シナリオ詳細
<虹の架け橋>マラカイト・グリーンに輪舞曲を
オープニング
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ペールグリーンの蛍光が遺跡の道しるべ。
妖精の導きに歩みを進めれば、美しい常春の楽園が広がるだろう。
けれど、楽しい時間は少しだけに留めなければならない。
なぜなら、それは――
「何にでも代償っていうものがあるのよぉ」
おっとりとした口調で微笑みを向けるのは『守人のお母さん』ミュスカ・ヴィラネルだ。
アーカンシェルの魔物退治と『夜の幸い』ライラ・エシェルを救い出したイレギュラーズは、ノームの里へと帰還していた。
そこで、彼らを出迎えてくれたのはミュスカと応援に来たイレギュラーズたち。
傷を癒やし、休息を得るため招待された食事で、ミュスカはライラ達に『妖精伝承』を聞かせたのだ。
「妖精郷の門(アーカンシェル)を守るのが私たち、ヴィラネル一族の役目なのよ」
野菜たっぷりのシチューと、木の実入りのパンを振る舞いながらミュスカは紡ぐ。
「それでねぇ。ちょっと困った事が起きてしまったの」
ミュスカはイレギュラーズが帰還したあとに、アーカンシェルの見回りをしていた。
そこで、本来であれば機能しているはずの門の封印が沈黙している事が分かったのだ。
「ライラちゃん達が戦っていた時は、まだ正常に機能していたはずなのよぉ」
原因はノームの里にある門の破損ではない。他の所にあるアーカンシェルが破壊、突破されてしまった為に起こった連鎖的な沈黙。
イレギュラーズが多くの妖精門を守っていなければ、手がかりすら掴めなかっただろう。
「でも、それって……、門からアルヴィオンに帰ることができないってことなのかな?」
包帯を巻いた小さな妖精――シェリーがライラの手の中から顔を出す。
「そうねぇ。門が機能していない以上、たとえ妖精の貴女でも帰ることはできないと思うわぁ」
「そんな……っ」
シェリーは涙を浮かべて落胆した。
「大丈夫。帰る方法はあるわ。でも、ちょっと危険なのよぉ」
ミュスカは微笑みを浮かべてイレギュラーズたちを見渡した。
「だから、あなたたち、お願いできるかしらぁ?」
●
妖精門の守人の歌声――術詩『虹の架け橋』は優しい光を放ちながら奏でられる。
アルティオ=エルムとアルヴィオンを結ぶ門は閉ざされてしまったけれど。
其処へ至る路を欲するならば、『大迷宮ヘイムダリオン』の扉を開け放て――
ヘイムダリオンには虹の宝珠がいくつも眠っている。
それらを入手することで更なる深部へ到達できる仕組みらしい。
何度も何度も挑戦し、宝珠を集めてようやくたどり着ける妖精郷アルヴィオン。
けれど、各地のアーカンシェルが機能を停止させているということは、同じように迷宮へ挑もうとする仲間がいるはずだ。それは、友人かもしれない。家族かもしれない。恋人かもしれない。
志を同じくして、挑む迷宮に思いが募る。
「ここから先は未知の領域よぉ。だから、私も一緒にいくわぁ」
ミュスカは笑顔で頷いた。
もちろん、妖精のシェリーとライラも同行する。
マラカイト・グリーンの光がアーカンシェルから溢れて。
大迷宮ヘイムダリオンへの扉が開かれた。
- <虹の架け橋>マラカイト・グリーンに輪舞曲を完了
- GM名もみじ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年04月19日 22時20分
- 参加人数7/7人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 7 人
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参加者一覧(7人)
リプレイ
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ふわりとペールグリーンの灯火が揺らめく。
