シナリオ詳細
午前零時の巫女泥棒
オープニング
●不安のゴミ箱
ぼう、と灯ったたいまつの炎。ふたつみっつと増えた炎に照らされる人々の顔。
誰も彼もが年老いた、そして陰鬱そうな顔。
彼らはみな白い催事装束を纏って、神殿の前に並んでいた。
石柱を連ねて作られた粗末な神殿には、金の祀り装束を纏った巫女がひとり。
彼女は祝詞の書かれた布で顔をかくしたまま、金色の扇子をひろげた。
老人のひとりが祝詞を読み始めるにつれ、ゆっくりと舞が始まる。
そんな催しが……毎日、続いた。
明日も、明後日も、そのさきも。
ずっとずっと、彼らは巫女を舞わせ続ける。
いつまで続くのですかと、誰かが問うたとき。
村人のひとりはこう応えた。
「みんなの不安が消えるまでですよ」
●くそったれなしきたりとやら
ここに一人の男がいる。
キリタカ・フウキと名乗った四十台そこそこの、髭のふかい男である。
前職は神主であり、ある村で神事を担っていたという。
『幻想大司教』イレーヌ・アルエや聖教国ネメシスの文言を持ち出すまでもなく、ここ混沌という世界において神の存在はほぼ証明されている。
だが『居る』ことと『救ってくれる』ことは同義ではない。
そして多くの場合、それらを混同した人間は大局を見失う。
「私のいた村は信心深くてね、善良に過ごしていればきっと報われると誰もが信じていた。
隣人を愛し、罪を拒み、考え得る最大の善良を、かれらは日々こなそうとした。
それが崩壊したのは、村にある旅人たちが訪れた時だった」
旅人たちは悪意を持って村で窃盗や略奪や殺人を働き、若者達のほとんどは抵抗らしい抵抗もできず、村は決定的に崩壊したという。
「それから、彼らは歪んだんだ。よそ者を信じたがために裏切られ、破壊された彼らは、誰も信じなくなった。
そしてその不安と悲しみは、神こそが取り去ってくれると信じたんだ」
――これまで善良に生きてきたのだから
――救われるに決まっている
「そんな傲慢さが、彼らの歪みを決定づけた。
彼らの不安や悲しみを取り去るべく、巫女に祝詞をとなえ舞わせるという催事を続けるようになった。
それは年に一回だったものが月に一回になり、週に一回になり、やがて毎日行われるようになった。
巫女は清い身体でいるべきだとして最低限の食料だけを与えられ、村の外は汚れているからと窓のない部屋に閉じ込められている。
……なに?
彼女を連れ出せないかだって?
ああ、やろうとしたさ。やろうとしたから、私は『ここ』にいる」
キリタカは自嘲気味に笑って、自分が閉じ込められている鉄格子をコンと叩いて見せた。
そう、ここは監獄島。ローザ・ミスティカが実質的に支配する治外法権の島。
あなたはローザの側近よりの仲介をうけ、このキリタニの願いを叶えるように依頼されたのだ。
依頼内容は。
「巫女を――私の娘を村から『盗んで』ほしい」
●『はけ口の巫女』シジョウ
キサラギ村。その村では毎夜神事が行われる。
祝詞をよんで巫女を舞わせるというものである。
イレギュラーズはこの催事を利用して、巫女シジョウを村から盗み出すのだ。
説明された手順はこうだ。
まず村にこっそりと潜入し、社に閉じ込められた巫女に接触する。
この時、村人に気づかれずに村のなかにある社へ近づける上、鍵がかけられた社へ潜入可能な人員を揃えておかねばならない。
もし不可能であるばあい、外で騒ぎを起こして注意を引きつけ、その間に社へ接近、社の裏側より脆くなった壁を破壊して内部へ侵入するという手順が使えるが、かなり発覚リスクは大きいだろう。
このとき巫女シジョウに対して自分たちが何者であるか、誰から依頼を受けたのかを説明しておかねばならない。彼女自身村で不安のはけ口となっていることを自覚しているはずだが、この状態に対して一種の諦観と葛藤と持っているだからだ。
つまりは、自分が消えることで村がパニックになることを考え、自分が犠牲になることに対して諦めをもっているのだ。この状態の彼女を説得し、協力的にしない限りこの作戦は成功できない。
