PandoraPartyProject

シナリオ詳細

朧に霞む極彩色

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「だるい」
 開口一番、イヨの眼前に立っていた魔種はそう言った。
 その気怠げな姿を見てからイヨは彼女は本当にアーカンシェルを壊そうとしていたのか――と考えずにはいられなかったのだ。

 時は遡り、深緑内部に存在する『社』の守手たるイヨにアンテローゼ大聖堂のフランツェル司教より「お願い」が届いた。
 曰く、社の程近くに存在するアーカンシェルを狙う魔種と魔物の出現が観測されたのだそうだ。二人の妖精の一方はフランツェルの元へ、もう一人は逸れて迷宮森林を彷徨っているのだという。位置が位置である以上、『社』にも影響があるかもしれないとイヨにも助力を乞うてきた、というわけだ。
 多発するアーカンシェル関連の事件は妖精郷アルヴィオンに何らかの怨恨があるのではと考えずにも居られないのだが……それはさておいても、『社』近くのアーカンシェルを狙った魔種はそう言った様子も見られない。
 現場に急行したイヨの前で心の底からそうする事を面倒がる様な顔をした少女が立っている。鮮やかな空色の髪とは対照的な嫌悪丸出しのその表情は愛らしい少女という評価を台無しにするものだ。
「あー……? あんた誰?」
「私はイヨ。故あって、ここでの戦闘行為を避けて欲しいんだけれど……。
 見た感じ、アーカンシェルを壊すことにそれ程、魅力を感じてなさそうだけれど」
 お帰り頂くことは、と口を開きかけたイヨに掌をひらひらと振ってから少女は「いやいや」と口を開いた。
「まあ、こっちにも事情があるんだよねー。あたしは手伝ってるだけだけどさ。どーでもいいんでしょっていわれたら、まあ、そうだけど。
 なんだっけ? あ、そうそう。故郷がねー、妖精に砂漠化されちゃうんだわ。やばくない? って訳で妖精殺すし、このアーカンシェルも邪魔なワケ」
 饒舌な少女であった。その『あからさま嘘』を聞いてイヨは思わず拍子抜けしてしまう。
 しかし、社に何らかの影響を与えかねない場所であることは明らかだ。
「あー」
「……?」
 少女が声を漏らしてからイヨを見る。その視線の意味を解らぬほどに彼女は愚鈍ではない。
「邪魔するんだったら、あんたも死なないとね」
 ほら、やっぱり。


「アーカンシェルを破壊する魔種と魔物がいるわ。倒してきて欲しいの」
 イレギュラーズ達に簡単な説明を交えたフランツェルは「私も手伝えればいいのだけれど」と肩を竦める。彼女と、その背後に控えていた精霊種――便宜上は妖精と称しよう――の少女、チオナンサスは何処か申し訳なさそうな顔を見せる。
「ストレリチアと知己になって以降、ここを頼ってくれる妖精も多いから……私が席を外すのは賢い選択ではないわ。
 彼女……チオナンサスが此処に居る以上、『他の友人』に彼女の友人の捜索を願わないといけないし」
 困ったようなフランツェルは友人の到着にはもう少し時間がかかりそうだと言い含めてから、現場への急行を促した。
 曰く、その場所は『社』と呼ばれる聖域のひとつに程近いのだそうだ。アンテローゼ大聖堂に霊樹が存在するように、その周辺にもそうしたものがあるのだろう。守り手たる巫女は聖域の内部では莫大な力を有するが、そこより出れば『魔種を一人で相手するの難しい』。
 聖域に魔種が入り込んでいないが、このままでは――という瀬戸際を巫女が一人で食い止めているそうだが、そう長くは持たないだろう。
「聖域を荒らされるわけにも行かないし、何より魔種だというなら『専門家』の対処が必要だという判断よ。
 そうだ、チオナンサス。魔種は何て言っていたの?」
「じぶんのこと『ブルーベル』ってなのっていたわ!」
「ブルーベル……以前、アーカンシェルを破壊しに現れた事のある魔種だわ。
 彼女は『黒幕』について何か知っている口ぶりだったと報告があがっていたし……」
 尚更に見過ごせないわね、とフランツェルはそう言った。
 相手がどれだけ怠惰にまみれていても魔種であることは確かだ。脅威たる彼女を退け、聖域『社』とアーカンシェルの保護を頼みたい。