誰も居ない大迷宮ヘイムダリオンの中だというのに。燃え続ける灯りに感心したのは『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)だ。
彼女の長い前髪の間から微かに見える金の瞳が、前を行く幼馴染み親子を見つめる。
「な、なんか遺跡を守ってる家なのは知ってたけど……うち、妖精郷の門を守ってたの!?」
「ええ、そうよぉ」
愛らしい美貌が二つ並ぶ。『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)と『守人のお母さん』ミュスカ・ヴィラネルの親子だ。
見た目は仲睦まじい姉妹に見える二人であるが。ハーモニアの歳は聞いてはならないと『天戒の楔』フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)は顎に手を当てた。
ハーモニアに限らず、見た目と実年齢が違うことなど、この無辜なる混沌では日常茶飯事。
様々な種族が入り交じることは、可能性を広げることに繋がるのだ。
だから、この世界においてそれは肯定されるのだろうとフレイは頷く。異種族間において子を成せるのがその証左であろう。少しだけ浮かんだ胸のざわつきを掻き消すように視線を前に向けるフレイ。
「フランの家が遺跡の守護を担当しているとは聞いてたけど、妖精郷の門だったなんてね」
「そうねぇ。あんまり広げたくなかったのは事実なの。……ほら、フランが小さい頃危ない目にあったでしょう? 大々的に広めてしまえば、ああいう輩が来てしまうのよぉ」
だから、子供達には『お伽話』として読み聞かせ、魂へと刻みつけた。子供の寝物語を真剣に捉える大人は少ないだろうから。遺跡を。子供達を。守る為にとミュスカは微笑む。
「言われてみれば納得……って感じ」
「びっくりだよ」
寝物語の真実を聞かされたということは、きっと『守るべき子供』から卒業したということなのだろう。
嬉しいようなむず痒いような擽ったさがフランの心を巡る。
「フランもミュスカさんも、頑張りましょう!」
「ええ!」
「……えっおかーさんも来るの!?」
娘の驚きに母はキメ顔で拳を天高く上げた。
妖精郷アルヴィオンに迫る魔種や魔物の気配。何か悪いことが起きそうな予感に眉を寄せる『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は、心配そうに自身の顔をを覗き込む『夜の幸い』ライラ・エシェルを認める。
「えっと……それにしてもライラと一緒にダンジョンを冒険する日が来るとは思わなかったな」
妹に心配をさせてしまったと反省してウィリアムは努めて笑顔を見せた。
「はい。シェリーさん達が困ってるのに。でも、兄様との冒険少しだけ楽しみです」
「そうだね。僕も同じだよ。良い思い出になりそうだね」
「大丈夫よ。私は気にしてないわ。兄妹水入らずって感じで良いじゃない」
微笑ましい兄妹のやり取りに、シェリーは何事も楽しんだ方が良いと、妖精特有の陽気さで笑った。
「ダンジョン、そして奥に待ち構えるボス……まるで」
くつくつと口の端を上げる『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)は元の世界で見たアニメやゲームの冒険を思い出していた。
「……少しやりたくなってきたな。練達とかで見れるかな」
薄桃色の丸いヤツや小さいおっさんが画面内で右往左往するゲームは定番だろうか。
懐かしい。やりこんだよなとクロバは過ぎ去りし記憶を反芻していた。
「オホン。それはさておき、ライラたちに協力しないとな!」
そう。ここはダンジョン。画面の中なんてもんじゃない冒険がイレギュラーズを待ち受けるのだ。
――――
――
「い”や”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ー……!!」
