PandoraPartyProject

シナリオ詳細

戦端を開く者
戦端を開く者

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●封じられし狂気
 ――忌々しい。
 忌々しいぞ、人類め。
 何が混沌だ、何が戦争だ。
 戦なくして我はあらず、我なくして戦はあらず。
 我が力を欲し、我を生み出したのは貴様等ではないか。
 故に力を貸したまで。
 戦端を開き、そして閉じぬ。
 多くと戦い多くを殺し多くを奪い多くを滅ぼす。
 終わらぬ戦乱を、より混沌に相応しき混沌とした戦場を。
 忌々しい人類め。
 我を望みながら我を封じた臆病者め。
 これは終戦ではない、停戦である。
 いずれまた戦端を開く日が来よう。
 その時には思い出せ、そして思い知れ。
 我こそは戦なり。
 消えぬ戦火なり。
 癒えぬ戦禍なり。
 故に我が名は『戦尽剣』。
 求めよ。
 我を求めよ。
 戦を。
 戦を、戦を、戦を――!

●緊急依頼
 ギルド・ローレットは今日も盛況だった。
 斡旋された依頼には溢れんばかりの応募が殺到し、事実あぶれて不満を漏らす者も多い。
 そんな中でも順調に経験を重ねて来た者も多く、その姿を見てなおのこと後に続こうと言う者は多かった。
 今日も今日とてイレギュラーズは依頼を待つ。
 そこにのこのこやって来た『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は日に日に鋭くなる周囲の視線に気圧されながらも、一枚の依頼書を提示する。
「皆さん、魔剣に興味はありますか?」
 言葉と共にテーブルへ置かれた依頼書には、なにやら聞いた事のない伝承についてばかり書かれていた。
「辺境の地に地下迷宮が出現したのです。調査してみた所、どうも魔剣が自身に相応しい持ち主を選定する為に作りだしたダンジョンだと判明したのですが、この魔剣、いわくつきの一品だったのです」
 いわゆる呪われた剣で、ついでに言えば封印されてたみたいなのです。淡々と言うユリーカだが、話を聞いていたイレギュラーズのテンションはなぜか上がる。
「なので、この魔剣をへし折ってきてください」
「ええ!?」
「もったいない!」
「……話聞いてたのですか?」
 とんとん、依頼書を叩く。
 いわくつきのそのいわくとは、持ち主の精神を支配する上に敵味方関係無く戦いを挑み、戦いを激化させ、戦い続けるというもの。しかも闘志や戦意を糧に力を増すというので性質が悪い。
「この精神支配に抗う方法は今のところ見付かってないのです。なので利用は出来ないのですが、とは言え誰が手にしても脅威になり得るとんでもないやつなのです」
「だからへし折れと?」
「なのです。完全に無力化出来れば良いので、記念に破片を持ち帰るくらいは許されるのですよ」
「いらねえ……」
 せっかくの魔剣がー、暗黒超魔王たる我に相応しき宝剣がー、などと残念がるイレギュラーズに、首を傾げるユリーカ。
 それはそうと、まだ言うことが有るのだったと仕切り直し、テーブルをタンタン叩く。
「具体的な作戦なのですが、まずイレギュラーズ同士で戦ってもらうのです」
「え?」
「経年劣化で魔剣も魔剣を封じた封印も弱っているのですが、まずは封印を解かないと魔剣に触れられないのです」
「それでなんで同士討ち?」
「魔剣は闘志や戦意を糧にするからなのです」
「ああ、なるほど……」
 概要はこうだ。
 まずイレギュラーズが魔剣の前でなるべく全力で戦い、闘志や戦意を魔剣に与える。
 魔剣は得られた力で間違いなく封印を破壊する。
 先の戦いで見染められた者を魔剣は持ち主に選び、自分を手に取るように呼び掛ける。
 選ばれた人は魔剣を手に取らず叩き折ることで無力化し、依頼完了。
「ハイ・ルールは依頼達成を優先するのです。とはいっても殺し合いは御法度、最大でも相手が戦闘不能になった時点で攻撃を止めてください」
「その上でなるべく全力、と」
「素人意見なのですが、闘志や戦意は戦いが拮抗し激化するほど昂ぶると思うのです」
 まあそうだな、とある程度の同意が得られたのでユリーカがにぱっと笑う。
「今回は敵らしい敵はいないのです。イレギュラーズ同士で戦える数少ない機会なのです、楽しむくらいのつもりで良いのです。ただ魔剣の意志と同調する人は注意なのです、もしかすると手にする前から精神支配の影響を受け始めるかも知れないのです」
 よろしくおねがいするのですよ!と笑顔でぺこっと頭を下げると、イレギュラーズからはまばらながらも良い返事が返ってきた。