GMコメント

大変だ! 助力をお願いします。

●成功条件
 ・聖域『社』の無事
 ・アーカンシェルの保護(魔種に破壊されない)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●魔種『ブルーベル』
 自称Bちゃん。ブルーベルと呼ぶと無視されます。Bって呼ばないといけないそうです。
 常にダルそうな少女。『故郷が砂漠にされるんだ』と口にしますがイレギュラーズの言葉を面白がって使用しているようです。性格的には交流しやすいタイプなのでしょうが、端的に言えば性格もお口も悪い女の子です。
 愛らしい外見をしていますがそれなりの強敵、脅威です。何よりも彼女は訳知りのようです。また、死にたくないようなのである程度で撤退します。

●魔物*6
 ブルーベルが連れている魔物です。「おっさんからもらった」そうです。
 獣の融合したキメラ体が3体と人工精霊と称される美しいクリスタルの魔物が3体。

 - キメラ
 前衛タイプ。攻撃力が高く、タフネスに優れますが行動が遅いです。
 その攻撃力にプラスして必殺性能を有することで獲物をしとめるために使われるようです。

 -  人工精霊
 後衛タイプ。回復や攻撃など便利に使用されますが、それなりに装甲は薄いです。
 BS回復に優れる一方で、BS付与なども行うことが出来るため『便利』性能に調整されてるようです。

●イヨ
 飛行種の少女。聖域『社』の巫女。聖域内部では聖域の加護で莫大な魔力を使用しての攻撃を行えます(現在は外なので使用できません)
 後衛タイプ、一般的な攻撃・支援の魔術を行えます。また、自然と融和し自然を利用する魔術にも長けます。一人でブルーベルを相手にしていたため、現在は負傷しているようです。

●聖域『社』
 社と呼ばれる建築物です。その場所はある旅人が誂えたものであるらしく、非常に和風の建築物ですが『ファルカウの魔術的な保護』で一般的には見ることが出来ません。
 イレギュラーズまたは力量の強いものには見ることが出来ますがブルーベルに見えているかは定かではないようです。
「とんでもないもの」が眠っているようですがそれについてはイヨもフランツェルも口にしようとはしません。

 どうぞ、よろしくおねがいします。

  • 朧に霞む極彩色完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年04月11日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
武器商人(p3p001107)
闇之雲
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
スー・リソライト(p3p006924)
猫のワルツ
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ


