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シナリオ詳細

<Breaking Blue>恐怖!! トリプルヘッドサイレントキラーシャーク!!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●また鮫が出た!!
 イザベラ女王が発令した十二年振りの『海洋王国大号令』によって多くの船が東方の外洋を進み、『絶望の青』を目指す。
 アクエリア島を橋頭堡とし、さらなる航路を発見しようと海に繰り出した冒険者たちは躍起になっていた。
 新しい発見は、富と名誉をもたらす。
 だが、その行く手は必ずしも安楽なものではなかった。

「鮫が出たぞー!!」

 晴れ渡った空、青い海――。
 その海原を進むロイ・シャダイ船長の船を先頭とする船団は、甲板員の叫び声で大わらわとなった。
 マストの上に登った見張りは、波を裂いて迫る三角の背びれを見たのだ。

「鮫の野郎、また出やがったか!」

 ロイ船長は、鮫との戦いの経験があった。
 『絶望の青』を目指すうえで、出てくる鮫は神にも匹敵する恐ろしい魔物なのである。
 しかし、ロイ船長も百戦錬磨の海の男である。
 鮫を仕留めるための装備は万全である。
 いや、むしろ鮫を退治するためにやってきたと言っても過言ではなかった。
 無数のハープーン(投げ銛)と浮きに使う樽など、諸々の装備を船に搭載している。
 それに、海中に逃げ込もうが絶対に逃さない秘密兵器があるのだ。
 ロイ船長は、伝声管に向かって叫ぶ。

「音響手(ソナーマン)、聞き逃すなよ!」
「アイサー!」

 伝声管から音響手が返ってくる。
 この船の船首側船底部分には、水中の音を探知する特別な一室を設けてある。
 ラッパ状の器具にパイプをつけ、水中に伸ばして迫る音を聞く装置については中世の頃には発明されていた(レオナルド・ダ・ヴィンチがガレオン船の接近をするために発明したとされるがこれは余談)。
 ロイ船長は船に特注のこの装置を作り、化け物鮫を仕留める万全の備えをしてきたのである。

「船長、鮫の野郎潜りましたぜ!」
「よし、音響手。どこにいるか探り出せ」

 船団の屈強な銛打ちたちが構える。
 突き刺されば滅多なことでは抜けず、ロープに結ばれて樽をくくりつけてある。
 これをいくつも撃って弱らせるのだ。
 この海域の化け物鮫は、人間の乗る船を狙って沈める。
 船を沈めると、二本足で陸を歩く無力な獲物を大量に貪れることを知っているのだ。

「ヤツめ、どこかからくる……?」

 音響手が鮫がかき分ける水の音を聞き逃すまいとし、それを邪魔せぬよう皆静まり返った。
 この青い水底に、あの化け物が息を潜めているのだ。

「どこだ、どこから……」

 慎重に、水中の音を聞き取ろうと耳の全神経を集中させる。

「こ、これは……!? 船長ッ! シンフォニーです! シンフォニーが聞こえます!」
「なんだと!?」

 水の中から、歌声が聞こえたのだ――。
 鮫が歌う、そんなことがありえるのだろうか?
 歌う海魔の伝説は、船乗りならば知っている。
 しかし、鮫が歌うとなれば、やはり魔物の類なのだ。

「音響手、どこから聞こえる……?」
「前方、深度100、95、90……。歌いながらこの船に近づいてきます」
「フッ、脅かしやがって。自分から位置を報せるようなもんだ……。銛撃ち、用意――」

 そう、歌ったところでなんだというのか。
 みずからの場所を報せるだけに過ぎないのだ。
 浮上したところを、一網打尽にしてやるとロイ船長は勝利を確信した、そのときだった。

「船長ぉぉぉぉぉッ!!」
「馬鹿な、僚船がやられただと!?」

 水飛沫を上げて転覆したのは、3時方向の僚船であった。
 水中から突き上げるような体当たりを受け、転覆する。
 投げ出された船員を、3つの巨大な顎が貪っていく。

「トリプルヘッドサイレントキラーシャークだ……」

 見よ、その威容を!
 船に匹敵しようかという巨体と3つの頭!

