シナリオ詳細
奇跡の塔3F:傲慢なる悪魔王
オープニング
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天義某所。
地平線の彼方まで広がる草原の中央に、白い巨塔『奇跡の塔』が聳え立つ。
現状、ハルトヴィン・ケントニスという名の初老の男性主導で、この塔の調査が進められている。
大罪の魔種が残したとされるこの大罪の塔の頂上には、一体何があるのだろうか……。
依頼を受け、奇跡の塔までやってきたイレギュラーズ達。
「いらっしゃい。よく来たね」
ここのところ、この塔に作った休憩室で寝泊まりすることも多いハルトヴィンが迎え入れてくれたメンバーは8人。
まず、ハルトヴィンの助手であるユーリエ・シュトラール(p3p001160)。
彼女は自分の店や別のローレットの依頼と忙しなく動きながらも、折を見て塔に足を運んで調査を行っていた。
状況もあってユーリエは常に傍にいるとはいかないが、ハルトヴィンにとってはなかなか有能な助手らしく、調査の助けとなっているようである。
そして、調査依頼においては常連のリゲル=アークライト(p3p000442)、ポテト=アークライト(p3p000294)夫妻。
ユーリエにとって大切な存在であるエリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ (p3p000711)、仲間であるミラーカ・マギノ (p3p005124)も常連参加となっている。
「今回もよろしくねぇ」
また、前回から、アーリア・スピリッツ(p3p004400)が引き続いての参加。
「天義にこのような塔があったのですね」
「大罪の塔の調査……全力で当たらないとね」
パーシャ・トラフキン (p3p006384)、メルナ (p3p002292)の2人が初めて、この塔へとやってきた形だ。
特に、ハルトヴィンはその2人へとこれまでの経緯を説明しつつ、現状についてイレギュラーズ達へと語る。
「ユーリエ君の持っていた水晶玉が鍵となっていることが分かってから、調査は飛躍的に進むようになってね」
主に、フロア外壁の内側や螺旋階段に刻まれた幾何学模様、文字などの解読を進め、次フロアの対策とするという構図が見えてきている。
調査は現状、3階フロアに踏み込もうというところまで進んでいた。
その調査を進めていたハルトヴィン、ユーリエの2人が水晶玉を使って得た情報はこうだ。
「『傲慢で悪魔な皇帝とそれに平伏する人々。そして、憎まれる勇者の存在……』といったところだね」
前回に比べれば、情報量はさほど多くはなく、これが何を指しているのかを読み取ることは少し難しい。
「解読可能な場所は全て読んだと思うのだけれどね。今回は単純な力を示す場なのかも知れない」
ユーリエが口にしたのは、おそらくは次に待ち構える相手――【傲慢なる悪魔王】プライドデビルキングの名前。
そいつは、自らの力の及ぶ限りの領土を支配し、民衆や魔物を全て屈服させたとされている。
これがかつて混沌の地で起こったことなのか、別世界で起こったことなのか、それすらもわからない。まだまだ調査が必要なところだろう。
「ともあれ、これから先に進むには、この傲慢なる悪魔王を討伐せねばならない」
戦う力を持たないハルトヴィンは、イレギュラーズ達に頼らざるを得ず、階段から上階の様子を見守る態勢に入る。
彼の依頼を改めて直接受け、メンバー達は螺旋階段を上り、3階フロアへと至った。
そこに待ち受けていたのは、解読したのと全く同じ構図。多数の民衆と眷属を平伏させた曲を持つ悪魔の王だった。
「我こそが傲慢なる悪魔王、プライドデビルキングぞ……!」
睨みつけてくるそいつは明らかに魔物の如き風貌をしていた。
イレギュラーズ達がフロアに踏み込むと民衆や眷属達の姿は消え、悪魔王と6体の眷属を残すのみとなる。
首を垂れていた眷属達は立ち上がり、手にした三又の槍をこちらへと差し向けてきた。
「来い。貴様らも我の手で屈服させてやろうぞ……!」
悪魔王は強者の風を巻き起こし、力ずくで平伏させようとしてくるのである……。
