PandoraPartyProject

シナリオ詳細

常朝村蒸忌聞書

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●真鍮の狗
 山中にて、奇怪な影をみたり!
 麓の村の老人衆、寄り合いにて、威力偵察を断行す!
 かくして、朝日がさしこむ山中を、二人の田舎者がゆく。
 得物はクワと鎌。獣を討つ猟銃。
 蓑をかぶり、藁と木の脛当てを装着している。
「怖ええか? 正一どん?」
「清くん、やっぱこういうのは、役人さ連れてきて――」
「バカ言え。ションベン垂れの役人がやくにたつさ?」
 夜行性の鳥類が朝日で寝しずまり、昼行性の動物が活動する――には少し早い。
 されど暁光は、怪異を三千世界の彼方へとおいたてると信仰されている。
「なんか、起こるんでねえかな。正一どん」
「ばかいえ、お天道様がおる」
 頼みの綱のお天道様は、しかし、鬱蒼とする森林に隠れてしまった。
 強がる正一どん。怖がる清くん。
 二人の足音だけが響きわたる道を、心細さの細さを細めながらいく。
 風がときどきふいて、ガサガサ、ガサガサ、と木々が声をだす。
 夜間についたであろう朝霜が、滴となってころがり落ちる。
 落ちた滴が、正一どんの衣の背中にはいって、強がりもたまらず「ひぃ!」と声がまろびでた。
 同時に、清くんの方も「ひゃああ」と頓狂な声をあげた。
 正一どんは、相棒も滴に驚いたと解釈したが、見ればしりもちをついて、尋常ならざる表情をしている。
 清くんが指さす方向をみる。赤い光が二つみえる。
「ありゃなんだべか! 正一どん」
「ありゃなんだべか!? 清くん!」
 木々のむこうに、鉄の狗がいる。
 顔面は、獣のシャレコウベのごとき面長で、黄金色の頭蓋。眼光は深紅にきらめき、山路をきた田舎者をみている。
 姿勢は四足獣だ。
 胴はところどころに金属の管が走り、管の先端からは蒸気をたぎらせている。大きさは猪ほど。されど狗の形状。
 言葉を失った田舎者。
 静寂の中に、歯車の音が、キイキイと軋み音のみが響いて――。
「ひっ! ひいいい!」
 田舎者たちは、バケモノ犬という事実だけを理解した。
 理解して、ふぐりを大きく縮みあがらせた。これは恐怖に塗り潰された時におきる人類の本能だ。
「く、くるなぁ!!!」
 腰引きながらも、クワと猟銃をかまえ、狗と対決する姿勢をとる。
 対して、狗は、田舎者の得物に反応して、咆吼をあげた。
『Ghaaaaaarrrrr!!』
 農奴二人の眼前に、赤黒い五方陣が浮かびあがる。
 五方陣から爆炎が立ちのぼる。
 驚異。これは魔術か!
「に、にげるべさああああ!」
 農奴、目の前の超常に、たまらず失禁し、山路をころがるように逃げだした。
 奇怪なる狗。
 それ以上追わず。歯車きしませ、くるりと闇路を引きかえせり。


●良いからとっとと強い奴と戦わせろ
「むむむ! 『良いからとっとと強い奴と戦わせろ!』ですか!?」
 場所はギルドローレットである。
 かくして、この条件を出した特異運命座標《イレギュラーズ》達が卓に座っている。
 対して、ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がピューっとセレクトしてきたものは、とある農村からの依頼であった。
「幻想国内、常朝村という農村からの依頼なのです。地球というところの日本って国の、タイショー時代という所からやってきた旅人《ウォーカー》の子孫が、細々とやっている村らしいのです」
 事件のあらましはこうだ。
 常朝村の近くの山中に、金属のバケモノ狗が現れたという。
 村人は怯えている次第らしい。
「猪ってわかりますか? このくらいで大きさで、炎をどばーっと使うみたいなのです!」
 ユリーカがどばーっと感を出した手ぶりをする。身振りをする。
 その金属のバケモノ狗を倒して、村長に報告すれば終わりという話で、単純明快であるのだが。
「本当は腕利きの人にお任せしようと思っていたお願いなのです。でも皆さん忙しいみたいで」
 と、ユリーカが取り出したのは羊皮紙のレターだ。
 腕利きが出払ってしまっているので、事前に出来る限りのことを調べようとしたのだろう。
 レターには、村の近くにたまたま居た専門家の分析結果が綴られていた。