夜になる前にシジョウと入れ替わり、催事に出席。事前に練習しておいた舞を披露し村人たちを引きつけておく。
この間にシジョウは村の外へと脱出するのだが、村を出入りできる唯一のルートにはひとの出入りができないようにとモンスターが放たれており、これを倒していかなければ脱出は困難となるだろう。
更に、巫女に入れ替わった人物は閉じ込められた社や村から自力で脱出が可能でない限りは誰か仲間をそばにつけて強引に村から脱出をはからねばならない。
巫女が逃げ出した、ないしは巫女が偽物だと気づいた村人たちは血眼になって捕まえようとするだろう。場合によっては、彼らを傷つけても構わない。
「キサラギ村は老人ばかりが残った村だ。皆このまま続けていけば先がないことは分かっているはずだが……」
キリタカはそう述べて、石の壁に寄りかかった。
「彼女が自由になれば、それでいい。私が隠していた資産を報酬として渡そう。その先がどうなるかは、彼女が選択すればいいことだ」
- 午前零時の巫女泥棒完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常(悪)
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年03月24日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●神はいる。ただし、あなたのためにいるわけではない。
コインが回る。
空中をはね、手の中に落ちる。
次に放ったコインは半分の価値に。
そのまた次に放ったコインはまた半分の価値に。
最後に小石だけが中に放られ、『盗兎』ノワ・リェーヴル(p3p001798)はキャッチすることなく手をポケットに入れた。
「囚われの乙女を盗み出すなんて怪盗冥利に尽きるねぇ……。ま、今日は裏方だけど」
「若い娘が老い先短い老人の不安を払拭する為だけに生かされる……と聞くと、なんとかしてあげたくなるわね」
車のバックミラーに顔をうつして、『毎夜の蝶』十六女 綾女(p3p003203)は前髪を整えていた。
車をとめた『胡散臭い密売商人』バルガル・ミフィスト(p3p007978)が、ネクタイをゆるめながら『ここからは歩きですかねぇ』とうんざりした声を出す。
無理からぬ。馬車が通るにもギリギリの、獣道と呼んで差し支えないような未舗装の道がただあるのみである。
持ち込んだオフロード車は、見た目のわりに(混沌証明の影響で)だいぶ不便な乗り物であるらしい。耐久性はおろか走破性などあってなしがごときだ。きっとウサギを踏んだ程度で止まるだろう。
「どおりでこの世界ではトラックもダンプもあるのに流通しないわけです。割に合わない」
「これもひとつの合理性なのです」
『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)はトランクに積み込んでいた灯油缶を引っ張り出すと、その一部をバルガルたちに持たせて森を歩き始めた。
「不合理なのは『彼ら』です。この世界のカミサマが、ひとの認識に依らず生まれ出で、善行に報いるものである……なら、なぜそれに縋る為に人身御供まがいの手段を取るのか」
「信仰は思考のショートカットだ。順序を間違えると、いつまでも出もしない蛇口をひねりつづけることになる」
『ホンノムシ』赤羽・大地(p3p004151)は仲間達とはまた違った意味で、うんざりした顔で森を見ていた。
「この村には未来なんてない、こんな所に居てやる義理はない……と、彼女に伝えてやりたいけれど、俺は口下手な方だ。質の悪い旅人に荒らされちまったのハ、気の毒だが働きで示すとしよう。
誰も村を作り直そうとしなイ、同じ輩が暴れた時に押さえられるようナ、自衛の手段を敷こうともしなイ。そしテ、新しい風を受け入れようともしなイ。見なよ」
大地が示した森の薄暗闇。
きっといつかの『大事件』で犠牲になった者たちなのだろう。
恨み言ばかりいってこちらの要求を聞こうともしない身勝手な霊魂が、大地につきまとって仕方ない。
