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シナリオ詳細

グラコフィラスと四つの門

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●妖精のおねがい
 天井からいくつものウッドベルのさがったカフェ。
 ころんころんという小気味よくも控えめな音色にのって、ディープリーフコーヒーの香りが泳いでいく。
 何十年も使われていたであろうアンティークのウッドテーブルにカップを置き、あなたがのんびりとくつろいでいると……。
「たすけて! あなたローレットでしょ!」
 半開きになった窓を突き飛ばすように開いて、ちいさな妖精が飛び込んできた。
 テーブルに転がったひょうしに砂糖壺をひっくりかえし、白い粉をあびながらこちらを見上げる妖精。
「見たことないモンスターに門が壊されそうなの。急いで来て!」
 昨今、彼女たちのような妖精郷アルヴィオンからやってきた妖精たちから依頼を受けることが、ローレットには多かった。
 その依頼内容はほぼほぼ共通して彼女たちが行き来するために使うという門アーカンシェルに絡むもので、最も多いのが門を壊そうとするモンスターの退治であった。今回もその例によるものと察して『どこに?』と訪ねると……。
「四つ!!!!」
 と、妖精はすこしばかり違う答えを返した。

●グラコフィラスと四つの門
 赤い珠状の髪飾りをつけたアラビアン装束を纏った妖精グラコフィラス。
 彼女は深緑森林迷宮にひっそりと存在する四ヶ所の門を管理、監視する役割を負っていたらしいが……。
「人間達にはヒミツの場所なの。ひとつならともかく四つ全部が見つかって、しかも同時に襲われるなんて思ってもみなかったわ」
 身体をウェットティッシュで(バスタオルでも使うように)拭うと、グラコフィラスは紙ナプキンに地図を書き始めた。
 彼女のいう四ヶ所の門はそれぞれだいぶ離れたところにあるらしい。
 向かう森林迷宮にひそむ野生の猛獣たちのこともあって、門のある場所まで行くだけでも一苦労だそうだ。
「門には結界が張ってあって、そう簡単には破壊できないんだけど……いまその結界がちょっとずつ食い破られてる状態よ。私にはわかるの」
 同時に襲われているということは、一つずつ回っていては時間切れになる恐れがあるということだ。
 場所が離れていることや、行き来の際に猛獣たちとの戦闘が避けられないことからして、ここは今居るチームを四つに分けてあたる必要もあるだろう。
 では、その辺りのメンバー分けを考えつつ……それぞれの問題になるモンスターについて話そう。

 『青の門』
 深い湖の底にあるというフェアリーサークル。
 全長3mをゆうにこえる大蛇が湖へ侵入し、結界を破壊しはじめている。
 牙には毒、鱗には氷結の呪いがかかっているという。
 必然的に水中での戦闘になるため、水中戦闘可能な装備あるいはスキルを有していると有利にはこぶだろうとのことである。

 『赤の門』
 一年中紅葉がつき続ける魔法の木。その頂点にある宝珠。
 前進を炎で包んだ巨大な鷲が隠蔽魔術を見破り結界の破壊を試みている。
 肉体から放つ炎はもちろん、空気を刃に変えて発射する能力をもっているという。
 対地戦闘に優れているが、いざ飛行する対象と空中戦闘をする場合には攻撃スキルやステータス性能がやや低下する性質をもつ。
 飛行戦闘能力を持っていると有利に戦えるだろう。

 『白の門』
 一年中雪に包まれた森の中でひっそりと存在する石壁。
 門の存在を察知した巨大な虎が結界を食い破りつつある。
 非常にスピードに優れたモンスターらしく、こちらも機動力・反応・命中のいずれかに優れていればスピードに対抗できるだろうとの見方がされている。

 『黒の門』
 岩で覆われたドームの中。原型のない石像。
 ドームを発見した巨大な亀型のモンスターが破壊を試みている。
 このモンスターは土や岩を生成・操作する能力をもち、主に無数のゴーレムを作成しけしかけるという戦闘方法をとる。
 敵ユニットの数が多くなるので、対多戦闘または持久戦に優れたメンバーがあたるとよいだろう。

「あ、っと。森を抜けて現地へ行くときにも注意してね。あの辺りの猛獣は鼻がきくうえに獰猛だから、きっと戦闘はさけられないわ。できるだけ急いで、けど無理しない程度に……うーん? とにかくタスケテ!」