GMコメント

 PvPです。
 よろしくおねがいします。(PvP)ノシ
 以下依頼詳細です。

●戦尽剣
 かつて数多の戦端を開き戦火と戦禍を振り撒き続け周囲を戦乱の渦に沈めましたが、当然ながら扱い切れずに封印されてしまいました。
 長い時を経て封印は弱まったものの戦尽剣もまた弱り果て、かつての力は有りません。
 このままでは封印と共に朽ちて行くところを最後の力を振り絞ってダンジョンを作りだし、封印を解く者を待っています。
 放置すると盗まれかねないと言うことでローレットに封印解除と魔剣無力化の依頼が転がり込んだのでした。
 精神支配の力を持ち、特に「戦乱を求め平穏を忌む者」への影響力は高いです。が、この力もまた弱まっているので、気をしっかり持ちなおかつ直接触れなければ問題無く抵抗出来ます。
 なお剣とは言われていますが形状は不明です。

●ダンジョン
 選定の迷宮とも呼ばれる、意思を持つ道具が稀に作りだすダンジョンです。
 戦尽剣によって作られた今回のダンジョンは迷宮要素が一切無く、地下へ続く階段を下りきると異常に広い地下闘技場へと出られます。
 その闘技場観覧席に戦尽剣らしき石の塊(おそらくは封印された姿)が有ります。
 罠の類も何も無く、魔法により照明も用意されています。闘技場では環境による一切のペナルティを受ける事無く戦えます。

●戦闘について
 闘技場にて同じ依頼に参加した仲間と戦って頂きます。
 対戦相手はプレイングにて指定してください。指定がない場合はランダムで組み合わせます。
 死亡判定は有りません。降参すれば戦闘不能にはなりません。戦闘不能になっても追撃しない限りは重傷にはなりません。
 あくまでも依頼のためとして戦って下さい。戦闘不能者への追撃、過剰な精神攻撃など、行き過ぎた行為はハイ・ルールに抵触する恐れがあります。
 基本的には封印が解けるまで戦い続けます。相手が倒れた場合は別の相手と戦ってもらいます。

●結末
 戦尽剣に精神支配された場合は持ち主を戦闘不能にすると戦尽剣を攻撃し破壊出来ます。
 戦尽剣の無力化に有効なのは破壊か封印のいずれかです。破壊が手っ取り早いのですが、ダンジョンを破壊し地下に埋めるのも手です。触れたくない、近付きたくない、などの場合はこちらをお試しください。

●戦闘について
 ルールに則った処理を心掛けますが、非戦スキルやギフトの効果も反映します。効果は絶対ではありませんが、ご活用ください。
 また、戦う意味からして、一方的な戦い、故意かつ見所の無い泥仕合は避けてください。防戦が得意な方、回復が得意な方など、様々だとは思いますが、対戦カードを工夫するなどして頂けると皆様活躍し易いかと思います。
 基本は1vs1ですが、一人で戦うのに向かない方はタッグやチームを組んでも平気です。ケースバイケースで楽しんで下さい。

 戦闘描写は派手かつ苛烈になるかと思います。
 アレンジの是非やNG項目など有れば伝えてください。

  • 戦端を開く者Lv:2以上完了
  • GM名天逆神(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月04日 21時05分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リオネル=シュトロゼック(p3p000019)
拳力者
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
朝を呼ぶ剱
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
蒼の楔
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
雨宮 利香(p3p001254)
雨宿りの
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
天穹を翔ける銀狼
ファリス・リーン(p3p002532)
戦乙女