「空気もなにもかも、淀んだきりだ」
『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)は灯油缶の蓋を開くと、足下や近くの木へと中身を振りかけ始める。
「不安だからって、自分の外側にばっか救いを求めてさぁ、バカじゃないの。それも、教え導き、育む役割の年長者が若人を食い物にしてるなんてさ」
カラッポになった缶を放り投げると、クーアへ合図を送る。
「まあ、いいよ。正義はそれぞれにあるものだ。僕らにとっては依頼主の正義が正義となる。オーダーに応えるだけだ」
木の上。小鳥がやっととまれるような細枝に、『闇之雲』武器商人(p3p001107)は立っていた。
「うーン、彼がこれ以上歪んでしまうのは気の毒だけど……仕方ないよね。
ホントは残りの村人を皆殺しにできればよかったのだけど、すまないねぇ」
死ねば楽になれようものを。
武器商人は言外にそう述べてから、ぴょんと枝から飛び降りた。
「ふん、くだらん」
『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)は倒した灯油缶に腰掛け、顎肘をついていた。
「くだらん信仰に付き合わされている巫女。その巫女の略奪が仕事というわけか。たいした『悪事』もあったものだな」
ぼう、と後ろで炎があがる。
「こちらも依頼人の心情を慮って譲歩するのだ。老害たちの村の端が焼ける程度は、許容してもらわねばならんな」
●炎は覚えている
「火事だ!!」
誰かが恐慌のなかで叫んだような声が、森中に響いた。
武器商人が発したものだが、普段の彼女(?)からは想像もつかないような発声方であった。
聞いた者がつい平静を失ってしまいそうな、そんな声である。
たまたま森で食料をとっていた村人のひとりがその様子を目撃したが……彼が見たのは森の中にふわふわと浮かびこちらを見る武器商人と、その周りで油をまいては火を放つ仮面のクーアたちであった。
「おや、わかりやすい場面を見られましたね」
「消しますか」
村人の背後からぬらりと現れたバルガルが、首に手を腕してロックした。
「殺さなくていいのです。不要な抹殺はウデを疑われるのです」
「…………そういうことでしたら」
もがく村人を無理矢理締め落とし、そのまま引きずっていくバルガル。
「人が来るぞ。どれ、もう少し派手にしてみるか」
ルーチェは近くの木々や土に向けて魔法の衝撃を放つと、わざと大きな音をたてて人をおびき寄せ始めた。
「そこで何をやってる! だれか、誰か来てくれ! 森に火を放ったやつがいる!」
過去の出来事から『よそ者』に対して強い警戒心をもった村人たちは、明確に悪意をもって行われた放火に対して決定的な敵意をもって集まった。
とはいえ、身体のよわい老人ばかりの村である。
武器とは呼べないようなものを手に、形ばかりの威嚇をするのがせいぜいであった。
ルーチェたちもそれを察したのだろう。
「下らん」
そうつぶやいて、彼らはすぐさま森を出て行った。
効果てきめん、と述べるべきなのだろうか。
突然の悪意ある来訪に、過剰な大騒ぎをする村人たち。
怠惰な、もしくは傲慢なサイクルとして行っていた巫女の監視を怠り、係の者もまた森へと行ってしまった。
「…………」
村になにげなく溶け込んだふりをしていた大地は社へと戻り、近くに隠れていた仲間達を呼び寄せる。
「なんだか、ナ」
大地の目から見て、この村の人々は愚かではあるが吐き捨てるには『仕方なさ過ぎる』ように見えた。
『善良に生きてきたのだから、救われるに決まっている』という傲慢は、なにもこの村の中だけで醸造されたオリジナル思想ではない。
『こんなにがんばっているのだからズルをしても許されるはずだ』
『責任を負っているのだから優遇されてもいいはずだ』
『犠牲を払ったのだから得をしてしかるべきだ』
そんな傲慢はあらゆる世界に掃いて捨てるほどある。
そして抱いてはいけないと決めつけるには、あまりに本能的すぎる感情でもあった。
「やっと僕の出番かな」
