シナリオ詳細
<虹の架け橋>カイタイダンジョン
オープニング
●虹の架け橋をわたろう
「ヨッ、あんたがイレギュラーズってえやつかい? 話は聞いてるんだろう? アタシについてきな、妖精の国に案内してやるぜ!」
サラシの上に諸肌を脱いだ黒袴というなかなかぶっ飛んだ格好をした妖精が、ある日のカフェへ唐突に現れた。
およそ30センチほどしかない身長ながら堂々とした振る舞いで、パンパンと手を叩いて気合いを入れる。
ある晴れた昼下がり。深緑ファルカウでのこと。
いまより妖精の国を目指すのだそうだ。
彼女の言うように話を聞いていた――わけではない方に向けて説明しよう。
かつてより深緑には妖精郷アルヴィオンより妖精達が遊びに来ていたが、行き来に必要なアーカンシェル門が未知の魔物たちに破壊されてしまった。
狙いはおそらく妖精王。魔物達は既に妖精郷へと入り込んでおり、ローレットたちが護ったいくつかの門も連動した別箇所の影響で使用不能になってしまった。
このままでは妖精王ひいては妖精郷が危ない。急遽アーカンシェルから大迷宮ヘイムダリオンへと通路をつなげ、迷宮の領域を次々に攻略していくことで力尽くで妖精郷へと駆けつけようという……バラバラながらもやや大規模な依頼がローレットには舞い込み始めていた。
大迷宮ヘイムダリオンの攻略には『虹の宝珠』が必要であり、今回はその宝珠を獲得するまでの依頼ということになる。
「無理矢理押し通るってのがいいね。アタシの趣味にも合ってる。
今回突破する領域も、そういうヤツのほうが向いてるかもな」
妖精が紹介したのは無数の壁で阻まれたダンジョンである。
あまりにも広大な領域を何層にも渡って壁が覆っているというもので、走ろうが飛ぼうが壁を越えるのはきわめて困難。
よって、この何層もある壁を様々な方法で破壊し、無理矢理に突破していかねばならないということである。
「石の壁、茨の壁、氷の壁、炎の壁、電流の壁、守護神の壁……この壁を突破する間にも壁を護るウォールキーパーっていうゴーレムが襲ってくるから、並のヤロウじゃ突破できねえ。
けど、アンタたちならイケるんじゃないか?」
壁にひたすら打撃を与え続ければもちろん壊せるわけだが、それぞれの壁には特徴があり、もちろん効率的な破壊方法があるはずだ。妖精はあまりその辺を考えていないので、イレギュラーズたちが自分なりに考えて対応することになるだろう。
主な壁の特徴はこうだ。
・石の壁
もっともオーソドックスな壁。ブロック塀のようなものなので純粋な破壊で対応できる。
攻撃時に計上されるダメージ量が多ければ多いほどよく壊れるはず。
・茨の壁
大量の茨がみっちりつまった壁。打撃を柔軟に吸収するうえ水分が豊富なので案外延焼しづらい。
そのうえ直接的な打撃を与えると茨がはねてこちらがダメージを負うことも。
・氷の壁
非常に頑丈な氷でできた壁。打撃はもちろん通じるが、近づいているだけで防御や回避能力が低下するフィールド効果がある。
冷気には当然強いがやっぱり熱によわい。
・炎の壁
永遠に流れ続ける炎の滝。触れてるだけで防御無視のスリップダメージがある。
壁といいつつ通り抜け可能なのでHPや治癒でゴリ押し可能だが、やたら分厚いので消耗は覚悟したほうがいいかも。
炎は流れているものなので、流れを一時的に遮る風なんかも有効。
・電流の壁
石壁の周囲に激しい電流が流れているというもの。
近づいているだけでダメージと抵抗力&攻撃力の低下がおこる。
なにげに一番ゴリ押しが必要な場面。
・守護神の壁
これまでの壁の要素全てを兼ね備えた魔物が最後の壁として立ちはだかる。
石のような硬さを持ちながら、茨を束ねた大量の触手で氷、炎、電流で攻撃してくる。
このパートだけは通常の戦闘システムで判定される。
「『守護神の壁』までを破壊しきれば虹の宝珠をゲットできるはずだ。
どれもクセのある壁だけど、壊しちまえばスッキリするぜ。なあに、2~3日もすりゃ元に戻るだろうから、心配するな! ガンガンいこうぜ!」
- <虹の架け橋>カイタイダンジョン完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年04月24日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●壁とは人生のなんだ?
