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シナリオ詳細

花舞Aerial walk

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●春風に身を委ね

 un deux trois.(アン ドゥ トロワ)
 un deux trois.(アン ドゥ トロワ)

 肺に息を満たして、身体を空気と一体化させるように。片足を前に踏み出して、其の儘ぐいと踏み込んで。階段を上るように軽やかに。
 心地よいメロディライン。滑るように、とはいかないけれど幾分かマシになったステップ。これなら、『俺も』飛べるかもしれない。
 ──さあさそのまま飛び出して。

 バタン!

「……ティターニア様!!」
「あら御免なさい、カナタ。そういえば貴方は人間だったわね」
「全くです。……俺には羽根がない。だから踊っても飛べる筈がないでしょう」
「……そうねぇ」

 ブルーム・ブルーム、妖精城フェアリィ・ステラにて。妖精女王ティターニアは、花冠師(フルール)であるカナタとワルツを踊っていた。そのワルツは妖精の基本。空を飛ぶ際の練習のステップとして、誰もが嗜む『礼儀』のようなものだった。
 フルールの中でも妖精と仲の良いカナタは、折角だからと女王に教えを乞うた。その結果、何度も何度も王城の床と熱いキスを交わしていたという訳だ。そもそも妖精のためのダンスであるのに羽根のない人間を飛ばそうなどと云うティターニア──改め、フローラもおかしいというものだが。
「折角教えたのに飛んでもらえないなんて、ほんと残念ね」
「代わりに俺が教えればいいのではないか?」
「名案よお兄様! そうと決まれば早速──、」
「結構です」
 銀髪揺らし、これでもかと首を横に振ったカナタ。其の様子をみたお兄様(グレイシア)は、ぽつりと疑問を口にした。

「カナタは飛びたい訳ではないのか?」

 その率直な疑問に、カナタはふるりと首を横に。緩やかに、然し悲しげに。
「いえ。……叶うならば、飛びたいです」
 青年は苦虫を噛み潰したような顔で、人類の夢を零した。翼を得て飛ぶことが出来たなら、どれ程喜ばしいだろうか。
 だから。
「なら。飛びましょうよ、カナタ」
「「えっ」」
「飛ぶわよ!」
 指パッチン、即座に集う従者改め上級妖精達。片膝は地につけた体勢で、ピシリと美しく。フローラは威厳ある様子で、当然のように口からことばを。
「風の妖精を集めなさい。人間と空を飛んで、踊るわよ!」
「……ティターニア様、その様な無理難題は──、」
「できないの? 貴方達それでも私の従者だと言うの?」
「っ……。お待ちくださいませ!!」
 このクソ女王いつか足引っ掛けて転ばせてやる、までが上級妖精達の心情だ。
「これで、貴方の夢は叶うかしら、カナタ?」
「……っ、はい!」
「……はぁ、相変わらず無茶なことをする妹だ」

 王城に風の妖精が呼び出されるまで後少し。

●偉大なる我儘
「……。女王様がまた何かやらかしたようだよ」
 カストルは何時ものようにため息を。それもふたつ。君には苦労をさせてばかりで申し訳ない。でも頑張れ。
 カストルが羊皮紙の束を捲りあげ、依頼内容を読み上げた。
「おっと。今回はカナタから依頼だね。なになに──、」

『拝啓、異世界の同志達へ。
 堅苦しい挨拶をしている余裕が無いので割愛するね。やあ、カナタだよ。
 正直もう今すぐ飛んできて欲しい。羽根があるなら今すぐ飛んできて欲しい。無くても飛んできて欲しい。
 ティターニア様がまた無茶振りをして、今度は空の上で色々できるようにされてしまった。助けて欲しい。
 俺以外にフルールがいないから止めに来て欲しい。今後ろにティターニア様がいるからもう何も書かないよ。
 早く来てくれ、これ以上俺の銀髪が白髪に変わらないうちに』

 読み上げたカストルはまたため息をついた。彼等にはそろそろ胃痛が付与されそうだ。
 パン、と破裂音にも似た音が響く。音の中心はカストルから。
「……カナタの為にも、早く行ってあげてくれると嬉しいかな」
 ……だそうだ、特異運命座標の皆。兎も角、頑張れ!