「音響手! どういうことだ? 本船の真下にいたんじゃなかったのか?」
「わ、わかりません!? さっきまで真下で浮上しながら歌っていたはずです」
「それが200m先の船にどうやって……。推定で50ノットは出ているぞ! ぐおっ――!?」

 ボオォォォォッン――!!、
 ロイ船長の乗る船が強烈に揺さぶられた。
 トリプルヘッドサイレントシャークの体当たりだ。
 ものすごい速力で戻ってきたのだ。
 ロイ船長が見たのは、歌いながら迫り、三つの顎で船員たちを食らっていく化け物鮫の姿であった。

●バケモノ鮫を退治せよ!
「鮫が出やがった、この海域の先だ」

 ロイ・シャダイ船長は、どうにかトリプルヘッドサイレントキラーシャークの襲撃から生き残った。
 片足は過去の鮫との戦いで義足となったが、その義足浮きとしてしがみついたおかげで助かったのだ。

「相手はただの鮫じゃねえ! “トリプルヘッドサイレントキラーシャーク”だッッッ!!」

 憎々しげにその呪わしき名前を吐き捨てるように言う。
 
「あの野郎、歌いながら俺の船団の船を沈めていきやがった。歌うのをやめるとものすごいスピードで水中を泳ぎ回るんだ、気配もなくな。まさに魔物だぜ……」

 百戦錬磨のロイ船長の顔が青ざめる。
 しかし、彼は諦めてはいない。
 かの化け物を仕留め、仲間たちの仇を討つことを。
 そして航海の安全を確保するのだ。

「船は俺が出す。ヤツを……トリプルヘッドサイレントキラーシャークを仕留めてくれる命知らずはいねえか!」

GMコメント

■このシナリオについて
 皆様こんちは、解谷アキラと申します。
 また鮫を倒すシナリオを書いてみたくなりました。そして書きました。
 今度の鮫は、歌いながら迫り、水中を音もなく泳ぎ回るというバケモノ鮫です。

・ロイ・シャダイ船長
 執念深く鮫を追う勇敢なベテラン船乗りですが、このバケモノ鮫に立ち向かう力は持っていません。
 依頼に応じたイレギュラーズを鮫が出没する海域まで運ぶことに専念します。
 船が沈められたので、リベンジで中型の捕鯨船を用意しました。
 海軍の船も一隻随伴しますが、イレギュラーズが戦いのメインになります。

・トリプルヘッドサイレントキラーシャーク
 頭が3つあり、それぞれが別に動きます。
 さらになんだかよくわかりませんが歌います。
 獲物を威嚇する効果のようですが、なんのために歌っているのかは謎です。
 水中を推定50ノット以上で音もなく泳ぎ回るらしく、ロイ船長の船団の船は次々と沈められました。
 生態は謎に包まれていますが、20~30メートルの巨体です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●重要な備考
<Breaking Blue>ではイレギュラーズが『廃滅病』に罹患する場合があります。
『廃滅病』を発症した場合、キャラクターが『死兆』状態となる場合がありますのでご注意下さい。

  • <Breaking Blue>恐怖!! トリプルヘッドサイレントキラーシャーク!!完了
  • GM名解谷アキラ
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年04月27日 22時01分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
ポムグラニット(p3p007218)
慈愛のアティック・ローズ
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者

リプレイ

●鮫を仕留めろ!
 遥かな大海原――。
 この穏やかな海に、怪物がいる。
 船を沈められ、仲間を貪られたロイ・シャダイ船長は復讐に燃えていた。
 鮫との戦いは、一度や二度ではない。
 片足が義足なのも、鮫に食われてしまったからだ。
 今回は、海中で歌い、音もなく高速で泳ぐ怪物鮫トリプルヘッドサイレントキラーシャークに立ち向かう。

「捕鯨砲を見せてもらおうか?」

 備え付けの捕鯨船を借りてきたものだが、やはり銛を撃ち出す捕鯨砲もついている。
 これを眺めているのは、海軍軍人の軍服を纏った巨躯の白熊(ブルーブラット)であった。
 『二代野心』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)である。

「ああ、こいつだ。あの鮫に命中させられるかっていわれると、ちと無理だろう」
「確かにな。動きの速い相手にはそうそう当たらんとは思うがな。どうしても打ち込みたいっていうなら、ここぞという時まで取っておけよ」

 そう言って、捕鯨砲を撫で回す。
 海軍の船も随伴しているが、仕留めるのはあくまでもイレギュラーズの仕事となろう。

「三つ頭の歌う鮫とは本当にこの絶望の青とは奇妙な生物ばかりで御座いますね」

 不思議な鮫の話は、『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)も聞いていた。
 『絶望の青』では、冠位魔種アルバニアを筆頭に、奇妙な種類の生物が多数いる。
 今回の敵、トリプルヘッドサイレントキラーシャークもそのうちのひとつだ。