リプレイ

●歓迎
「ん?」
 迷宮へ侵入して直ぐに『拳力者』リオネル=シュトロゼック(p3p000019)は妙な違和感を感じた。
 ふと隣を見れば『Esper Gift』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)も感じたらしい。他のイレギュラーズも顔を合わせて、やがて立ち止まった。
「何か聞こえる」
 耳を澄ませ、迷宮の先から微かに石が擦れる音を聞く。ゴリゴリと削るような、引きずるような。
「なんだと思う?」
「さあな、向かえば分かるだろう」
 『享楽の瘴気』雨宮 利香(p3p001254)の問いに『特異運命座標』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は軽く応え、再び歩き始めた。 が、何があったかは予想より早く知る事が出来た。
「分かれ道……」
 聞いていた話と違う。が、分岐路の手前には石碑に説明書きがあった。
 いわく、『我が力求むる者等よ、相争い汝等の力を示せ』と。
「使わせて貰いますか?」
 『銀翼の歌姫』ファリス・リーン(p3p002532)の言葉に他の全員が頷く。イレギュラーズは八つの分かれ道の内、六つに分かれて進むことにした。
 おそらくはこれが、対戦カードを決める通過儀礼の様なものだろう。
 先へ進むにつれ弧を描き下ったり登ったりしたのちに、やがて全員が同じ闘技場のような空間へ辿り着いた。
 ただし立ち位置はそれぞれ違う。
 リオネルとクロジンデのペアは『死を呼ぶドクター』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)と『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)のペアと相対し、『没落お嬢様』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)の前には利香が、ゲオルグの前にはファリスが立っていた。
「こうなったか」
 良い御膳立てだ、うっかり混戦にならずに済む。
 全員が目の前の相手に集中する。距離はある。広さは十分。高さも余裕。障害物は無い。別の対戦者を巻き込むような事も無いだろう。
 ただ目の前の相手と全力で戦えば良い。
 八名六チームの全員が、言葉を飲んで静かに構えた。


●防ぐ者と躱す者
 蒼穹を纏ったかのように美しいシフォリィは抜き身のレイピアを左手に、右手でドレスの裾を摘まんで持ち上げると、優雅に一礼して見せる。
 対する利香は応じる様に、左手を背に、右手を大きく振って胸の前へ当てると恭しく頭を下げた。
 舞踏会の様だが、これは武闘会だ。
 笑みと礼を交わした二人は、互いに己の得意能力をスキルによって引き上げながら一直線に激突する。
「シフォリィ・シリア・アルテロンド、正々堂々、参ります!」
「この守り、打ち砕けるもんならやってみなさいな♪」
 利香が魔剣グラムを抜いて構える。しかしその切っ先がシフォリィへ向くより早く、シフォリィのレイピアが奔る。
 鋭く速い斬撃は不可避となって利香を襲うが、利香の右手に握られた小さな丸盾が極細の切っ先を捉えて弾いた。
「そこ!」
 懐へ深く踏み込んだシフォリィに向かい、今度は利香のグラムが振り下ろされる。
 剣戟ではない。防御を固めて構えた剣を肩で押し込むように叩き付ける一撃だ。
 直撃すれば線の細いシフォリィが吹き飛ばされるであろう一撃を、スカートを翻しながら軽やかに避け切る。
「戦うからには負けませんよ!」
 ふふ、と花が咲いたように笑うシフォリィ。利香は魔剣グラムに埋め込んだ霊石を指先でなぞりながら「それは私もです」と返して笑った。
 直後、
 円盾が細剣の切っ先を逸らして火花を散らし、魔剣の刀身が少女の肩を強打する。
 弾き飛ばされたかのように距離を離したシフォリィが、その勢いのままくるりと反転しレイピアを振るう。盾を持つ手を裂かれながらも退かず前に出る利香はグラムを囮にバックラーでシフォリィの腕を打つ。
 直撃を避け敵を刻む。
 強撃を止め敵を穿つ。
 舞い踊るように身も衣も翻すシフォリィの剣技と、剛を以って柔を断つ堅牢無比なる利香の剣技。
 二人の少女は真っ直ぐに見つめ合い、少しだけ含む様に笑い、踊るように何度もぶつかり合った。


