PandoraPartyProject

シナリオ詳細

大変だ! 頭にイカが刺さって首にタコが巻き付いて腹部に焦げたキツツキの死体を抱えてブリッジした全裸中年男性の死体が見つかったぞ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●一体誰がこんなことを……
「これは……ひどい……」
 幻想首都・裏路地のあばら家の一室。
 第一発見者はそう言うなり声を失った。
 同時に顔を見せた家事手伝いはドア横に盛大にゲロった。
 にわかに騒がしくなる周囲で、現場保全を実行するのは本来、かなり難易度が高いのだが。
 目の前に広がるその光景を見てわざわざ手を出しに行こうとする人々はそうはいない。率直に言って、関わりたくはない。
「クソッ、こんな時に情報を集められて頭がキレて謎を解いてくれそうな……そんな人達がいれば……!」
「なるほど事件ですね。助力がご入用でしょうか」
 第一発見者が頭を抱えていると、唐突に後ろから声をかけられた。黒一色のスーツ姿は、幻想の裏路地で見るにはあまりに不釣り合いだ。だが、だからこそ身元を特定しやすい。
「アンタ、ローレットの人間か? 誰かアテはあるのかい」
「誰、というアテはありません。ですが……」
 イレギュラーズなら大抵のことはできます、と。彼女、『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)は静かに頷いてみせた。

●現場保全にも限度はある
「いらっしゃいましたか。では、早速ですがあとは私達だけにしてください」
 イレギュラーズが到着するなり、三弦は第一発見者と居合わせた一般人を締め出すと、現場の扉に鍵をかける。
 そして、イレギュラーズに向き直るなり彼女はとんでもないことを口にする。
「皆さんをお呼びした理由はひとつ。この事件……いえ事故に近いでしょうか。その真相を『でっち上げて』ほしいのです」
 ……は?
 いやいやいや、自分達は『解決』の為に呼ばれたのではないのか?
 なにをトチ狂ったら『でっち上げ』に加担する必要が出てくるんだ?
「前提として、今回の一件の犠牲者の方には身寄りがおられません。そして、この一件、『正確な解決』を求められていません。
 人々にとって重要なのは、『この事件が我々によって解決された』という言質であり、真相の所在は二の次なのです。それに……」
 こんなトンチキな事態が何度も起きるはずがないので、いいんです。
 三弦の口ぶりはなんともアレだが、人の心を落ち着ける為に嘘をのたまうことは決して悪とは言えないだろう。
 ……さて、『諸君が思うに』、一体なにが起きたらこんな事が起こり得るのだろうか。
 ここはひとつ、その知恵を拝借したい。

GMコメント

 本当に何が起きたらこんなことになるんでしょうね。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。
 終わった話は新展開を迎えないんだ。2期なんてなかったかのように。

●成功条件
 この「事件(?)」の真相を言い当てる(でっち上げる)。
 ぶっちゃけた話、真相は闇の中ですが事故寄りの事件みたいな話らしいことはうっすら判明してますし、居合わせた人達も無害です。戦闘はありません。
 ですが、この状況で事故だよって言われて普通の神経だったら納得できないので、じゃあ適当に理由でっち上げたほうがなんぼか精神衛生的によくね? ってなった次第です。
 なお居合わせた人達は真相を知りません。

●何をすればいいの?
 まずそれっぽく調査をして(アイテム、スキル、そんなんないけどハッタリを利かすなど)、
 そこから適当に話を広げて(広げられれば広げられるほどいいです)、
 居合わせた人達を納得させましょう(強引でも構いません)。
 NG行為は「他人の推理を否定すること」(居合わせた人達を騙すという目的を阻害し、ハイルール違反です)と「仲間含め、一切の加害行為」の2点とします。
 明文化されてなくても、倫理的・公序良俗の範囲内であまりにアレだとコレされます。

●なお
 この一件には3点ほど謎があります。元から謎だらけですが。
・なぜ軟体生物が人の頭蓋を突き破れたのか?
・タコは発見時絶命していた。締め上げたのか、巻いていたのか、それ以外?
・キツツキが焼け焦げた意味は?
 ……これだけじゃない気もしますがすべて闇の中。正解は「ありません」ので皆さんの拡大解釈こそが正解です。

 さあ、すべてを騙し通しましょう。
 ご参加、お待ちしております。

  • 大変だ! 頭にイカが刺さって首にタコが巻き付いて腹部に焦げたキツツキの死体を抱えてブリッジした全裸中年男性の死体が見つかったぞ!完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年03月17日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)
自称未来人
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
世界の合言葉はいわし
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心