茂みのなかから姿を見せたノワが、何も持っていない手のひらを返しただけでふしぎな形のピンを出してみせた。
「社の鍵は……ふうん、南京錠か。不用心だね。こんな鍵、ないも同然なのに」
通常の解錠手段よりももしかしたら早いと思えるほどの速度で、ノワは鍵を開いてみせた。
「さ、どうぞ?」
招き入れたのは綾女とルフナ。
社の奥で座布団にすわり祈りを捧げていた巫女がひとり。
聞き慣れぬ声と扉のスキマからはいる光を不安げに振り返ったのがわかった。
こちらは不法に侵入した側である。
ルフナは巫女の向けてくる視線の意図を察して、出そうとしていた水のボトルと砂糖菓子をしまいなおした。
隣人の挨拶と同じ感覚で語る場面では、どうやらない。
綾女も同じことを考えたようで、巫女が話し出すのを待っていた。
対する巫女……シジョウはといえば。
「要件を言ってくれない?」
ハァとため息をつくと、こちらに背を向け堂へ祈る姿勢へともどってしまった。
「言っておくけど、金ならないわよ」
遠くの森と、空き家ばかりになった村の端が燃えているらしい。
そのさまを聞いて、シジョウは再びため息をついた。
「本当、あの人達、何も分かってないんだから」
「あの人たちが嫌いなの?」
ルフナの問いかけに、シジョウは露骨に嫌悪を顔に出した。
「好きになるような環境じゃないでしょ。とはいえ、見殺しにするのもね。私の責任が、ないでもないし」
こきりと首をならした綾女が、シジョウの横へと座った。
「このまま飼い殺しにされるのを望むのならいいわ。
でもそうじゃないでしょう?
今までは諦めるしかなかったかもしれない。
でも今は違う。
貴女を助けたいと思う人がいて、その願いを叶えるべく私達がいる。
この手を取るかは貴女次第。
老い先短い老害の安寧を捨て、未来ある貴女が自由を求めたとして誰も責めやしないわ」
述べるべきことをひとしきり述べてから、次にルフナに同意を求めた。
「村の老人たちを想ってここに残らないとって思ってるんだよね。伝え聞くように、真面目で優しいんだね。
分かってるんだろ、君が犠牲になろうと、ただ村の崩壊を先延ばしにしてるだけで、いつか限界が来るってこと。
神事だってどんどん頻繁になっているんでしょ。このままじゃ不安は無くならない。
何、僕らへの依頼は『君を盗む』事だ。その後は村に戻ろうと、それも君の自由だと思う」
ルフナもルフナでひとしきり言うべきことを述べたきり、シジョウの返答を待った。
「ン、ンー……」
シジョウはといえば、こめかみに片手をあてて短くうなった。
うなったのち。
「リクツはだいぶ壊れてるけど、目的は分かったわ。誰かに……ううん、キリタカに頼まれて私を攫いに来たってところでしょう。
引き受けた理由はなに? 友情? 正義感? 金?」
「三つ目だと言ったら?」
即答した綾女に、シジョウはよにもシニカルな笑みを浮かべた。
「ほかの二つよりずっと信用できそうね。要は私も村もキリタカも、本当はどうでもいいってことだもの」
●神は他人である。他人が他人を救うには、相応の報酬があるものだ。
炎がともる。
たいまつをもった村人達が、より一掃に目をぎらつかせ、舞う巫女をにらんでいる。
誰も何も言わないが、彼らの目には巫女に対する不満や要求が透けて見えた。
今日村の外からよそ者が火を放ちに来た。
意味も無く村を害するようなことをされた。
なにも悪いことなどしていないのに、善良に清潔に生きてきただけなのに、なぜこんな目にあわなければならないのか。
神への祈りが、足りていないのではないか。
そんな視線である。
「くだらない。もう終わりよ」
金髪のウィッグを投げ捨てて、綾女は舞うのをやめた。
騒然となる場。
たいまつを持った人々が綾女をにらみつけ、巫女はどこだとわめき散らした。
そんなこと、今更意味などなかろうに。
「悪いけど、もう相手をしてあげるつもりはないんだ」
ノワは『RLaR』を放り投げ、派手に炸裂する爆竹に驚いているすきに綾女の手を引いて走り出した。
「あとは任せたよ」