- 奇跡の塔3F:傲慢なる悪魔王完了
- GM名なちゅい
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年04月14日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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天義、何もない草原に聳え立つ奇跡の塔にやってきたイレギュラーズ一行。
『青の十六夜』メルナ(p3p002292)は塔の上方を仰いで。
「本当に不思議な場所だねー……」
「この先も中々荷が重そうだけど、最上階に何があるのか知りたいわぁ」
「頂点、どうせなら何か良いものがあるといいんだけどっ」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)の一言を受け、メルナはわくわくしながら言葉を返す。
1階は入り口、2階は憤怒の天使。そして、3階は……。
「今度は純粋に戦闘みたいね」
「今まで同様、ここでしかないギミックがありそうだ。油断せずに行こう!」
『夜天の光』ミラーカ・マギノ(p3p005124) の一言を受け、『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)が意気揚々と仲間達へと呼び掛ける。
「壁や石板に書かれた文字を解読したところによると……」
塔に籠って研究を続けるハルトヴィンがその存在をメンバー達へと示す。
「傲慢の悪魔王……」
「それに、その取り巻きか……」
アーリアの言葉を、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)が補足した。
「今度は傲慢。どんどん変わっていきますね」
「皆さんとなら絶対にあの傲慢の王様を倒せる……いや、倒さなくてはなりません!」
『愛欲の吸血鬼』エリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ(p3p000711)の存在を強く感じながら、『慈愛の英雄』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)は吸血鬼化する。
「いま一度、私に力を貸してください!」
頷き合うメンバー達。エリザベートはユーリエの頭を撫で、リラックスさせていたのだった。
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ハルトヴィンを階段に残し、イレギュラーズ一行は3階フロアへと足を踏み入れる。
そこには、傅く民衆と眷属である翼持つ悪魔達。そして、中央には玉座に腰かけた傲慢の悪魔王の姿があった。
「まず、敵の動きを封じなければ!」
逸るユーリエを、エリザベートが制すると民衆の姿が消え、悪魔王と6体の眷属のみが残る。
「眷属の形状に関しては、自身の世界での眷属に類するものを感じるのです」
エリザベートが眷属へと注目したのに対し、他メンバー達は威厳漂わせる悪魔王へと視線を注ぐ。
「我こそが傲慢なる悪魔王、プライドデビルキングぞ……!」
大柄な6枚羽の悪魔を前に、『召剣士』パーシャ・トラフキン(p3p006384)は背筋に寒気を駆け巡らせ、畏怖を抱いて手足を震わせる。
「悪魔王……魔種が残していったあなたは、ここに居るだけで罪なのでしょうか。とても、哀しい人……」
眉を動かした悪魔王は指を上げ、眷属達を差し向けてくる。
「此処に踏み入ってしまった事は謝ります」
「消えろ。我のたてつく者など必要ない」
謝罪を口にしたパーシャだが、悪魔王がそれで容赦するはずもない。
「……でも、あなたがいることで、きっと世界によくない事が起きてしまう──だから私は、戦います!」
パーシャは悪魔王の命令に背き、毅然と立ちはだかる。
「先を見る為にも、必ず勝って上へ進まなくっちゃだね!」
メルナは頂上を見る為、そして、あんな傲慢な相手に屈するものかと大剣を手にする。
「あいにく私、傲慢な男性は好みじゃないし――負けないわよぉ!」
