ロイヤルストレートフラッシュだ、悪いな」
「おおー! 勇者シラス! 運命をその手に引き寄せたっ!」
「な、なんじゃとーーー!?」
「ってことは倍率はどうなる!?」
「ええと、いち、にち……」
「さ、三千万ダナモ!?」
 ドワッフ王は泡を吹いて気絶した。
「お、王様ーーー!」
「ああー! 潔い、我らが王様ー! 男と男の勝負、一度それを口にしたならば……もはや、支払いを免れることはできないのです……」
「おっと、支払いはいただいていくからな。みんなの分も」
 シラスはドワッフ達にも分け前を与える。
「うおおおおお!!! シラス、シラス万歳!!!」

●金庫破り
 夜。
 ドワッフたちが寝静まり、見張りがうろつく時間。
 それは、サイモンが本領を発揮する時間だ。
(狙いやすいのは地下金庫だな、あいつら頭悪いみてぇだし、樽の中から抜き取ればばれなさそうだぜ)
 サイモンは地下金庫のあたりをつけ、壁を抜けた。数度目の往復になる。
 エマたちとはまた別の場所、王国の深部にあるものだ。
「おーっす」
「おう」
 サイモンの姿を、とがめるものは誰もいない。サイモンは、この場において誰でもなかった。
 アノニマス。存在感を殺した、ただの人として認識されているのだ。
「王から金庫の中身を分散させろって言われた、だから運び出してるのは気にしないでくれ」
「ああー、そういえば賭け事で大負けしたらしいな」
 どうやら、勝ったらしい。
「ああ、それで金貨が必要な訳か。でちょっとずつ分けて運んでる、と」
「そうそう、それだ」
「へへっ、ちょっといい気味だ」
「ありがとうな。お疲れさん」
 サイモンは手をひらひらとさせて、見張りのドワッフと別れた。
(とはいえ一度では運びきれねぇ。少しずつ、だな)
 サイモンの手口の優れているところは、姿をさらそうとも違和感を抱かせないことだ。
(回数が増えると見つかる危険も高くなるが、そのためのアノニマスってやつだな)
 樽に穴を開け、ダナモ金貨を取り出してザックに詰め込む。
「おっ、儲かってますか。えひひっ」
「ぼちぼちだな」
 エマもまたこの夜を徹し、商品を仕入れているのだった。

●ラストスパート
「大感謝ラストセール! こっちも負けていられません! この壺、なんとユリーカ・ユ・リカナイナイの縁の品を……」
「寄っていって~見て行って~♪」
「そろそろ店を閉めようと思っていてね。在庫一掃、売り尽くしセールというやつさ」
 作戦が佳境に入ったとみて、ラルフたち店組は閉店セールを行っていた。
「なんだ、もうすぐ資金が貯まるのかい?」
「そろそろこの商売も潮時というところでね」
「キャッシュバックってなんだ?」
「つまり、あとからいくらか払い戻すというキャンペーンだ」
「つ、つまり? お得ってことか?」
「ふむ。わかりやすく言うならば……実質、一つ分の値段でこの品とこの品を買ったも同然に……」
「なにぃー! なんてお得なんだ!?」
「今ならもう一品ついてくるっ♪ お買い上げありがとっ♪」
 ミルヴィがウィンクする。
「えっへへ。断れねぇや。うう、これがもう見られないのか……」

●集計地点
「っと、こんなところか」
 ホリが地下倉庫に集めた金貨を眺める。
「ここからここまではきれいなお金だからね!」
 秋奈がどんと両手を広げる。
「ふむ」
「こっからこのあたりまでも~……まあ、まっとうよね。ケガさせたくないしぃ」
「真面目に集めただけでもずいぶんな額だ」
 イレギュラーズたちは、売り上げを集計している。
「とはいえ、それだけではいちおく……っていう大金はねぇ。というわけでせっせと盗んでいるわけですが」
「ドワッフとのお別れ、ちょっと寂しいなあ」
 と、ムスティスラーフ。
「あと一つ、大きい仕事をしたら終わりってところか」
 サイモンが両手を広げると、ザックと袖口からばらばらと金貨が零れ落ちる。
「今度は樽ごと、いただくわ」
 イーリンたちの窃盗は、磨き抜かれ、日に日に大胆になっている。樽ごと持ち込み、樽ごと盗むのだ。
 ラムレイにかさ増しにある程度砂利を入れた樽に引っ掛け持ち込む。まるごと入れ替えて、ホリの倉庫へと運ぶ。見つかりそうになったときはエクスマリアが髪で巻き取り、運ぶ。そうして樽ごと、1樽2樽とすり替えて、ついに金庫の半分ほどは砂利となったのだ。
「ルーチンワークになってきましたねぇ」

●新たな階層へ
 1億。
 1億という大金が、ついにたまろうとしている。
 あとはイーリンたちが運んでくる樽で、足りる。
 4割は窃盗、3割がまっとうな商売、残りがおおざっぱにおひねりと賭け事の勝ち分といったところだろうか。
「ひいふうみい。っと。い、いちおく? なせば成るものだな……」
 ホリは感心している。
「いやー、売りつくした売りつくした」
 秋奈は晴れやかな顔をしている。
「あとはこれを運ぶだけか」
「まっとうに商売をしていたのも事実だし、いくらかはバレない……とはいえ、全額を用意できたというのも不自然か」
 何やら、町の方が騒がしい。
「これはこれは……ばれましたかね?」
「やべぇ、発覚した!」
「遅い遅い、遅いねぇ」
 サイモンはにやりと笑った。
「ああ……思ったよりも遅かったな」
 と、ラルフ。
 どのみち、金貨は持ち込むことになる。これだけ稼げたのは上々だ。
 彼らには隠し通路もある。
 準備はすべて整った。あとは戻ってくれば、逃げ切れば。勝ちだ。

