PandoraPartyProject

シナリオ詳細

白星に春色を

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●未だ咲かぬ花たちよ

 春を、待つ。
 今は唯、春を。

 4人の魔法使いの魔法を受けて、カタチを得た物語。アルタイルとベガの二人が創り上げていった国は、少しづつではあるけれど……民を、動物を、国を愛し、幾つかの四季を越えて倖せのかけらを集めて、春を迎えようとしていた。
 グランギニョールとは程遠い、唯あたたかな倖せを。誰もが倖せになれる物語を……──そう思っていた。
 然し。
 其処にあったのは、訪れぬ春の物語。木々に、今、芽吹かんとその花弁を分厚く膨らませた花達は色を持たずに咲くばかり。木に咲く筈の桜は薄桃を携えること無く、ただ白を滲ませて。民たちが大切に育てていたであろうプランター、その中にある花達も、ただ白く白く、色を失って。
 春が、おかしいのだ。
 元はといえばそう、欠けていた物語だから。仕方ないことなのかもしれない。けれど、ああ。だって、悔しいじゃないか。魔法使いたちが一生懸命に彩ってくれたこの物語が、幸せな儘時を経ることができないのは!
 春の色を取り戻したいのだ、と。
 そう、アルタイルは告げた。白い春も美しいのだろうけれど、目覚めた動物たちの悲しみは人々の心を揺らし、ぷっくりと膨らんだ愛らしい花弁たちは赤や黄、紫の鮮やかな色が見られないのは、心苦しい。ただ色が溢れる、素敵な春を欲しいと思うのだ。
 だから、そうだ。屹度また、魔法使いたちを頼るのが良い。魔法使いたちなら、屹度、春に色をくれるだろうから。

 ────魔法をかけよう。
 真っ直ぐで、ひたむきで、ありふれていて、ちっぽけで。
 それでいて、何よりもあたたかくて、しあわせな魔法を。

●『魔法使い』を求る
「みんなみんな、聞いて頂戴!!」
 困った様子で、ポルックスは此方へと駆けて来た。その手には1冊の本。抱えられていた本の名は『スターダスト・クロニクル』。本の中は文字と色で溢れている。嘗て魔法使い──否、イレギュラーズ達が物語を綴り、色を溢れさせ、頁を捲った物語には、確かにカタチあるひとつの物語へと生まれ変わっていた、のだが。
「この物語、覚えているかしら。……なんとか、素敵な物語になったのだけれどね?
 ……その。春がなくなってしまったらしいの」
 今は境界図書館に収められたその物語。中からヘルプコールがあったのだ、と。
「なんでも、花が全部真っ白になったらしくてね? わたしもどうしようかなぁ、って考えていたのだけれど、アルタイルやベガがいうには、色を付けるものをもってきてほしいんだって!」
 それなら、できるでしょう? とにっこり笑ったポルックス。じゃじゃーん、とその背後には色鉛筆や絵の具の数々。
「それじゃあ皆、お願いね!」

NMコメント

 あたたかくなり、少しづつ春の訪れを感じます。
 皆さんこんにちは、染と申します。
 今回は花々に色を付けていきましょう。準備は宜しいですか?
 それでは、今回の依頼内容です。

●依頼内容
 花に色を付ける。

 春に咲く花たちが色を失ってしまいました。このままでは真っ白な花で溢れかえってしまいます。
 そこで、花に色を付けましょう。

●方法
 色鉛筆や絵の具、その他の色をつけられそうなアイテムで色を塗っていきましょう。
 花がその色を吸い取って、白からその色へと変貌するようです。
 道具はポルックスが用意してくれたものもありますが、各自ご用意頂いても構いません。
 フルーツ果汁を使ってみよう、とか、宝石の色で試してみよう、などなど、色をつけられないものを使ってみるのもアリです。なんでもどんとこい。
 皆さんで相談して使うものを揃えて頂いても構いませんし、相談せずに違うものを使っても大丈夫です。

