PandoraPartyProject

シナリオ詳細

新たな味を求めて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●未知の味との遭遇
 傭兵首都・ネフェルスト。
 ローレットと浅からぬ縁を築いたこの国は、大陸における交易を担っているだけあって多くの文化や人種の坩堝と化している。
 当然ながら、それは食の分野にも及ぶ。当然、『砂漠で再現できるもの』に限られはするが、そこは独自の発展を遂げる形で再現され、残っているものも少なくはない。
「……それで、その店で食べられるっすか。その『コシャリ』って料理が」
「そうよ。この間偶然見つけたのだけれど、美味しかったから気に入っちゃって」
 『薬の魔女の後継者』ジル・チタニイット (p3p000943)の問いかけに、『熱砂への憧憬』Erstine・Winstein (p3p007325)がどこか嬉しそうに応じる。ネフェルストの町並みを歩くのは、彼女ら含め8人のイレギュラーズ達。出自も、嗜好も異なる彼らだが、依頼の関係で空いた時間が出来た為、Erstineの提案でとある店に向かっていたのだ。
「聞いたことない料理だ。美味い料理なら、なんだって歓迎だよ」
「話にだけは聞いた事があるわね。評判は悪くなかったはずよ」
 『精霊の旅人』伏見 行人 (p3p000858)にとって、未知のものというのはそれだけで価値がある。仲間が推すのだから、味も保証できるのだろう。ラサの住人である『なぁごなぁご』ティエル (p3p004975)が知っているというのなら、そして一定の評判があるというのなら、期待値が上がるのも無理からぬこと。
 ……少なからぬ期待が一同にあったのは、間違いないのだが。
「場所はここで合ってるんだな? 『臨時休業』と書いてある」
「残念だな、このタイミングで休業とは……」
 『特異運命座標』翁 (p3p008177)が指差した先には、確かに休業の旨を記した札が掛けられていた。思わぬ事態に、しかし『ディザスター』天之空・ミーナ (p3p005003)は冷静に、しかし心から残念そうに首を振った。
「ええ?! そんな筈ないわ、だってこの間来た時は繁盛してたし、それに……」
 「それに、ここなら運が良ければ……」とErstineが小声で続けたのを聞き届けた者はいない。いないが、強い動揺を見せていることは『展開式増加装甲』レイリ―=シュタイン (p3p007270)の目には明らかだった。
「エルス殿、ここは一度出直してみては……」
「なんだい、客人かい……?」
 レイリーが控えめに提案しようとしたタイミングで、店の扉が僅かに開く。内側から見えたのは、店主らしき男のどこか気落ちした顔だ。「臨時休業でも店番をしてるだなんて、都会はすごい」とズレた感想を持った『シティーガール!』メイ=ルゥ (p3p007582)はさておき、一同の様子を見て客であること、彼女らを傭兵のたぐいだと認識した店主は、安堵の表情を浮かべ、店内へと迎え入れてくれた。

●……の前の依頼
「なるほど、それは……気の毒な話ね」
 Erstineは店主の話をひとしきり聞いてから、少し考え込んだ末に茶で唇を湿らせてから、ようようと口を開いた。
 店内に招き入れられ、お茶のついでに聞いた話は決して軽いものではなく。要は、彼の店に材料を卸している行商人が足止めを食っている、という話だった。
 なんでも、相手は知性の低い小人型の魔物の集団であるらしい。
 それだけなら行商人達の護衛と連携で振り切れるのだろうが、問題はそれら魔物が、どこから招き寄せたのか、大型のゴーレムを連れていることだった。
 輪をかけて不都合なのは、魔物のなかの数体が、狼を乗り回しているために振り切るのも、相手をまくのにも限界がある、ということ。
 唯一幸運があるとすれば、ネフェルストの目鼻先にまで来ているということだが……それを伝えるために逃げ延びた行商人も命からがらという体で、悠長にはしていられないという話だ。
 伝令が訪れたのは、イレギュラーズが来訪するほんの30分ほど前だったという。恐らく、急ぎ向かえば間に合うのではないか、と彼は告げた。
「困ってる人がいるなら助けないわけにはいかないっすよ!」
「……主人、報酬は俺達がコシャリを目一杯食えること、でどうだい?」
 ジルが鼻息荒く告げる傍ら、行人はにやりと笑みを浮かべつつ店主に提案する。一も二もなく首を縦に振った彼に、一同は意を決したように頷き合った。