広いダンジョンの中に絶叫が木霊する。
遠くから近づいてくる声と、石がガラガラと崩れていく音。
必死の形相でこちらに向かって走ってくるのは散々・未散(p3p008200)だった。
「なぁに、玉座を狙って知略を巡らせ罠を張り合う。人為的な其れに比べたら、こんなダンジョンの罠なんて可愛い……とか言ってた、さっきまでのわたしを呪いたいぃいいいい!!」
崩れ落ちる石の橋を全力疾走する姿はいっそ清々しい。
「何で! あのボタンを押したんだぁ!?」
クロバの突っ込みは至極当然である。石橋の端に設置されていた人工的な形の凹みを清らかな瞳で、迷うこと無く押した未散。押した数秒後に谷底へ落ちて行った石橋の一部を、見なかった事にして。
「後ろは振り返らない」
キラキラした瞳で前を向く未散。不幸体質故か 将又、唯のうっかりか。
「振り返ったら死ぬ!!! 走れぇええ!!!」
「いやぁ、自分の葬儀を挙げる気は未だ御座いませんってば!」
息を切らせながら、橋を渡りきった未散を最後に。ガラガラと音を立てて石橋は無くなった。
「はぁ、はぁ。此れ思ったより『ガチ』ってやつですねえ!?」
「誰のせいだ。だれの!」
クロバは未散への突っ込みの為に大地を踏みしめる。カチリと音が鳴った。
もちろん、スイッチである。
「クロバさま!? 何で押したんですか!?」
「ハハハ、まさか床にスイッチがあってそれを間抜けにも踏み抜いてしまうなんてそんな」
未散の絶叫と共に、バァンと通路の横から石の滑り台が現れる。
その暗がりを暗視を使って『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)が覗き込めば、大きな丸い岩がこちらに近づいてくるではないか。
「あ、ヤバイやつね」
すっと首を引っ込めて、迫り来る危険を回避しようと走り出すセリア。
安全のためにライラ達、年少者の手を取るのも忘れない。優しい気遣いだ。
「――うおおおお! フラグって奴を立てた覚えはないんだけど!!」
「流石クロバね」
確実にフラグを踏み抜いてくるクロバに感心するセリア。
「大岩が転がってくるとかは定番だが、さて」
フレイは音を立てて転がり落ちてくる大岩を赤青の瞳で睨み付ける。
「ああ。そうか」
この大岩はモンスターが変幻したものだ。フレイには直感で分かった。
「俺は、『天戒の楔』フレイ・イング・ラーセンだ! そこの岩ヤロウかかってこい!」
通路に響くフレイの名乗りに大岩のモンスターは憤怒の荒息を上げる。
フレイの読み通り勢いを増して転がってきた大岩。それをパスする形でフレイはクロバに視線を送った。
「分かった、俺のガンブレードに斬れないものはナシ!!」
雄叫びと共に愛剣を構えたクロバ。迫り来る大岩のモンスターは思ったよりもデカイ。
「クリティカルを信じろぉぉぉぉ!!」
爆音と共にガンブレードが火を噴き、巨大なモンスターが真っ二つに割れる。
「おお……!」
クロバの奮闘にウィリアム兄妹とフラン親子が拍手を送った。
「幼馴染のアルちゃんもいておかーさんもいて、気が抜けちゃ……むぎゃ! なんか踏、うわー!」
フランの目の前を横切る振り子の大鎌。ギリギリの死線。
アルメリアのようなたわわな胸であれば危なかった。しかし、フランの胸はそうではなかった。
不幸中の幸いである。
「……うっうっ」
泣きそうになるフランの肩をアルメリアがそっと叩いた。
「単純とはいえ、さすがに罠が多いわねぇ」
大鎌の振り子を眺めながらアルメリアはウニヴェルズムを構える。
「……こんなもんはね! 鎌の方をぶっ壊しちゃえばいいのよ!」
だから、泣いてくれるな友よ。
「フランの仇は私が取るわ」
「いや、死んでないよー!? 胸も削れてないからね!?」
魔法陣がアルメリアの背後に展開され、碧の光弾が友の尊厳を奪った憎き大鎌へと飛来する。
セリアは独り、罠の有無を調べながら慎重に歩みを進めていた。