「足止め時間稼ぎのたぐいは得意……かもしれないのです」
クーアは『すぐに追いつくのです。物理的に』と述べてから粗末な武器を手に襲いかかろうとする村人を蹴り飛ばした。
すさまじい鋭さで蹴りつけたからか、村人は派手に吹き飛んで後ろの誰かにぶつかって転がった。
「全員『ジュッ』てするわけにはいかないですからね……出てきて手伝うのです」
「ふむ」
闇に紛れて姿を隠していたルーチェが、能力を解いて村人たちの前に姿を見せた。
「飽きれた者たちだな、昼間あんなことがあったというのに、まだ巫女にすがるか。
貴様たちが信仰している"神"とやらはよほど"無能"であろうな、なんだって今でも貴様たちの不安を取り除いてくれぬからな」
「黙れ、よそものが神を汚すな」
「貴様たちもそうであろう。貴様たちがやっていることはもはや"信仰"ではなくただの"現実逃避"であるからな。悔しかったら今の村の状況に抗うことぐらいしてみせたらどうだ?」
ルーチェのあおるような言い分に、村人たちは怒りをいっそうあらわにした。
物理的にでも黙らせようと、無策に襲いかかる村人たち。
「哀れな」
ルーチェは首を振り、村からの撤退を始めた。
なぜ彼女たちがここまで余裕をもってコトを成せたのか。
その理由は既に本物の巫女は村を出ていたからに他ならない。
腕に噛みつく熊とオオカミを混ぜたようなモンスターを見て、武器商人はヒヒヒと笑っていた。
彼女(?)は巫女さえ守れればそれでよい。倒したり払ったりする手間を仲間に一任して、ただ巫女を庇うことにだけ集中していた。
して、誰が任されたのかといえば……。
「しかし、こんなモンスターを放っておいてよく連中は無事だったナ」
大地はモンスターめがけて『宿木』の術を放つと、素早く近づいて『竜胆』の術を用いて斬り付けた。
「車にはまだつかないのか」
「ええ、残念ながら」
バルガルは弱ったモンスターを鉄板仕込みの革靴で蹴りつけると、指にキーホルダーのリングをひっかけて自動車のキーをくるくると回した。
「あなたが言ったんじゃありませんか。『見た目に騙されるな。あんなの馬のないただの馬車だ。モンスターに襲われれば即スクラップだ』と」
「言ってなイ」
「言ってませんでしたねえ」
無表情と笑顔の中間のような、いかにもうさんくさい顔をして唇をゆがめるバルガル。
ルフナは『神奈備』の術を用いて彼らの傷を治癒すると、先を急ぐように声をかけた。
「目的のポイントが見えてきたよ。みんな――」
武器商人たちは身を寄せ合い、モンスターをなんとか追い払いながら自動車へと到着。すぐさま森から出ていった。
「ところで」
後部座席に座り、武器商人はぽつりともらした。
「キリタカの旦那にとっては、カミサマってどういうものだったんだろうね」
「さあ。なんでも構いません」
バルガルはキーをひねりながら。
「その後を選ぶのは依頼人であり、巫女殿ですからね」
●後日談のない犯罪
一同は監獄島に戻り、キリタカにことの次第を説明した。
巫女は救出され、村人に人的被害は出ず、森と数件の空き家が燃えた程度で済んだという話だ。
キリタカは安堵の混じった渋い顔をして、よくやってくれたとコインのつまった袋をよこしてきた。
余談。
綾女はうけた報酬をほとんどシジョウに渡そうと袋を突き出したが、シジョウはそれを手のひらで押し返した。
言い分はこうである。
「知ってる老人を金で売ったみたいじゃない。嫌よそんなの、気分が悪いわ」
続けてこうも述べた。
「キリタカには礼を言っておいて。彼があなたたちを雇ってくれたおかげできれるカードが増えたわ。あの盲目的な老人たちに、いい加減建設的なことをさせないとね」
巫女シジョウは、どうやらしばらく村には戻らないつもりらしい。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――状況終了。
――追加報酬が入りました。
GMコメント
※このシナリオでは、結果次第でゴールドの追加報酬を得られることがあります。
●巫女を盗むまで