リプレイ

●情報屋の人選がガバいがこれも道理だ
「本日付で名探偵に就職しました未来人ですっ! この難事件、1シナリオ持たせて見せますっ!」
「スタァーーップ! ストップですわ! 急に何を言い出しましたの!?」
 『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)の初手ぶっちゃけに『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)がツッコみを入れる。あれ、なんか珍しい構図な気がしないでもない。
「……やってやるよ……ボクは探偵だぞ? その沽券にかけて、真っ当に事件を解いてやる」
 なお、真っ当な方の探偵である『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は2人のやり取りを聞かなかったことにしてマインドセットをこなして捜査と推理を始めた。聞いてはいけない。こと、ヨハナの台詞群については断じて。
「ブリッジゼンラって儀式は知ってる?」
「ナンテ?」
 だが『エンジェルいわし』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)に秒で『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)が聞き返す様などはもうツッコミが追いつかない。
 まあ推理は否定しちゃいけないけどツッコんじゃいけないとは一文字たりとも明記されていないのでね。疑問は解消しておかないといけないからね。
「故郷では、噂に聞く特異運命座標の活躍に心躍らせて、世界を滅ぼす魔種達との戦いが上手くゆくよう、祈っていたものです……なのに、召喚されて初めての依頼がこんなのだなんて!」
「我(わたし)にとっては見慣れた光景だわ。汝(あなた)もすぐに慣れるわよ」
「それ慣れる必要あったんですかね……?」
 エルシア・クレンオータ(p3p008209)が憧れとまるで違う現実に膝を屈したが、すかさず『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)がフォローに回る。回るんだけども、『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)が疑問に思う通りフォローになってないのが酷い。
「頭痛がする……何を見せられてるんだ、ボクは? 魔力を狙った未知の攻撃か……?」
 シャルロッテがこめかみに指を当てながら正気を疑うのも無理はない。MアタックというよりもSANアタックな気がするのだが、ツッコめているのでまだ正気は残っているはずだ。
(でも……戦えと言われるよりはよっぽど安心で、ホッとしています……少しでもこの世界を救うお役に立てるといいのですけれど)
 エルシアはどこか安堵したような表情を一瞬浮かべたが、彼女の心境を知らなかったなら「あ、これはヤバいな」と思ってしまう。参加者全員既にヤバいんだけどな。
「良いですか」
 カツン、と高らかに靴を鳴らしたウィズィニャラァムが短い髪を左右に振り乱しながら大仰に首を振り、クイッと顎を引いて上を見ながら一同に語りかける。
「ここは混沌世界……常識と常識がねじれ合う思考の坩堝。即ち、一つの常識に捕らわれていては真実を見逃してしまいます!」
「つ、つまり……どういうことですの?」
「探求とは常識を疑うところから始まる! そう、全ての出来事を逆転の発想で捉えるこの私……逆転探偵! ウィズィニャラァムが! 全ての謎を解いてみせましょう!」
「まあ! 心強いですわ!!」
 ウィズィニャラァムの堂々たる口上に的確にリアクションをあわせるタント。熟練の餅つきペアの如く息がピッタリだ。
「……お茶でも淹れるわね」
 レジーナはその様子に何を思うでもなく、自身の推理を開帳する前に他人のそれを聞くべくお茶を淹れ始めたのだった。全裸中年男性の家で。