●斧槍と魔導書
 銀翼を大きく広げ、騎士剣のように真正面でハルバードを構えたファリスは澄んだ瞳でゲオルグを見る。
 魔導書を手にしたゲオルグも真っ直ぐにファリスを見つめ返して構え、鍛え抜かれた肉体に神々しい魔力が巡る。
「では」
「戦おうか」
 ごく短いやり取りを互いが聞くか聞かぬかの内に踏み込んだ。
「はあっ!」
 先手を取ったファリスの一撃は重い。両手武器特有の重量とリーチを生かした横殴りの一撃は構える前のゲオルグを打ち付ける。
 だがゲオルグも一撃で折れたりはしない。構えが間に合わぬならと攻撃へ意識を集中し、魔術により更なる強化を施した肉体をもってファリスへと打撃を叩き込む。
 が、その連打をハルバードの柄で受け切り、ファリスはふわりと後方へ跳んだ。ゲオルグが攻撃に集中したように、先手を打ったファリスもその意識は返す刃に向いていたのだ。
 先に構えて受ける。奇しくもそれは、ゲオルグが取ろうとしていた戦術と同じ。
「は。成程、一筋縄ではいかないようだな」
「ゲオルグこそ」
 構え直す両者は値踏みするように相手を見やる。
 火力も命中もファリスが圧倒している。だが、防御技術と体力はゲオルグの方が遥かに上だ。
 押し切るか、耐え切るか。
 二人の間に起こり得る戦いとは、そう言うものだった。
「――♪」
「む?」
 一触即発の緊迫の中、ファリスが静かに歌う。
 ゲオルグが怪訝な顔をしながら両拳に魔力を巡らせるのを、ファリスが笑顔で見守っている。
 ゲオルグはやれやれと肩を竦めると、楽し気に両拳を持ち上げた。


●一対対一対
「タッグと行こうぜー団長ー」
「おう、クロさん。やってやろうぜ!」
 手のひらに拳を叩き付けるリオネルの後ろでゆるーいテンションで手を上げるクロジンデ。
「純粋に強い奴と手合わせ出来ンのは……血が滾るなァ」
「ふふ、強いヒトってだぁい好きよ」
 対するレイチェルとリノのペアも嬉しそうに相手を見る。
 両ペアの信頼と相性は良好、実力も程近い。ならば勝敗は運と戦略が左右する。
「行くぜ――!」
 故に、先手は必勝。
 開始の合図なんての気の利いたものなど無いこの戦場において、先手とはつまり『相手より先に間合いへ辿り着きぶっ放した方』に他ならない。
 そしてその先手を取ったのは、
「ふふ、可愛いヒト」
 リノだ。
 その俊足はカチ合ったリオネルの脇を刹那の内にすり抜けてクロジンデの眼前へと辿り着く。
「ねぇ、イイコトしましょ」
 囁くような声を聞いた瞬間、クロジンデの身体が熱くなる。
 それは、二刀のナイフによって裂かれた身体から噴き出す血の熱さ。
「流石だリノ。そこ、急所だぜ」
 畳み掛ける様にリオネルの傍まで前進してきたレイチェルも左手の短剣をかざし、その切っ先から放たれた魔力の塊がクロジンデを容赦なく貫く。
「クロさん!」
 初っ端から怒涛の連撃に膝をつきそうになるクロジンデ。
 彼女に駆け寄りリノを引き剥がそうとしたリオネルには蚊の鳴くような細い声が聞こえた。
「好都合ー」
 その声の直後、クロジンデの魔力が急激に高まる。
 青ざめた顔を上げたクロジンデは真っ直ぐにレイチェルを狙い定めていた。
 間合いへ踏み込む為に駆け抜けたリノとレイチェル、対してクロジンデは万全の状態で迎え撃つ。
「後の先だー」
 間延びした声を引き千切るように強烈な魔力塊が放たれる。
 その悍ましいまでの火力は、直撃を免れたはずのレイチェルをそれでも地面に叩き付けた。
「団長ー」
「任せろ!」
 耳に届く小さな声。リノを引き剥がすより、レイチェルを落せと。
「ククク……やってくれるな!」
 立ち上がるレイチェルにリオネルの拳が叩き付けられる。
 咄嗟に構えた短剣で受けた拳から鈍いながらも鋼の音が響いた。
「あら。大丈夫ぅ?」
 リノが振り返れば、レイチェルは口の端を上げて応える。
「上等」
「余裕」
「あらあら」
「あららー」
 初手大打撃。
 されど戦意は高まるばかり。
 四人は四人とも獲物を掲げ、声も無く笑い合う。