「いいわ、あたし達を力でねじ伏せようって傲慢を、あたしの傲慢でねじ伏せてやるわ!」
アーリアもミラーカも、逆に傲慢ちきな相手を跪かせる気満々だ。
「悪魔王よ。全ての者を屈服できると思うなよ。その傲慢な思い込みを、叩き斬る!」
「リゲル。背中は私が守るから、悪魔王の抑えは頼んだ」
刃と盾を手にし、朗々とした声で傲慢なる悪魔王に戦線布告するリゲル。そして、その妻ポテトが彼の支えとなる。
「皆が取り巻きを倒すまで頑張ろう!」
「父上、お力をお貸しください!」
ポテトの声を頷いたリゲルは、騎士盾シリウスに願う。
そして、頼もしい仲間に囲まれたパーシャは虚空に呼びかけて。
「私の呼びかけに応えて! 召剣──ウルサ・マヨル!」
姿を現した双星剣を、パーシャは握りしめる。
エリザベートもまた2つの聖杯を出現させ、それらから滴る血を操りながら告げる。
「【愛欲の吸血鬼】が【傲慢の悪魔王】ごときに負けるはずがないしょう?」
――だって、ユーリエと私の愛は絶対なのですから。
エリザベートの愛を再確認したユーリエは思わず顔が綻びそうになるが、今は。
「不遜なる輩は万死に値する……!」
赤い瞳をぎらつかせ、悪魔王はゆっくりと立ち上がるのだった。
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悪魔王が発してくる一陣の風は、敵対する者の動きを身を竦ませてしまう。
その間に、コウモリの翼を羽ばたかせた眷属が三又の槍を突き付けてくるのだ。
眷属の一部が悪魔王を守るように動かないのをリゲルは見て。
「闇ある所に光あり! 力で民衆を蹂躙しようとする悪魔王よ!」
眷属らが王を庇うつもりだと考え、リゲルは名乗りを上げて引きはがしに当たる。
「御伽噺では、魔王は勇者に倒されると決まっている! ここに集いし者達は皆勇者だ! 観念するがいい!」
リゲルは自らのギフトの力で神々しく指輪を輝かせて勝利宣言した。
それに、悪魔王が歯ぎしりして。
「よかろう。我を愚弄するとはいい度胸だ」
相手のヘイトを稼いだリゲルはダメージ覚悟で抑えに当たっていく。
彼の後ろにいたポテトは、調和の力と言霊にも似た号令を使い分けて夫を支える。
他のメンバーは取り巻きである眷属撃破を優先するのだが。
「まずは周りの悪魔ちゃん達を片付けたいけど……」
適度に悪魔王から距離を取るアーリアは、敵の放つ波動によって恍惚状態となるのを避けつつ、一度だけその王を狙う。
「当たれば抵抗出来ない罠に溺れてねぇ」
瞬きによって変色した黄金色の瞳でアーリアは悪魔王を見つめる
僅かに敵が顔を顰めたの確認し、アーリアもまた眷属の殲滅へと動く。
「闇に溺れ……沈め! ガーンデーヴァ!」
取り巻きを半数程度巻き込めるよう位置取ったユーリエ。
精神を統一した彼女は剣を弓に見立て、刀身から溢れ出る紅い魔力を矢として眷属達へと射放っていく。
その眷属達が好き勝手に暴れてリゲルを含め、槍や悪意の塊でメンバーを傷つけてくる。
エリザベートはユーリエより少し手前で回復メインに立ち回り、自らの血から眷属を呼び寄せて仲間の癒しに当たっていた。
パーシャも回復に立ち回る心積もりだが、現状、ポテトやエリザベートの回復が間に合っていることもあって攻撃に出る。
「遥か北に輝く奇跡の剣よ、今此処に──召剣、セプテントリオン!」
彼女が召喚した七星剣は眷属へと切りかかり、貫き、どす黒い体液を飛ばす。
効率的に取り巻きの数を減らすべく、メルナは霊樹の大剣に煌めく光を宿らせて。
(大丈夫、大丈夫……)
ギフトにより自己暗示をかけたメルナは、勇猛果敢・不撓不屈の精神を自らに宿す。
そうして、彼女は巨大な光刃として地を走らせ、2体の眷属を切り裂いていった。
続けざまに光刃に切り裂かれた眷属を、ミラーカが狙う。
自らのスキルが最大限に生かせるよう、外壁近くまで下がっていた彼女は大量の魔力を全身の血に巡らせる。
「不遜上等、一気に行くわよ!」
吸血鬼としての血を覚醒させたミラーカはハイテンションになり、全ての力を魔力へと変換して砲撃を飛ばす。