たとえば缶ビールやチューハイのプルタブを開けた時、それを半分ほどまで飲み干したとき、ぼんやりと考えることがあろうか。
壁とは人生のなんだ。
語義としての壁には、障害や終わり、達成困難な条件などが含まれるが、一方で家をはじめとする壁に囲まれた空間のなんと安堵できることか。
であるならば、壁とは外側にむけて護るものであり、内に向けて安堵を与えるものであるのだろうか。
……なんていう19世紀の詩人みたいな考えは、このくっそ巨大な石壁の前には秒で吹き飛ぶものであった。
「妖精の国に案内をー……して貰う前に、これを突破しなくてはいけませんのねー」
「だぜ」
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は意味があるんだかないんだかわからない彫刻が大量にされた石壁の表面をなでて、ほうと息をついた。
サラシの上に諸肌を脱いだ黒袴というかなりの格好をした妖精が、彼女の肩の上で腕組みをする。
「いっとくが壊しかたなんか知らねえしアタシにゃまず壊せねえからな。まあ何人もいりゃあそういうマネもできるんだろうが、すくなくとも一人で通るのは無理ってもんだ」
「それにしても、ダンジョンを壊してお宝ゲットって……なかなか豪快な攻略方法だな。禁じ手にされるまであるぞ」
同じように腕組みして壁を見つめる『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)。
「けど、言われてみればそうだ。このダンジョンを一人きりでクリアするのは、きっとすごく難しい……というか、ほぼ無理なんだろうな。仲間と一緒に協力して、初めて乗り越えられる障害としてできてるんだ」
これが迷宮というものの本質である。
クノッソス迷宮図に例えられるように、迷宮とは本来極めて長い道であり一定の努力と忍耐をもってすれば達成可能な障害なのである。
「もしかしたら、この迷宮を作った人物は『これだけの資質があるならば妖精郷へ入ってもよい』と意図したのかもしれないな。なあカンナ?」
「や、ぜんぜん知らねえ。アタシが生まれた時からあったしな」
ポテトに言われ、カンナ(ポテトが名を尋ねるまで名乗ることを忘れていたらしい)が首をかしげた。
むむむ、と唸る『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)。
「俺は壊すというか作る方なんだが…妖精郷のピンチにそんなこといってられるか、壁なんぞとっとと破壊してやる」
「まあまあ、そんな固く考えないでさ」
『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)はぽんとサイズの肩を叩くと、軽い調子で笑って見せた。
「おにーさん的には、みんなを護って無事攻略出来ればいいって構えだよ」
肩の力を抜くというのも、時には大事なことである。
ないしは、楽しむという考えかたも。
「さっすが大迷宮だけあって色んな仕掛けがあるもんスね。
壁を壊して進むだけでもそんなにバリエーションがあるもんなのか」
『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はサッカーボールのリフティングをしながらそんな風にいった。頭の上にのせたボールでバランスをとる姿勢でぼうっと考えを巡らせる。身体と頭脳が一緒にうごくタイプなのかもしれない。
たしかに、と柔軟体操をしながら会話に加わる『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)。
「あまり見ないタグイのダンジョンだよね。でも、確かに迷路とか頑張って作るよりもこっちの方が手軽に作れそうなシステムだね」
「手軽っスかね?」
「手軽じゃないかな?」
順番に障害を乗り越えるというスタイルの迷宮は実のところ珍しくないが、『壁』でテーマが統一されるのは考えてみればだいぶ珍しいことだった。
迷宮における壁とは『侵さざるべきもの』というイメージが強いせいも、あるだろうか。
「このダンジョンのキモは壁ごとの特徴と見ました」
銀細工装丁本のようなバインダーをぱたんと閉じて、顔を上げる『協調の白薔薇』ラクリマ・イース(p3p004247)。
「ひとりでは解決できない多様性。力を合わせて乗り切ることが、求められているんですね」
「多様性、ね……」
『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)は魔道書に何本かの金属製ブックマーカーを挟むと、指をこきりこきりと鳴らした。