●白と黒
 金属が擦れ、叩き付ける音が絶え間なく響く。
 光の軌跡を残しながら風のように振るわれるレイピアの切っ先を幾度となく魔剣グラムとバックラーがいなし、受けては払い除け、返す刃も打撃も軽やかに躱し、受けて飛び退き衝撃を殺す。
 たった数分、とは言え、それはイレギュラーズの戦いでは十分に長期戦と言える。
 シフォリィと利香の戦いもそうだ。
 シフォリィは荒い息を隠し優雅に振舞うが、上気した頬には汗が伝う。
 利香もまた疲弊しているが盾も剣も下げずに構え、艶っぽく笑んでみせる。
「参ります――」
 幾度目かの攻防。
 スカートは翻り、髪は流れ、レイピアが奔る。
 踊るように、舞うように。流麗華美なる少女の踏み込みはキス出来るくらいに鋭く、深い。
「――ッ!」
 肩を刺し貫かれ、足運びが乱れる。
 鮮血と共に舞うシフォリィは余りにも華麗で、余りにも速い。
 だからこそ、後手の利を活かす手もある。
「かっ飛ばしてやるわ!」
 零距離。
 キス出来そうなほどの肉薄戦。
 それは俗にキルゾーンと称される。
 如何に華麗にして流麗であろうと、その死地にて無傷では居られない。
「ぐ――ッ!?」
 魔剣グラムがシフォリィの胴を薙ぎ斬った。
 強烈なカウンターを浴びて弾かれるように後退するシフォリィ。その青いドレスが鮮やかな血によって染まる。
 何よりも速さを優先したからこそ得られた好機。穿ち乱された防御を捨てての全力攻撃は、確実にシフォリィを追い詰める。
「皮肉ね。切り札より、もしもの備えが効くなんて」
 全力を振り絞った代償、捨てた回避も、次の攻防までに整える。
 耐久力の差もここにきて響いたのだろう。血を流すシフォリィの動きは精彩を欠いて、
「まだです」
 しかし、それでも美しく立つ。
 降参はしない。
 疲労と負傷で乱れ切った息を殺し、最後まで優雅に。
 レイピアを正面に、穏やかに笑む。
「やってみなさいな」
 初めと同じ言葉を投げる利香もまた笑んで、迎え撃つ。
 利香もまた魔剣グラムを構える。霊石を撫で、最後の力を振り絞る。
 利香がぶるっと震えれば、頭からは角が生え、身体つきが変わっていく。
 変貌、あるいは変身。
 胸元ははだけ、背からは翼が、尻からは尾が生え、肌はより白く輝く。
 まさに銀髪金眼の悪魔。
 しかし彼女は何よりも美しく、眼前の少女へ向かい合う。
 少女もまた、応じるように魔力を練った。
 構えたレイピアの刀身を真白き魔力が覆ってゆく。
 やがてそれはレイピア全体を覆い、高貴なる白銀の聖剣へと変わる。

 ――聖剣技オートクレール――

 雪が舞った。
 白い光の花弁が、走るシフォリィと共に踊る。
 今までで最も速く、最も鋭く、最も美しい一閃と成って、その一撃は放たれる。
 利香の振るう黒き魔剣さえ染め上げた白銀。
 魔剣グラムが、バックラーが、利香の全身が軋む。
 これがシフォリィの切り札……。
 目も眩むような光の中その中で、利香は小さく、笑いながら呟いた。