 彼女、いったいどういうつもりなのかしらと『儚花姫』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は困り顔で言った。社へと急行する中で、ヴァイスが疑問視したのは『B』と自称する魔種がモンスターを伴ってアーカンシェルを破壊して回っているという話だ。
「ブルーベルさん……いえ、Bさんと呼ばないと機嫌を損ねてしまうのだったかしら。
 面白半分でやるには相当……危険な行いよねぇ。……でも、お話しで止まるような人じゃないのよね。困ったわ」
「どんな事情があれど『魔種を殺す』事には違いはないが。
 B自体が誰かに手引きされてるならその後ろに存在する奴を表舞台に引き摺り出さねぇとな」
 ブルーベルが何を考え、どのように行動しているか――その答えがあるとするならば、彼女の背後に存在する何者かによるものだろうと『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)はそう呟いた。無論、魔種である以上はこの世界の敵であり情けをかけるべきではないことを彼は承知しているのである。
「救援に行け――か。勘違いするなよ! 俺は別に妖精なんてどうでも良いんだからな」
『本当は心配してるくせに……』
 口先では冷たい態度をとるが、このまま見過ごせばアーカンシェルが破壊され『深緑の重要な地』である社にも被害が及ぶとなれば『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)も見過ごせない。口は稔が使うが、心中ではどこか困った雰囲気の虚は社が程近いことを感じた。
『……魔種がいるのか。嫌な気配が凄くする……』
 虚が油断大敵だと稔に信号を送れば「分かってる」と返答が戻るだけだ。眼前の聖域は和風な建造物が立ち並び、異空間に迷い込んだかのような錯覚を思わせた。緑のロングヘア―を揺らし、汚れた翼の少女の前で懸命に戦う飛行種の少女をその双眸に映してから『猫のワルツ』スー・リソライト(p3p006924)は「イヨちゃん!」と叫ぶ。
「助けに来たよーっ! イヨちゃんも、『社』も、ついでにアーカンシェルも守ってみせるからね!
 故郷が妖精さんに砂漠化されちゃうなんて大変だけど、それとこれは別問題なんだから!」
 びしり、と指さしたスーを見て、魔種――ブルーベルは眼前の少女イヨとスーを見比べてから「あー」と唸る。
「……友達?」
「そう、だけど……」
 どうにも『対話をしてくる』魔種なのである。拍子抜けしたかのようなイヨの雰囲気にジェイクも奇妙な違和感を感じた。
(『やる気がない』と言うよりも、『興味がない』? ……寧ろ、Bにとっては暇つぶし扱いでもされているのか?)
 彼の視線を受けてからブルーベルはへらりと笑う。イレギュラーズの来訪は彼女にとっても『話し相手が増えた』程度の認識なのだろう。
「あんま見つめないでよね。穴あくじゃん。あー、それからさ、別に、砂漠化されるのはウソウソ」
「……えっ、嘘なのっ? 良かった、砂漠になっちゃう故郷は無かったんだね……! それなら何か別の、海よりふか~い事情があるんだろうけど、それでもここのアーカンシェルは壊させないよ!」
「……あ、うん、そうそう! 海よりふか~い事情がある!」
 ――なさそうである。その様子に『新米の稲荷様』長月・イナリ(p3p008096)は不思議だと瞬き、ブルーベルと相対する。
「それでも、ここが神社なら、神の領域、稲荷神の(お使いの)1匹として、その暴虐を許すわけにはいかないわね!」
「まあ、どっちにしたって、ソチラも海よりふか~い事情があるんでしょ。そいじゃ、ちょっと付き合ってよ」
 にい、と笑ったブルーベル。その視界からジェイクを隠すように銀の髪を揺らして『闇之雲』武器商人(p3p001107)が滑り込む。ダメージディーラーたるジェイクを主軸にするならば耐久性には自信のある武器商人が『壁』として対話するのが理に適う。
「やァ、話には聞いているさ、Bの方。少し我(アタシ)達と井戸端会議でも?」
「あらやだ、奥さんとか言えばいい? いーよ。『遊ぼ』」
 にい、と唇が吊り上がる。億劫なブルーベルの背後より飛びついてきた二種の魔物は皆、ブルーベルを守るように立ちはだかった。


