PandoraPartyProject

シナリオ詳細

桜と茸のモンキー和え

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「頼むよローレット、どうしても必要なんだ、どうしても!」
「いや、だから……」
 ギルドの中で、男女が言い争っていた。いや、争いというには、些か迫力に欠けてはいるが。
 主に声を荒げているのは男の方で、女の方はそんな彼を落ち着かせ、話を聞こうとしているところだ。
 男の方には、見覚えは無い。
 しかし女の方は、ギルドに所属する情報屋の一人だったように思う。
「どうかしたんですか?」
 困り事だろうか。そう思った蛍は、共に居た珠緒に視線で「寄り道ゴメン」の意思を送り、話に割った。
 真面目な方ですから、と、珠緒もそこに異は唱えない。
「あ、イレギュラーズって奴かいあんたたち! なあお願いだ、手を貸してくれ!」
「と、とりあえず順序立てて話を……?」
 勢いの強い男に半歩を下がった蛍は苦笑いと共に話を促す。
 そして、語られた内容に、目を丸くした二人は顔を見合せた。


「マッタキェノコ?」
 翌日、ローレット内。
 蛍と珠緒、それから他六人が集まっていた。
「それを採ってきて欲しい、ってこと?」
 眼鏡の奥にある瞳を細めた史之が、一通りの説明を受けた後に確認の声を作った。
 それに頷いた蛍は、昨日聞いた内容を反芻する。
 依頼人の男は、幻想で小さな店を切り盛りしている料理人だった。そこはいわゆる老舗であり、彼で既に5代目らしい。
 常連客、新規客共に通ってくれて、繁盛もしているのだが、ある時、老人が訪ねてきてこう言ってきたそうだ。
『あの茸取り扱ってないだと? 腕が落ちたなぁこの店もなぁー』
 当然その言葉に憤りを持った彼は抗議の声を上げるが。
『2代前の店主はそりゃーもう上手いし旨いし巧かったのに残念だわい、それを伝えてない事も愚かしいなぁー! あーぁ残念だなぁー!』
「めちゃくちゃ煽るねそのおじいさん……!」
 とはルアナの言。
 しかし言われっぱなしなど許せる訳もなく、しかしそんな茸があるならば触ってみたいし調理もしたいと、そう思うのが料理人の性でもあった。
 彼は青筋浮かぶ額を下げに下げ、なんとか詳細を聞き出したのが。
「マッタキェノコ?」
 と、そう言うことになる。
 それはとある山の、とある桜の根にだけ生えるモノ。
 味そのものの主張は薄いが、香りが良く様々な料理に合わせられるというモノ。
 そう、それこそが。
「……ねえしーちゃん、これ、まつた」
「カンちゃんしーっ」
 半目の睦月が言う言葉を食い気味に史之が遮った。
「季節的にも合わないし、桜の下に生えるって話なら違うよ、うん、違う違う」
 多分、と小声で付け加えられた。
「それで」
 と、かんなの細い声が話題を引き戻す。
「場所は解っていて、でも、自分じゃなくわたしたちに行かせる理由がある、ということかしら?」
「山、と言っていたからな。とんでもないモンスターが居るとか、道のりが険しすぎるとか、その辺りだろうか」
 厄介な仕事かもしれないと、ベネディクトは気を引き締める。
 一つの食材の為に危険を冒すのだ、自然と力も入るというもの。
 そんな彼に珠緒は頷き、一度皆の顔を見回して、微妙そうな顔をして目を逸らす蛍を見て、一息。
「はい、猿です」
「……はい?」
 猿。それは山に住み着く動物の名前。
 奥深くへと入り込んだ相手を、その強い縄張り意識から攻撃を加え、時には大怪我をする程の事態に発展するという。
「……しかしそれは、普通の猿、で、あるのだろう?」
 所詮は猿である。今まで多くの魔物を経験したイレギュラーズからすると、この八人は過剰戦力な気がすると、グレイシアは言外に込めた。
 もしかしたらそれだけでは無く、なにか、更なる問題があるのではないかと、警戒もある。
「この八人で行く理由ならあります」
 蛍と珠緒が語る、その理由とは。
「綺麗な桜を、皆で見ましょう」
 つまりはお花見をするついでに依頼も達成してしまおうと、そう言うことだった。
「おじ様、山登り平気?」
「まぁ……問題無いだろう」
「僕は無理そうだからしーちゃんおんぶ」
「あはは、やだよ?」
 一気に瓦解した緊張感の無さで、集められた八人は計画を練り始めた。

