PandoraPartyProject

シナリオ詳細

スコッチ・パインに実りを

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「お願いしたいことがあるのだけれど、いいかしら?」
 フランツェル・ロア・ヘクセンハウス(p3n000115)のその言葉に鬼桜 雪之丞 (p3p002312)は「任務ですか」と静かに問い返した。
 深緑はアンテローゼ大聖堂。イレギュラーズを派遣してほしいとのローレットへの伝令を受けてやってきた雪之丞はどう見てもアフタヌーンティーの準備をしているフランツェルを不思議そうに見遣る事しかできない。
「ああ、もしお暇ならお茶菓子でも摘まんでく?」
「おかし!? あっ、ううん。仕事について聞かせて欲しいなっ」
 ついついクッキーやタルトが並ぶテーブルに釘付けになってしまったが――ルアナ・テルフォード (p3p000291)はぶんぶんと首を振る。勇者たるもの困っている人がいるならば見過ごすことは出来ないのだ。
「あっ、し、仕事のお話を聞きに来たのですっ! お菓子は……後で……」
 我慢も必要だという様に首を振ったソフィリア・ラングレイ (p3p007527)。深緑産のフルーツをふんだんに使ったタルトに生唾を飲み込んでから真剣な顔で「お話ししてほしいのです」と向き直る。
「ふふ。お願いしたいのはね、このタルトにも使っているフルーツの収穫作業なのだけど」
「このタルト……スコッチ・パインではなくて? 確か――『ドラゴンフルーツ』」
「「ドラゴンフルーツ?」」
 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)の言葉に声をそろえて首を傾いだルアナとソフィリア。フランツェルは「そう、『ドラゴンフルーツ』」と彼女らの言葉を繰り返した。
「それって、あの、イガイガのフルーツだっけ? 食べた事ないなあ……」
 何となく知っているフルーツを想像してみた炎堂 焔 (p3p004727)。ジェスチャーを交えてフルーツの形状を伝えるがヴァレーリヤは首を傾いだ後「違いますわ」と首を振った。
「ドラゴンフルーツはドラゴンですのよ。成熟すると自立して歩き出すドラゴンに似ているフルーツで、それはそれは美味しくて……」
「ええっ、動き回るの!?」
「ええ。けれど、育ちすぎると収穫業者も一苦労で傭兵が良く駆り出され――」
 そこまでヴァレーリヤは言ってからフランツェルを見遣る。ご明察と言わんばかりに微笑んだ深緑の魔女は「説明する手間が省けたわね」と言った。
「育ちすぎたの」
「いや、端的すぎる」
 思わずツッコミを入れたリア・クォーツ (p3p004937)。それはそれは端的な説明だった。
「一先ず、もう少し説明を!」
 リアに促されるまま「んー」とフランツェルは首を傾いで、にんまりと微笑んだ。それはそれは、悪い事を考えていますと言わんばかりである。
(……魔女って感じがしたけど、まあ、いい……かな?)
 精霊的第六感がなんとなしに危機を感じているがソア (p3p007025)は一先ずフランツェルの言葉を待った。
「場所はアンテローゼから少し行った場所にある農場なんだけれど、スコッチ・パインっていう品種のドラゴンフルーツを栽培しているのよ。
 スコッチ・パインの果汁はほろ苦いけれど加工をすればとてもおいしく頂けるから人気なんだけれど……収穫時期を逃した『一匹』がどうにも暴れん坊みたいでね?」
「それを斃(しゅうかく)すればええんやろか。聞いた話やと、そんなに難しくはなさそうやけれど」
 瞬く蜻蛉 (p3p002599)にフランツェルはこくこくと頷いた。
 ソアはどこか嫌な予感がした。そう言えば、ドラゴンフルーツの攻撃方法なんかを聞いてない――

GMコメント

 リクエストありがとうございます。美味しいの食べましょうね!