GMコメント

■オーダー
 成功条件:四ヶ所の門のうち三ヶ所以上が防衛されること

■メンバー分け
 青、赤、白、黒の四ヶ所にメンバーを分けましょう。
 距離感的に、再合流不能を前提に作戦を立ててください。

・森の通過
 途中、獰猛な野獣たちが襲いかかってきます。
 基本野生動物なのですが、とても獰猛でひととみるや襲いかかってくるでしょう。
 また鼻がきくので身を隠したり気配を消したりといったスニークが通用しずらい側面があります。
 ペアが両方とも隠密行動を得意としていて全く見つからずに移動する自信がある場合にのみそういう作戦をとってもよいでしょう。(片方だけ隠れるとかだと多分もう片方がつらい目にあいます)

 動物との戦闘は『消耗を避け、かつ素早い撃破が可能』なプランを選んでください。
 温存したAPを門防衛戦に全力投入する形です。
(描写と判定の都合から、帰還のためのプレイングは必要ないものとします)

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • グラコフィラスと四つの門完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月31日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)
薊の傍らに
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐

リプレイ

●森へ
「一度に対応するにはちょっと多いんじゃないですかね? まあなんとかするしかないですけど!」
 『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)は剣に手をかけ、妖精のいう森へと入っていく。
 同じく森に入った『蒼銀一閃』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)は、彼女とは別方向へと足を向け、剣をすらりと抜き放つ。
「そっちは任せたからね」
 今回防衛する妖精の門(アーカンシェル)は四箇所。
 ひとつひとつを回っている余裕はない。今からチームを四つに分けて、それぞれの門へと急行することにした。
「それにしても四ヶ所もの門が同時に襲われるなんて、どう考えても偶然ではなさそうだよね!
 何が目的かは知らないけれど、思い通りになんかさせないよ!」

 同じく森へと立ち入り、分岐地点まで走る『支える者』フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)。
「四色の門、対応する怪物……話を聞くに、旅人の方に伺った所謂四神……と、いうものに似ているでしょうか?」
「ふむ……」
 皆多かれ少なかれにたようなことは思ったようで、『迷い狐』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)もフィーネの言葉にすこしばかり頷いた。
「が、到底守神には思えんな」
「そうですね。けど……どうにも、妖精さんの門に関わる依頼は物語に出てくるような光景が多く見られて、不謹慎ながら少々わくわくしてしまいますね」
 言われて、『始末剣』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)たちはなるほどと眉を上げた。
「案外、物語とは鶏と卵の関係やもしれぬな。
 第一、伝承にある門と聞いたわりにかなりの数が深緑のなかにあるようでござる。あちら側からすればごく普通のもの、なのでござろうか」

 白い魔術手袋をはめ、指先の感覚を確かめる『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)。
「門を狙う怪物……か。結構減らしたつもりだけど、相手の手札はずいぶん多いね。
 それにしても妖精に何の用があるのやら。地道に潰していけばそのうち親玉に聞く機会もあるのかな……」
「さあなあ」
 『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)はジャケットを羽織り直し、胸元を開いておく。
「指揮する大元でもいるのなら、防衛が済んだら探ってみないと、かなあ。何か分かると思うかい?」
「どうだろうね。証拠を残さない自信があってここまで動いているのか、気づかれても関係ないところまで段階が進んでいるのか、どっちのパターンかによるかな」
「そんな遠大なコト、今考えてても仕方ないっス!」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はサッカーボールを膝で蹴り上げると小脇に抱えて走り出した。
「モタモタしてたら門が壊されるっス!」
「たしかに」
「今は目の前の仕事に集中、っと」
 イレギュラーズはイレギュラーズであるまえに、いまはローレットのギルドメンバーである。依頼を受けたからには、その達成努力義務があるのだ。
「妖精の願いを叶えにいこう。邪魔な魔物を倒してね」