GMコメント

 なにせリクエストシナリオなど初めてで、準備にはちゃめちゃ時間をいただいてしまいました。

 ユズキです。

 この度はリクエストをいただきまして、まことにありがとうございます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。

●依頼達成条件
 マッタキェノコを沢山持って帰る。
 なお余った分は参加者の自由にしてよし。

●現場
 木々の生い茂る山で、山頂に深く大きな穴が開いています。
 傾斜は結構キツめで、標高も相当高い。
 目的地である桜の場所は山の中腹、洞窟を抜けた先、山頂の穴から射し込む光が降り注ぐ広場です。

●経路
 舗装された名残のある道を辿って洞窟へ行きます。
 洞窟内は一本道ですが、暗く、狭かったり、低かったり、曲がりくねったりする箇所があります。
 そこを抜けると桜の木が沢山生えた広場に着く、というイメージです。

●敵戦力
 モンキー軍団
 洞窟前辺りが彼らの縄張りです。
 侵入者全員に対して怒りの感情を抱いており、説得なんて聞きません。
 が、野生は力に従うので、力の差を見せつければ逃げ帰るでしょう。
 ボス猿的な存在はいません。

 以上、簡単にはなりますが補足として。
 
 よろしくお願いいたします。

  • 桜と茸のモンキー和え完了
  • GM名ユズキ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月29日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
知識の蒐集者
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
絶望を砕く者
秋宮・史之(p3p002233)
女王忠節
藤野 蛍(p3p003861)
二人でひとつ
桜咲 珠緒(p3p004426)
二人でひとつ
かんな(p3p007880)
カピブタ好き
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
今は休ませて
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
ドゥネーヴ領主代行