●スコッチ・パイン(成熟体)
 とっても大きく育ちすぎたドラゴンフルーツ。ドラゴンで、フルーツ。
 その外見はドラゴン。成熟すると歩き回り果汁ビームを吐き、タネマシンガンを行います。
 ドラゴンフルーツ達の果汁には神秘的な『おまじない』がかかっているともっぱらの噂です。

●おまじない
 ――ええ!? 心の中にある大切な思いを叫びたくなっちゃうんですか!?
 好きな人の話とか、おなかすいた話とか、未成年が主張するみたいに声高に!?

●シナリオの楽しみ方
 ドラゴンフルーツを1匹しっかりと収穫してきてください。
 収穫後は、ほかのドラゴンフルーツや様々なフルーツ狩りを楽しめますし、食べてもOKです。
 この農園では通年通して様々なフルーツを育ててるのでリクエストすればきっと……!
 また、アンテローゼ大聖堂にお勤めのシスターたちが「もしフルーツを持ってきてくれたらお茶の用意や加工をします」と言っていました。そちらもよろしければどうぞ。
 薔薇の咲き誇る庭園をお茶会場所として貸し出すと(叫んじゃうことを隠していた)魔女が宣言しています。

 どうぞ、楽しくフルーツを食べていってくださいね!

  • スコッチ・パインに実りを完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月01日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルアナ・テルフォード(p3p000291)
絶望を砕く者
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
玲瓏の壁
蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
リア・クォーツ(p3p004937)
旋律を知る者
ソア(p3p007025)
雷虎
ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)
地上に虹をかけて

リプレイ


 美しい木々にぐるりと囲まれた深緑。その一画からのSOSは『育ちすぎたフルーツ狩り』だった。しかし――しかし、『守護の勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)は『前情報』を知りながらも叫ばずにはいられなかった。
「わたし、召喚されてから結構あちこち行って、不思議な体験もしてきたけどね。
 なぁにこれ!? わたしのしってるドラゴンフルーツじゃないよー!!!」
 ドラゴンフルーツ。サボテン科ヒモサボテン属のサンカクサボテン等の果実なのである。ある地方では『火竜果』とも呼ばれているというそれはルアナの知識の上では、否、この場の誰もの知識の上で赤い果実であるのが一般的であるという認識だ。
「ドラゴン、フルーツ。まさに混沌。深緑には摩訶不思議な植生があるものですね。話を聞く限り、これが普通のようですし……」
 句読点の位置は決して間違えたわけではない。『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)は見たままの事を言ったのだ。そう、『ドラゴンフルーツ』が前の前に居る。あるのではなくて、居るのだ。
「一匹! 数え方がボクの知ってるフルーツと違う! あっ種を飛ばしてる、ビーム打ってる!」
 ドラゴンフルーツの数え方は『一個』でも『ひとつ』でもなく『一匹』。『雷虎』ソア(p3p007025)はすごいと瞳を輝かせて、くるりと振り返りぷるぷると震えている『旋律を知る者』リア・クォーツ(p3p004937)の様子に首を傾げた。
「なんでもありか……」
 低く、呟いた。
「なんでもありか――!?」
 リアは驚愕した。目の前ではさも当然の様に小型のドラゴン(※果物である)が暴れている姿が見られる。現在収穫途中のそれらはフルーツだと言われても信じようがない。どちらかと言えば植物ではなくて動物のイメージだ。
「ふむん、歩き回るドラゴンフルーツ……世の中にはそういうのもありますのね。
 けれど、ご安心下さいまし。私の『超聴力』をもってすれば探す必要すらございませんわ!」
 ふふんと胸を張った『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。そのどや顔と共にぐるりと振り返った彼女は「木々の葉が擦れる音、遠くで鳴いている鳥の声、そう。こんな感じ……」と言った後、農家の手から逃れて走り寄ってきたドラゴンフルーツによる一撃を浴びた。
「ギニャーーーー!?」
 それは決して甘い物ではなかった。唐辛子にニンニク、そして仄かなごま油の香が食欲をそそる――が、それは果たして何なのか。
「……?」
『地上に虹をかけて』ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)がそれを指さしたが『涙ひとしずく』蜻蛉(p3p002599)は首を振るだけだ。
「な、なんですのー!? こ、これは……辛味オイル!?」
「えっ、フルーツにかけるの!? 美味しいのかな? ううん、相手は混沌不思議食べ物動物シリーズ! 知ってるよ、ボクもこっちに来てから色々見たし、元の世界の常識は捨てなきゃいけない時があるって」
『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が納得してくれた。常識を捨てれば、きっとドラゴンフルーツに辛味オイルもおいしいよね。