NMコメント

 お久しぶりです、染(そめ)と申します。
 空を飛んでみたいと思ったことはありませんか? 自分はあります。
 有翼種の方は勿論、そうでない方にもお楽しみ頂ければ幸いです。
 それでは、今回の依頼の説明に入ります。

●依頼内容
 依頼人:カナタ(後述します)
 依頼内容:空中散歩に付き合って欲しい

 春の妖精界はフローラの機嫌を表すようにご機嫌で天真爛漫な空気。空には花弁が舞ったり舞わなかったり。
 そんな空模様の中で空を飛んでみましょう。きっと楽しいと思います。
 何をするのも自由ですので、春の島に行ってみたりしても構いません。空を飛びましょう。

●ポイント
 地面を踏むように足に力を入れれば飛べるよ、だそうです。
 風の力で羽根を生やしてくれるそうです。飛べます!

●世界観
 魔法世界『ブルーム・ブルーム』。
 花と魔法で満ちた世界。魔法で文明が築かれています。
 基本的には物理攻撃よりも神秘攻撃がメインの世界です。
 また、ファンタジーな世界ですので、妖精やドラゴンなどのありえない生物がいます。

●フルールについて
 フルールとは、花冠師のこと。
 魔法や魔術を使う人々のことを指し、この世界に住まう人々の半分は花冠師です。
 現地の人々はもちろん、異世界から来た人がフルールと呼ばれる場合もあります。
 また、フルールにはギルドがあり、各々所属している団体があるようです。

●NPC
 呼び出された場合のみ登場します。
・フローラ(ティターニア)
 妖精女王。引き摺るほど長い若草色の髪が特徴。桜色の髪留めが宝物。
 エルフのように長い耳を持つ。成長が遅いとはいえ、いつまで経っても凹凸のない身体に悩んでいる。
 妖精の種類としては花の妖精。春の花の扱いを得意とします。
 今回の無茶ぶりの元凶です。

・グレイシア
 前の妖精王。鋭い目つきと薄氷色の髪が特徴。ガタイがいい。
 エルフのように長い耳をもつ。シスコン。眼鏡。
 他国の妖精へ外交をしに行っていた。
 妖精の種類としては雪の妖精。水の妖精の派生種族です。
 今回は地上でピアノを弾いているようです。

・カナタ(今回の依頼人)
 花冠師ギルド『Flowers Flag』のギルドマスター。齢19にしてトップクラスの実力を持つ温厚な青年。
 胃薬が手放せないのが最近の悩み。空を飛ぶのに四苦八苦。

●特殊ルール
 今回は風の妖精の協力により、『飛行』スキル等の空を飛ぶために必要なスキルを必要としません。
 好きなスキルを詰め込んでお楽しみくださいね。

●サンプルプレイング
 空を飛ぶのですね。よし、頑張りましょう!
 ふむふむ、地面を踏むように空気を踏み込んで……わあ! 硬い!
 ……よし、このまま飛んで行っちゃいましょう! どこかに!

  • 花舞Aerial walk完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月22日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

サイズ(p3p000319)
妖精■■として
武器商人(p3p001107)
闇之雲
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
雨紅(p3p008287)
ウシャスの呪い