●森を抜けて
 土を踏み木の根を飛び越え、目的の場所へむけ獣道を走る。
 不気味に風の無い森の中。
 フィーネはあちこちから見つめられているような感覚にぶるりと肩をふるわせた。
 無数の獣が先回りを繰り返しながらこちらを見張り、隙あらば食らいつこうと狙っている。そんな気配だ。
 そしてそれはほどなくして現実となる。
 ザザというしげみの揺れる音と共に吠え、飛びかかるオオカミ。
 拒絶のフィールドを形成して防御を試みるフィーネだが、反対側から時間差で複数のオオカミが飛び出してきた。
 獣なりのチームプレイである。
 が、チームというならこちらもチームだ。
 鋭い風が吹き抜け、オオカミを浅く切り裂いていく。
 風を纏い低空飛行をかけたシャルレィスがフィーネの周囲をぐるりと周り、威嚇するように剣を振った。
 獣はというと、これ以上の深手を負うほどの事態じゃないと判断したのか最初の一匹が茂みへ下がると残る数匹も茂みへと去って行く。
 きわめて敵対的な魔物と野生動物の違いはここだ。徹底的に殺処分を行わなくても
「急ごう! 立ち止まってるヒマはないはずだよ」
「はい……!」
 フィーネは頷き、シャルレィスと共に走り始める。
 目指すは赤の門。

 一方こちらは葵とメーヴィン。
「これだけ障害物があると、かえって動きやすいっスね!」
 強靱な足腰からみせるダッシュとジャンプ。
 葵は樹幹を三角飛びして勢いをつけたまま太い枝へと飛び乗り、そこから更に飛んで鉄棒の要領で別の枝へ手をひっかけて回転。勢いを更につけてそのさきの枝へと飛び移る。
 野生動物顔負けのアクロバティックな移動術で、唸るオオカミの頭上を飛び越えていった。
「メーヴィン、早く!」
「また簡単に言ってくれるな」
 枝から枝に飛び移るようなマネはさすがにできないが、吠えるオオカミの上を同じく三角飛びで越え、メーヴィンは宙返りをかけて着地。
 襲いかからんとするオオカミを引き離す勢いで走り出した。
「ふふ、母上に似た故郷で戦うことになるとは……あぁ、昔の狩を思い出すな。
 いやあの時は弓を持っていたかな。寒さついでに気を引き締めてやろうか」
 オオカミは賢く獰猛だが、その法則を学んでいれば決して刃向かえない相手ではない。
 あらかじめ先回りしていた別のオオカミが死角から飛びかか――ろうとした途端、急速な反転と抜刀。からのくるりと360度回転をかけ収刀。隙を突いてとびかかったハズのオオカミは顔面をばっさりと切り取られ、メーヴィンのほうは既に走り出していた。
「儂ひとりで正面突破はいささか面倒だ。強引にかわさせてもらうぞ」

 それぞれ少数ながらも、個性を活かして森を突破していくイレギュラーズ。
「できれば無用な殺生は無しと行きたい所でござるがこれも仕事故、すまぬな」
 咲耶は腰に収めていた刀に手をかけると、暗がりにひそむ動物たちの位置をおおまかに予測。姿勢を低く取ると、稲妻のようなジグザグ軌道で駆け抜けた。
 数匹の獣を斬り付け、勇敢にも咲耶の刀に噛みついて止めたオオカミ――の脇腹に逆手握りした剣を突き立てた。
「拙者らにはかなわぬ」
 チッと爆竹に火をつけて大きく投げ、音に驚いた処にヴォルペが思い切り突っ込んでいった。
 いくつかの動物たちは逃げだし鳥も木を離れていく中、食らいつく獣の攻撃をヴォルペはあえて受け入れた。
「はっはー、オオカミとコウモリはお友達みたいなモノなんだけどねえ。ま、『あっち』の話か」
 腕に食らいつくオオカミに笑い、ヴォルペは拳を握って引き絞った。
 勢いよく叩きつけた拳がオオカミを吹き飛ばし。赤い布を傷口に巻き付ける。
 両手をかざし、くいくいと手招きしてみせる。
 闇の中で開いた獣たちの目が増え、一斉に飛びかかる……が、ヴォルペはその中をガード姿勢のまま強引に突っ切っていった。