 真鍮の狗《スチームドッグ》と【練達】では呼ばれてゐる。
 かの狗は、蒸気機関の魔術的アプローチである。ゴーレムに近い。
 一部の事象をことごとく拒絶するが、拒絶する許容量には限界点がある。

                   ――――『ペテン師』アレス・D

GMコメント

 Celloskiiです。
 以下詳細。

●目的
 真鍮の狗《スチームドッグ》の撃破

●状況
 リプレイは山中からスタート予定です。
 現地までの移動は考慮しなくても問題ありません。
 現地での情報収集を終えている状況です。

 情報精度:予想外の事態は発生しません
 場所:鬱蒼とした森の中。斜面での戦い
 視界:日中ですが森に遮られていて暗め


●エネミー
真鍮の狗《スチームドッグ》
 蒸気機関で動く、金属のゴーレムじみたものです。
 どこに潜んでいるかは不明。
 山中深く踏み込もうとする者へ攻撃してきます。

A:
 ・真鍮攻撃         物近単  【出血】 奇襲時 CT+5
 ・スチームクラウド     物中範
 ・88mm大陸弾道火炎放射器  神超貫  【火炎】【業炎】

P:
 火炎の魔術炉
 BS無効。効果を受け付けませんが、BSにはかかります。
 一定条件を満たすと解除され、BS【体勢不利】がかかります。

  • 常朝村蒸忌聞書完了
  • GM名Celloskii
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月17日 23時30分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スウェン・アルバート(p3p000005)
最速願望
アート・パンクアシャシュ(p3p000146)
ストレンジャー
プロミネンス・ガルヴァント(p3p000719)
潰えぬ闘志
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
特異運命座標
桜小路・公麿(p3p001365)
幻想アイドル
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ジオ=トー=ロウ(p3p001618)
夢幻
ショゴス・カレン・グラトニー(p3p001886)
蠢くもの