その風貌や身のこなしから、シーフと間違えられることがあるセリアだったが、そんな特殊な能力を持っているわけではない。
「あっ!」
足下の縄がセリアの足首を捉え、一気に天井へと吊り上げる。
「な、何故こんな所に縄が!?」
おかしい。無闇に引っかからぬように細心の注意を払っていたはずなのに。何故。幻術の類いであろうか。セリアは逆さまになった身体で考えを巡らせた。
腕を伸ばしたジャック・ワンダーがセリアの身体を優しく抱き上げて地面に下ろす。
「嗚呼、もう疲れました……」
未散が視線を上げれば、休んでくださいとばかりのフカフカのソファが目に入った。
「はあ、はあ、皆さん、チルチルとミチルも。少し休んで行きませんか」
肩で息をした未散がよいしょと腰掛ければ、張られたワイヤーがプツリと切れる。
それは壁爆砕し、その衝撃で天井の崩落が始まった。
「ああああああ!?」
「ひえええ!」
「大”変”申”し”訳”あ”り”ま”せ”ん”ん”ん”ん”……!!」
全員で駆け出す仲間との冒険をウィリアムは楽しいと思ってしまった。
頭の中で軽快な音楽が鳴り響き、怒号と悲鳴が弾け飛ぶ大迷宮ヘイムダリオン。
ジャック・ワンダーを連れた妹も楽しそうに笑っている。
基本に忠実なものから、変わり種まで。沢山の罠を掻い潜りながら目指す大きな扉の前。
「いくよ」
仲間の頷きと共に、ウィリアムが天井まである大きな扉をゆっくりと開けた。
●
暗黒の闇の中――
炎が燃える音と共にペールグリーンの灯りが壁面を走る。
アルメリアが視線を上げると、広い空間の奥に見えるのは、山羊頭と大きな翼。
魔神ロンダリオンは待ち構えるように誘うようにそこに居た。
「いかにも遺跡の守護者……って感じの出方ね」
ヴァイオレットの髪から金の瞳を覗かせて、アルメリアは魔導書を開き高鳴る胸を揺らす。
「いいわ、いい。なんだかとっても物語的じゃない……ふふん。やって見せるわー!」
アルメリアの開幕閃光――アクアティントの魔法陣が宙空を舞う。
辺りの空気が熱を奪われ、冷たい風が広場を走った。
絶対零度の氷像は魔法陣から出現し、大気を揺らしながらロンダリオンへと放たれる。
それだけではない。氷が当たった場所から全身に広がる冷気の帯に敵の目が見開かれた。
「ほぅ……、やるではないか。耳長の民よ」
「見くびらないでちょうだい」
「くくっ。威勢の良い奴は嫌いじゃない」
吹き荒れる冷気を物ともせず、先陣を切って攻撃を仕掛けたアルメリアへとロンダリオンが迫る。
魔神のイビルアイは強力であろう。
だが。アルメリアの前へと躍り出たフランは強い笑みを絶やさない。
「見ててねおかーさん、あたし前に出て皆を守りながら戦うヒーラーだよー!」
「まぁまぁ。頼もしいわねぇ」
大鎌の攻撃はフランへと落ちる。
杖で受け止めれば、腕に伝わる重さに歯を食いしばった。
ギリギリと拮抗する力で。
「――っらぁ!!!!」
それでも渾身の力で押し返したフランはウィリアムへと合図を送る。
「今のうちに!」
「分かったよ。行くよ、ライラ」
「はい」
正面からずれるように妹へと指示を送ったウィリアムは、そのまま正面へと展開した。
「冥府の王プルートの名、冠する我が告げる」
ウィリアムの周りに風の魔力が集まっていく。凝縮され圧縮された風の中に生まれる真空の魔術――紋章術と呼ばれる術式は彼自身の名を体現するかの如く美しい色彩を帯びていた。
「夜明けの虹はこの手、この身の根源。遙かなる空を渡る、風の調べ――」
手を掲げたウィリアムの前に、何重にも織り込まれた紋章術式が円を描く。
「忌まわしき悪を破壊せよ――!」
それは風の暴力と大気を震わせる雷鳴の迸り。
「くっ!」
ウィリアムの痛打を真正面から受けたロンダリオンはうめき声を上げて傷口を押さえた。
兄の健闘に重ねるようにライラのジャック・ワンダーが攻撃を繰り出す。
ロンダリオンの風貌。魔眼にデスサイズを構えた、いかにも死神という出立にクロバは口の端を上げた。