「果物……言うたら、木に実るもんやとばかり思とったけど……こっちの世界やと、歩くみたい」
 改めて農家(依頼人)の説明を聞きながら蜻蛉は収穫されていくドラゴンフルーツたちを見てこてり、と首を傾ぐ。それは普通のドラゴンフルーツとは変哲無い外見をしているように見せかけて小型の愛らしいドラゴンの様な頭がちょこんと存在し翼と尾を生やしてどすどすと歩くのだという。
「ほんまに、フルーツ?」
「ええ、本当にフルーツですよ。昔、覇竜領域に存在するという竜種を見たって言う冒険者さんが『竜種の子供』と間違えた事に由来しているだとか」
 命名理由は成程、頷ける。蜻蛉は「そうなんね……?」と首を傾げる。
「歩いてビームやマシンガンを撃つフルーツ……混沌は、まだまだうちが知らない不思議があるのです……でも、美味しいのは大歓迎なのです!
 ザクっと倒して収穫して、フルーツいっぱい食べるのです!」
 ソフィリアの言葉に蜻蛉は頷いた。そう言えば何気なく日傘を持ってきていたのだが――「ああ、お嬢ちゃんたち、『おまじない』には気を付けてね」という農家の言葉にそっと蜻蛉は傘を開いたのだった。
「わあ、本当に元気いっぱいなんだね。ドラゴン――フルーツ。……植物? う、うーん」
 深く考えるとめまいがしそうだとルアナは頭を押さえる。そう言えば、先ほどドラゴンフルーツに開幕一発お見舞いされてたヴァレーリヤが静かだ。まさか、植物の汁を浴びた『おまじない』には攻撃や何らかのバッドステータスが!? そう振り向いたルアナの前でヴァレーリヤが叫んだ。
「ぐへへ、美味しいお酒飲みたい!!!!
 この依頼の報酬をもらったら祝勝会をする体で全員呼び出して、普段飲めない美味しいお酒をたくさん頼んで、全員の報酬を呑み尽くすのでございますわーー!! 辛味オイル!? 何のことですの? 身体が笑いに飢えていますわ! ええ、そちらも持っていらっしゃいー!! おーっほっほ!!」
 ――なんだか『どういうものか』分かった気がした。
 ハッとしたように周りを見回すヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤの敬虔なる言葉に思わず天より聖女チョップが降り注ぎそうである。
「……はっ、私は何を」
 周囲を見回すヴァレーリヤにリアは「どうした」と冷めた声で問いかけた。何となく嫌な予感はしたが今迄ローレットで活動していてそんな予感がしなかった訳はない。何となく叫びたくなってしまうだけだというならば「コンニャロー!」と叫んで終いだという予感がリアの中ではどこかにあった。
 正直、『果汁? そんなの喰らうわけないし、喰らっても不思議な目に合うかなんて宛にならんでしょ。何か言ってしまって死にたくなるようなことにはなるわけナイナイ! ははは! あり得んですよ!』という余裕が滲みだしていた。
「コホンッ、あれは食べ物による攻撃でしたわ。食物のかおりがしましたもの」
「ねえ、おいしいの? あの実は本当においしいの?!」
 くい、くい、と蜻蛉の袖を引っ張るソア。蜻蛉は「んー……どうなんやろ?」と首を傾ぐ。
「取り合えず果汁は傘か何かで凌いでおいて浴びん方がええかもしれんね……?」