リプレイ

●序 -The Encounter counter-
 最初から強敵を求めた8人が村は、フィッツバルデ領にあった。
 海がなければ【練達《アデプト》】と近い。行く者、くる者が宿のために時々寄る。
 わずかながらも、もたらされてきた英知により、幻想らしく魔術という語と、大正時代という語が混ざり合ったような、特異な文化を形成していた。
 着くや、『潰えぬ闘志』プロミネンス・ガルヴァント(p3p000719)が情報収集、および村長に頼み事をするなど、準備を済ませた。山火事対策である。
 山中へ征く。
 道中にて、たちまち『ジャミーズJr.』桜小路・公麿(p3p001365)が、尋常じゃないくらいに大喜びした。
「常朝村とは実にイイ! 何がイイってネーミングが兎に角イイね!」
 朝! つまり! シャイニング!
 輝ける美神、兼スーパーアイドルたる公麿にとり、初依頼には持って来いの土地なのだ。
「待っていたまえよスチームドッg……名前が長いね、ポチと名付けよう」
 以下、ポチとする。
 『風車の放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング (p3p001219)は、盛り上がってクルクル回る公麿をみて言った。
 戦闘義肢の右腕で、自らの側頭部を掻く。
「ローレットに来てからの初の本格的な依頼だ、気ぃ引き締めてやらねえとな」
「わかっているとも! ハハハ!」
 バクルドの義肢は【練達《アデプト》】でいうところの機械である。
 強敵をよこせと言って、ユリーカから出てきたポチも、奇しくも機械。幻想《イルド・レガシオン》では見ない敵であるに、ほんの欠片ほどだが興味を引いた。
 仕事は仕事だが、引いたからには斃すだけと、後方を警戒す。
 『蠢くもの』ショゴス・カレン・グラトニー (p3p001886)は食欲の赴くまま。
「寄越せ、寄越せ……」
 と、つぶやいている。
 ここへ来てから初めての依頼である。初めてにしては強敵であること、一切合切が食欲に塗りつぶされていた。
 お腹が空いた、お腹が空いたよぅ。
 これまで、そうしてきた。感慨もなにもない。「喰らう」のただ一色だった。
 森は深くなっていく。
 『ストレンジャー』アート・パンクアシャシュ(p3p000146)は上をみる。お天道様が隠れゆく状況をみる。
「森で初陣で、強敵。まったく恐ろしい話だ――」
 視線を正面に戻すと、横から。
「さぁて、混沌で最初の依頼ですね! 全力で頑張るとしましょう!」
 『夢幻』ジオ=トー=ロウ(p3p001618)の意気込みが耳に入った。
 アートの傷が入った側の口角が微かに吊り上がる。ならば、レベル1の異邦人として、1から頑張ってみようと思いを改めた。
 少し距離をへだてて先を行くのは、プロミネンス、『最速願望』スウェン・アルバート(p3p000005)、『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)の三人だ。
 スウェンがつぶやく。
「スチームドッグを作った人は、わざわざこの山をテリトリーにして、何がしたかったんスかね」
 今回の相手、ポチが、まるで何かを守ろうとしているような立ち回りや、コンセプトに着眼していた――火炎放射器は除いて。
 『ペテン師』の文にはゴーレムのようなもの、とあった。
 ゴーレムならば術者がいるだろう。術者がいるならば、どこにいるだろう。と思索する。
 この瞑想を、百合子のカハハハという笑い声が破った。
「知らん! 知らんが悪くない! 鍛錬はしてきたがやはり本物の戦いに勝るものなし! どこの誰ぞが作ったものかは知らぬが、吾等の糧となるが良いと思うばかり!」
「それもそうっすね――じゃ、そろそろ行ってくるっス!」
 スウェンは、ギアを一段階あげて走り去る。
 ここで、プロミネンスが先頭になった。
「要は見つけて倒せばいいんだろう。……『敵』には敏感だ。見つけてやる」
 うむ、と応ずる百合子は、ゴーレムの通り跡であればわかりやすかろうと、丹念に道を調べている。
「む、これは」
「猟銃と鍬か」
 やがて、アートと百合子が、それぞれ猟銃、鍬を見つけた。
 ここからが彼奴のテリトリー。いよいよだと全員は解釈した。
 プロミネンスが一歩踏み入る。
「来る!」
 プロミネンスの声が全員の瞑想をやぶった。
「来たっスよーーーーー!!!」
 向こう側から高速で戻ってくるスウェンの声が、皆に戦闘態勢をうながした。
 蒸気の音、歯車が回る音を聴覚に。
 真鍮色の刃が森の向こう側できらめいた。
『GrrrrrrrraaAAAAAAAAAAAA!!!!』
「速いっ!」
 赤色の尾を引く眼光が、スウェンの横を通り過ぎて距離を詰めてくる。
 プロミネンスの直感。槍で受ける。
 だぎりと接触音が響く。
 真鍮のポチは背に金属の羽のごときものをはやしている。羽は鋭利な刃だ。
 止めた――だが!
 眼前に面長な頭蓋が、高温の蒸気を場にばらまいてきた。