「さて、イヨといったか。一人でよく頑張ったな。あとはこちらでも何とかなるだろう。少し後ろで手当てされてろ」
『天戒の楔』フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)はイヨを後方へと向け、稔と虚のもとへと誘う。ぐるると喉を鳴らすキメラに緩く揺れる人工精霊を見ればフレイは面倒だという思いがこみ上げ続ける。
「まぁ、見てわかる通り人為的に生み出されたものだろうな。あれを魔種は統率できるのか。
 どういう仕組みなのだろうな。動物に通じる者、精霊に通じる者ならばあるいは声が聞こえるのかもしれんが……」
「植物たちも怯えている。異質な存在なのは確かなのかもしれないね」
 紋章術と呼ばれる魔法によって魂に刻まれた魔法陣。魔力を巡らせ、淡く光ったそれが『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)の魔術の顕現の証左だ。その一撃と共に、イナリが放つは甘い香り。異能の神をその身に宿し、妖しき瘴気を漂わせれば前線で唸るキメラの心身を混濁させ続ける。しかして、イナリはその反動をその身に感じ、唇を噛み締める。
「魔種の子は……ブルーギル? ブルーベリー? ブルーレット?」
「トイレか」
「……えーと、ブルーベル! 略してBちゃん!」
 イナリは饒舌に話してくる彼女が『イレギュラーズの介入を全て魔物に任せている事』に気付く。
 それはこちらの出方を見ていたのかもしれない。魔物を先に対処するならば、ブルーベルのそうした雰囲気は好都合だ。『まだやる気を出してない』ようにも見える彼女へと武器商人は緩やかに笑みを浮かべる。
 棘で縛った翼と首に片足についた丸い飾りの付いた鎖のアンクレット。それはさながら奴隷か虜囚か。あまりに浮世離れした彼女の姿に「その髪型はかわいいね。アシメントリーはおしゃれかなァ、違うのかな」と笑みを零す。
「あー、これ? これさ、『切られた』」
 からりと笑ったブルーベルに武器商人はおや、と小さく答えた後に「あァ」と小さく声を漏らした。
「妖精は可愛いものね、綺麗なおべべを着れるものね、虐げられそうにないものね、助けを呼べば助けてもらえるものね……諦めなくったっていいんだものねぇ」
「分かってんじゃん。あたしらは魔種だよ。『何かを諦めてきたんだ』。
 諦めなくて済むってご立派。力があるってサイコーじゃん? 何も無かったら? ハッ、『馬鹿にするならガキだって出来んだよ』」
 ブルーベルが冗談交じりに言ったそれに本音が混じっている事をスーは感じ取る。治癒の魔法を受けて、魔物との戦線に復帰していたイヨは痛ましいと唇を噛み締めた。
「まァ、我(アタシ)はどちらかといえば妖精(りんじん)たちの方が親しみがあるからとりあえず邪魔はするけど」
「潔いーじゃん」
 にい、と笑ったブルーベルの傍よりキメラが躍り出る。フレイはそれらすべてを惹きつけるように「さあ、来いよ」と声を張った。堂々たる城壁たるその姿、フレイは魔物を早めに討伐し、魔種の相手をしたいと『会話を楽しむブルーベル』をちらりと見遣る。
(嗚呼やっていれば普通の少女だが、油断は大敵だな。いくら数で勝ろうとも、魔種は脅威なのだから)