「そっか! でも、あの魔物って言わなかったのはボク偉いと思うんだ!
 だってあんなのったらないでしょう? ないよね? 少なくとも銀の森にはなかったもん!」
 銀の森はラサと鉄帝の誇る素晴らしき観光スポットである。勿論、何らかの果実は存在しているだろうが、こうして歩き回るのは中々に珍しいのだろう。
「イレギュラーズなら、果物なんかに負けてられない!
 だって、ドラゴンなんて言っても果物でしょ! 虎の方が強いに決まってる!」
 びしりとソアは指さした。こくこくと頷いたルアナは「収穫だよね!? どうして攻撃してくるのー!?」と慌てたように顔を上げる。
「収穫、らしいからあんまりあっちこっち傷をつけるとよくないよね? 皆と攻撃箇所を合わせようかな」
「燃やさないよ」
 どどんと宣言した焔に蜻蛉も頷いたファルカウが信仰の対象である事もあり、火はあまり好まれない。そして、目の前にあるのが討伐対象でないならあまり、火を通すのは……という判断なのだろう。
 傘を手にしながら気を付けて動き回る蜻蛉。じりじりとドラゴン狩り(食用)に向き合う八人は皆、ヴァレーリヤが叫んだ『おまじない』を警戒していた。
「くっ、やってくれましたわね。私の完璧にしてスマートな計画を台無しにするなんて……その罪、万死に値しましてよ!」
『おなじない』がどのようなものなのかをその身を以て表したヴァレーリヤ。
 思いっきりぶんなぐって腹いせついでに収穫してやろうと『どっせえーーい!』と勢い込める。
 その勢いと共に果汁がばしゃりと広がった。体がべたべたになりそうだからと拒絶の姿勢を見せたルアナの顔面に目掛けて甘い香りがばしゃりと被る。
「ひゃああああ!?」
「ああっ、そんな! 私とした事が皆さんに果汁をかけてしまいましたわー!?」
 果汁が掛かった事に気付いた雪之丞は『おなじない』の事を黙秘していた魔女の事に気付き愛刀を握りしめる手に力が籠った。後で懲らしめねばならない。雪之丞は激怒した、という状態である。
「タルトは、おかわりが頂きたいです!」
 任務の為に我慢したのは失敗だった。腹が減っては戦は出来ぬ。唇から漏れ出す本音を我慢するように、ドラゴンフルーツへと向き直った。早くその首刈り取らねば更に『何か』を口から溢れ出させてしまう。
「大人の女性に、なりたいです……!」
 それを言ってから雪之丞は頭を抱えた。自分だって蜻蛉の様な美貌を手に入れたい。大人のレディウになりたいのですと頬を膨らませる情報屋とはまた別の『なり得ぬ』からこその希望なのだ。
 対する蜻蛉は、傘の影より果汁が掛かった事にサア、と血の気が引く感覚がする。
「いつも追いかけてばかりで……なんて思てた。きぃついたら死にかけやて、このまま逝ってしもたら、絶対許さへんから!」
 慌て、口元に手をやった。その掌についていた果汁が美味である事に気付きながらも唇は言葉を紡ぎ続ける。
「……そや、男いうんはそういう生き物やった、好きに生きたらええ。
 止めても無駄なんは知っとる、もし生きて帰ったらその時は憶えときや」