「いいわ、私も元素をつかさどる者の端くれ……マルチにやってやろうじゃないのよ」
ぐ、と手を突き出すと同時に巨大な魔方陣が展開。
魔方陣をランチャーにして開いた三重の魔方陣が歯車のようにがちゃがちゃと回転しはじめる。
六角形、四角形、三角形の魔方陣が全く同じ角をさすまでの回転数をダイヤルのようにねじると、重なるコードがマテリアライズを引き起こす。
「さ、始めるわよ!」
指を食い込ませた魔方陣を、レバーのように押し込むと、アルメリアの破壊魔法が発動した。
●破壊は道となりて
「――!」
イグナートは自慢の握力で鋼のように固めた拳を、おもむろに石壁へと叩きつけた。
ぼこんと音を立ててわずかに崩れる石。間髪入れずに左の拳も叩きつけ、更に破壊を進める。
わずかながらも確実に、無傷で弾かれているように見えても少しずつ石壁は破壊されていた。
それを高速で何度も、そしてリズミカルに打ち続けることでイグナートの眼前が少しずつえぐれていった。
「交替だ。一箇所を打ち続けるのが一番壊しやすいからな」
サイズはイグナートと位置を入れ替わると、同じ場所めがけて魔力撃を打ち込み続ける。
「滅茶苦茶固いな。一発か二発でぶち抜けたりしないもんかな」
などと、文句をつけても仕方ない。
サイズは仲間達と協力し、壁の同じ箇所をひたすらに破壊し続けた。
途中から、仲間達の通り抜けるだけの穴を確保すべきであるとして破壊ポイントを三箇所に振り分け、的確な破壊を試みていく。
やがて、来る者をすべて阻んでいたかにみえた石壁は崩れ、通り抜けるのに充分な穴をあけることに成功した。
「それにしても……壁一つ抜くのにダイブかかるんだね」
イグナートは手をぷるぷると振って苦笑した。
「それこそ三発くらい殴れば突破できると思ってたよ」
「ばかいうな。ひと一人倒せない程度の破壊力でどうしてこんなガチな壁が破壊しきれるんだ。人間より家の方が脆いなんて話、聞いたことないだろ」
「確かに」
壁を抜けていくと、そこには広い空間……をはさんで茨の壁がどっしりと構えていた。
ここからは簡単に通さぬぞとばかりに、巨大な薔薇を頭にそなえたゴーレムが壁の中から出現。
こちらに向けて襲いかかってくる。
「さてと、おにーさんの出番かな」
かかっておいでと手招きしながらゴーレムに突撃。助走をつけた跳び蹴りをかましてダイナミックにエントリーした。
跳び蹴りの勢いに若干押されたゴーレムだが、すぐに他のゴーレムたちがヴォルペへ殺到。
防御姿勢のヴォルペにパンチを入れると、ぐらついた所をつかみ取り、ヴォルペの足をもってぐるぐると振り回す。
「はは、楽しくなってき――おっと!?」
スイングからのスロー。ヴォルペは回転しながら石壁に激突し、はねかえって落ちたところを別のゴーレムからのショルダータックルでサンドされた。
常人ならだいぶ死んでいるところだが、ヴォルペはどういうわけかダメージをどこかに逃がしているようだった。
ふらりと立ち上がり、鼻から流れた血を親指でぬぐう。
「楽しくなってきたな、っと!」
改めて言い直すと、早脱ぎで上着をパージ。
「回復は任せたよ!」
「それは、もちろんやるけど……」
ポテトはミリアドハーモニクスによる治癒を施しながら、ひたすらボコボコにされ続けるヴォルペを観察していた。
「……上着を脱ぐ必要って、あったんだろうか……」
ゴーレムたちも、なにがそうさせるのかヴォルペに集中してよってたかってバレーボールしている。
おかげで、というべきか、ラクリマたちは壁の破壊に集中できた。
「あっ、オレのシュートでも余裕で反撃してきそうなんでパスっス。ゴーレム対処行ってきます!」
そんじゃ! と手をかざして走って行く葵たち。
残されたラクリマたちはうーんと唸って壁を観察していた。
「茨って案外燃えにくいんですよね。生木とかもそうですけど、水が中を通ってるせいなんですよ。ね、シロバラさん!」
「ヴォン!」
ラクリマの肩に乗ってめっちゃどや顔するウォンバット。
「なるほどー。それならむしろ、冷気に弱そうですわねー」
ユゥリアリアは歌をうたうと、冷却の魔術をつむぎはじめた。
彼女と並ぶようにたち、歌の効果を魔方陣に組み込みながら魔術の属性をターレット方式で切り替えるアルメリア。
「そういうこと。水分を利用してやるわよ」
ぼう! と吹き付けられた絶対零度の空気が茨の壁をたちまち凍り付かせ、茨の表皮をも霜で覆わせていった。
「ナイス判断です!」
ラクリマは一輪の白薔薇を地に投げると、魔術によって生み出された茨のムチで凍り付いた茨の壁をごりごりと破壊していった。