手前の眷属が魔力に穿たれて苦しむ後ろ、悪魔王の身体をもミラーカの魔砲は傷つけた。
「貴様ら、ただでは済まさんぞ……!」
再び瞳をぎらつかせた敵は近場のリゲルやポテトへと、闇の波動を浴びせかけていくのである。
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闇の波動は一度浴びれば、大きな隙を生んでしまう。
「一人でも欠けては戦線が傾く」
銀閃の煌めきを纏い、断罪の斬刃を刻み込むリゲルは敵の怒りを買い、自らに攻撃を引き付けようとする。
しかしながら、肉弾戦で攻めてくる悪魔王の攻撃は生半可な威力ではなく、リゲルも表情を歪ませていた。
――騎士の矜持に懸けて、最後まで。
「これが神の試練であるならば猶更だ!」
歯を食いしばるリゲルの後ろには、ずっとポテトが控えていて。
「リゲルのことは必ず支えてみせる!」
彼を癒し、護るという誓いを遂行する為、ポテトは悪魔王や眷属の攻撃に注意して防御態勢を取りながら、調和の力を癒しに転化して人生のパートナーへと振舞っていく。
(パーシャもエリザベートも、普段はヒーラーメインではないから大変だと思うが……)
時にポテトは仲間にも気をかける。取り巻きさえ倒せれば、皆の負担は軽減されるはずだ。
そのエリザベートだが、複数の敵を捉えたタイミングに一旦回復の手を止めていた。
自らの血を剣尻の付いた鎖と化し、彼女は眷属達を四方から傷つけていく。
「ユーリエ」
「うん……!」
エリザベートの呼びかけに応じ、ユーリエがリゲルを巻き込まぬように、かつ攻撃を重ねるように神聖なる光を浴びせかけると、眷属2体がその場で消し飛んでしまった。
ここから、一気にイレギュラーズ達は眷属の数を減らす。
攻撃集中するメルナは残る敵を多く捉えるよう位置取り、再び巨大な光刃を走らせ、手前の眷属を切り裂いてしまう。
パーシャはその後、回復に動いており、ダメージ重なる仲間へと治癒魔術によって癒しをもたらしていく。
唸るような雷撃を発して眷属の相手をしていたアーリアがそのパーシャへと傷つく眷属が近づくのを確認して。
「だめよぉ、女の子には優しくしなきゃ!」
すかさず、アーリアは手のひらを広げて衝撃波を発射すると、吹っ飛ばされた眷属は爆ぜ飛ぶようにして消えていった。
なお、アーリアの雷撃で痺れていた敵2体をミラーカが捉えて。
「いい位置ね」
彼女は自らの気力など気にすることなく、全力で魔砲を発して眷属2体を撃ち抜いて仕留めてしまった。
「うぬう……!」
あっさりと眷属を倒され、悪魔王も侵入者達の力を認めざるを得ないが、持ち前のプライドがそれを許さない。
「知るが良い、悪魔王の力を……!」
怒りを覚える敵は思った以上すぐ冷静さを取り戻し、強大な力を行使する。
ただ、その力は序盤からリゲルへと向けられ続けており、彼の足元、周囲の地面を光り輝かせる。
「ゼロブレイク……」
そこで、階段にいたハルトヴィンが壁画として情報にあったと叫ぶ。
力を溜めた悪魔王は、光る地面の上にいる者へ高出力の威力攻撃を行うとのこと。
今回のギミックは戦わずして知れていたというわけだ。
水晶玉で何か玉座から情報が得られないかと考えていたユーリエもハッとしたように思い出して。
「先生、助かります!」
思わぬところからの支援に感謝し、積極的にその範囲内へと入っていくユーリエにエリザベートも続く。
人数が多い程ダメージは分散される為、体力を温存するメルナ、アーリア、パーシャ、ミラーカが近づいてくる。
リゲルとしては常に後ろへといてくれるポテトを巻き込むことに心苦しさを覚えるが、この場は共に戦場に立つ戦友としてその力を信じる。
「ゼロブレイク……!」
次の瞬間、光の真上にいた全メンバーを閃光が包む。
かなりの衝撃が皆の身体へと走りはするが、8人全員で受けることで1人当たりのダメージは大きく軽減することができた。
「ぬう……」
すでに自らの技を見切られている事実に、驚く悪魔王。
その隙に、丁度集まってきた仲間の為にとポテトやミラーカは天使の歌を響かせ、すぐに散開していく。