●破 -Fierce fighting-
 滾る蒸気、鋭き翼。
 無機質な赤色の眼光。
 猪のごとき全長2mはあろう四足獣の形。狗、スチームドッグと特異運命座標《イレギュラーズ》、相対す!
 たちまち、プロミネンスは鍔迫り合いのごとき体勢に入る。
「絡繰りごときが俺を倒そうとでもいうのか? ……笑い話にもならん」
 全身全霊の力をもっても拮抗する力。
 吹き出す蒸気。蒸気に身を焼かれながらも、奥歯を砕かんばかりに強く強く食いしばって耐える。
「熱! あっつい! ――っと、標的発見ですね!」
 ロウが作戦行動に動く。
 蒸気の高温をリュートで散らし、狙うはプロミネンスとポチの鍔迫り合いの間。
 間をリュートで跳ね上げた。
 跳ねたと同時に、ポチはくるりと中空で回転。着地する。ロウを新手と見立てたか、眼光が向く。
「ほら! こっちですよ!」
 飛びかかるような前屈姿勢をとった刹那、ロウのほうから向かっていった。
 牙にリュート食い込ませる。
 押さえた!
 キリキリと歯車が鳴っている。
「そりゃねえっスよ!」
 スウェンがたちまち、気がついたことを周知する。
 『そりゃない特徴』。
 観察することに徹し、かつ速度に命をかけているスウェンだからこそ気がついた点!
「こいつ一瞬で連続攻撃してくるッス! こまったっス! 自分には敵さん仕留めきれる手札がないッス!」
 仲間に情報を伝えて、かく乱に動く。
 今ある手札で、やれることをやるのだ。
 スウェンは、噴出された蒸気を払うように追いついて、ロウが食い止めるポチの脇腹に蹴りを刺した。
 ポチの注意が、ロウとスウェンへ交互に向く。
 そのスキを見逃さない。
 中央から、ショゴスが振りかぶって無造作に拳で打ちすえる。
 拳――否、異形たる腕。
「寄越せ、寄越せ。貴様の肉体を以って、愚生を満たすのだ」
 一撃で金属の頭蓋がひしゃげる。
 ショゴスは全身全霊をぶつけ、ぐったりしたような体勢で背面に反る。
「連続攻撃――か。なら、やることは一つだ」
 ショゴスが反った空間へ、バクルドが槍を伸ばす。ポチの頭蓋を突く。
 殺られる前に殺るしかねえ。
「最初が肝心だ! 犬っころを転がすまで気ぃ抜くなよ!」
 堅牢な装甲を打った手ごたえを感じた。力の半分も伝わっていない。半減で受けられたと感じた。
 バクルドの声と共に、公麿とアートが散開する。
 公麿が敵を観る。
「ここまで剥き出しの敵意というのは、この世界に来てからは初めてだね」
 命のやり取りも初めての経験。
 若干の恐怖も感じる。感じながらも足は眼光へ向かう。
「僕はこれでもアイドルさ。芸能生命を賭けて様々なヒトと戦って来たんだ。さあポチ君! この桜小路 公麿が剣の錆にしてくれようじゃあないか!」
 名乗り口上をしながら、華麗なステップで攻撃態勢もつくる公麿。
 同時に、アートも踏み込む。
「いこうか」
 アートは斜面における足場を確認。
 親指同士が向き合う杖術の握りをつくり、腰を沈め、突かば槍。
 公麿のレイピアと、アートの突きが、左右からポチをうがつ。
 百合子が、ずしんと左足を一歩踏みだした。
「火炎の魔術炉というのはどこに付いているのであるかな?」
 右手は、弓のように大きく引いている。
「体の内側に隠したとて、吾の拳は内部まで響くぞ!」
 繰り出したる拳、空を切り、金属の胴を抉る。
 下から上へ突き上げるような鉄拳。猪ほどもある鉄の塊がふわりと浮くほどの強打であった。

 かくて、特異運命座標《イレギュラーズ》、奇襲を退けて反撃せり。
 作戦は、ロウを起点として、入れ替わり立ち代わり、ポチの足を止め、魔術炉をねらう。
 その真意は、中距離までは発射できないとされる『88mm大陸弾道火炎放射器』を撃たせないことにある。
 同時に、『ペテン師』の文にあった、許容量突破を目指す。
 真鍮色の刃を、全力の守りで食いとめるロウ。
 高温の蒸気を連続噴出により、体力を削られながらも、特異運命座標《イレギュラーズ》達は攻めの一手。
 戦いが進む。
 作戦通りに事は運び、やがて一つの佳境を迎えた。
 公麿の口上が、敵のセンサーを狂わす。アートの棒とバクルドの槍が足を止める。
 百合子の鉄拳が体勢を崩す。ロウとショゴスが交代し――
「よっし、そろそろ下がりますよ!」
「退がれ。此れは愚生の餌だ」
 もぐりこむように前進して守りを固めるショゴス。
 ――後退するロウ。ロウが飛びのきながら放った火術。
 火炎の魔術炉をやぶったものは、奇しくも炎であった。
『Grrrrrruuu!!!!!!』
 内燃機関が爆ぜる。部品が飛散する。
 許容限界を突破する。
 魔術的な力により寄せ付けていなかった異常が、膨れ上がり、狗めを襲う。
「行くッスよ!」
 スウェンの右蹴りが、下から上へ、カミソリの如き鋭さで顎を斬った。
 破砕音が響き、ポチの頭部がグラつく。
 狗から蒸気。
「アイカツで鍛えた僕のレイピア捌きに恐れ戦くがいいサ!」
 公磨が蒸気で焼かれながら、しかし、あの熱いアイカツの日々で心頭滅却す。
 アイドル魂をのせて下した一刀は、ポチの頸部をあっさりと切断した。


