PandoraPartyProject

シナリオ詳細

酒を駄目にした、その輩を

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●老人は怒りて
「ヴラディーミルの野郎め!」
 そう叫びながら、ユルコフスクの場末に構える酒場「リーヴニ」の店主たる老イリヤはカウンターを叩いた。
 かの酒飲みたちのおかげで、酒場と土地にかけられた呪いは解けた。呪いが解けたことを聞き及んでか、少しずつ店に人も訪れるようになってきている。
 だが、元凶は。元凶たるヴラディーミル・ユーリエヴィチ・シリェーブは未だに野放しのままで。
 あのクソ野郎を何とかしない限りは、事態の打開は望めない。
 老イリヤは考えた。
 グリゴリーが連れてきたあの酒飲みの連中に、なんとかしてもらうことはできないか。
 カウンターの向こうに居並ぶ酒飲み連中を見やりながら、彼はふ、と笑みを浮かべた。

●青年は笑いて
「やあやあお歴々、今日もお日頃はいかがかな?」
 『ツンドラの大酒飲み』グリゴリー・ジェニーソヴィチ・カシモフはにこやかに笑いながら、そう言って特異運命座標たちに告げた。
 いつものようににこやかな彼の姿に、特異運命座標が首を傾げると、獅子の獣人はくいと口角を持ち上げながら言った。
「諸君らの中で、ユルコフスクの酒場『リーヴニ』を覚えている輩はいるかね? あそこの主人たる老イリヤから、声がかかった」
 ふ、と笑う獅子獣人。特異運命座標が首を傾げる中で、彼は言った。
「即ち、あの酒場に呪いをかけた輩、ヴラディーミル・ユーリエヴィチ・シリェーブの所在の話だ」
 グリゴリーが言うその名前に、反応する輩が何人いたか。
 ヴラディーミル。老イリヤが随分憎らし気に話していた、呪いをかけた輩。
 それの所在が明らかになったと聞いて。何人かの特異運命座標が身を強張らせた。
「はっは、気になるかね? そうだろうとも、なにしろあんな姑息な呪いをかけた輩だ。
お歴々としても処遇が気になる話だろう」
 からからと笑うグリゴリー。しかしその表情は真剣だ。
 どんな内容であれ、場所に呪いをかけた輩だ。一筋縄でいくはずもない。
 ひらりと手を動かしながら、グリゴリーは言う。
「なに、今回の話は単純だ。そのヴラディーミルの所在が掴めたんで、落とし前を付けてきてもらいたい。そういう話だよ」
 落とし前を付ける。そこに彼は強調を置いていった。
 どうも、ヴラディーミルという男がそのまま世から姿を消しては、いろいろと不都合があるそうで。不都合の起こらないように、いい具合にお灸をすえられればという話なのだそうだ。
「殺せ、とまでは言わない。ヴラディーミルに、『リーヴニ』にしたような呪いをかけることを、今後しないことの言質が取れればいいのだ。
 あの呪術師も、それなりにユルコフスクの町の中で知名度があるからね。変な話は立てたくない」
 そう言いながら、グリゴリーは片方の口角を持ち上げる。彼自身、そのヴラディーミルと飲んだこともあるのだろう。人となりを知っているが故に変なことはしたくない、そんな気持ちはよくよく分かる。
「あの姑息な輩が何を思って老イリヤの店に呪いをかけたか、それは改めて問いただすことでも無い。無いが、放置する案件でもないのでね。
 よろしく頼みたい。お歴々ならきっと、うまくカタをつけてくれるだろう?」
 そう話して、グリゴリーがさっと右腕を持ち上げる。
 その腕の向こう、寒風吹きすさぶユルコフスクの町が、特異運命座標を出迎えようとしていた。

NMコメント

 特異運命座標の皆様、こんにちは。
 屋守保英です。
 前回のライブノベルで次につながりそうな内容になったので、繋げました。
 不埒な呪いをもたらす輩を、ぶちのめしてください

●目的
 ・ヴラディーミル・ユーリエヴィチ・シリェーブの捕縛。

●場面
 グリゴリーの出身世界でもある、寒冷地帯が広がる世界。
 その中の都市、ユルコフスクの町です。
 酒場「リーヴニ」にかけられた呪いが、市内の噂になっているようです。
 ヴラディーミルを見つけ出し、呪いをかけないように言い含めてください。
 戦闘は必須ではありません。言葉で言い含められればそれでもいいです。
 戦闘の場合は周辺に影響の及ばない範囲で、ヴラディーミルが場所を選びます。

 それでは、皆さんの楽しいプレイングをお待ちしております。

  • 酒を駄目にした、その輩を完了
  • NM名屋守保英
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月03日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
桐神 きり(p3p007718)
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