GMコメント

 リクエストありがとうございます。面白い料理もあるものですね。きになる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●成功条件
・行商人一行の救出
・敵勢力の撃退(うち、ゴーレムは撃破必須)

●イルディッシュ×10(+ウルフライダー3)
 小人型(50cm程度)の魔物。膂力はそこまで強くないが、攻撃の精度が高く近接用の得物に様々な種類の毒を塗っている(出血、致命、暗闇のいずれか付与)。
 他、ボーラ(物遠単、足止)などを使用。
 ウルフライダーは通常個体に加えて機動+2、反応上昇大。狼のみを倒す(部位攻撃扱いの為狙った場合は命中に下方修正)と転がり落ちて、最大HPの3割のダメージを負う。

●ミキシングゴーレム×1
 イルディッシュに操られたゴーレム。コア部周辺と拳の部分のみ鉄、それ以外の部分は石造り。
 基本は物近単の打撃攻撃だが、腕を振り回す(範)攻撃も行う。庇いに回った場合、3人のイルディッシュをかばうことができる。

●行商人一行、戦場
 行商人達はイレギュラーズ到着時は十分離れた位置に隠れているが、2ターン経過後に狼が行商人を見つけ出し、そちらに向かおうとする。
 フィールドは砂漠のため、多少動きづらい。反応減(弱)を被る。

 以上、サクッと倒してコシャリを堪能しましょう。

  • 新たな味を求めて完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月01日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
ティエル(p3p004975)
なぁごなぁご
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
翁(p3p008177)
特異運命座標

リプレイ


「コシャリが目一杯食べられるですか?!」
「そういう事だね。長々と準備をしている時間もない、すぐに向かおう」
 コシャリを出す店、その店主から言質をとったメイは喜びに体を震わせ、砂漠への道を突っ走っていた。
 その交渉を成し遂げた行人もまた、早急に商人を助けるべく駆ける。今はまだネフェルストの町並みの中だが、程なくして砂漠へと出る。その時、彼の呼びかけが通じればいいのだが。
「てっとり早く終わらせて救出成功といきますかね」
「ああ、すぐに向かわなければ」
 ミーナとレイリーは、その後続けて「美味い飯が食えるなら」「助けを呼ぶ人がいるなら」、と全く異なる動機を口にした。両者はちらと互いを見ると、相変わらずだと小さく笑みを浮かべる。相手はいかなる場合でもブレない。だから轡を並べていて不快にはならないのだろう。
「コシャリ~コシャリ~パスタにマカロニヒヨコ豆~トマトソースぅなぁごなご♪」
 ティエルは傭兵出身なだけに、コシャリにも通じている。恐らくは彼女にも行きつけの店があるのかもしれないが、今回の店とは異なるだろう。コシャリは店ごとに味が異なるというから、その期待が高まるのも当然か。
「美味しい物の恵みを邪魔するのは駄目っすよ!」
 ジルは、人々の営みにとって何が大事であるかを心得ている。ゆえに、それを奪うという行為に対して憤りを覚えているのだ。こと、ジルはその傾向が強い。
 既に期待がストップ高のコシャリが食べられるか否かの分水嶺。彼女の鼻息が荒くなるのも、さもありなん。
「急を要するならば仕方ない。行商人を先に見つけなければいけないな」
 翁の役割は、いち早く行商人と合流し、彼らの護衛に回ることだ。彼らが敵に察知されるまで猶予はあろうが、さりとて呑気に構えてもいられない。
 幸いにして、イレギュラーズは彼らのおおよその位置を把握している。イルディッシュに先手を取られることは、万に一つもないだろう。
「行商人さんがピンチなら助けに行かなきゃね! それにコシャリはとっても美味しかったから是非皆さんにも食べてもらいたいし……頑張りましょっ!」
 Erstineは言い出しっぺなだけはあり、この状況に責任を感じてもいた。
 何につけても、傭兵という国を好んでいる彼女にとって、国の不利益になる自体をすべて潰しておきたいと考えるのは無理からぬことといえよう。
「さって、久しぶりの砂漠だけど……いけるよな!」
 街から砂漠へと移った辺りで、ミーナはパカダクラ『砂駆』にまたがり、そう問いかける。砂駆は当然とばかりに鼻を鳴らし、砂を蹴立てて進んでいく。
「ミーナ、先行しすぎないでよ? 大丈夫だと思うけど……」
 レイリーはハイペースで進んでいくミーナの姿に僅かに不安を覚えたものの、先行して不利になる相手ではないことも心得ている。ゆえに、語調はやんわりとしたものだ。
「砂に足をとられなければオーケーっすね? 準備万端っす!」
「飛んでしまえば足場の悪さも関係無いので……わぷっ」
 ジルとメイはそれぞれ、砂地の上でもいつもどおり立ち回れる準備を整えてきていた。何れも間に合わせ程度だが、無いよりは有効だ。尤も、ジェットパックは燃料との相談が必要になる分、扱いが難しいのだが。
(此の地に住む砂漠の精霊よ、少しだけ力を貸してくれないか)
 行人は砂地を蹴立てながら、砂漠の精霊へ語りかける。
 永らく砂漠とその生活を共にしてきた傭兵の人々を救いたいという誠意、彼らにとって人々がどの様な存在かを説き伏せる話術。当然ながら見返りの提示も忘れない。
 ……それがどの程度、精霊が動くに値する取引なのかは定かではない。
「あれが行商人か。イルディッシュは……あそこだな」
 翁の視線の先、視認範囲ギリギリのところに岩陰に隠れた人の姿。更に離れたところに、明らかに縮尺のおかしい人形が多数。
「商人さんに安全に避難してもらうためにも、ウルフライダーを先に倒すですよ!」
 メイは持ち前の速度を活かし、ジェットパックを操作しつつ全力で突っ込んでいく。砂地での不利など、彼女の前ではあってないようなもの。加速の勢いをそのまま一撃に籠めた打撃は、ウルフライダーの頭部を痛打する。上部で大きく揺れたのを感じ取った狼は、乗り手を振り落とさぬ速度でメイから距離を取り反転。相手へ向けて低く唸りをあげた。
「こっちだ、ノロマ!」
 にわかに殺気立ったイルディッシュ達の耳朶に乗ったのは、行人による誘いの声だ。風の流れや音、メイの闖入など、様々な要素が重なったとはいえ、群れ集まっていたイルディッシュ達の耳目を集めるには十分なものだったと言えよう。
 ずらりと並んだ、ぎょろりと向けられた生気の薄い目。満たされることを知らない野蛮者の群れが、その時確かにイレギュラーズを新たな獲物として認識した瞬間だった。