リプレイ


「さあ、いくわよー!」
 元気な声が空に響く。
 そこは、境目だった。
 平坦な、舗装の為された道と、木々が斜面に生い茂る山道との境界。目的はその山へ進行する事で、経路として見る道はなんというか。
 ……獣道ですね。
 握り拳で張り切る『いつもいっしょ』藤野 蛍(p3p003861)の隣、視線を道から上へと滑らせた『いつもいっしょ』桜咲 珠緒はそんな感想を抱いた。
 獣道と言っても道幅は広い。かつては切り拓かれていたのであろう。と、そんな予想が出来る程度には、人の手が入った痕跡が見える。
「今回は、良い出会いに恵まれましたね」
「そうだね、幻の味にレアな美観だもの」
 まあ何より隣に珠緒さんがいることが大きいけど! とは、蛍の胸中に落とし込まれている。
 沸き立つ気分を抱いて、先頭を取る様に二人は歩きだした。
「ふふふ、お花見だなんて、とっても楽しみね」
 そう、お花見だ。
 第一の目的は依頼された物の調達だが、蛍と珠緒が声掛けしたメンバーの狙いは、山の中にあるという桜。
 茸は茸で、余った分は食べてしまおうと言う流れだ。『実験台ならまかせて』かんな(p3p007880)の楽しみは尽きない。
 ただ、自分にとっては初めての事も多く、手伝えることはそう多くないという自負がかんなにはあった。
「お花見楽しみだねぇしーちゃん。おべんとたべたい」
 ほわっとした雰囲気で、『今は休ませて』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)が『炒飯作った!』秋宮・史之(p3p002233)に話しかける。
 ゆるゆるとした感じは、幼馴染に対した特有で、史之としては馴れたモノだ。
「……ああうん、今年最後の花見になるんだもんね、楽しみダネ」
 まあ、今、背にした荷の中を思うと、ズシンと来るものがある。
「何? その微妙な顔。ちゃんと手伝ったじゃない?」
「手伝った?」
 形崩れに加えて粒を撒き散らす事は手伝いとは言わないよ?
 なんて、史之は言わない。微妙な顔のまま曖昧な笑みで視線を逸らすだけだ。
「ふむ……締まりが無い、な」
 緩い空気だと、『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)は思う。
 しかしそれが悪いことだとも思わない。気合い、気概は十分にあるのはわかっているし、油断と慢心はしない面子だというのも知っているからだ。
 しかし、一つだけ不安な部分があるとすれば、それは自分の後ろを歩く少女の存在。
「……ぅ……む……」
 とぼとぼ、と、言い表せそうな歩みをする『守護の勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)の事だ。
 どうかしたのだろうか。原因を予測してみるが、これだ、というものにグレイシアは行き着かない。
「どうかしたのか?」
 故にその原因を問うてみて。
「……七輪楽しみにしてたのに」
 返った言葉に、彼は目を細めた。
 そういえば出立前、やりとりをしたなぁ、と振り返る。
「洞窟の中を通るのだから、嵩張る荷物を増やすわけにはいくまい?」
「コンロだって食材だって嵩張るのは同じだもん。七輪でキノコ焼くと美味しい(と聞いた)のに!」
 そうそうこんな感じだった。
「しかし……」
 ルアナの背にはすでに、水筒や弁当や敷物、果ては菓子の類いまで詰め込まれている。グレイシア自身も、キノコを扱うと考えて、それなりに持ち物を増やしている身だ。
 同行者の中でも荷物の少ないかんなや、『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)に助力を求めれる事も出来たが。
「……七輪は、帰ってからなら手伝おう。なに、吾輩とて炭焼きには興味があるのでな?」
「え、ほんと!? じゃあがんばる! ねえねえ知ってる? 七輪はマシュマロ焼いても美味しいらしいよ!」
 険しい道のりに不安は少なくしたい所もある。
 機嫌も直った所で、彼らは目的までの半分を進んでいた。


「……ん?」
 砂利を踏みしめたベネディクトは、なんとなくの気配を察知する。
 自身の位置は最後尾だ。
 気配の在処は背後か、もしくは横合いだと思う。つまり、仲間からのものではない。
 そこまで考え、しかし、危機が迫っているという感じでも無かった。
「奇襲、強襲という感じでは無いな……」
 ポツリと呟いた声。
 それをかんなは拾ったらしく、視線を振り返らせた彼女は、不安定な足場に体を固定させて言う。
「どうかしたのかしら?」
「ああ、いや。今は大丈夫だと思う」
 それに片手を上げて応えて考える。
 今、自分達がいるのは、目的である中腹よりまだ下の辺りだ。
 獣道は、山の斜面を横に沿って上がる形で作られていて、歩いた時間に比べると進み自体は遅い。
 つまり、話に聞いた猿の縄張りに入るには少し速いだろうと、そう思う。
 それでも気配があるのは、恐らく。
「みんな、少し疲れた? ちょっと休憩、挟みましょうか」
 と、蛍の声に、ベネディクトの思考は引き戻される。
 丁度、段上になった道は、斜面を上らせていた足の休めに最適だと彼女は判断した。
 持参した水分補給の筒を配り、蛍は一息を吐く。
「やっぱり、山道は疲れるねー……ふう」
 額の汗を腕で拭ったルアナは、ちび、ちび、と喉を潤し、ずしりと感じる荷物にほんの少しだけ後悔して、解す為に脚を伸ばしてから道の先を見上げる。
「まだまだ先は長いのかな……?」
「どうだろう……結構、歩いた気がしますね?」
 同じく脚を休めた睦月が見上げる。
 木々の薄暗さに見通しは悪い上に、地図があるわけでもない。
 ただ聞いた話、道を進めば自然と洞窟へ辿り着けるという事だ。
 ゴールの見えないストレスはあれど、もう一息だと思える気楽さもある。
「もういっそ、猿でも来てくれたら目の前だ、って思えるのにね」
 だからかもしれない。
 不意に史之が、冗談めかしてそんな事を言って。
「……しーちゃんさぁ」
「それってフラグ、というものじゃないかしらね?」
 かんながこてんと首を傾げた瞬間、周囲にざわざわとした騒音が鳴った。