 キメラを惹きつけ続けるフレイの背後よりウィリアムとイナリは人工精霊を狙う。その姿は透明な小さな妖精を思わせるが、人為的細工が施された翼は歪そのものだ。
「あのキメラ、よく出来ていたね。君が作ったの?」
 ジェイクと武器商人が『惹きつけている』ブルーベルに向けて、そう言ったウィリアム。喉を鳴らし爪を立て、フレイに襲い掛かり続けるそれは何処までも苛烈そのものだ。
「違う違う」
「違うの? そう……妖精に用があるのってもしかしてBちゃんじゃなくてその人かな。面倒が嫌そうな君を動かすなんて、偉い人なんだねぇ」
「アハハ、オッサンは別に偉くないかもね。手伝ってやってるだけだし」
 ウィリアムはやけに対話に対しては楽し気なのだと感じていた。惹きつけるためにジェイクと武器商人が攻撃を放ったそれにはイマイチ良い顔はしなかったが意図を分かっているのか、彼女は怒り狂う事もない。ブルーベルへは最低限に抑え、周辺の掃討を中心にし、彼女とは『対話する』と言うのは最も効率の良い『ブルーベルの攻略方法』であるのかもしれない。
 ブルーベルの攻撃を受け続ける武器商人に癒しを送りながら稔は徐々に積もる苛立ちを隠せずにいた。虚は『ああこうなったか』とでも思っただろうか。
「おい、そこのブス。貴様いい加減にしろよ。確かに奴らは道に迷うわ他人の菓子をせびるわで迷惑この上ない存在だ。
 だが、だからといってお前に殺される道理はない。か弱い者達を殺したところで一体何になるというのか。その愚かで醜悪な考えを改めなければ、お前はいつまで経っても救われないままだぞ!」
「――今、カチンと来たけど、ははん、アレだろ。お前、誰にでもそうだろ」
 稔の言葉にブルーベルはひらひらと手を振って見せる。「『狡く狙われたくなけりゃ』口には気をつけなよ。まあ、これに関してはお互い様だけどな」と、まるで自身の口撃も酷いものであるという事を認識したような言い草はキメラの唸り声に掻き消される。
 出来る限りの早期攻略を目指すため、ウィリアムの荒れ狂う雷撃が降り注ぎ、スーは精霊を惹きつけるようにぐんと前へ前へと躍り出る。
「こっちだよ!」
 激しい舞踏による精神的高揚感を隠せぬままにスーは、イヨと共に『神楽(おど)って』見せる。癒しできる限りの継戦をしようとせんところが『人工物』ということかとイヨが呟けばスーは「む」と小さく唸った。
「ふふふ、じゃあ、お揃いだね? 相手にした時の鬱陶しさと諦めの悪さには自信があるんだから!」
 胸を張ったスーの踊りが続いていく。ヴァイスは敵を相手取りながらふと、じわじわと『適当な』攻撃を続けるブルーベルに向き直った。
 ブルーベルとは有益な会話ができれば僥倖だとヴァイスは考えていた。彼女自身は「嫌だ」や「気分」だと取り留めない事ばかりを告げている。彼女の気分屋なところを利用するならば彼女の興味を引けばいい――ならば。
「この間ぶりね、Bさん。この間の彼の科白、そんなに面白かったかしら?」
「まあ、気に入ったかな?」
 何となく、そういえば同情してくれそうだしとBの視線はちらりとスーへと向いていた。ヴァイスはふと、「貴女は魔種(デモニア)なのよね?」と首を傾ぐ。
「なら、Bさんは一体何に属する魔種なのかしら? 雰囲気は――」
「怠惰。どーみても、そうっしょ」
 へらりと笑ったブルーベルにやけに饒舌な彼女は「まあ、色々お話ししてってもいいかもね」と首を傾いだ彼女にジェイクは「そうか」と淡々と返す。
「故郷が妖精に砂漠化される? 面白え。一度は見てみたいもんだ。
 てか、アーカンシェル破壊を頼んだ奴は誰だよ? 教えてくれたらお前を殺すのは後回しにしてもいい」
「態度が悪い」
「―――ふ、」
 ブルーベルが「おげえ」と言いたげな顔でそう言ったそれに思わず武器商人が笑みを零した。どこからどう見ても一番に態度が悪いのはブルーベルなのであるが、彼女は『誰に対しても口が悪い上に饒舌』なのだろう。ジェイクはどこか拍子抜けしながらもブルーベルをじっくりと見遣った。
「じゃあ、『魔種のお前にお願い』すればいいのか?」
「お願いなら悪い気はしないな! オッサンがしろってさ。『主様』が手伝ってやれって言わなかったら……いいのになあ……あーあ……」
 軽口を交わらせ、そして対話を引き出すことが彼女との『効率の良い付き合い方』なのだろう。ジェイクが僅か、辟易した仕草を見せたのに武器商人は笑う。
 ジェイクがブルーベルに取ったのは彼女を出来る限り怒らせ情報を引き出す事、そして、その視線を釘付けにすることだったのだろう。イマイチ『怠惰』たる彼女からは破棄は感じられないが、苛立ちが積もっている事はジェイクは確かに感じていた。
「まあ、お前の都合はどうでもいいし、俺はお前に興味がない。魔種は俺達が生きていく上での害虫でしかないからな。お前が妖精を殺すように俺達はお前を殺す。それだけだ」
「ふーん、そ」
 ブルーベルの頬を掠めたのは飢えた獣が如き弾丸であった。頬より垂れた血を拭いブルーベルのその鮮やかな瞳がジェイクを睨みつける。