●先を
「はあッ!」
 連打。
 魔力を纏った拳が、ハルバード越しにファリスを打つ。
 殺し切れなかった衝撃がファリスの身体の内側までダメージを残していく。
「ッせやぁ!」
 飛ぶような突撃。
 否、実際に超低空飛行から繰り出された全体重を乗せた一撃。
 それは魔術を巡らせ全身を強化したゲオルグにさえ確実にダメージを叩き込む。
 真向勝負だった。
 至近に陣取った二人は一切退かず、ただただ互いにより重く鋭い一撃を叩き込もうとしていた。
 加えて両者とも、攻撃一辺倒ではない。
 ゲオルグが先手を取れば防御を固め、後手に回ればファリスの隙を突くように攻撃を仕掛ける。
 ファリスは常に防御に集中しているが、それでいて攻撃の手を止める事は無い。
 決定打など無い。
 乱打戦。
 それはどこまでも楽しげに、清々しいくらいに堂々とした真剣勝負だ。
「ふふ……♪」
「良い歌だ」
 歌うファリスにリズムを狂わされたのは最初だけ、いっそゲオルグも鼻歌でも口遊もうかと言うほどに乗っていた。
 されど、楽しい時間も永遠には続かない。
「ぐ――ッ!」
「はぁ……ッ」
 二人は攻撃を受けるたび、息を吐き、血を吐いた。
 ダメージは蓄積されていく。
 決着は近い。
 だが、それでも、交わす言葉は無かった。
「おおおおおッ!!」
 代わりに渾身の一撃がファリスの鳩尾へと突き刺さる。
 防いでなお身を削る衝撃が直接身体を撃ち抜き、臓腑が爆ぜたかのような錯覚を生む。
 のけぞり、息が詰まる。
 歌は途切れ、息の代わりに血の塊が吐き出される。
 それでも笑う。
 血と汗と涙に塗れてなお凛としたその笑みを前に、ゲオルグはふと息を漏らした。
 ファリスが飛ぶ。
 銀翼を広げ、金髪が尾を引きながら。
 振り上げた斧槍に渾身の力を込めて。

 ――ズガンッ!

 全身全霊全体重を掛けた一刀が、ゲオルグの鋼の肉体を両断して斬り伏せた。
 石の床を砕きめり込むゲオルグ。
 その巨体を見下ろし、ようやく咳き込むファリス。
 だがその後ろで、倒れたゲオルグは再び立ち上がっていた。
 鋼の肉体、鉄の心、そして奇跡の力を以ってして。


●勝ち残るは 
「略式詠唱――いざ轟け、夜を纏いし狼王の咆哮ォ!」
 緋色の魔術式。クロジンデの足下の刻まれたそれは、レイチェルの呪言をもって発動する。
 術式から噴出する闇がクロジンデを覆う、否、喰らうと、食い千切られたかのようにズタズタになった。
 限界だ。
 元より回避などできないクロジンデへの集中砲火。
 レイチェルの無尽蔵かのような魔力から繰り出される数多のスキルは悉くクロジンデに痛打を与えた。
 だと言うのに、クロジンデは倒れない。
「負けてらんないんだ、最後までやらせて貰うよー」
 ゆるい言葉。
 だが、その眼には覚悟が宿っていた。
「はッ」
 レイチェルがそんな彼女の姿を眩しそうに見た直後、クロジンデが放った超大な魔力塊がレイチェルを吹き飛ばす。
「ッ気持ちで負けてンなら、なんも言えねェな……!」
 自分より遅くて鈍いクロジンデ。しかし自分を上回る大火力と、何よりその覚悟に押し負け、レイチェルは悔しげに笑って両手を上げた。
「ホント、凄い火力ねッ!」
 だからこそ真っ先に潰したかったと言うのに、不撓不屈で挑む彼女に圧倒された。
 だが、今度こそ倒し切る。
「させっかよぉ!」
「なっ!?」
 レイチェルに張り付いていたリオネルが振り向きざまに放った拳から弾丸が飛び出し、完全に虚を突かれたリノに直撃した。
「っ!」
 それでも身を捩り、クロジンデへと蹴戦を浴びせて薙ぎ倒す。
 跳ね飛ばされた先でまだ立つ彼女に、リノはもう苦笑するほかない。
 クロジンデはふらふらながらもリオネルの傍まで距離を取り、今度はリノに向かってマギシュートを放つ。
 しかしリノは飛び抜けて体術に優れていた。弾き、受け、時に避ければクロジンデの火力でもそう簡単には仕留めきれない。
「二度目よ。もう、立たないで頂戴ね」
 逆に一息で距離を詰められたクロジンデには、もう立つ力は残されていなかった。
 その身に渾身の蹴りを見舞われる直前、クロジンデが何かを呟くが、それはリノには届かない。
「なぁに?」
「『今だ』っつったんだよ」
 小首を傾げるリノの背後に、拳を振りかぶったリオネルが立つ。
 スパイクシールドを仕込んだ文字通りの鉄拳が、咄嗟に構えた二刀ごとリノをぶっ飛ばした。
 拳にビキリとヒビが入る。
 捨て身の一撃、一矢報いる最大の拳撃。
「ッシャァンナロォァ!! 余裕コイてっと当たるソバから消し飛ぶぜ!」
 吼えて構えるリオネルは割れた拳を見もしない。ただ、倒れたクロジンデを見て、より強く闘志が燃える。
「怒っちゃやぁよ」
「あ?」
 渾身の一撃を、それでも急所は避けたのだろう。するりと立ち上がったリノがウインクを飛ばし、ドキッとしたリオネルの胸を物理的に打ち抜いた。
 短刀の柄が減り込み、息が詰まる。
 体捌きだけならばリノはリオネルの数段上に居るのだ。隙を突いた一撃を耐えられたのも、逆に隙を突かれたのも痛い。
 それでも。
「ッ降参するにははえーよなあ……!」
「やぁん、怖ぁい」
 くね、と悩まし気に身を捩るリノと、射抜くように睨んで立つリオネル。
 両者の瞳には、爛々と闘志が燃えていた。