●世界観
 前回はこちら。
(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2320)
 勿論参照する必要はありません。気になる方はご覧下さい。

 勇者が魔王を倒した後の平和な世界。
 物語の舞台となる国の名前は「スターライト」。
 勇者は国王となり、助け出した姫と共に国を治めています。

●NPC
・アルタイル国王
 嘗ては隣の国の王子様。今はスターライト王国の王。
 勇者よりも先に光の剣ミーティアを引っこ抜いてしまい、魔王を討伐してしまったすごい人。
 努力家で勉強熱心、それに加えてイケメン。

・ベガ王妃
 この国のお姫様。今は王妃。
 魔王に連れ去られてしまっていたが、アルタイルの活躍により無事生還。
 心優しく、困った人を放っておけない。

 二人も声をかければ協力してくれたり、話を聞かせてくれるようです。
 また、イレギュラーズたちのことを魔法使いと勘違いしています。

●サンプルプレイング
 わぁ、花に色を付けたらいいのね!
 うーん……そうね、私は絵の具を使ってみようかしら!
 こうやって絵の具を垂らしてみようかなぁ……。お、いい感じ!

 それでは、よろしくお願い致します。

  • 白星に春色を完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年03月29日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ


「ふむ、ここに来るのは久しいな。確か前に来たときは結婚式を挙げたんだったか」
 『凡才』回言 世界(p3p007315) は周囲に目を凝らし、そして頬を綻ばせた。以前訪れた時は魔法使いとしてこの街を彩ったのだったな、と思いを馳せ乍ら。確かに思い出は──此処に。
 彼のポケットには沢山のお菓子。お菓子で彩るつもりなのだろうか。しかしながら、甘い匂いのする花というのは、どうも心が擽られる。
「春はね、生き物たちにとって大切な芽吹きの季節なんだもん。
 あたしが生まれたのも春だし、深緑の森が冷たい冬を越えて一斉に元気になる大好きな季節!」
 『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816) は気合十分。両の手に小さな拳を作って、花と対峙する。トレードマークのポニーテールは、今日はお団子にして纏め作業服に身を包んでいる。絵の具のパレットと絵筆をそれぞれの手に持った姿は宛ら職人の如く。ふんす、と効果音もつけたいところ。その顔は真剣そのもので、けれども愛らしい。
「白い花も美しいとは思いますが、そればかりだと味気ないのは確かですね」
 『今は休ませて』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900) はしゃがみこみ、花を指先でつんつんと。
 その背にはカクテルだとか、花束だとか、色々。『えへ、色の付けられそうなもの、たくさん持ってきちゃいました』とは述べていたが、まさかこれ程とは。色に困ることは無さそうだ。
「はは、魔法使いか……実際には魔法の様な物が使えない俺でもこの世界ではそう呼ばれるのだな。
 元の世界では誰かに夢を与える魔法使いの様にはなれなかったが──この世界で、それが望まれるのであれば……叶えてみせよう」
 欠けているなら埋めればいい。『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160) は笑みを浮かべてみせた。
 その手には沢山の色鉛筆。以前向かった春の島での花々も参考にしようと考えながら、一歩ずつ花に歩み寄って。
 四人はそれぞれ、花に着色をはじめた。