●砂を食むような
 無論、すべて思い通りとはいかない。密集陣形にあった敵を挑発したがゆえに、ウルフライダーとゴーレムをも呼び込む結果となったのは事実。にわかに殺気立ったそれらの集中攻撃は、さしもの彼も耐えられまい。
「さあ、お前の相手はこの闇の中にいるぜ。さっさとかかってきな!」
「――&$、――」
 が、そんなことは全員が理解している。
 だからこその連携。ゴーレムがイルディッシュのカバーに入るより早く、その視界をミーナの『領域』が覆う。ゴーレムのみを的確に狙ったそれは、行人へと踏み出しかけた足を留まらせることに成功。
 更に、ウルフライダー達の行手を阻む影が2つ。
「そっちは行き止まりだから――」
「――私と遊びましょう?」
 レイリーとErstineが、行人へ向かおうとしたウルフライダーに割って入る。混戦状態にあって、重ねて名乗り上げることは上策ではない。それはレイリーも承知の上だ。だからこそ、己を壁として道を阻む行為に意義がある。
 Erstineの放った連撃は、完全に不意打ちとしての役割を果たした。当然だろう、他者へ一撃くれてやろうと意識を向けていたところに、全く別方向から強打を受けたのだから。
 氷刃の鋭さは、ウルフライダーの脇腹を刳り、いきおい、狼の尾を半ばで両断する。バランスを崩した狼の背にしがみついたそれは、再び眼前に回り込んだErstineの表情に苛立ちと、僅かな恐怖を感じ取る。
「ジョーカー、熱砂の危険なマジックショー」
 ティエルは敵陣中央目掛け『ジョーカー』をけしかけると、それを介して魔法を放つ。人形そのものの呪いか、彼女がジョーカーに施した装飾品の数々からか、イルディッシュ達は瞬く間に動きの精彩を欠く。敵味方の区別がつかない類であれば危険極まりないが、当然のようにそれらを選り分けて痛めつけるのだから恐ろしい。
「びかーっと行くっすよ!」
 ジルが魔力を光に変え、当たるを幸いに敵集団目掛けて叩き込む。混乱激しい中で放たれたそれを避ける手段があるとすれば、精々は運に下支えされた偶然ぐらいか。
「あちらは……加勢は今のところ不要だろうか。立てるか?」
「助けに来てくれたのか……?」
 様子を見守る翁に向け、行商人の男は目を白黒させながら問いかける。先程までこちらを追い立てていた相手が、ああもあっさりと混乱に巻き込まれている。
 数の暴力、ゴーレムによる強烈な支援を引き剥がしたとはいえ、一般人から見れば信じ難い光景なのは間違いない。
「仲間が狼乗りを抑えているから問題ないとは思うけど、慌てて街に向かうと襲われるかもしれない。俺が守るからここにいてもらえるか?」
 翁の言葉に、行商人は無言で頭を縦に振る。一行の中に逃げ遅れたり、逸れた仲間はいないようだ。
 ほっとして彼が胸を撫で下ろそうとしたその時、背後から轟音と共に強烈な砂埃が舞う。風が吹いた?
「おいおい、この暴れっぷり……冗談キツいぜ!」
 否、それはゴーレムが腕を振り回した余波で巻き上げた砂だ。相対するミーナの肉体は言葉ほどには傷は無いものの、表情には狂喜と焦りが渦巻いている。
「これは……余裕ぶってもいられないか?」
 翁が驚きに顔を引きつらせるのとほぼ時を同じくして、影が迫る。血を振りまき咆哮を上げるそれは、間違いなく――仲間のカバーを外れたウルフライダーだった。