凍り付いたことで反撃の動きができなくなった茨を一方的に壊し、そして穴をぐいぐいと広げていく。
「さ、今のうちに!」
「ナイスプレーっス!」
茨の一部を抑えたラクリマの呼びかけに応じて、葵たちは茨の壁の奥へと突入していった。
いった――その直後。
氷の頭をしたゴーレムが奥の巨大な氷壁の中から出現。
葵めがけて突撃してくる。
「邪魔っす……!」
葵は走りながらサッカーボールをぽんと投げると、ダッシュシュートによってゴーレムの頭部を破壊。
かえってきたボールを胸でトラップしてからさらなるシュートで胴体へとめり込ませた。
回転しながらごりごりとめり込んでいくボール。それをキャッチしたゴーレムは、おもむろにタックルをしかけようと走る……が。
葵の後ろからまっすぐに飛んだ氷の槍が直撃。
ゴーレムの身体を貫き、ゴーレムはその場でばらばらに砕け散った。
「お手伝いしますわー」
ユゥリアリアは指をピッと切ると血を媒介として氷の槍を形成。さきほど凍り付かせたばかりの茨を螺旋状にぐるぐると固定すると、新たに出現したゴーレムめがけて投擲した。
着弾と同時に回転し、表面の氷を小さく炸裂させ続けることで強引に槍をねじこませるというなかなかえげつない魔術である。
「ゴーレムはお任せくださいー。その間にー」
「壁の弱体化は任せて!」
ターレットサークルを逆方向に回転させ、アルメリアは可燃性のガスと暴風、そして電圧の魔術を発動。ピンポイントで氷の壁に青い高熱の炎を押し当てると、その表面をみるみる溶かしていく。
「簡単簡単。石壁よりずっと楽だわ」
みるみるうちに人が通れる程度の隙間を作ると、アルメリアは手招きしながら壁の向こうへとはいっていった。
次に現れたのは電流の流れる石壁。
石に電流という時点でかなり強引な電流であることが見て取れるだろう。
現れたゴーレムの対処を別の仲間にまかせ、葵は壁の前に立った。
「こういうのはフィールド外から撃ちまくるに限るっス!」
はじめの石壁からわかるとおり、破壊するにはかなりの回数打ち込む必要がある。
AP燃費の悪いスキルであればすぐにガス欠を起こし、この先の戦いが不利になるだろう。こういうとき高い自己充填能力を持つラクリマやアルメリアは有利だ。
なかでも電流の壁エリアは、AP消費なしで射撃攻撃を連発できる葵やラクリマが強みを見せる場面であった。
「――キックオフ!」
葵は壁めがけて豪快なシュートをたたき込み、跳ね返ってきた所に更にシュート。はねあがったボールをオーバヘッドでシュートし、それを幾度も繰り返して壁に穴を穿った。
サッカーボールが壁を破壊し、奥のフィールドへと突き抜けていく。
「次は炎の壁ですね。先導は任せてください!」
ラクリマは衝撃波の魔術を手のひらの上に展開するとこれをとにかく大量に連射しながら走り出した。
炎の壁は、壁と銘打っておきながらその実熱の滝である。
より正確に言えば燃焼する空気が上から下へと流れ続ける空間。
この流れを強制的に遮る、ないしはそらす力があればダメージを軽減できるのだ。
とはいえ八人全員のダメージを軽減できるほどの衝撃にはならない。
ユゥリアリアやアルメリアたちをぎゅっと一箇所に集め(ついでにヴォルペを盾にし)ポテトが天使の歌を行使していくことで、このエリアをやり過ごすことに成功していた。
その輪からギリギリはずれてしまったイグナートは、ダブルラリアットの動きで風を無理矢理纏いながら炎の中をダッシュ。
「フウ……流石にもうAPが尽きそうだね……」
「俺もだ」
サイズはアイススフィアの氷魔術で自らを包んで無理矢理突破するという強引なやりかたで炎の壁を突破。
手持ちのスキルの中でも特段消費の激しいスキルを行使したことで、サイズのAPはすっからになっていた。
だが、この壁が最後の障害ではない。
彼らを待ち受ける最後の障害。その名は……『守護神の壁』
●汝通り抜けることなかれ
巨大な、天まで届くかのごとき黄金の壁がある。
どうやってもこればっかりは破壊できないだろうことが、一目でわかるようなその壁に、一部……四角く切り取られたかのように穴があるのがわかった。
それを塞ぐように、左右からズンと現れる巨大な壁。
男女の顔を左右切り分けたようなそれは、ただ一言『汝通り抜けることなかれ』と述べて無数の茨を展開しはじめた。
「殴って倒せるなら壁よりラクかも」
「とっとと破壊してやる!」
イグナートとサイズが飛びかかり、それぞれ拳と魔力を叩きつけていく。
壁はまるでびくともせずに、展開した茨で二人を締め上げ、更に大量に束ねた茨に炎を纏わせ、彼らを殴り飛ばしてしまった。