死神たる名を冠するのは果たしてどちらが相応しいだろうか。
「どっちが首を刈れるか」
仲間の作り出した隙をクロバは逃さない。
後ろに回り込んだ彼は、助走を付けてロンダリオンの背に飛び乗った。
「何っ!?」
「勝負といこうじゃないか」
死銃剣・マリスエタンゼルが大気中にある生命エネルギーを吸い込んでいく。
眩い光は敵の視覚を一瞬った。戦場において一瞬とは掛け替えのない時間である。
「貰ったぁ!」
クロバの奇襲攻撃は見事にロンダリオンの翼を切り落とし、盛大にアガットの赤を散らした。
「ロンダリオン」
フレイは赤青の瞳で巨体を睨み付ける。
仲間の攻撃を受けて尚、その身は健在であるロンダリオンを見据た。
「ほぅ、魔神というからには中々手強そうだな」
簡単に倒されては面白みが無い。自身を強くする為にも力というものは必要である。
実戦でしか得られない経験は何より代えがたいものだろう。
防御を固めたフレイは仲間に背中を預け、敵の前に身体を張った。
「さあ、掛かってこい!」
「応とも!」
黒い焔の刃が敵の大鎌をはじき返す。避け得ぬ状態異常に傾ぐ身体。
しかし、フランの癒やしの力で立ち上がることが出来る。
「助かる」
仲間とは頼もしいものである。
フレイはじんと染み渡る感傷に攻撃を予感した。
ロンダリオンの首刈り鎌がフレイの喉元に走る。
「ぐっ」
武器で軌道を逸らしていなければ、致命傷だっただろう。
ブラッディ・レッドの赤はフレイの服を黒く染めていく。
「大丈夫! ――大地の恵み、陽光のぬくもり。この手に宿れ!」
声と共にスプリング・ノートの香りがフレイを包み込んだ。緑葉が舞い散り、陽光の如く温かさが青年を癒やす。それは、フランの祝福。
敵の正面を避けるようにセリアは位置取った。
それは無用な回復を避けるための賢い作戦であろう。
研ぎ澄ました感覚は、攻撃を更に強化するものだ。
伏せられた瞳がゆっくりと上がる。
双眸に讃えるはアプリコット・オレンジの美しい色彩。
「穿て――月の魔弾!」
ロンダリオンのもう片方の翼。その間接部へと的確に放たれた神秘の弾丸。
その軌跡を追うのは未散の瞳だ。
至近距離で戦う仲間の目になろうと戦場を見渡す。
セリアの穿った翼に重ねるは、疑似の生命。けれど、侮ることなかれ。
「大門の 灯り開けよ 閂を 差しも差さぬも 比良坂の陣!」
其処に出るは悪鬼夜行の類いなれど。
●
フレイに振り下ろされる大鎌。
肩で息をする彼は。それでも膝を折ることは無い。
自分が攻撃を引きつける事ができれば、それだけ仲間の好機が訪れるということ。
「ここが、正念場」
フレイの赤青の瞳が燃え上がる。黒き翼を広げ、挑発するように叫んだ。
「こんな攻撃じゃ、俺は倒せないぞ!」
「よく言う!」
ロンダリオンの連打に回復が間に合わない。
「大丈夫だよ。僕も手伝うよ」
「ありがとう! ウィリアム先輩!」
力強く頷いた青年は攻撃の紋章術を回復の術式へと組み替える。
それは、ウィリアムが時間を掛けて体得した癒やしの力。
緑光に夜明けの虹が重なる。色の輪郭が解けて、二重の螺旋を描いた光は。
フレイの身体を優しく撫でた。
傷口に折り重なる光は暖かく、パチパチと弾けるように生命の息吹が迸る。
ライラはクロバの為にジャック・ワンダーを敵の前へと繰り出した。
仲間を信頼していなければ出来ない業。
けれど、心配することは無い。先の戦闘で垣間見た兄達の健闘にライラの心は信頼へと変わっている。
「今です!」
「おお、任せろ!」
敵の間合いへと飛び込んだクロバ。
黒銀に光るガンブレードの軌跡。
ロンダリオンの身体を引き裂き、その太刀は止まらない。
「まだだ、ぶっこめ!」
クロバの声に応えるのは未散だ。
命を蝕む魔手が地面を這い、ロンダリオンの身体に纏わり付く。
「さぁさ風穴あけましょう 心にぽっかりおおきな穴を」
鼓動打つ臓器を抉り、貪り、喰らい尽くす魔術。敵の巨体が傾いだ。
未散は続けと視線をアルメリアへと送る。