「では、この船を少し見せていただきましょうか」

 幻は、船の形を瞬間記憶で把握した。
 これがいずれ役に立つことになる。

「またずいぶんとユニークな鮫だね。さて、じっくりと観察したいところだが、そんな時間はなさそうだ」

 『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は頭を捻っていた。
 まず、水中というのは水の抵抗が大きい。
 鮫は、比較的遊泳力の高い軟骨魚である。だとしても、そのスピードは相当なものである。
 まして目撃情報からしても、かなりの巨体である。
 通常ではありえない水中速力だ。
 その巨体に対処すべく、ゼフィラは彼女が用意した小型船に乗り込んでいる。

「前もサメからひどい目にあわされたな。とはいえこの程度、大号令の前には石ころも同然。女王陛下の為に倒してみせる」

 『大号令の体現者』秋宮・史之(p3p002233)はサンゴのタイピンに触れ、改めて誓った。

「海軍さん、大号令の体現者の秋宮史之だよ。俺たちがサメを引きつけるから、横腹へ援護射撃をお願い」

 空を飛行しながら、随伴する海軍の軍船とやり取りし、鮫駆逐の手順を確認した。
 鮫をおびき寄せるため、餌となる血の匂いを振りまいて引き寄せる。

「あと救命艇はいつでも使えるようにね」

 準備を整えながら、海洋海軍にもいざというときのために要請する。
 こう見えて、海洋ではちょっと名が知られている史之である。
 海洋王国の軍人たちも、その指示には従う。
 同じく、女王陛下の旗の許に戦う者たちなのだ。

「んー? なんか不思議なサメだね?」

 『雷雀』ティスル ティル(p3p006151) は、いろいろと鮫の話をまとめてみた。

「頭が3つで、歌って、メチャクチャ速くて……ねえ、こんな危ないのに狂王種じゃないかもなの? 嘘でしょ?」

 それ本当に鮫なのか? という疑問は当然浮かぶ。
 三つ首がある時点でそもそも通常の鮫とは違う。
 だが、普通の鮫ではないもののまだ断定は狂王種だと断定はできない。
 
「この先の航海の為には、あの鮫の打倒は不可欠! 全力で頑張っちゃうよぉ」

 『特異運命座標』シルキィ(p3p008115)は、命知らずというわけではない。
 しかし、『絶望の青』に至るためには怪物鮫を駆逐せねばならない。
 彼女が持つブルーノートディスペアーは、狂王種への対処についてまとめた秘伝書なのだ。

「そっちにも何か書かいてある?」

 ティスルもまた、同じものを持っている。
 シルキィとふたりで、付き合わせていろいろ調べてみることにした。

「鮫の弱点ははやっぱり鼻先だって」

 鮫には、ロレンチーニ器官という敏感な感覚器がある。
 微弱な生体電柱すら感知するほどであるが、だからこそ弱点となりうるのだ。

「でも、50ノットも出るなんてどこにも書いてないね」
「どういうことかな? 歌うってとこに秘密があるのかも」

 ティスルも考え込む。
 あの歌は、どうやら獲物を幻惑する際のものらしい。
 だとしたら、呪歌か何かだろうか? そのような報告は特になかったはずだが。

「ずいぶん奇妙なサメが相手だが不足はない」

 『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)は甲板に上がると神経を研ぎ澄ました。
 その耳で、水中のトリプルヘッドサイレントキラーシャークを探り当てようというのだ。
 クロバの超聴覚なら、ソナーの代わりは十分に務まる。
 水の中というのは、大気中に比べて音の伝達も抜群に早い。
 音とは振動である。水は抵抗も大きい分振動も伝わりやすいのだ。

「どうだ、聞こえるか?」

 ロイ・シャダイ船長もクロバに水中の様子をうかがった。
 前はソナー員が海中からその歌声を捉えたのだが。

「待ってくれ、今たしかに……」

 クロバの耳が、その歌声を聞いた。
 三つの首が歌う、地獄の三部合唱だ。

「2時の方向、距離は400……380、370……。近づいているな」
「でやがった! トリプルヘッドサイレントキラーシャークの野郎がでたぞー!!」

 ロイ船長は、船員たちに号令した。
 いよいよ、鮫への復讐戦が始まる。

●縦横無尽の鮫
「よし、囮を頼む!」
「おまかせくださいませ」

 エイヴァンが指揮すると、幻が囮となる幻影の船を海上に出現させる。
 2時方向、つまり進路右前方から泳いでやってくるはずだ。

「……距離、200。歌が止まった?」

 水中の鮫が、歌うのをやめたのにクロバが気づく。
 と、それからわずか3~5秒程度の間を置いた後であった。
 水飛沫が上がり、右前方の幻影船の真下から、三つ首の鮫が突き破って姿を現した。
 ――巨大(おお)い。
 噂通り、クジラを超えるかのような巨体だ。
 体当たりを食らえば、大抵の船はひっくり返るだろう。
 幸いにして、攻撃を受けたのは幻影の船だったから助かったものの、あの体当たりを食らったらひとたまりもなかっただろう。