●覚醒
 ひび割れた。
 それに気付けた者は、ただ一人、ファリスだけだ。
 そして、その声を聞いたのも。

「我を砕け、ファリスとやら」

 それは、余りにも意外な言葉だった。
 戦端を開く者、忌むべき魔剣の言葉。
 信じられずにいるファリス、だが魔剣は続ける。
「貴様等は元より我を砕きに来たのだろう。そんな事、この選定の迷宮に踏み入った時から気付いて居る」
 何故ならば、持ち主に相応しき心かどうかも知れるが故の選定なのだから。
「これほど清澄な闘志は初めてだ。我も当てられたのだろう。だがな、我を欠片だけでも残そうと言う同情だけは御免だ。これより先、此度の様に心躍る闘争をただ眺めているだけなどと、そんな地獄には堕ちたくない」
「……だから私なんですね」
 戦士もまた戦時にのみ求められ、いずれ役目を終えて消えゆくもの。
 武器と戦士はそういう意味でも共にあるものだと、ファリスは思っていた。
 魔剣と戦士、同じ境遇だからこそ、ファリスは最後に選ばれたのだ。
「我が望む物は戦のみ。我こそは戦端を開く者。故に」
「戦端を閉じたくば、その身を砕くしかない」
 然り。
 寂しげに呟く戦尽剣。
 封印が解け、晒したその身は、意外なほど荘厳で美しかった。
 ハルバードを手にその身を砕かんとするファリスに、戦尽剣は告げる。

「さらば戦友よ」

 ――ああ、此れこそが、我が使命だったのだ。
 我は戦尽剣。
 此の刃は戦端を開き、其の生涯を戦端と共に閉じる者也。




成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 あ゛あ゛っ!!!
 くっそ文字数ぅぅぅ!!!



 はい。

 依頼お疲れ様でした。
 補足になりますが、降参の場合はEXF判定も無いのであっさり終わっています。
 逆にパンドラを使用して復活まで視野に入れた場合は恐ろしくしぶといです。
 EXFとパンドラ使用じゃ直後のHP量も違うのでうんぬん。

 戦尽剣は潔いふりして最期まで戦いたくて仕方なかったので、これがベストだったと思います。
 決着を見届けなかったのも羨ましくて今にも狂いそうだったからです。
 狂う前に去ろうと思ったのは、さて、なんででしょうね。

 それでは皆様、お疲れ様でした。

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