螺旋状に組み上がった凍った茨と、電流を流した茨のハンマーがそれぞれ現れ、追撃をしかけてくる。
「これ以上はマズそうだね」
ヴォルペはおにぎりを頬張って素早く飲み込むと、二人を助けるべく走り――だそうとして、手足に粘液のようなものが絡まった感覚に停止した。
「――!?」
微妙に固まりゴムのような伸縮性をもった粘液はヴォルペを強力に引き戻し、強引にスイングしたのち黄金の壁へと叩きつけた。
「いたた……今日のおにーさん、壁にぶつかりすぎじゃない?」
防御もできず片目を開くと、ちょうどヴォルペと同じ外見をした黒い粘液体がめにはいった。
「■■■■■■……」
ヴォルペをそのまま黒く塗ったような、中途半端に外見特徴だけを模写したようなそれは、両腕を大量に増やし凝固させると、ヴォルペをボコボコに殴り始めた。
これ以上はマズイと察したポテトがヴォルペの治癒を開始。
ラクリマは壁と粘液の魔物を交互に見てから、アルメリアたちに声をかけた。
「俺(とシロバラさん)は魔物を対処します。そちらは壁を!」
いうがはやいか、ラクリマは『ソーサリーローズ』の魔術によって粘液体に茨をからめ、更にタクトから放った衝撃魔術で魔物を吹き飛ばし距離をとらせた。
適材適所。アルメリアは頷くと、壁めがけて『フォトン・カタストロフィ』の魔術を展開。
「手伝って。一気に行くわよ!」
「では、皆さま一緒にということでー」
ユゥリアリアが歌をつむぎ、自らの血液を針のように固めていく。
その周りにアルメリアが魔方陣をいくつも重ね、巨大な氷の杭を形成。
「っし――こういうときは一気呵成に限る!」
跳躍した葵が、全身全霊のシュートによって打ち出した。
きりもみ回転して飛んでいく杭が壁に激突。茨によって抑えようとしたが、おさえたそばから茨が削れ、多段式の炸裂魔術によって壁にごすごすと杭がうめこまれ……最後には杭ごと壁が爆発した。
「解体完了……ね」
手のひらを突き出した姿勢のまま、アルメリアは髪をかき上げた。
こうして、イレギュラーズは虹の宝珠を獲得。
途中で現れた魔物はそれ以上追撃することなく、どこかへにゅるんと逃げていった。
さらなる戦いの舞台は、いずこ。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――虹の宝珠を獲得しました
――魔物『黒い粘液体』を取り逃がしました
GMコメント
●壁破壊
このダンジョンを進むためには壁を破壊していく必要があります。
以下の点に注意してください
・壁破壊は基本的にHP制じゃなく行為判定制なのでダメージ量は破壊力とイコールではありません
・壁の与えるダメージや弱体化効果はBSとは別なので無効化ができません
・貫通攻撃は(なんかそういうイメージがあるけど)壁の破壊貫通効果を保証してるわけじゃないという知識をふまえておきましょう
・それぞれの壁にはそれぞれ効率的な破壊方法があるはず。担当を分けるなどして対応しよう
●エネミーデータ
・ゴーレム
壁を破壊しようとする人々に襲いかかってくるゴーレム。
コンクリートブロックを人型に積み上げたような姿をしており、全長はおよそ2~3m。
主に打撃で攻撃し、【崩れ】のBSがついている。
特に壁破壊担当者を狙おうとするので、破壊中に誰かが護ってあげる必要がある。
・未知の魔物
この領域には未知の魔物が潜んでいる可能性がある
どんな魔物かはわからないので、一応の備えをしておこう
・守護神の壁
この領域のシュゴシン的存在。
高い防御とHPをもち、一部のBSに耐性をもつ。具体的な耐性は不明だが『なんかコレ効かなそうだなー』というやつは大体効かないと思えばよい。
攻撃方法は以下の五つ
→茨のムチ:【流血】【連】【呪縛】効果を持つ単体攻撃。
→炎のパンチ:【業炎】効果をもつ『扇』範囲攻撃
→氷の槍:【氷漬】効果をもつ『貫』範囲攻撃
→雷プレス:【感電】効果をもつ『域』範囲攻撃
→シュゴシンモード:やる気を出した本気のモード。アクティブ自付与スキル。全ての攻撃に『鬼道50』がつき、最大HP+1000。ただしAP消費量大。
余談だが領域に侵入した魔物はこれを突破しようとして返り討ちにあったため、領域内にとどまっている模様。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●備考
このシナリオではイレギュラーズの『血』『毛髪』『細胞』等が、敵に採取される可能性があります。
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