「もう距離を縮めたのかい? とても普通の速力じゃないね」

 ゼフィラも感嘆の声を上げる。鮫は、200mの距離を音もなく一気に詰めたのだ。
 しかし、鮫が姿を見せたのならばチャンスである。
 小型船で先陣を切るゼフィラに鼓舞されて、一同も攻撃を開始する。

「では、参りましょう」
「逃げられると思うなよ?」

 幻は鮫のいる海中に果敢に飛び込んでいく。これに、史之も続いて空中からダイブした。
 ティスルもこれに合わせて小型船を操縦して追い込みに入った。
 仲間たちの足場となるべく、出現した近くまで小型船を寄せる。

(あたまがみっつ べつのうごきを するのね)

 水中では、水中呼吸のポーションによって活動可能になった『ゆるふわ薔薇乙女』ポムグラニット(p3p007218)が待ち受けていた。

(どうして おうたを うたうのかしら? ひとりで さんぶがっしょう できちゃうのかしら?)

 さすがはゆるふわな薔薇の精霊である。その三つの頭に注目する。
 突然の襲撃にもかかわらず、目のつけどころが違った。
 三部合唱というのは、何かの鍵になるのかもしれない。

(しゅうげきの ちょくぜんまで うたってたのに おうたをやめたのね)

 暗い海の中に、その三部合唱は響いていたのだ。
 それが突然止むと、鮫は船の側まで迫っていた。水音を立てず、まるで幽霊のように。
 ポムグラニットは、ためらわずピューピルシールを放つ。
 構わず鮫も食らいついてくるが、しがみついたまま離れない。花の精霊である彼女は、痛みを感じない。水中に引き込まれても、この鮫を仕留めるつもりでいる。
 さらには、史之から虹色の軌跡を残すリリカルスターが撃ち込まれる。
 鮫はもがき、怒り狂いながらさらに深い海へと逃れようとする。
 水中での度は、静かであるものの思った以上に鈍重である。
 50ノット以上の速力を出すようには、とても見えない。
 しかし、暗い海に沈んだそのときであった。
 異変に気づいたのは、超聴覚によってソナーの役割を果たしていたクロバだった。

「7時方向、三部合唱のシンフォニーだ!」

 鮫が歌っていた――。
 出現した方向と、真逆の方向で。捕鯨船の後ろ方向だ。

「鮫の野郎、いつの間に逆方向へ!?」

 ロイ船長の顔が青ざめる。
 その間、水中を移動する水音を探知することはできなかった。
 しかも、その速力はポムグラニットに封じられたというのに。
 水飛沫が上がり、トリプルヘッドシャークが巨体を船尾にぶつける!

「防御姿勢だ、何かに掴まれええええっ!!」

 エイヴァンの指示が飛ぶ。
 甲板にいる船員とイレギュラーズは振り落とされないように必死だった。
 それでも衝撃で落ちた船員たちは、小型船で待機したゼフィラとティスルが迅速に救助する。

「船員さんたちを助けるよぉ!」

 シルキィは、カイコガの羽を羽ばたかせつつ、落ちた船員を助けるために海に飛び込んだ。
 そんなシルキィを、船員ごと喰らおうと三つの顎が迫る。

(食べられるわけには……!)

 船員を抱え、必死に逃れようとするシルキィ。

(弱点は鼻先のロレンチーニ器官!)