リプレイ

●氷河に春を
「おやま、エアリアル…じゃないね、シルフか。
 なるほどキミたちが力を貸してくれるのであれば我(アタシ)も久々に羽を伸ばせそうだね」
「任せな。アンタも風の友だ、存分に飛ぶといい」
 とは言われたものの、『闇之雲』武器商人(p3p001107)はグレイシアの周りをくるくる低空飛行。先日指導した光の妖精があう、と裾を引けば、共にくるくる踊っていたのだが。
「……俺はピアノが下手だったのか?」
「ん? ああ、小鳥を思い出していたのさ。氷河のコの演奏は充分美しいよ。
 音楽は好きだよ、我(アタシ)の小鳥が、ウタとヴァイオリンが上手なのさ」
 フフフ、とご機嫌に口元を歪めた武器商人とは真逆に、そうかと呟いてまた演奏を続けたグレイシア。そんな青年に向けてふと、武器商人が口を開いた。
「王様はピアノが得意なのかな? ああ、王様だけど前の王様だったね。まだまだ現役でやれそうに見えるけど。
 何分、前の妖精王と今の妖精王が一緒にいるのはなんだか『珍しい』なあって思って。何か特別な理由でもあったの?」
 滑らかな演奏に少々のつっかえ。直ぐに立て直すも、難しいと思ったのかグレイシアは演奏を止めて武器商人に向き直った。
「俺はフローラの代わりに王として振る舞っていただけで、実際は外交担当なんだ。幼いフローラの代わりに政治を務めていたんだよ。ただそれだけだ。
 だから、あの子が大きくなったから、俺はあるべき主にその席を返したまでだ。それが俺達の場合は王冠だった、というだけでな」
 ほう、と息を吐くグレイシア。ふむと頷いてから、束の間の静寂が訪れる。
 パン。
 乾いた破裂音。その音の中心は武器商人。驚いて眼鏡を上げるグレイシアに向けて、武器商人は笑いかけた。
「ま、それで何かわかっても、わからなくとも、春の陽射しは麗かだ。今この瞬間に限っては、その疑問も些事であろうね」
「……ああ、そうだな」
 ぐい。
 ピアノの演奏に戻ろうとしたグレイシアの腕を引いて、武器商人は空高く舞い上がった。
「ねえねえ、愛らしい氷河のコ。キミもおいでよ」
「お、お前……っ!?」
「そんなところでピアノを弾くのは何時だってできるだろう? 折角キミのイモウトが統治する地だもの、上から眺めるのも一興であろ」
 どうだい、と首を傾げた武器商人にむけて、小さくああ、と返して。グレイシアと武器商人は、空からフローラの創り上げた世界を見ていた。

●翼に意思を
(妖精たちの無茶振りに付き合ったりとギルドのトップってのもなにかと大変なんだな。その若さで胃薬が必須とはさぞ心労も多いんだろう)
 同じく苦労の絶えないであろう性格の『凡才』回言 世界(p3p007315)は、カナタに同情にも似た視線を送っていた。
「まあそれはそれとして俺の人生でもまだ数少ない宙を舞う体験だ。カナタを助けるついでに存分に楽しまないとな」
「あい!」
 いつぞやの水の妖精は、世界の頭に飛び乗って。おお、と出迎えた世界は懐かし気に目を細める。
「そうだ、地面を歩くみたいに足に力を入れるんだったな。おっ、なるほど……飛ぶというよりは空を歩くみたいな感じだな」
「あう」
「今度は俺が教えられてるなぁ……」
「あいー!」
 まずは低空のゾーンを少しずつ踏みしめて。慣れてきたところで、世界は足に力を込めて勢いよく空へと舞い上がった。
「……っと。君もティターニアに巻き込まれたのかい?」
「巻き込まれたですって!? もう、失礼しちゃうわ!」
「ははは、冗談ですよ女王陛下。で、ええと、世界さんだっけ。此処で飛ぶのかい?」
「ああ……ところでだなカナタ。別に飛ぶこと自体は嫌ではないんだろう?」
「う、うん? 嫌ではないけど、それがどうしたの?」
「なら、お前も折角の機会だと割り切って遊んでみるのはどうだ?
 なんなら一緒に何処かに出かけてみようぜ。春の島ってのもあるみたいだしそこまで競争とか面白そうだろ?」
「……」
 ぱちぱち、と瞬き二回。それからティターニアに恭しく一礼すると、カナタはくるりと背を向けて世界の方へ。ティターニアはそんなカナタの背に向けて手をひらひらと振っている。
「ええと、カナタ。これは……」
「競争、するんだよね?」
 にやっと笑みを浮かべたカナタは、そのまま踏み込んで走るように風をきった。
「! スタートダッシュはそろえるものだろ!」
 その背を追って世界も駆けだした。春の島はまだまだ、二人の先にある。空を飛ぶ二人の背には、美しい羽根が生えていた。