 猿は群れを為して生きていた。
 群れと言っても、仲良し小好しの集団ではない。
 日々喧嘩をして、力の強さを見せつけ、順位付けをしようと絶えない戦いに身をおいている。
 彼らは自分を、戦士だと思っていた。
 自分達の領域は自分達だけのモノ。そこに他者の介在など許される筈も無い。だがしかし、不要な接触は避けるべきだ。と、そんな理性も持っている。
 ただの野性ではないのだ。
 そんな彼らの縄張りに入り込んだ者が居て、彼らはそれらを観察し、踏み入ってくるのかを見極め、そうして。
「キシャーッ!」
 排除を決めた。


 いきなりの開戦だった。
 奇声、いや雄叫びを上げて、全方位からやってくる猿達に襲われたのだ。
「ええ、では、始めましょう」
 そんな中で、珠緒の静かな声は、確りとした音となって全員の意識を集中させた。
 そこへ、木々の枝を渡り、上空からの引っ掻きを狙った一撃が降ってくる。
「ええ、そして終わらせましょう!」
 だがそれを、蛍の障壁が難なく受けた。
「ふふ、ありがとうございます、蛍さん」
 花が咲く様に珠緒が笑い、蛍はそんな笑顔に微笑んで。
 と、同時に、跳ねる動きで高さを合わせたルアナが猿の横に居る。
「ごめん──ね!」
 大剣の腹でフルスイング。死なせたりしないよう加減はしつつも、その一撃は猿をきりもみ回転させて吹き飛ばした。
 初撃はしくじりだ。
 猿達は本能でそう理解すると、次いで、纏まった攻撃をしかけるべく動く。
 横並び、列を形成して突撃。一体が潰されようと他の個体が相手を仕留めればそれでいい。
 そういう動きだ。
「なるほど」
 そんな並びに、一本、線が差し込まれる。
「これが話にあった猿か。縄張りを荒らされると思ったのだろうな」
 ベネディクトが突き出した槍の穂先だ。
 猿はその意味が分からず、いや理解しようともせず突っ込む。
「申し訳ないとは思う」
 言って、彼は柄の横腹を殴り付ける。すると、たわんだ槍の先端は、元に戻ろうと弾ける様に跳ねて、横にいた猿を強打した。
「──!」
 止まらない。
 跳ねた先は直撃の衝撃に返る動きで逆サイドの猿を打ち、打った勢いがまた跳ねさせる。
 振り子の様に槍は動き、それは高速の打ち払いとなって陣形を破壊した。
「キ、キェ……!」
 それならば。
 ならばと猿は、今度は一直線の並びを選ぶ。
「あ、ごめんねぇ」
 そうして選んだ標的は睦月だ。儚げな笑みを浮かべるそこへ全力で突撃していく。
 すると、手を翳した睦月は謝罪を一つ入れて、接触の直前に吹き飛ばしの術式を起動させた。
「グエッ」
 当然の事ながら、先頭が真後ろへ吹き飛べば、ドミノ倒しの様に猿達は倒れ込む事になる。
「カンちゃん流石──」
「んーもう無理おんぶー」
「一瞬待ってくれないかな!?」
 一網打尽に出来る。そう思って構えた史之の背中に睦月はしなだれ掛かった。
 バランスを崩しそうになる足を踏ん張った史之は、両手を前に出して、一息。
「いけ……っ!」
 赤色光の筋が、一直線に猿達を貫いた。
「手慣れたものだな」
 グレイシアはふわりと跳んで、スライディングの要領で突撃してきた攻撃を回避し、そのまま踏みつけの着地をしながら思う。
 動きに無駄が無い、と。
 命を奪わないように加減しながら、力の差を見せていく動きだ。
 勿論、自分もそれに合わせて非殺傷を意識している。飛びかかって来た猿を、踵落としの要領で打ち落とすが、それも直撃ではなく寸止めし、術式を使っての攻撃だ。
 派手に見せつつダメージは調整。
 侵入しているのはこちら側なのだから、という、統一した心配りだ。
 とはいえあまり長々と続ける気も無くて。
「もう、十分でしょう?」
 白い歪みの槍を手にしたかんなが言う。
 ふらり、ふらりと猿の攻撃をやり過ごした彼女は、取り零す様に槍を手放し、無造作に蹴り飛ばす。
「ねぇ」
 そうして起きるのは、爆音だった。
 斜面から一直線、外側へ抜けていく一撃は破壊の技だ。
 音と衝撃を伴うそれは、猿をわざと無視して放たれている。そして、本来ならば地形を変えてしまうだろうそれは、山になんのダメージも残していない。
 猿からしてみればそれは、謎の現象だった。
 保護結界により破壊を防いでいるなんて、野性の存在には理解できる筈も無く、そして理解出来ない存在と言うのは、野性にとって恐怖の対象でしかあり得ない。
 だから。
「ひぇっ」
 妙に人間臭い怯えをかんなに向けた猿達は、一目散にその場から逃げ去っていった。