(まるっきり同じ色じゃ面白くないし……パレットに濃い色と薄い色を出して、ちょっとずつ混ぜて塗っていこっと)
 街の南に向かったフランの手にはオレンジの絵の具。パレットにオレンジをふたつのせてから、そのままぺたぺた塗ったり、白を混ぜて薄めたオレンジを塗ってみたり。
 同じようにピンクも薄いピンクをぺたり、中くらいのピンクをぺたり、濃いピンクをぺたり。
 すぅ、と色を吸い込んだ花は、まるで最初からその色であったかのように、綺麗に咲き誇る。
「あっ、そうだ!」
 ふふん、と得意げに笑みを浮かべたフランは、突然絵の具を勢い良く混ぜ始める。そうして綺麗には混ざりきらずマーブルに混ざった絵の具をぺたり。独特の模様を浮かべた花も美しいものとなった。
 次に紫の絵の具を作ろうとしたフランは、パレットの中央に赤と青をのせて、ぐるぐると混ぜ合わせ、三方向に紫を伸ばした。赤の強い紫、青の強い紫、水を混ぜる紫。それらも組み合わせて塗ることで、花の一つ一つが個性を持つ花となった。
「よぅし、少しだけ休憩しちゃおっと!」
 はむ、はむ、と口の中にジャムサンドイッチを詰め込んだフランは、ふとあるアイデアを思いつく。
「……あ、これも使っちゃえ!」
 まずは今食べていたイチゴのジャムサンドから、イチゴのジャムだけを掬いとって花にぺたり。すると、みずみずしい苺のような、けれどジャムっぽく花弁は透けた花になった。
 マーマレードやオレンジ、ブルーベリーのジャムも使ってぺたぺたぺた。辺りは薄ら透明の花が咲き、幻想的な光景となった。
「……一口だけ、食べてみちゃおう!」
 花弁をつまんで一口ぱくり。口の中に広がる甘さは、先程のジャムの味にそっくりだ。
「ふふん、いい感じ! んー……でも、ここまで塗ると色のレパートリーが減ってきて、迷っちゃうなぁ」
 暫く唸っていたフランだが、暫くして幾つか白の花を残すことに。白は『無色』ではないのだと。白も立派な色なのだと。周りが華やかな色を持ったお陰で、白だけが取り残されることはなくなった。フランは得意げに笑みを浮かべた。
「雪とか、おもちとか……あたしの大好きな色だもんね! だから大丈夫!」


 街の東に向かった世界は、その手にあるお菓子を粉々に砕いたり溶かしてみたり。溶かしたチョコを垂らした花は光沢のある艶めいた花に生まれ変わる。チョコレートが花になったかと錯覚しそうなほど、甘い匂いのする花になった。
 砕いたクッキーをまぶした花は、花弁に独特の手触りのある花に。ほのかにバターの香りをさせたその花は、少しづつ蝶がよってきた。
 カスタードをかけてみた花は、柔らかな黄色をした花に。丸みのあるシルエットが愛らしい。
 イチゴを混ぜた生クリームを使って塗った花は、春らしい可愛い色合いの花に。甘酸っぱい苺の香りがして、不思議に思った人々が寄ってきたり。
「これだけだと地味になる……よなぁ」
 むむ、と首を傾けた世界はふとあるアイデアを思い浮かべる。
「……これ、か」
 ポケットの奥深くに眠っていた、飴を溶かすのはどうだろうかと。飴ならば多数の味もあるし、色合いも鮮やかで美しい。早速火にかけて溶かしてから、花に色を付けた世界。
「……食べれないのか、これ」
(いやほら、ひょっとしたら使った菓子の味とかするかもしれないだろう?もちろん期待はしてない、してないが少しだけ試してみてもいいだろう?)
 と自分を納得させてからぱくり。それは葉です。
「…………」
 草の味だ。口直しと言い聞かせて、今度は花弁をぱくり。
「……!」
 ちゃんとお菓子の味がすることに喜びを隠せない世界だった。