●急 -it being said-
 くずれ落ちたポチ。
 ロウが大きい盾の横でチラりと敵を見る。
「終わったのですか?」
 各人の目に、煙が上がって横たわって、機能が停止したと映った。
「食すのだ! 喰らうのだ! これは愚生の餌!」
 とショゴスが飛びかかった。
「その前にだ」
 バクルドが制止する。
 制止されて、ショゴスが拗ねそうになるも。
 退治したことを報告するため、証明となる狗の頭部は重要だ。これまで喰われるわけにはいかないという思惑だ。
 バクルドが狗の首をもぐ。
 あとは好きにしろ、とバクルドはショゴスにいう。
 しかし、バクルドは姿勢を崩さなかった。
 一呼吸ほど間を空けてから。
「確認しておくか。念のためだ」
 と油断なく槍を構える。
「バカデカい火炎放射器を使わせずに済んだッスね!」
 スウェンの声。
「うたれ弱かったのか?」
 と首を捻る百合子。
「……気をつけろよ」
 と、バクルドに言うアート。
 プロミネンスは「キリ」という、かすかな音を拾った。
 目を見開き、槍を握る。
「まだだ!」
 たちまち、真鍮の狗を捕食せんとしていたショゴスと、警戒を緩めないバクルドの眼前に、炎が立ちのぼった。