「しーちゃん地図ー」
「わかってるから揺らさないでもらえるかな?」
 洞窟に入ってから先頭を行く睦月の体は光っていた。
 明かりを頼りに史之は簡易的な地図を作り、幅員と高さをこまめにメモとして残していく。
 それは、行きよりも帰りを意識した行動だった。
 既に結構な荷物を持っている彼らだが、帰りにはそこに採ったキノコが増えるのだ。
 目算だとしても、どれくらいの余裕があるかは知っておきたいと、そう思って当然だろう。
 実際、身を屈めなければ通れない高さや、身体を横に向けて通る道、急な曲がり方をした角があって、荷物がつっかえたりして大変な場面もある。
「珠緒さん、ここの足場悪そうだから……」
「はい、手を握りましょう」
「ふぅ、体が小さいのが幸いしたわね」
「うぐっ……こっちは災いしたな……」
「おじ、さま、は、大、丈夫?」
「……ルアナ、荷物が引っ掛かっているぞ?」
 もしかしたら、いや、恐らく確実に。
 さっきの猿より辛い。
 と、八人は内心そんな感想を抱いて、
「あ、みて、光りだ」
 岩の切れ目から差し込む、白い光に目を眩ませながら、外へ出た。

「──」

 光がある。
 山の中へ入り込んだのに可笑しな話ではあるが、紛れもなく明るさが満ちていた。
 それは、丸く切り抜かれた山頂から差し込む陽光だ。
 丁度真昼で、太陽の位置が真上にある時にだけ見れる光が、閉じられた空間にあるという時点で、風景としては満点だっただろう。
 しかし、そこにあるのは光だけではない。
「桜……」
 ぽつりと、睦月の呟きが空気に溶ける。
 円形に広がる空間の中、外周に沿って桜の木が生えていた。
 等間隔に広がり、内側には疎らな間隔を開けての群生だ。
「…………って、キノコの採集しなきゃ!」
 散る花弁を目で追って、不意に目的を思い出す。
 空を見れば、太陽が差し込んでいる時間も短い筈だと推測出来る。
 つまり、お花見も採集もするなら、見惚れてばかりではいけないのだ。
「急ぎ過ぎて、下の菌糸を傷つけないようにそっとね」
「そうね、採り過ぎない程度に集めましょう」
 史之と蛍の言葉に頷いたメンバーは、幻のキノコ、マッタキェノコを探して散らばった。