一部、エリザベートもユーリエの傷を気にかけて治癒魔術を施して態勢を立て直していたが、見事なチームワークに悪魔王は辟易としていたようだった。
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残るは傲慢の悪魔王ただ1人。
巨躯の悪魔は己の肉体をイレギュラーズ達へとぶつけてくる。
「ぬううううん!!」
自ら1人となれば、6枚の翼を広げる悪魔王は機動力を生かし、リゲルだけでなく各メンバーへと襲い掛かろうとしていた。
戦場を動き回る敵に狙いを定めさせるのが難しいが、互い知ったる仲であるイレギュラーズ達はチームワークで力の差をカバーする。
立ち位置がバラバラなイレギュラーズ達の中で、遠距離から攻撃するメンバーにとっては多少移動しようが関係なく。
「ナイトメアバレットで更なる苦しみをどうぞぉ」
アーリアは呪われた魔弾で悪魔王を撃ち抜き、蜜の毒に加えて悪魔王を異常で苛む。
多少抵抗力が高くとも、アーリアの攻撃によって悪魔王は苦しめられることとなる。
そこでミラーカが後詰めしようとするのだが、一撃当たりの魔力の消費が大きいことを実感して。
「全く、吸血鬼モードは燃費が悪いんだから!」
スキルで持っていかれる気力が大きいと自身に憤慨するミラーカ。
「でも、魔女でもあるのがあたしよ!」
すぐに魔力を充填させることのできる彼女は、すぐに力を取り戻して悪魔王目がけて破滅的威力の魔砲を放射していく。
彼女はさらに、消耗の大きい仲間へと魔力を分け与えてもいたようだ。
仲間の攻撃で動きが止まれば、メルナがすかさず意志抵抗力を破壊力に転化し、霊樹の大剣で叩き切っていく。
「王たる我に敗北はない……!」
自らのプライドを見せつける悪魔王はメンバー達を大きく吹き飛ばし、さらに自らの防御を高めていく。
だが、罪が傲慢である3人には通用しない。
「私の中にも、傲慢な気持ちが欠片でも……!? 信じたくはないですが……!」
「あたしには通じないわ!」
戸惑うユーリエに対し、胸を張るミラーカ。
「思いあがるな、人間……!」
拳を振り上げる悪魔王目がけ、
ミラーカの言葉を耳にし、悪魔王は彼女の方へと移動していく。
「好都合ね」
メルナがカバーに回ってこようとするのだが、それでも近距離戦は避けられないミラーカだ。
強化状態が解けているとまずいと感じたミラーカは再び吸血鬼としての血を覚醒させ、至近距離から魔砲を発射するが、防御態勢を取る悪魔王にはほとんど効果がない様子。
「お、思ったよりやるじゃない……! でも、すぐに畳み掛けてあげるんだから!」
拳を振り上げてくる悪魔王の前へとメルナが出て。
「向こうの守りも堅くなるみたいだし、体勢を立て直すのが先決だもんね……!」
仲間達の態勢が崩れている間、メルナは戦線を持たせようとする。(……私が人を助けるのは、剣を取ってお兄ちゃんを真似るのは、それが罪滅ぼしだから)
こうすることで、メルナはいなくなった兄を感じられる。
それは思い上がりで、自分勝手。自分も傲慢なんだと彼女は再認識する。
「……だけど、その傲慢さを、誇示と支配にしか使えない貴方よりは……何倍もマシだ……っ!」
猛打を叩き込もうとしてくる敵に、ミラーカがもう1発魔砲を叩き込みつつ叫ぶ。
「魔女に近接戦闘させるんじゃないわ。あたしの射程で戦いなさいよ!」
攻撃を受ける2人を見て、ユーリエは大いなる天の使いの救済の如く。メルナの危機を払おうと動く。
このタイミング、他の5人は態勢を立て直す。
「――傲慢な貴方と違って、私達には仲間がいるもの! 負けやしないわぁ!」
声援を送るアーリア。他メンバーもしばし防御に徹しながら、態勢の立て直しに当たる。
「すぐに貴様ら全員、屈服させてやる……!」
忌々しげに呻く悪魔王が構えをとくと、パーシャ、ポテトがすぐに飛び出し、前線にいたメルナ、ミラーカの手当てへと移り、エリザベートもユーリエの傷を気にかけていた。
リゲルも再び最前線に戻ろうと悪魔王に接敵していく中、アーリアは距離を保って。
「可哀想に、傲慢な王様には癒してくれる仲間もいないのね」
煽りながら、彼女は暗黒物質を鍛えた『ラ・レーテ』を手に魔力を放出しての通常攻撃。