 愛しい愛しいと口先だけで言うならば誰にだってできる。その命、独り者だと思うならば、思えばいい――往くのが男というならば、待つのは女だ。
「ええ子やから、大人しゅう収穫されて頂戴な」
 それは二つの意味を込めて。男だって『収穫』しなくてはいけないのだ。存分に思いを熟れさせ、この掌に堕ちて来るがいい。唇を手でそっと抑えた蜻蛉の隣で焔は「ええ!?」と瞬いた。
「皆突然叫び出してどうしたの? この果汁のせい!? そんな話聞いてないよ!
 このままじゃボクも、もうボクのお胸が成長する可能性はほとんどないのはわかってるけど。
 それでも諦めきれないんだよ! だって、リアちゃんとか見てよ、同い年であんな風にあんな感じなんだよ!」
 叫んじゃうよ! と言ったが、もう叫んでいた。溢れ出した思いは止まることを知らない。
「大切な想いってのはね! だいじにだいじに心の底に秘めておくものなの!
 おまじないとかってそんなもので喋ったりしないもん!」
 唇をきゅ、と噛んだ。ぐぬぬと堪えるような顔をしてしまってはいるが、ルアナは耐えるように首を振って、それでも『おまじないは効果絶大』なのか、堪えきれぬと唇が戦慄いた。
「ッ――グレイシアおじさまだいすきー!」
 その声にソフィリアは「みんな叫んでるのです」と首を傾ぐ。でも、自分は大丈夫という自信があって胸を張ってドヤァとして見せる。隠し事がない安心安全美少女なのである。
「うちは普段から思ったことは言っちゃうタイプだから、果汁を浴びても問題無いのです」
 だからこそ、果汁を目いっぱいに被った。それでも大丈夫だと自負していたのもある――が、唇はぺらりぺらりと言葉を紡ぐ。
「果物いっぱい食べたいのです! 美味しいご飯もいっぱい食べたいのです!
 それとそれと、誠吾さん大好きなのです! ……ん? 確かに、誠吾さんは大好きなのです。ん?」
 いつも一緒に遊んでくれて、お仕事も頼れる彼。それでも自分の言葉に何となく違和感を感じながらソフィリアは首を傾げ――「でも、お化けは嫌いなのです!!」
 叫んだあと、「わああ」と声を漏らして首を振った。お化けが嫌いなのはトップシークレットなのだ。
「こ、怖くなんて無いのです! 本当なのです!」
 ぶんぶんと手を振りながらドラゴンフルーツを殴り続ける。ソフィリアの勢いは止まらない。
「本当に、感謝してます……その……お、お母さん。愛してます……」 
 普段ならば絶対に言うことがないクォーツ院のシスター・アザレアへの感謝の言葉。その言葉がぽろりと漏れた時、リアははっとしたように唇を抑えてヴァレーリヤを振り返った。
「く、唇が勝手に……!? 後で辛味オイルだからなー!?」
 リアのその言葉にヴァレーリヤが「意味が分かりませんわよ!?」とウォッカの瓶を抱きしめた。
「フルーツ……果物……美食……ガブリエル様……。
 ガブリエル様!? ガブリエル様ーーー! 好きです! 尊敬してます!!
 貴方の為なら何でもやります!!! だからまた! 今度はもっと強く、抱きしめてくださいーーー!!!」
 リアの叫び声が響き渡る。見事、『収穫(と)』る事が出来たドラゴンフルーツをぎゅっと抱きしめながらソフィリアは「あわわ……」と小さく声を漏らしたのだった。