「他のみんなは美味くやってるんですかねえ」
 夢魔化した利香は甘い香りを振りまきながら森の中を歩いている。
 多くの動物は警戒心を緩められ、襲いかかるべきか否かの間で揺れていた。
 魔剣をくるくるとまわしながら周囲に意識を配る利香。
「我ながら気休めですけど結構効くんですよ? いひひ♪」
 そんなのは関係ねえとばかりに飛びかかってきた獣を剣で打ち払い、倒れた獣の喉を掴んで持ち上げると精力を吸い上げていく。
「そんなのを吸って大丈夫なのかい」
「大丈夫です、死なない程度に吸いますから」
「そういうものなのかな……」
 知的好奇心豊かなウィリアムではあるが、たまに興味の薄いものもある。夢魔や精力の分野がそれなのかは、わからないが。
「さておき、僕らは戦闘の愛称はいいみたいだね。君はヘイトを集めるのがうまそうだ」
 利香に集中した獣たちめがけてウィリアムは無数の小規模魔方陣を展開。
 その全てからスパークショットを放ち、獣たちを感電させた。
 倒れた獣に『吸魂魔刃』の魔術を放ち、血肉を開き魂を吸い上げる。
「そんなの吸って大丈夫なんです?」
「殺しても魂は等価だからね」
「そんなもんですか……」
 ある意味、相性のいい二人である。
 影からみていた獣に気づき、ウィンクするウィリアム。
「僕達は食べられないよ。黒焦げになりたくなければ、大人しく道を開けて他の獲物を探すんだね」

●『黒の門』
 岩で覆われたドームにむけ、巨大な亀が回転をかけながらごりごりと壁面を削っている。
 が、それとていつまでも続かなかった。
「どんくさい亀さんですね! 石像よりリカちゃんを見るべきですよ、それ!」
 現れた利香とウィリアムに、反応し、迎撃を開始したからである。
「……」
 土や岩を生成。これらが無数のゴーレムとなって立ちはだかる。
 その奥で、亀型モンスターは操った土を巨大なこぶしにかえ、アースハンマーの要領で攻撃をしかけてきた。
 突き出た拳から飛び退いて距離を取るウィリアム。
「あのゴーレムたちが厄介だね。亀に攻撃を加えたいけど……まずは突破しないことには始まらないかな」
「そういうことでしたら」
 利香は『チャーム』を振りまきゴーレムたちを引き寄せ始めた。
「何体だろうと相手してあげますよ! さあさあ来てください!」
 群がるゴーレムたちの連続攻撃をカットし続ける利香。
 ゴーレムが『通せんぼ』をやめて利香への集中攻撃にシフトしたなら、攻撃を直通させる隙になる。
 ウィリアムは「ナイスヘイト」と親指を立ててから、亀を射程距離に収めた魔光閃熱波を打ち込み始めた。
「これは燃費が悪いからね、できれば早く落ちて欲しいな」
 魔方陣を大量に重ね、破壊のエネルギーを次々に打ち込んでいく。
 亀の堅い甲羅が少しずつだが削れ始めていった。

●『赤の門』
 一年中紅葉がつきつづける魔法の木。それを守る蚊帳状の結界に炎を浴びせ続けるモンスターがいた。
 が、眼下より繰り出された風の斬撃をうけ、モンスターは上昇回避。
 それを追いかけるように、シャルレィスは助走をつけて飛び上がった。
「妖精の粉とか無しに飛行戦闘するのは初めてだけど…何とかなるよね!
 風よ! 力を貸してっ!!」
 自らに風の力を纏い、上昇を開始した。
 木のまわりを螺旋飛行し舞い上がると、迎撃しようと放たれる真空の刃を剣で払いにかかる。が、空中で踏ん張りがきかず細かい刃がシャルレィスの身体をあちこち傷つけていった。
「空での戦い、か……」
 高高度戦闘は防御と移動がしずらく、地上からの攻撃に対して命中・回避で不利になりやすい。バランス型のシャルレィスにとって防御の喪失はなかなかにこたえる状況だった。
 しかしそういうときだからこそフィーネの回復支援が役立つのだ。
「シャルレィスさん……!」
 『喪失の否定』を用いてシャルレィスのダメージをフォローし始めるフィーネ。
 そんな彼女を邪魔に思ったのか、モンスターはフィーネめがけて風の刃を乱射。
 大地をなぞるように刃が土をえぐっていく。
「……!」
 それを逃れるように走り、飛んで転がるフィーネ。よけきれなかった刃が足を切るが、転がった姿勢からすぐさま『喪失の否定』を再発動させた。
 彼女の真上を飛び抜けていくシャルレィス。
 モンスターの後ろをとると、疾風斬による乱射を開始。
 翼を傷つけられ飛行能力を維持できなくなったモンスターめがけ、蒼風烈斬によるフリーフォールアタックをたたき込んだ。