「大丈夫っすか?!」
「うーん……今はちょっとダメみたいなのですよ……」
 地面に大の字になって転がったメイへ、ジルが慌てて治療を施す。彼女の見立てでは戦闘不能には至っていない。が、足がボーラで絡め取られ、全身の傷はじくじくと膿み治癒の波長を拒んでいるように見えた。
 ジルは視界の端でメイの戦いを見ていたので分かる。ジェットパックの加速に任せ宙に舞った彼女がウルフライダーをあと一撃のところまで追い詰め、しかし全力で空振ってしまったのを。
 傷はそれまでの戦闘での蓄積と不運の繰り返しだろうが、ジルが癒せるようになるまであと幾ばくかの時間が要る。
 逡巡する彼女らを見て好機ととったか、這々の体のイルディッシュがジルの後頭部目掛け得物を振り下ろし……勢いそのまま、差し込まれた手甲に頭から衝突し、首から上を吹き飛ばされた。
「悪かったな、大丈夫かい?」
 声の主は行人だ。敵の引きつけを徹底していた彼は、だからこそ『打ち漏らし』を見逃さない。仲間の危機。僅か一挙動の差を己の意地と、ほんの僅かな精霊の加護で埋めたことで、かろうじて間に合った格好だ。
「大丈夫、ミーナ。無理してない?」
「なーにこの程度、まだまだやれるぜレイリー!」
 ミーナの余裕なさげな声に、流石にレイリーも焦りを覚えた。彼女の実力は疑う余地もないが、さりとてゴーレムは彼女1人に任せていい相手ではない。
 襲い来たウルフライダーは守りに徹し、Erstineとの連携で駆逐した。イルディッシュはしぶといが、ティエルがじきにすべて倒してしまうだろう。
「なぁごなご、マジックショーはそろそろお開きニャ。その前に、デカブツに一発くれてやるにゃ」
 ジョーカーを繰るティエルは、周囲で崩れ落ちた敵を一瞥もせずに両手をゴーレム目掛け突き出す。ミーナ目掛け、渾身の一撃を放とうとしたそれは唐突に動きを止め、何かとせめぎ合うように揺れ動く。
「頑丈に見えて、ミーナさんの攻撃でだいぶ消耗してるわね……あれなら、何とかなりそう」
 Erstineは目を凝らし、ゴーレムの肉体から鉄の部位が目に見えて減っていることに気付く。ミーナの猛攻により、繰り返し炎に晒されたことで溶けるか剥がれ落ちるかしたのか。
「エルスティーネさん、脆くなってる部分に一撃叩き込んで下さいなのですよ! メイが合わせるのです!」
「メイさん、大丈夫……?!」
 ゴーレムに向けて氷刃を構えたErstineに、メイが跳ね起きつつ叫ぶ。何名かが心配そうに彼女を見るが、傍らのジルが大丈夫、と強く頷いたのを見れば、問題はなさそうだ。
「それじゃあ……これで終わりにしましょ!」
 Erstineが砂を蹴り、一瞬だけ重力の軛から開放される。着地の際、ティエルが再度ゴーレムの動きを抑えんとし、ミーナが鎌と刃の連撃でゴーレムに熱を流し込み、右拳を叩き切る。
 潰れた拳ごと、勢い任せに振り下ろしたゴーレムはしかし、その拳がレイリーによっていとも容易く受け流され、あらぬ方へと弾き飛ばされた事実を視認する。
 続けて振り上げた左拳は行人の斬撃で軌道を逸らされ、誂えたようなタイミングでErstineが踏み台にして跳躍。
 首目掛けて振るわれた斬撃は『落首』に至らず。しかし……。
「飛ぶのってアトラクションみたいで楽し……いぃっ……?!」
 その首目掛け、メイが体ごと突っ込んだ。僅かに残ったジェットパックの燃料が、彼女の準備した汎ゆる兵装と干渉したのか。はたまた連携の賜物か、最後の意地か。ゴーレムの首を粉微塵に粉砕すると、その頭部と抱き合うように錐揉みして落下していくのだった。
「…………なんと」
「な、問題なかっただろう?」
 翁は、地面に崩折れたウルフライダーと狼を見ることなく、その顛末を商人達と見届けていた。彼も無傷とはいくまいが、概ね危なげなくそれを処理した様子だった。