リプレイ

●ユルコフスク市の呪術師、ヴラディーミル・ユーリエヴィチ・シリェーブが語りて曰く
 切欠はほんの些細なことだった。
 浴びるほど酒を飲んで、飲み方を注意されたとか。
 店内で寝入ってしまい、店の外に放り出されたとか。
 好みの酒がもう無かったとか。
 そんな小さなトラブルが積もり積もって、いよいよ我慢がならなくなったんだ。
 逆恨み? そうとも言える。
 老イリヤが憎くても仕入れられる酒は悪くないから、そうすることに躊躇いがあったのも事実だ。
 だが、あの時は真に、そうするしかなかった。
 その結果あんなことになるだなんて、俺は一切、予想もしていなかった。

●ユルコフスク市四番街、カプラン通りにて
 四月になっても尚、冷たい風の吹くユルコフスクの町。
 住宅の多く立ち並ぶ四番街を、特異運命座標は歩いていた。
「話に聞いたような悪趣味な呪いを使う相手であれば、きっと相当にイイ性格をしているでしょうね」
 集団の先頭を歩きながら、肉体的には最年少の桐神 きり(p3p007718)が目尻を下げながら零した。
 確かに酒場にかける呪いとしては悪趣味なことこの上ない。そして随分変わっている。
「誰だって怒るよね、商売道具で、きっと自分でも愛してるお酒を台無しにされるだなんて……きっちり型にはめてくるから安心して待っててね、イリヤおじーちゃん!」
 ぐっと拳を握りしめながら、『咲く笑顔』ヒィロ=エヒト(p3p002503)も声を張った。
 まなじりを決すると、隣を歩く『紫緋の一撃』美咲・マクスウェル(p3p005192)に視線を向けながら耳を動かす。
「ねねね美咲さん、お酒ってそんなに美味しーの?」
「ん? そうね、ヒトの歴史と切り離せないくらい、夢中になる人が多いものよ」
 未成年な愛しい者の問いかけに、大人な美咲は笑って返す。
 酒の歴史は長い。酔いを楽しむものも、酒の中で美味を追求するものも多い。この世界でもきっとそうなのだろう。何せこんなに寒いのだから。
 と、十字路に差し掛かったところで、一人別行動をとっていた『特異運命座標』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が横道から姿を現した。
「お待たせ」
「ベネディクトさん、どうでしたか?」
 きりの言葉に、先んじて町の人々に情報を聞きに行っていた青年は頷く。
「うん、ちょうどこの通り沿いだ。青い壁の大きな家に住んでいるらしい」
 ベネディクトが指さしたのは、これから進もうとしていた通りだ。一ブロックほど先に青い壁の家が、確かに見える。
「私の出身世界での呪術師に関する知識は、一度忘れよう……色々と違う点があるみたいだしね」
 美咲がふっと息を吐きつつ言った。
 ユルコフスクの住人曰く、彼は普段は良い効果を齎す呪術を土地に施すなど、職業呪術師として依頼を受けながら生活しているとのこと。他の世界の呪術とは、いろいろとあり方が違うのかもしれない。
 程なくして家の前。ベネディクトが召喚した小鳥を青い壁の家の窓辺に放ち、そして後ろを振り返る。
「ファミリアーにも念のため待機してもらおう……皆、準備はいいか?」
 その言葉に、三人ともこくりと頷いて。ベネディクトの手がドア横の呼び鈴を押した。
「はい?」
「ヴラディーミルさんはご在宅ですか? 依頼があって参りました」
 依頼に来た風を装えば、さして警戒することもなく扉を開けるだろう。町の住民から聞いた通りに、扉が開いてアナグマの顔が覗く。
「どうぞ、お入りくださ――いっ!?」
 ヴラディーミルが扉を開いて四人を招き入れるより先に、ベネディクトの手がドアノブを握る手を掴んだ。痛みに目を見開く男へと、美咲がにっこり笑いながら言う。
「さて……『おはなし』をしましょう?」
 その瞳が、茜色にきらりと輝いた。