「てかさ、痛いんだよね」
 一閃するように指先で空を切った。
 ブルーベルがそうした時にその翼が大仰に揺れる。茨がぐ、と食い込んでその動きを阻害したように見えたのは気のせいではないのだろう。しかし、彼女はずる賢い。武器商人が決して倒れぬ壁が如く、その体を呈しているそれに『時間稼ぎ』の間に分かったような顔をしている。
 その指先で空を切った動き、そして翼の羽搏きにジェイクの背が粟立った。何か来る、と危機を感じて引き金を一気に引く。
 その弾丸がブルーベルを掠めたが、その後、武器商人の体が揺らいだのは見間違いではないのだろう。煽られたことで聊か火がついたのかブルーベルは先ほどまではなかった『攻撃態勢』を取り、武器商人とジェイクを狙い続ける。
 出来る限りの早期決着を望んだ彼らは魔物を打倒し、全員でブルーベルへと向き直る。フレイの脳裏に過ったのは『魔種は八人のイレギュラーズと同等以上の存在だ』と言う言葉だった。
 武器商人が感じたのは魔種の狂気そのものだ。「本気を出してはないのかい?」と小さく笑った彼のその声にブルーベルは「どうかな」と楽し気に笑い続ける。
「ま、あたしに痛い思いした奴に一撃噛ませば今日は満足だよ。
 面白くなかったら殺そうかと思ったんだけどさ、いーじゃん。面白いじゃん。
 好きだよ、面白れー奴ら。イヨ、だっけ? あんたはちょっと真面目過ぎたね」
「なっ……」
 身構えるイヨを庇う様にスーがブルーベルを見遣る。そんな短絡的な理由で人を殺すというのか、と。ブルーベルは「イレギュラーズに免じたよ」とひらりと手を振った。
「……『アーカンシェル』が此処にあったから、ここに来たのか?」
 確かめるフレイの声音にブルーベルは緩く頷いた。それ以外に何も理由もないという様に。魔種に在り来たりな破壊衝動と、それから短絡的なまでの『気まぐれ』で彼女は行動しているのだろうか。
 ジェイクに向けて攻撃を重ねていたブルーベルのその腕を掴んだ武器商人は「我(アタシ)を忘れるなんて釣れないネェ」と小さく笑う。ぱ、とその腕を祓ったブルーベルはさも面白いことがあったかのように「きひひ」と笑った。
「それじゃ、面白くって満足した手土産で教えてやろっか。
 オッサンは『タータリクス』ってんの。まあ、友達? そんな感じだけど、さ」
 詰らなさそうにそう言ったブルーベルの一撃が武器商人へと跳ね返る。その背後より顔を覗かせてジェイクは「じゃあ『主様』ってのは?」と問いかける。気怠げであったブルーベルの表情には鮮やかな微笑が浮かび上がる。
「ひ・み・つ――話、面白かったよ。ジャーネ、イレギュラーズ」
 彼女は「忘れてた」と呟き、イレギュラーズ達が守ったアーカンシェルを恨みがましく一瞥し姿を消した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ジェイク・夜乃(p3p001103)[重傷]
『幻狼』灰色狼
武器商人(p3p001107)[重傷]
闇之雲
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)[重傷]

あとがき

 お疲れさまでしたイレギュラーズ!怠惰の魔種、ブルーベル、一風変わった彼女です。
 どうやら『タータリクス』というおっさんと遊んでいるようですが。
 彼女はあくまで気の向くままのようです。
 ブルーベル、通称Bちゃんは皆さんを気に入りました。また、遊んでくださいね?

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