 街の北へ向かった睦月は、まずは木に腕を伸ばす。その手の甲に煌めくフィンガーブレスレットを押し当てた。黒のオパールを連ねた夜の氷涙石と、白のオパールを連ねた潮の氷涙石を交互に押し当てて色を宿す。すると、それらは睦月の思惑通り夜空と煌めく雲のような花が咲き乱れる樹へと生まれ変わる。
「ふふ、これなら目立ちますし……待ち合わせ場所になるかも」
 続いてポケットから取り出したのは虹色の鍵。その鍵の持つ七色を一つずつ使った。
 赤、橙、黄、緑、青、紺、紫の花を咲かせるツツジを作った睦月。彼の後ろには虹色の通りが出来ていた。アクセントに虹色そのものの花も入れれば、『わぁ、虹色の花だ、ラッキー!』だなんて声が聞こえて来たり。
 ジュエリービーチ──青を帯びた真夏のカクテルは、桜に一垂らし。白かった桜はみるみる海の青へと変わりゆく。それはなんとも不思議な光景であったが、悪くは無いと思わせるのだった。
 しかし、中には頑固にもまだ白いままの花もある。そう言った花には混沌から持ってきた花束をくっつけてみる。するとどうだろう。この世界にはなかったガーベラやチューリップが咲き出した。
「おや。こんなところにあると可哀想ですから、隣に植えておきましょうか」
 ベンチの横に植え直せば、漸く元の位置に戻って来れたとでも言いたげに、チューリップは風にその身を揺らした。
 そして最後に、暖炉の炎を。揺らめく炎は燃え移らないか心配になったが、この不可解な現象と、睦月の慎重な行動のお陰で燃えることは無かった。
 炎のように赤く赤く、人々を魅了する不思議な色を携えた花は、睦月を引き寄せる。
「……しーちゃんの瞳みたいだ」


 街の西へ向かったベネディクトは、一つずつ丁寧に色を施した。赤い花は赤く、丁寧に均一に。青い花も、黄色い花も水色の花だって。
「ふむ。白の色が悪い訳ではなくて……うん、ここはこうしてみるか、どうかな?」
 たまには遊び心を加えてみるのだって大事だ。ベネディクトは、沢山色をつけた花の中にところどころ白い花を加えてみる。白い花の品種だって混沌にはあるのだから、それらが受け入れられない理由はないだろう。
「これだけ様々な色があれば白い花も愛らしく趣があるんじゃないだろうか……。うん、いい感じだな」
 ふぅ、と一息吐けば、ベネディクトは街の北、南、東へ。ぐるりと一周して仲間たちのアイデアをチャージしたベネディクトは、もう一度花と向かい合った。
「……わぁ、素敵!」
「凄いなぁ……さすが魔法使いだ」
 アルタイルとベガが近寄ってきたことに気が付いたベネディクトは、膝を床につき恭しく頭を垂れた。
「質問をする事をお許し頂けますか、アルタイル王、ベガ王妃」
「ま、まぁ……頭を上げてください、魔法使いさん。勿論、大丈夫ですよ」
「ああ。どんな事でも聞いてくれ」
「叶うならば、お二人のお好きな色を教えて頂けませんか」
 アルタイルとベガは顔を見合わせてから、にっこりと笑みを浮かべて告げた。
「私はピンクが好きです。ほら……可愛らしいじゃないですか」
「僕はオレンジかな。太陽みたいに眩しくて、素敵だと思うよ」
「ふむ……ありがとうございます」
 ベネディクトは、手にした色鉛筆からピンクとオレンジを抜き出すと、アルタイルとベガに差し出して告げた。
「もし宜しければ、二人にも色を塗っていただきたいのですが……」
「まぁ! 私たちにも出来るんですか? なら、喜んで」
「魔法使いさん達に任せるのは申し訳なくてな。嬉しいよ」
 子供のように色を塗っては瞳を煌めかせて、アルタイルとベガも辺りの色を塗って行った。
(この世界はこの世界には住まう彼らの物だ。
 ならばこの住人たる彼らをおいてこの世界の色を決めてしまうのは……勿体無く思ってしまったんだ)
 魔法使いさん、と己を呼ぶ声がすることに気がついて、ベネディクトは二人の方へと走って行った。


 世界には魔法使いに魔法をかけられた不思議な鼻が咲き誇り、人々を幸せにしましたとさ。
 めでたしめでたし。

成否

成功

状態異常

なし

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