なおも、拳でイレギュラーズ達を屈服させようとしてくる敵を、ユーリエは血の如き赤黒い鎖で縛り付ける。
「傲慢な王様には誰も従わない! その醜悪な想いをこの鎖で断ち切る!!」
そいつ目がけ、仲間達の手当てを受けたメルナが戦乙女の加護をその身に纏って。
「ラ・ピュセル!」
メルナの一撃が悪魔王の胸部を深く切り裂いた。
「な、んだ、と……!?」
後ずさりする悪魔王は自らの敗北を受け入れることなく、地面に落ちる前に姿を消していった。
「傲慢は油断を誘い、視野を狭めてしまう」
いつ如何なる時も自分を律したいものだと、リゲルは自らを戒めるのである。
●
傲慢の悪魔王が倒れたことで、フロアの構造が変化していく。
2階と同様、中央に石碑が。そして、外壁に沿うように床がせり上がり、さらなる上層へと向かう階段が現れる。
「さよならです。傲慢なる王様」
パーシャはその石碑の前へと進み出て、最後までプライドを捨てなかった王へと告げた。
その石碑にミラーカが近づいて色々と調べる中、ポテトがふうと息をついて。
「予想通り、中々厄介な敵だったな」
「激しい戦いだったが、勝てると信じていたよ」
リゲルは嫁の言葉を受けて、仲間達全員へと呼び掛けてから頭上を見上げた。
まだ、上層がある。
この先何が待ち受けているのか、リゲルも仲間達も胸を躍らせる。
「皆、お疲れ様。落ち着いたら下においで」
そこで階段から顔を出すハルトヴィンは、休憩所で飲み物を振舞ってくれるそうだ。
そんな先生の行為に甘えようと、ユーリエはエリザベートと共に階下へと降りていくのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは悪魔王にとどめを刺したあなたへ。
今回はリクエスト並びにご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
今回はリクエストシナリオのご依頼、ありがとうございます。
●目標
【傲慢の悪魔王】プライドデビルキングの討伐
●敵
○【傲慢の悪魔王】プライドデビルキング
身長2.5m程度、6枚の翼に引き締まった体を持つ悪魔です。
会話自体はできますが、傲慢故に自分以外のものとの話にはほとんど応じようとはしません。
徒手空拳で攻撃を行い、以下のスキルを使用します。
・闇の波動……神中域・【恍惚】・【苦鳴】
戦場の一点から周囲に広がる闇の波動を放ちます。
・傲慢なる拳……物近単・追撃50・物攻+
己の力で全てをねじ伏せようとしてきます。
・強者の風……物自域・【崩れ】・【足止】・【麻痺】
自分の中心から風を巻き起こし、相手を纏めて動きを止めようとしてきます。
・決闘のプライド……神特レ(【罰】が【傲慢】以外の者全てに効果あり)・飛・物防+・神防+(継続2ターン)
HPが減少すると、傲慢以外の相手を吹っ飛ばし、かつ、短時間だけ自らの防御を飛躍的に高めます。
・ゼロブレイク……物特レ(戦場内の敵対者1人を中心に範)・【万能】・【溜1】
足元が光り、その範囲にいる者全てにダメージを与えます。ただし、威力は一定で、人数で被ダメージは分散されます。
○眷属……悪魔×6体
身長は2m程度。背に大きなコウモリの翼、頭に2本の角、手には三又の槍を手にしております。
直接物理攻撃を行うだけでなく、悪意の塊を放つことがあります。
●状況
このシナリオは、影絵 企鵝GM『奇跡の塔1F:永遠の命』、拙作SS『奇跡の塔1.5F』『奇跡の塔2F』2作の続編に当たります。
戦場は塔の3層フロア内で戦闘を行います。
半径がおよそ40mあり、どこかの城の内装……玉座の間を思わせます。
フロアに入ってすぐ、悪魔王に民衆や眷属達が平伏している姿が確認でき、一部を除く眷属と民衆が消えてから戦闘に入ります。
(PL情報)
この層を攻略すると
玉座が石碑へと変化し、次の層に続く階段が出現します。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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