この作戦では、各パートでイレギュラーズが分担・協力しあい、それぞれの能力や工夫をこらす必要があります。
ひとりでいくつもの役目をこなそうとするとプレイングのバーストが起きますので、かならず役割分担をするようにしてください。
ざっくりと【昼の部】【夜の部】でそれぞれ一つずつ役割を持っておくとバランスがよいでしょう。
やるべき役割は以下の通り
【昼の部】
・村へ気づかれないように侵入する。また、同行する仲間が見つからないようにサポートする。
キサラギ村の住民は毎日ほとんど同じサイクルを続けています。そのため動きが読みやすく、見つからないように侵入することも可能でしょう。
できれば急な接近に気づけたり、万一見つかっても人を呼ばれる前に『なんとか』できる必要があります。
※不意打ち可能かつ非戦闘状態であることもふくめて、村人はHP500~1000程度あると仮定して考えます
・社への侵入
鍵を開けて侵入、ないしは裏口を破壊して侵入します。前者のほうが圧倒的に発覚リスクは低いでしょう。
・巫女シジョウへの説得
シジョウは自分が村から消えることで老人達がパニックを起こすことを考え、自分自身のことを諦めています。
彼女を説得する必要があるでしょう。
説得内容がまるごと被ったり、矛盾した内容をぶつけるといった説得交通事故には注意してください。
ここで信用と協力が得られないと、後の作戦が非常に困難になります。
説得専門の担当者を用意しておいてもいいくらい重要です。
・騒ぎを起こす係(陽動)
仲間が村に侵入をしている間、村の近くでなにかしら騒ぎを起こしておくとよいでしょう。
村人はよそ者の侵入をひどく嫌っており、よそ者を根本的に信用していません。
そこをついて面倒な状況を作ったり、人が沢山寄ってこないと解決できない面倒ごとを起こしたりするのが妥当です。(逆に1~2人で対応可能な状況だと陽動効果が低減します)
【夜の部】
・巫女と入れ替わって舞を披露する
事前に練習が済んだものとして、舞を披露します。(練習風景や練習プランをプレイングに書き込むと確実にバーストするので省略するようにしてください)
ダンスやステージでの振る舞い、音楽系の技能に優れているとなおよいでしょう。
上手に(そして元の巫女にそっくりに)踊れていればいるほど場の住民達をだませる時間が増えます。
・偽の巫女を村から逃がす係
巫女が偽物だと発覚すると、村人達が血眼になって捕まえようとします。
当然偽物は非常に大変なめにあうことになるので、なんとしてもこの場から脱出してください。
一人だけでこれをこなそうとすると、とてもよくない未来が待っていそうなので、最低でも一人(できれば二人)は近くに潜伏させておいて協力させるようにしてましょう。
村から脱出する、ないしは村人たちを鎮圧する方法は『任意』です。
相談して、これがよいと思った方法をとってください。
(最悪全員抹殺して逃げ出すプランもあります。重症リスクあり)
・巫女をつれて夜の森を脱出する
村から脱出するためのルートは(土地柄その他諸事情から)ひとつしかありません。
しかし真夜中になると野犬型のモンスターが徘徊し、ひとの臭いをかぎつけて次々と襲いかかってくるでしょう。
これを倒し、巫女を守りながら外へと脱出します。
モンスターの個体戦闘力は低いですが、次々と襲いかかってくるため継続戦闘能力が求められます。またダメージの蓄積や【出血】などのBSに注意してください。
巫女が直接狙われるリスクは皆さんが狙われるのと同等くらいなので、このパートの担当者が多いほど実質的に巫女が狙われるリスクが減ります。
【???】
巫女を連れ出すことができたらこの依頼は終了します。
監獄島に戻って依頼人のキリタカに一部始終を隠さず報告してください。(このとき虚偽の報告をしないようにしましょう。多分後々バレます)
依頼の成果に応じて、ゴールド報酬が追加されることがあります。
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