 エクスマリアのディスペアー・ブルーが、見張りを吹き飛ばす。ノーマーク。……鮮やかな手並みである。
「何? どっ、どうした!?」
 混乱したドワッフは、慌てて仲間をなぎ倒す始末である。
(兵士の練度が、足りない)
 おそらくは本気を出せばたやすい相手だ。
(扉さえ開ければ、次へは、行ける。いよいよと、なれば。王を人質に、金貨の要求も視野に入れておく、か……? )
 エクスマリアの脳裏は冷徹に現時点での可能性を精査し、あらゆる手段を検討していた。
「大丈夫よ」
 イーリンが言う。
 ”足りる”。足りたのだ。一発逆転の勝負と、商売で集めた金貨で!
「マリア! 花火大会よ!」
 颯爽と、樽を乗せたイーリンの漆黒の牝馬が狭い坑道を駆けてゆく。ただ、ただ、ひたすらに次の階層を目指して。
 ハイパーマニピュレートによって限りない精度で目標を定められた、マギウス・シオン・アル・アジフ。
 火薬、いや、これは蓄積された魔力だ。燃えさかる魔力。イーリンの赤い瞳が赤々と燃え上がる。
 だから、エクスマリアは力を抜いた。リズムよく波打つ髪。
 今回のおとぎ話の帰結は……どうやら、愉快な教訓話で終わりそうだ。
 こうして、ドワッフたちは、上手に鼻をあかされて、イレギュラーズたちは……次の階層へ至ったのでした。といったような筋書きか。
 イーリンの樽が飛んでくる。イーリンがなぎ払った一撃は、逃走経路にまっすぐな穴を開けて、ついでにドワッフたちが吹き飛ばされて気絶されるくらいの威力があった。
「あの威力は、まあ……多少気の毒ではあるな」
 ラルフが倒れたドワッフたちに、メガ・ヒールを飛ばした。
「抑えろ! あ、あいつら! ワシの金庫の金貨を! 絶対に次の階に行かせるな!」
「へっ! 追いつけねぇよ!」
 ホリのSADボマーが、地面を這って炸裂する。素早い多段牽制に、ドワッフたちは近づけすらしない。スープレックスに持ち込んだ。
「抑えてる、今だ!」
「まかせて!」
 ミルヴィの瞳が、真っ赤なルビーに染まる。まるで宝石のようだ。明星の剣イシュラークは、抜かない。ただ静かにミルヴィとともにある。
 ふわりと、片手で自身を支えて、追いすがるドワッフたちをぽいぽいと蹴り飛ばしていく。
「こんなのんびりした人達を殺すなんて冗談じゃない!」
「えーい、兵士どもめ! こっちもドワッフ砲、発……ぶわあ!」
 ラルフのレイが、何やらドワッフたちの兵器を吹き飛ばす。HOG。ハンズオブグリードでドワッフたちはたちどころに無力化されて積まれて山となっていく。

「くせ者だ! であえであえーーー!」
 見当違いの方向で警鐘が鳴る。
「なんだ!? あっちにも侵入者か!?」
「あれはね、仲良くなった上級ドワッフに鳴らしてもらったんだ」
 戻ってきたムスティスラーフがウィンクする。
「もう貯まったんだね。すごいや!」
「あいつらにも、大勝ちのときの金貨を分けてやったから、損って訳じゃないしな」
 と、シラス。
「そういうこと! まあ、ちょっと誘惑ついでに弱みを握ったから、お願いしたんだけどね。間違って警鐘を鳴らすくらいだったらそんなに怒られないでしょ。というわけで、僕も『むっち砲』でまとめて相手だ!」
「わー!」
 イレギュラーズたちの目的は、この階層の「踏破」である。
 このまま押し切れば、次の階は開くだろう。
 ホリが後ろを振り返った。
「全員いるな、いったん埋めるぞ!」
 ホリがスコップで退路を塞いでいる。
「うおおおお、いっけええええ!」
 その間に、仲間たちが天秤に金貨を載せてゆく。
 天秤がたわむ。
 そして、持ち上がり……。
 ギ、ギギッギと、歯車がかみあったような音がする。
「為せば成る、為さねばならぬt!!!」
 
 扉は、開かれた。

 セーブ。
「あばよっ! それにしても、めんどくせぇ連中ばっかだったぜ」
 イレギュラーズたちは、新たな階層へと至ったのだった。
「さて、彼らがどうなったのか、知る由もないが」
 振り返れば、一層下。すぐそこにある、どこか憎めないドワッフの王国は未だ健在だろう。
 イレギュラーズたちの行動は、おそらくドワッフたちに新たな風をもたらしたはずだ。
 自由への憧れを。新たな商売の気風を。……「何かを成し遂げる」ということを。
「彼らは……何を知り、どう生きるのかしら」
 イーリンがつぶやいた。
 彼らの活躍は、ドワッフたちの中で語り継がれている。
 そして、彼らに憧れるものは、ひそかに彼らを模したコインを作ったのだとか……。

成否

成功

MVP

ホリ・マッセ(p3p005174)
小さい体に大きな勇気を

状態異常

なし

あとがき

1億ダナモ借金返済RTA、お疲れ様でした!
半分くらいは正攻法で、悪依頼の部分は半分くらいでしょうか。
どんな方法にせよリプレイを書いていてもみなさまの創意工夫がとても楽しかったです!
MVPは、まさに”掘る”ことに特化し、絶好の隠し場所を作り、扉までの道を安全に移動できるようにしたホリ様にどうぞ!
彼らに感化されたドワッフたちもまた、たくましく生きていくのでしょう。

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