●呪術師の家に踏み込んで
 家の応接間まで通された特異運命座標がソファに腰かければ、手首を抑えながらヴラディーミルは呻いた。
「依頼人という感じでもないし、一体何なんだ、あんたらは」
 忌々し気にこちらを見てくるアナグマ獣人。それに視線を返しながら、ベネディクトはきっぱりと告げた。
「話がある。あなたがうん、と頷けばすぐ済む話だ」
 その言葉に、眉根を寄せるヴラディーミル。栗色の瞳に疑念が沸き起こる。
「話、だと?」
「結局呪いが破られたのはわかってるよね?」
 ヒィロが問いを投げると、相手はようやく得心が行ったという風に頭を振った。小さくため息を漏らしている。
「『リーヴニ』か。くそっ、跳ね返りがあったから、だろうとは思っていたが」
「あら、代償がありはしたのね?」
 零された言葉に美咲が目を見開きながら言うと、彼女に視線を返しながらヴラディーミルが言う。
「かけた呪いが解かれたら跳ね返りがあることなんて、当たり前だろ。おかげで一週間は、酒が飲めなくなったが」
「かけた呪いが変なら、代償も変だねー」
 ヒィロの屈託のない発言に、ぐっと言葉に詰まるヴラディーミルだ。
 しかし事実、随分と特異で特殊な呪術だと言える。酒にまつわる呪いの代償は酒で還ってくるということか。
 話が途切れたところで、きりがまっすぐヴラディーミルを見据えて言った。
「単刀直入にいきましょう。私たちの要求は、酒場『リーヴニ』に対して妙な呪いを今後一切かけない……という事ですね」
 きりの言葉に相手が何を言うよりも早く、美咲が言葉を継いだ。
「正確には『先の件のような呪を、今後使用しないこと』。『リーヴニ』に限った話ではないわ。当然よね」
 『リーヴニ』に、他の酒場にも、今後一夜で酒が腐るような、営業妨害になる呪いをかけないこと。それが今回の要求の趣旨だ。
 険しい目つきをしながら、ヴラディーミルが口を開く。
「今後一切、酒場を害する呪いをかけるな……老イリヤの要求は、そういうことか」
「呪いとは強力な代物だ。故に、扱いを違えば周りから恐怖とも畏怖ともとれる視線で見られる……分かっているとは思うが」
 ベネディクトが話しかけた言葉に、彼はそっと目を伏せた。自嘲するように言葉を吐き出す。
「ああ、そうさ。誰も得をしない仕事をやって失敗したばかりに、俺を頼る客も減った。投げられる視線は侮蔑ばかりだ」
 ヴラディーミルの発した言葉に、四人が四人とも眉間を寄せた。
 誰に依頼されるでもなく勝手に呪いをかけて、それを返されて、代償に苦しんでいる呪術師。権威などあったものではない。
「そうだろう。今後も人の中で生きていくというのであれば、この辺りで妥協をしておくべきじゃないか? 同じ様な事をしてもまた呪いは解かれるぞ、我々の様な存在が居る限りな」
 ベネディクトの発言に、ヴラディーミルは俯いたまま目を見張った。きりも頷いて言葉を継ぐ。
「酒場の店主さんがイレギュラーズと繋がりを持ってしまった以上、ここで私たちを倒せたとしても、また新たな刺客がやってくる事になります」
「ボク達イレギュラーズがいる限り、何度だって妨害を打ち破ってみせる!」
 ヒィロの力強い言葉を受けて、ヴラディーミルはますます頭を下げた。
「それに……」
 そこに美咲が腕を組みながら、瞳を金色に輝かせつつ口を開く。顔を上げたアナグマ獣人は目を見開いた。
「こちらの話が聞き入れられないなら私も術で応じるしかない……あなたがあの店にしたように」
「ある程度戦える人間を四人も敵に回してなお呪いをかけ続ける程、大きな事情はそうそう無いですよね?」
 きりの言葉に、ヴラディーミルは何も言えない。
 ここに居並ぶ四人は、いずれもかなりの手練れだ。一番経験の浅いベネディクトでも相応に実力を持っている。呪術師一人で敵うような相手では、決してない。
 すっかり反抗心をなくしたヴラディーミルに、ヒィロがそっと声をかけた。
「これ以上惨めな思いをしたくなければ、イリヤおじーちゃんに詫び入れてケジメつけなよ。何か事情があるなら一応聞いてあげるから」
 ヒィロの言葉に、アナグマの表情がくしゃりと歪む。そのまましばし静寂が続くと、不意にヴラディーミルが立ち上がった。
「……呪紋紙を取ってくる」
「何をするつもり?」
 突然席を立ったヴラディーミルに、美咲が色めき立った。他の三人も武器に手をかけながら腰を浮かせる。
 しかし相手はふるふると頭を振ると、四人を手で制した。
「勘違いするなよ。誓約書の作成には紙が必要だろう? 呪いで書けば、偽装も出来ないからな」
 そう言って、応接間の扉を開けて外に出ていくヴラディーミル。その姿を見送ると、ヒィロは再びソファーに腰を下ろしながら言った。
「これにて、一件落着かな?」
「そうですね」
 彼女の言葉に、きりも頷く。
 ヴラディーミルは程なくして一枚の紙を手に戻ってきた。四人の前でそれに手を当て呪文を唱えれば、一瞬のうちに誓約書の文面が出来上がる。
 誓約書を受け取り、内容を確認しながら、ベネディクトがふと問いかけた。
「そういえば、なぜあんな呪いを? ここでは聞いてやるくらいしか出来ないが……」
「いいんじゃないかしら? 言っていたでしょう、『問いただすことでもない』らしいし」
「えっ……」
 ヴラディーミルが答えるより先に、美咲が発言する。それにアナグマ獣人は驚いた顔をした。
 確かに、依頼を受注した際にそう言われた。それは確かだ。
 ひらひらと手を動かしながら、美咲は呆れたように口を動かす。
「はいはい、聞きませんよ。ヒィロ、気晴らしに一杯いくから食事だけでも付き合ってくれる?」
「わーい、だって、気持ちいいお酒って人の心を溶かすんでしょ? ボクも早く大人になって、美咲さんと溶け合いたーい!」
 愛する者の言葉にヒィロも嬉々として答えて。
 ユルコフスクの町を騒がせた呪い騒動は、こうして決着を迎えるのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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