「おかえりなさい」
 にんまりと微笑んだフランツェルはイレギュラーズ達の為にアンテローゼ大聖堂でも評判の薔薇園での茶会に誘った。くたびれたルアナが「果汁でべちゃべちゃだよ」と草臥れた顔を見せた様子にアンテローゼ大聖堂のシスターたちが深緑風の衣服の貸し出しを進めてくる。
「わあ、ありがとう! それに……お茶会用に美味しそうなお菓子もたくさんあるんだね!」
「ええ、そうですわね。収穫もしっかりしましたし、フルーツポンチやジュースにしてもらっても?
 食べきれない分はフルーツをお酒に漬けて貰えると嬉しいですわね! そういう飲み方はありまして?」
 真っ赤に染まった衣服に「ニンニクの匂いが香ばしいですわね」とヴァレーリヤが眉を顰めた。何処からともなくぶっかけられた辛味オイルの香りがどうにも自分からとれなさそうなのだ。精神的なダメージを深く追っていたリアは「ところで、撮ってない? 誓って撮ってない?」と本音(ひみつ)を隠しておけているかとぐいぐい詰め寄っているが魔女は微笑むだけだ。
「そうだ! 皆とちょっとずつ交換したりしよう! ボクのもあげるから一口頂戴、ほら、あーんっ」
「あーん」
 にんまりと笑った焔にソフィリアが楽し気に口を開いて美味しいと笑みを浮かべる。『お楽しみ』を存分に味わうとそのお口は美味しいを体現していた。
「あのね、ボクは人になりたいの、だって楽しいことが沢山でしょう?
 ねえ、フランツェルさん、フランツェルさん! 魔女なのでしょう? だって本で読んだのにそっくり! だからきっと人になる方法も知ってるよね?」
 きらりと瞳を輝かせるソアは先ほど『果汁』を受けてから、どうにも唇から言葉が飛び出して止まらないのだとどこか照れたように笑みを浮かべる。
「魔女はね、物語では人魚だって人形だって人にしてみせてたもの!」
「どうして人間になりたいのかしら?」
 ソアの脳裏に浮かんだのは何時も優しい男の子。彼と同じハーモニアになれたならば、きっと、きっと、素敵で幸せなのだ。そんな彼女へとフランツェルは「私は神様ではないのだけれど」と前置きする。
「貴女は立派に人よ。けれど、この言葉の意味が分からなければきっとだめなのね?」
 にんまりと微笑んだフランツェルの傍にひょこりと顔を出して焔は「素敵のお茶会にお呼びいただきありがとう!」と微笑んだ。椅子へとフランツェルを誘って、さり気なくヴァレーリヤがその肩を押さえつける。
「そうそう、フランツェルちゃんにお土産持って来たんだよ。はい、ドラゴンフルーツの果汁!
 戦ってる時に口に入ったりしたけど、美味しかったから飲んで貰いたいなって思って」
「あら、ありがとう。遠慮しようかしら?」
「美味しいよ? 大丈夫だよ、別におかしなことになったりしないはずだから。
『だって、ボク達が出発する時にそんな注意を聞いた覚えもないしね』」
「ちょ―――駄目、駄目よ。魔女には秘密が必要なんだから!」
 じたばたと足を動かすフランツェルに着席して紅茶を飲んでいた蜻蛉は美しく笑みを浮かべて見せる。
「……不思議な味がするんやね、これ。けれど、そんなに嫌いやないわ……。
 あぁ、魔女さんにはこれやね? ――これでお揃いやよ? ふふ」
 助けにはならないのだ。蜻蛉のその言葉に頷いて雪之丞は「せっかく、収穫したばかりですから」と柔らかに微笑んだ。
「それはそれとして、お茶や、タルトを頂きたいですね。
 体力より精神的に疲れましたが、そんな時こそ、甘味でしょう。存分に楽しんで、一息いれましょうか」
 テーブルにセットされた菓子に瞳を輝かせるソフィリアは「美味しそうなのです」とずい、と身を乗り出している。ばたばたとしていたフランツェルが「録画してギルドマスターに持っていけばちょっぴり美味しい思い出来るかと思っただけなのよぉー!」と叫んだのだった。
 リアの表情が変化したが……それは『白状した』事で一応は阻止できたはずだろう。きっと、多分、maybe……。
「ところで、これが終わったら皆で祝勝会に行きませんこと? 良い酒場を知っているのだけれど……」
 うきうきとしたヴァレーリヤは漬けたばかりのドラゴンフルーツを抱えてにんまりと微笑んでいる。
 手元に並んでいた菓子をぱくり、と掴んでからその味わいに思わず叫んだのだった。
「辛ァッ――――――!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

~ CM ~
からっ! 一口食べれば未知の味!
(歩き回るドラゴンフルーツに辛味オイルをぶっかける映像)
辛味オイルをかけたドラゴンフルーツ! 新製品!
深緑アンテローゼ大聖堂より好評発売中!

(ご参加ありがとうございました。お疲れ様でした!)

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