●青の門
 森を抜け、淡く光る湖へとやってきたヴォルペと咲耶。
「この湖の底に門が隠れているとはな」
 咲耶は『小波の短剣』を懐に収めると、水中へと飛び込んでいった。
 やれやれと首を振るヴォルペ。
「おにーさん、本来泳げないから水中苦手なんだよねぇ。ま、それこそ『あっち』の話だけどね」
 苦笑し、無意味にビキニパンツ一丁に脱衣してまた彼も水中へと飛び込んでいく。
「ふぅ、春先の湖もまだ水が冷たいでござるなぁ。さてさて件の大蛇は……」
 目を細める。
 と、暗い水底から猛烈な速度で蛇が上昇をかけてきた。
「――!」
 迎撃が間に合わない……と思った咲耶を突き飛ばし、ヴォルペが大きく開いた大蛇の口へと滑り込んだ。
 足と腕で顎の上下をつっぱるも、突き刺さった牙がじわじわと身体をむしばんでいく。
 ヴォルペの血は毒も呪いも消失してしまうが、実ダメージ自体を消せるわけではない。
 大蛇はそのまま彼を喰ってしまおうと顎に力を込め、そして巻き付けた舌で引き寄せ、喉の奥へすぽんと吸い込んでしまった。
「ヴォルペ殿!」
 咲耶は『やられたか!?』とつぶやいた……が、自分を突き飛ばした瞬間のヴォルペの意味ありげな笑みを思い出してハッとした。
「まさか」
 目を細める。
 と、大蛇は突如として苦しみだし、激しく血を吐き始めた。
 これ以上の好機はない。
 咲耶はドルフィンキックで急接近をかけ、大蛇の肉体をなぞるように刀で切り裂いていった。
 まるでウナギを開く作業のごとく腹をかっさばいていく。そしてまたウナギ開きと同じように臓物をあえて傷つけず、掴んで引っ張り出す。
「やあ、よく気づいてくれたね」
 内側から切り裂き、外へと出てくるヴォルペ。
「これでも忍び。毒の心得はあるのでござるよ」
 ヴォルペの血に含まれる毒……もとい呪いのようなものを、咲耶は見抜いていたようだ。
 彼をまるごと食べるという行為は、それだけで大きなダメージになるのだと。

●白の門
 石壁を前に結界を破ろうとしている白い虎型のモンスター。
 虎はふと、結界を爪で引き裂こうとする手を止め、後ろを振り返った。
 すさまじいカーブをかけて飛来するサッカーボール。
 飛び退く虎。
 爆発したようにはじける足場。
 回転をかけて戻っていくボールを胸でうけて、葵はさらなるシュート姿勢にはいった。
「相当素早いみたいっスけど、、オレだって負けてねぇ……!」
 蹴りつけたボールが空中ではじけ、冷気を纏った葵コウモリ型エネルギー塊へと変化。虎を追尾するような軌道をとり、虎の尾へと食らいついていく。
「でかした」
 メーヴィンは地面に片手を突く低い姿勢からスタート。
 収めた刀に手をかけたまま、虎の至近距離へと素早くつめた。
 飛び退き回避しようとする虎。
 しかし凍り付いた液体が虎の足の動きを鈍らせた。
「己の素早さに慢心したな?」
 メーヴィンは不敵に笑うと……抜刀。
 一閃。
 二閃
 三四五閃。
 光が五芒星のように走り、メーヴィンは虎の横をすり抜けた。
 刀を振り抜いた姿勢のままストップ。
 最後に、反撃にと食らいつこうとした虎の牙が折れ、さくりと地面へと刺さった。
「目で追うのもキツそうな動きだったが、それだけに目が慣れれば鈍りが目立つ。当たらぬものも当たるように……なる」
 刀を収めると同時に、虎はその巨体を横たえた。

●四つの門
 こうして、妖精グラコフィラスの守っていた四つの門は防衛された。
 だがこれが戦いの終わりだとは、とても思えない。
 隠された門を見つけ、同時にモンスターが襲いかかるなどという不自然。人為的かつ計画的なことと考えるのが自然だろう。
 であれば、きっと、この先がある。
 イレギュラーズはあらたな戦いの予感を抱きながら、妖精と別れたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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