「これよ、これ! これをね、皆さんに食べて欲しかったの!」
「コシャリ! 米にパスタに豆にトマトソース……ほとんど野菜でヘルシーにしっかり味、女性にも人気。なご」
 そして、行商人達を無事に送り届けた一同は、約束通りコシャリにありついていた。
 Erstineが興奮気味に説明し、ティエルはトマトソースを足しながら補足する。
 細長い米にパスタを混ぜたものをベースとして、多種多様の豆類と野菜の素材の香りと、トマトや酢の酸味、そして辛味が混じり合った匂いが店内に広がっていく。店により同じ味はないと言われるだけはあり(そして一同の希望が入り混じった結果)、各人に分けられたコシャリはそれぞれ別物と言っていいほど趣を変えていた。
 ちなみに、さきの2人の前に並ぶのは一般的な、野菜の比率高めのコシャリである。
「これが、こしゃり? っていうものですね。お酒あります?」
「俺も酒をいただきたいな」
 レイリーと行人はひと仕事終えた安堵から、酒と合わせて。両人に出されたものは、しっかり火の通った魚介を混ぜたもので、辛味は控えめな分酢と素材の味が立っている。
「トッピングできるならチーズとお肉をお願いするっす! 揚げた玉ねぎもかけたいっすね」
 ジルの前には、彼女の希望通りに羊や鶏の肉を景気よく盛り付けた大盛りの品。素材のこともあってボリューム感満点だが、彼女にかかっては見る間に嵩を減らしていく。
「ふむ……色合いがいかにも砂漠の料理といった感じだな」
「メイはいっぱい辛くして食べるのですよ!」
 おっかなびっくり、しかし期待十分な翁の前には、スタンダードな味付けの品が。そして、メイは辛めに調整されたものに更にスパイスを振りかけ、酢を足し、目を輝かせて頬張る。
 当たり前だが、彼女のそれが放つ辛味の香気は、周囲にもそれなりに強く届く。
「レイリー。大丈夫だとは思うけど。酒は飲みすぎんなよ?」
「大丈夫、ミーナ。わたし、お酒強いから」
 レイリーに釘を刺すミーナの前には、やや辛さ強めで肉と魚介が半ばずつの一品。オーソドックスなものとは異なるが、多様な味が楽しめるようになっている。滅多にありつけぬ味、という意味では悪くないか。
「私にもこれ……作れるかしら……」
 一同がコシャリに舌鼓を打つなか、Erstineはぽつりとそんなことを口にする。一同の視線がどこか温い感じで彼女に集まると、言葉の意味に気づいた彼女は慌てて手をふる。
「いえ、だ、誰かに作るとか、そんなんじゃないけれど! ぜ、全然そんな事ないけれどっ!! ……ラサの料理は……覚えたいなって……だって親愛なるラサの料理、だもの……っ!」
 早口でまくしたてる彼女の様子を見て、言葉を重ねて問いかける無粋者はこの場にはいなかった。
 そんな慌て方をする彼女は彼女で楽しそうだ、と思えば……まあ、いいのではなかろうか。

 余談であるが、行人が店主に用意させた『誰かのための』コシャリの皿は、彼らが退店する頃には誰知らず空っぽになっていたという。

成否

成功

MVP

天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に

状態異常

なし

あとがき

 大変お待たせいたしました。
 異国の料理、いいものですね。楽しんでいただけたなら何よりです。

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