「穿て――」
アルメリアが手を広げれば連動するように魔法陣が広がる。
碧の光弾は眩い粒子を散らし、終焉の槍へと姿を変えた。
「裁きは此処に、下される!」
星屑の軌跡を見るような光の爆発が戦場を包み込む。
硝子が砕ける音と共に、魔神ロンダリオンはペール・グリーンの霧となって静かに霧散した。
――――
――
小さな扉を開けると、眩い虹色の光が部屋中を照らしていた。
「これが……虹の宝珠」
セリアは宝珠を手に取ってミュスカへと渡す。
宝珠の台座から顔を覗かせた妖精にセリアは手を伸ばした。
「もう大丈夫」
飛び出してきたシェリーの友人はひしとセリアに抱きついて「怖かった」と震える。
「なぜ、こんな所に居たの?」
「それがね、魔物が怖くて逃げてたらここに入り込んじゃって。いつの間にか寝てたの」
特に怪我をした様子も無い妖精に、ほっと胸をなで下ろすセリア。
「いっぱい動いたらお腹空いたよー、おかーさんシチュー作ってー!」
「はいはい。帰ったらねぇ」
フランの声にミュスカが応えて。場の空気が和んだ。
わいわいとはしゃぎながら、部屋の中にあった転送陣へと消えて行くイレギュラーズ。
人の気配が無くなった広場に。
カラカラと音を立てながら再生していく魔神の姿。
いつか、挑戦者が現れる日を待ちながら。
緑色の目をした魔神ロンダリオンは悠久の日々を過ごすのだろう――
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
ダンジョン&アクション! 楽しんで頂けたら幸いです。
GMコメント
もみじです。大迷宮ヘイムダリオン編。ダンジョン&アクション!
●目的
虹の宝珠の入手
●ロケーション
○フェーズ1
ダンジョン&アクション!
仕掛けられた罠を掻い潜って宝珠の部屋までたどり着こう。
※PL情報:実は簡単な罠だったりします。
スリリングでエキサイティングにしてもらっても構いません。雰囲気でフレーバー。
例:針天井が落ちてきたり、色のパネルを踏んだり、スイッチを押して落とし穴だったり。
どんな罠があってどういう攻略をするかはお任せ。楽しんだもの勝ちです。
○フェーズ2
フェーズ1をクリアした後はボス戦です。
戦闘で敵を倒して虹の宝珠をゲット!
いかにもな大きな扉をあけると、緑色の松明が次々と灯ってボスの姿が見えます。
戦闘するには十分な広さの部屋です。天井も高いです。
ボスは奥の部屋の鍵を持っています。倒すと手に入ります。
奥の部屋には虹の宝珠とシェリーの友達の一人が居ます。
●敵
○『緑目の魔神』ロンダリオン
身体は人、頭は山羊、背中に黒い翼が生えています。デスサイズを持っています。
見た目通りそれなりにやばいボスです。頑張って倒しましょう。
・ブラックレイン(A):神遠域、必中、猛毒、崩れ、ダメージ中
・トーテンタンツ(A):物至列、出血、流血、スプラッシュ3、ダメージ中
・デゾナンス(A):神自域、麻痺、苦鳴、ダメージ小
・ネックチョッパー(A):物至単、ダメージ特大
・イビルアイ(P):正面の遠までの相手に毎ターン不吉、不運を付与。回避特殊抵抗は可能。ダメージ無し。
・飛行(P):浮いてます。
●味方
○『守人のお母さん』ミュスカ・ヴィラネル
妖精郷の門(アーカンシェル)を守る一族に連なる者。
近接魔法の使い手。前衛能力が高いです。
フラン・ヴィラネル(p3p006816)さんのお母さんです。
○『夜の幸い』ライラ・エシェル
ノームの里に住まう幻想種の少女。強力なゴーレム使いです。
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)さんの妹です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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