 ティエルとともに予習したブルーノートディスペアーには、そう書いてあった。
 水中を羽ばたくように泳ぎ、海中から飛び上がる。
 鮫も、そんなシルキィを食らってやろうと跳ねた。
 そのときである。
 シルキィは空中で反転すると、すかさず一条の雷撃を放った。
 見事に命中! さらに小舟のティスルからソニックエッジが飛んだ。
 巨大鮫は、体をくねらせて、水柱を上げて落ちる。

「やったか!?」

 ロイ船長が、ふたりのイレギュラーズの攻撃で鮫への勝利を確信しかけた。

「まだ だよ まだ うたが きこえるもの」

 海中から、ポムグラニットが顔を出して警告した。

●歌の秘密
「うん、わたしもなんで歌うのかわかった気がするよぉ」

 シルキィは、ポムグラニットと同じく、水中で鮫と対したときに気づいたのだ。その歌の秘密に。

「……どういうことだ?」
「そうだ。船長、油断するな。二撃目が来るぞ」

 エイヴァンも構えた。
 音もなく泳ぐこと、歌うこと、超高速遊泳の秘密――。

「2時方向、浮上してくるぞ」

 エイヴァンの言葉を裏付けるように、クロバの耳は水中から浮上する巨体を完治した。

「馬鹿な、さっきと真逆に!?」
「簡単なトリックだ、鮫は二匹いる。船長、取舵だ」
「あんなバケモンが二匹も、だと!? と、取舵いっぱーい!」

 操舵手がかじを取り舵に切ると、船の舳先を三つ首が掠めていった。エイヴァンの咄嗟の判断で、鮫の不意打ちは防がれたのである。

「なるほど。水中で歌うのは、一匹が囮になって騙すためだったんだね。静かに泳ぐのに、歌うなんて変だと思ったんだ」

 小型船で救助を続けるゼフィラも気づいた。
 つまり、水中深くで歌ったのは自分の居場所をあえて報せるため。
 気を引いている間にもう一匹が静かに泳いで回り込み、歌をやめたところで別方向から現れる。
 このため、あたかも超高速で移動して突如現れると錯覚したのだ。
 頭が三つもあるバケモノ鮫が二匹もいるわけもないという先入観を利用した狡猾なトリックであった。

「タネが分かってしまえば、こっちのものだ!」

 エイヴァンは水中の鮫に全身の力を変換した雷撃を放つ。
 痺れた鮫が、海面でもがいた。

「デカイからって図に乗るな軟骨魚!」

 史之が水中から顔を出して言う。
 リリカルスターによって沸き上がった怒りが、鮫の連携トリックを崩すきっかけになったのだ。
 あとわずかな慎重さが残っていたら、もう少し苦戦することになっただろう。
 動きが止まったトリプルヘッドサイレントキラーに、上空からティエルが彗星のごとく剣を構えて急降下する。

「メチャクチャ強いサメくらいで止まってあげないからね!」

 狙うは鼻先、ロレンチーニ器官!
 大きく身をくねらせたかと思うと、白い腹を見せて浮かび上がった。

 そして残る一匹――。

 船に迫ってくるトリプルヘッドサイレントキラーシャークの口に、クロバがみずから飛び込んでいった。
 こんな話がある。
 巨大な鯨に呑み込まれたある勇敢な漁師は、胃液で溶かされながらも内側から腹を破って倒したという。
 鯨を倒すには、その内側から。
 呑み込まれたクロバは、ガンブレードの魔力を弾いて
爆発させる力とともにその腹を内側から破っていく。
 鮫は、夢を見ていた。
 親鮫から生まれ、三つ首の変種として他の鮫からも避けられながらも厳しい生存競争を勝ち抜き、つがいとなった相棒と出会うまでの、泡沫の夢――。
 その走馬灯は、幻の奇術『夢幻泡影』によえるものだ。

「倒したら別の首が生える……なんてのも定番だしね」

 さらに、とどめとばかりにゼフィラがあその頭をソウルストライクでふっ飛ばす。
 恐るべき三つ首の番の鮫は、こうして退治された。

「船長、もしかしてまたサメ食べるの。付き合うけどさ」

 史之が大物を仕留めた船長に訊いた。

「さて、どうするかな? 食って供養するのがいいと思うが」

 困ったような、喜んでいるような、なんとも言えぬ顔でロイ船長は答えるのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

クロバ・フユツキ(p3p000145)[重傷]
深緑の守護者
寒櫻院・史之(p3p002233)[重傷]
冬結
ポムグラニット(p3p007218)[重傷]
慈愛のアティック・ローズ

あとがき

 鮫退治、お疲れさまでした。
 というわけで、二匹いました。
 しかし、スキルの組み合わせと装備が噛み合った感じでず。
 やはり、『絶望の青』にはいろいろいます。
 海には未知の鮫、未知の生物がまだまだいますので今後もなにかやろうと思っています。
 それではまたお会いしましょう。

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