●88mm大陸弾道火炎放射器 - 88mm Intercontinental ballistic Fire after fire-
「再起動だと!」
 バクルドが舌を打つ。
 鬱蒼とした森に、あかりが灯る。
 手元にある狗の頭部。動き出した狗を見れば、頭部の代わりに、炎そのものが、狗の頭の形をつくっていた。
『――――ッ!』
 狗めが。頭部を失った狗めが、声にならない声を発した。
 蒸気はとうに枯れつくして、蒸気で動いているわけではない事を示す。
 炎の高温部分が青い。まるで目のよう。
「陣形は崩れていない。攻撃再開だ」
 バクルドの声。
 たちまち、ショゴスが切り裂かれた。
「っ! ……は、愚生の、餌、贄」
 ショゴスの異形の腕、刹那に、狗の前足を持っていく。
「ぐっ!」
 次に、バクルドが真鍮色の刃によって袈裟切りにされた。
 機械化していない胴から、出血がおびただしく。
「ただでは……!」
 ただでは崩れない。バクルドは、槍で、狗の胴を渾身、貫いた。
 両者とも油断があったわけではない。
 ショゴスは、捨て身の攻撃で疲弊が蓄積した結果である。
 バクルドは、指示を優先した間を突かれた。
「バクルド!」「ショゴス」
 赤色の五方陣が4つ、周囲に明滅する。魔術陣の展開。隙あらば撃ってくる体勢だ。
 ここで、プロミネンス。消えゆく歯車の音を聴く。
「ここからが本題――いや、絡繰の断末魔といったところだな」
 良いだろう。受けてたつ。と槍の握りを改める。
 ロウは仕事終わりの一服を、もう少しだけ我慢することにした。
「もう少しだけ、お預けですか」
 くわえ煙草であるが、火はつけていない。湿気る前に倒すだけ。手に魔力そのものを込めて。
 カハハハハと笑う百合子。
「そうか! そうこなくてはな! 吾は愉しい!!!」
 公磨、ひゅらりとレイピアを構える。
「最終ラウンドかい? ドラマチックだね! ポチ君! 熱いのは嫌いじゃないよ! 僕はね!」
 スウェン。つま先でトントンと地面を小突く。
「……これはもう行くところまで突っ走るしかないっすね!」
 アートは静かに、立ち上る炎を涼しく評する。
「これは、ベテランでも困難だったのではないか?」
 空気が高温で逆巻く。魔方陣。放たれる火炎。
 刹那の一瞬間。放たれる火炎。
 よけるスウェン。
 ほぼ同時にアート。スウェンが蹴りを放つ。
 最速を目指す者にとって、バンバン二回行動されることは挑発以外のなにものでもない。
 二回行動、二連撃。二連脚。
 右脚で蹴り上げて、左脚のカカトで蹴り潰す。
 即座に離脱。離脱したところへ疾走してくるアート。
 敵の胴を棒で突く。木へと押しつける。続いて薙ぐ。薙げば薙刀。
『Grrrrrruuu!!!!!!』
「苦しそうに鳴くじゃないか。もう、止まったらどうだい」
 魔方陣が激しく光る。
 狗めの口中から光の線が射出される。地面を焼いて向こう側へと走り抜けていく。
 直撃を覚悟したアート。
 そこへ、公磨が割って入り、アートを庇った。
「……バ、バラエティ番組的に考えれば、美味しいのさッ!」
 公磨は膝をつきかける。アイドルだって身体を張るときは張るのだ。
 アートは少しだけ棒を握る手を強めて――金属の刃に刻まれる。
 後方、その光線を真っ向から受け、炎の中を突っ切ってプロミネンス。
 身体が燃える。燃えるが。
「効かん!」
 まさに紅炎《プロミネンス》となる。
 ショゴスが持っていた前足、無駄にはせん。
 もう片方の足を石突きで払い、頭部から後方までを貫く。
『Grrrrrruuu!!!!!!』
 まだ生きているか。並の生物ならば死んでいる手応えだ。
「だが、勝つ!」
 火炎がプロミネンスを焼くことはないのだ。
「白百合清楚殺戮拳の味、まだまだ味わうがいい!」
 そして百合子。
 自らの掌が焼けることも構わず、左掌で炎と化した狗めの頭部を押さえつける。
 ミッション系の学園の経験者。作戦の重要さも理解している。豪快たる阻止。肉薄。このまま圧殺しても構わんのだ!
『Grrrrrruuu!! uGO』
「カハハハハッ! 良いぞ! どちらが先に果てるか! 根比べである!」
 味方の総攻撃。次ぐ、狗めの刃。
 百合子がメキメキと怪力で押さえつける最中にも、真鍮の刃が乱舞して、百合子を切り裂く。
 口角からしたたる赤い液を拭うのも手間だ。手は緩めない。圧殺の腹づもり。
 ロウが魔力を練る。
「『優れた料理人は「美味さ」「速さ」……そして「器用さ」が必要だ』って言われてますが」
 器用さを伴わない、魔力そのものの暴力を放った。
 魔力の奔流。強烈無比。
 ロウはこれで最後。体力的にも気力も、余力は皆無となる。狗めの部品がさらに飛散する。
 胴の装甲が剥がれ、明らかに膨大な熱をもった球体が露わとなる。
「それッスね!」
 スウェンが球体を蹴り上げる。
 これでトドメに至らないことは、スウェン自身が理解している。
「今ッス!」
 公磨の庇いによって拾った手番――アートが棒を構え、粛々と突きだした。
「そこだ」
 槍、槍、棒、百舌の速贄がごときものが成就せり。
 狗めから摘出された芯球が熱線をうつ。
 熱がアートの脇腹をさらっていく。
 膝をつきかける、つきかけたが、パンドラの運命を炎にくべて立ち上がる。
 乾いた蒼瞳、その先に。確固たる棒は芯球をとらえて――

 たちまち、球体は砕けた。
 たちまち、狗めは物言わぬ金属と化した。
 たちまち、真鍮の狗《スチームドッグ》は百合子によって潰された。

成否

成功

MVP

アート・パンクアシャシュ(p3p000146)
ストレンジャー

状態異常

アート・パンクアシャシュ(p3p000146) [重傷]
ストレンジャー
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219) [重傷]
特異運命座標
ショゴス・カレン・グラトニー(p3p001886) [重傷]
蠢くもの

あとがき

 Celloskiiです。
 MVPは迷いましたが、パンドラ消費まで明記したあなたへ。
 お疲れさまでした。

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