「ああそうだ、カナタ、これ」
「ん?」
「上級妖精の皆と分け合って食べてくれ」
 手渡された菓子折りに、カナタは思わず涙を浮かべかけたのだった。

●青の色
「空中散歩ね……俺の場合デフォルトで飛行できるから慣れない力を使う必要はないな……」
 『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は生まれ持った飛行能力があったため風の妖精の力を借りることはなく、慣れた様子で飛行を。途中見かけた上級妖精たちにはコンポタ缶や深緑茶を配ってねぎらいつつ。
「そういえばそこそこの回数ここには来たが、この世界周辺をじっくり見てまわってないな……」
 ふと気が付いたサイズは、ぐんと高度をあげてこのブルーム・ブルームにおける妖精界を見て回ることに。
(気になるものとかあったら飛行を一時的にやめて、重装備の重さに身を任せて重力落下、高度を落として、フローラ様に聞きに行くかな)
 すう、と飛んでいるサイズにつられたのか、ティターニア改めフローラはいつの間にかサイズの横へ。
「御機嫌よう、サイズ!」
「わ、びっくりした……こんにちは、フローラ様。この世界って結構来たことあるつもりたっだんですけど、まだまだ知らないことが多いですね」
「んー、そうねぇ……それなら私が案内しましょうか?」
「え、いいんですか」
「勿論よ! それも女王の務めだわ」
「じゃあ、時間を取らせるわけにもいかないので、スピード上げますね」
「ええ!」
 いっきにスピードを上げて飛ぶ二人。ふと疑問に思ったのか、サイズは口を開いた。
「あの……この世界の妖精はそんなに早く飛べるんですか?」
「いいえ! 私が飛ぶのが好きだから、幼い頃に飛び続けていたらこんなに早く飛べるようになってしまったのよ!」
 このお転婆女王なら納得だな、と苦笑したサイズ。当の本人はなんで笑うのと不満げなのだが。びゅん、と二人で進んでいくうちに、フローラのお気に入りのスポットへとたどり着く。
「……ここは?」
「海よ!」
 青くて煌めいている海は、混沌の海洋同様に美しくて、広くて。
「夏はここで花火大会をするのよ。それが毎年楽しみなの!」
「なるほど……」
「機会があったらサイズも来て頂戴ね」
「勿論です」
 潮風の匂いが、少しだけ混沌を想わせて。何故か胸が痛くなるサイズだった。


(様々な世界に行けるとは。まだ現代のことを把握しきれていませんね、私は。
 ああ、こんな堅苦しい話はこの華やかな世界に似つかわしくないですね)
 『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)は仮面の下で眉根を寄せて。しかし、カナタの力になるためにまずは一歩、空中へ。
(……重い鎧でも問題ないようです。不思議ですね)
 鎧の金属音を僅かに響かせながら、雨紅は一歩ずつ前へ。空を進み風に押されるがままにカナタの元にたどり着いた雨紅は、戻ってきていたカナタにそっと声をかける。
「泳ぎでは水に慣れることから始め、浮くもので補助をしつつ練習するそうです。
 まずステップには拘らず、歩きの延長で空に慣れるのはどうでしょう」
「なるほど、有難う。早速そうしたいんだけど、浮くものが……風くらいしかなくてさ」
 未だにぎこちない動きで飛び続けるカナタの手を雨紅はそっと握った。カナタは手を握り返すと、そのまま動く練習を。
「浮くものは……同じペースで歩ける私達が手を握る、でしょうか?
 失礼に当たらないのであればですが」
「勿論。俺こそごめんね、女性に気を使わせるなんて情けないや」
「いえ、お気になさらず。それでは、始めましょうか」
 雨紅の手を握ったカナタは、少しずつ歩みを進める。勢いに任せて飛ぶのではなく、確かな足取りで空を飛ぶ。何度か繰り返すうちに雨紅の手を離して飛べるように。
「有難う、雨紅さん」
「いえ、お構いなく」

 雨紅はぐい、と空気を踏みしめて、舞を始めた。
(私は皆様方を笑顔にしたいと願うもの。
 女王陛下にグレイシア様、此度の功労者である風の妖精様方、(どうにも苦労していらっしゃる様子の)カナタ様。
 依頼に応えたイレギュラーズの皆様。
 この世界では、武舞は馴染みがないかもしれませんが、楽しんでいただければ)
 しなやかに。華やかに。艶やかに。鋭く。繊細に。
「まぁ! 兄様、少し近寄って見て見ましょうよ!」
「ああ、そうしようか。……舞とは、美しいな」
 それは妖精や人々の心を掴んで、離すことはなかった。

成否

成功

状態異常

なし

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