 立ち上がる煙が、吹き抜けた空へ消えていく。
 史之が持ち込んだ、簡易キッチンを用いた調理の煙だ。
 そこに立つのは、グレイシアと史之の男二人。
 後のメンバーは敷物を木の下にセッティングをして、持ち寄ったアイテムを並べたりと準備の時間だ。
「ほう……それはなんと言う料理だ?」
 ナイフを使って、マッタキェノコを食感が強く出る様に厚くスライスしたグレイシアは、隣で調理をする史之の手元を見る。
 細かく切った鶏肉と白身に、海老と銀杏を、手で割いたキノコと合わせて出汁で煮ている調理法だ。
「土瓶蒸しって言うんだ。あまり強く煮立てると風味が飛んでしまうから、そこに注意しながら火を調整して……」
 ふわりと、風に乗った香りが空間を泳ぐ。
 上品でありながら、空腹を刺激する美味しい匂いだ。お弁当を広げ、飲み物で食欲を紛らわせていたメンバーは、くう、と鳴るお腹を押さえる。
 そうして、暫く。
 料理を中心に、囲む様に並んだ八人は手を合わせて息を揃える。
「いただきます」
 マッタキェノコを用いた吸い物、蒸しキノコ、天麩羅に土瓶蒸し。それらをおかずとして、持ち込んだお弁当とおにぎりを食む。
「ほう……この香りが、マッタキェノコ……」
 両手に持ったお椀に、注がれた澄んだ汁物。それを静かに口へ流し、鼻へ抜ける風味に珠緒は感嘆の吐息を漏らした。
「美味しいですね、蛍さん。期待以上です」
「本当ね……でもこれ、この風味、やっぱりマツタ……ううん、野暮ね、うん」
 なんとなく郷愁を感じる蛍だが、
「末永く、在って欲しい場ですね」
「そうね……それで、また一緒に来ましょ!」
 隣にいる珠緒と見上げる桜の充足感に、些細なことだと疑問を彼方に追いやった。
「あら、これすごいわね……」
 出汁を一口含んだかんなは、濃厚な味とさっぱりとした後味に驚きを得た。
 史之の作った土瓶蒸しだ。
 複数の具材を煮て作られたそれらは、味が喧嘩することなく汁に凝縮されていて。
「ほぁ……美味しい……」
 満足の籠った吐息が、空に抜けていく。
「いや、ほんとにスゴいな……具は酒にも合う」
 箸でつまみあげた具材は、甘味を感じる。
 口に入れ、歯で噛み締めればじゅわっと滲む味が舌に広がり、その名残を酒で流し込めば、もうたまらない。
「酒に飯に桜か……十分な贅沢だな……」
 木にもたれたベネディクトは、猪口に落ちた花弁の揺蕩いを見て心を和ませた。
「おじさまの作ったお弁当も美味しいんだよ!」
 ドンッ、とルアナが差し出す弁当箱の中身は、おかずが多い。グレイシアが現地で作った、マッタキェノコの炊き込みご飯と合う様に、味付けは薄めだ。
「じゃあ、失礼します」
 勧められるままに箸を伸ばした睦月は、おかずを一つまみ。
 口に放り込み、何度か噛んでから炊き込みご飯を追いかけさせて、口内で混ぜ合わせる様に咀嚼する。
「本当に美味しいですね」
「でしょ!」
 良く考えられている。
 感心しきりに睦月が味わっていると、褒められて誇らしげなルアナは頷きながらグレイシアにピースサインを送った。
 風が洞窟から吹き込み、地面に敷き詰められた花弁が舞いあがる。
 横に流され、落ちていく桜色が光にきらめき、そして影が射す。
「もう時間だね」
 光の時間がもうすぐ終わる。
 手早く後片付けをして、依頼された分のキノコを回収した八人は、来た道を戻る為に洞窟へ入って行く。
「……また、ね」
 再来を願って、桜に別れを告げた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

リクエストありがとうございました。
ご縁があればまた、よろしくお願い致します。

PAGETOPPAGEBOTTOM