●連鎖行動(トンチキにトンチキをおっかぶせて更にトンチキで穴埋めする推理)
「この鳥は……深緑の森の奥に棲む爆発性キツツキ『ジバクゲラ』です」
「ナルホドね、被害者のキズのヒトツはセツメイがつくね」
 エルシアは先輩たるイレギュラーズ達をちらと見てから、独自の推理を始めた。尤も、『ジバクゲラ』が実在するかどうかは彼女の思考に拠るところであり、深緑に対して明るくない(と思われる)仲間達を前に口にしたのは事実だ。まあ最近、深緑も騒々しいから実在してても全然不思議じゃないが。
「犠牲者の男性がどこからジバクゲラを手に入れたのかは判りませんけれど、男性の姿勢から見るに、立った状態でジバクゲラが爆発して、仰け反りながら亡くなったことは確かなようです……」
 遺体からはつとめて視線を逸らしつつ訥々と推理を続ける彼女の言葉を、一同は固唾を呑んで耳を傾ける。
「見れば見るほど『それっぽく』見えてきますわね……するってえと何ですかしら? タコとイカが生の状態でここにあるのは」
 タント以外は。合いの手が居ないと話が続かないので基調なリアクション枠である。そして合いの手がなんかEDOっぽい。
「……つまり、もちろん『イカとタコを解凍しようとして失敗した』なんです」
 一同がざわつき、ヨハナが訳知り顔で目を光らせる。エルシアが知らず、彼女に視線を送っていたことも注目したい。
「誤解される方も多いのですが……ジバクゲラの自爆は、男性を仰け反らせる程度の衝撃がある一方で、燃えるのは自分だけなんです……ほら、男性もイカもタコも、ほとんど焼けていませんでしょう?」
「なるほど……! 点と点が線で繋がりましたわ!」
 タントの如くに賢明な人間なら既に気付いたであろう。エルシアがどんな推理にたどり着いたのかを。そして、それが彼女ですら直前まで気付いていなかった真実であることに。
「つまり真相はこうです。この男性はイカとタコを解凍するためにジバクゲラを捕まえてきて使おうとしたが失敗した。爆発の衝撃で仰け反ってしまい、勢いあまってイカが頭に刺さりタコが何かの間違いで首にまきついてしまい絶命……ジバクゲラは腹部で焦げたんです!」
「なるほどっ、採れたてピチピチしっとりフレッシュなイカタコの説明としてはこの上なく筋が通っていますねっ!」
 ヨハナがその結論に、拍手を交えて称賛の姿勢を見せた。事前に各人、ああでもないこうでもないと考えていたがよもやここまで正解(ヨハナ視点)に近い推理を経験の浅い新人イレギュラーズがしてくるなどと誰が想像しただろうか(反語)。
「そこで、ヨハナはこう考えました。……犯人はイルカですっ!」
「急に何を言い出しましたの!?」
 ホントだよ。ヨハナの結論にはタントじゃなくたって理解が追いつかないはずだよ。普通。
「冷凍されたイカタコを鋭利な武器として使い、何者かがおじさまを殺したっ! しかも時間が立てば解凍され、ただのイカタコに戻るっ! 凶器も勝手に消滅してしまうのですっ!」
「頭蓋骨貫通の理由としても、事件の説明としても妥当なところね」
 レジーナは滅茶苦茶あっさりとそのロジックを理解し、紅茶を口にする。全裸中年男性の家にあるんだ、そんないい葉っぱ。
「地底に人類を敵視する邪悪なイルカが封じられていることはもはや周知の事実っ! このようなおぞましい犯行現場を人間がつくるとは思えませんっ。
 人間がやるとは思えない……だから人間以外の犯行っ! つまりイルカっ!」
「確かに筋は通って……いや、しかし……!」
「落ち着いて! まずは話を聞きましょう!」
 シャルロッテが正気を失いかけたところに、すかさずタントの言葉が挟まれる。ある意味BS回復である。なけなしのAPがこんなところで消える。
「それにイカタコいわしはイルカの大好物っ! 人間が狩猟した動物の一部を武器にするよう、イルカが海産物を武器に転用してもおかしくはありませんっ!」
「いわしを食べるな」
「落ち着いてくださいまし! 推理なうえにここにはいわしを食べる方はおりませんわ!」
 推理の合間に唐突に放り込まれた「いわし」の三文字にアンジュが反応するが、そこもタントのインターセプトで事なきを得た。
「そしてたぶんおそらくきっとメイビーですが、現場には犯人の『足跡』が存在しないはずですっ。足ヒレを使って移動するイルカが足跡を残せるはずがないんですっ」
「えっ、そんなまさ……ホントですね!?」
 ヨハナの指摘を受け、思わずウィズィニャラァムが足元を見るが裸足とイレギュラーズの足跡以外見当たらない(ように見えた)。
 こいつぁマジだ。
 そんなワケで、ヨハナの言葉にまさかの裏付けが取れた状況にいささか驚きを覚えつつ、「ソレジャ」と言葉を発したのはジェック。
「イカの触手をコオらせれば頭蓋骨を突きヤブれるだけの強度を持つことはスデにヨハナが説明したトオりだ。しかし、頭蓋骨をツキ破るには強度のホカにハヤさが必要になる。被害者がヨケたり抵抗しようとしたならば、イカをそのままサしたのでは刺さるはずがナイ」
「つ、つまり……どういうことですの?」
 仲間達の推理がここで活きる。ジェックはヨハナとエルシアの推理を思い出しつつ、言葉を選ぶ。
「ハヤさを補うタメに使われたのが……この爆発性キツツキさ」
「じ、ジバクゲラがですか?!」
 思わぬ方向からの援護射撃というか理論補強にエルシアも目を丸くした。もっと自信持って。君の推理だよ。
「被害者はキツツキが爆発性ダト知らなかった。犯人はキツツキと共に、冷凍して十分な硬度をモったイカを料理の過程とショウして被害者に持たせ……キツツキは爆発。勢いをエたイカが被害者の頭にツキ刺さったノサ。
 ……ブリッジになったのは爆発の反動…じゃナイかな」
「混沌ならでは……ですわね!」
 むしろ混沌じゃなかったら成立してほしくない推理であるなあ、などとウォーカー2人が思ったかどうかは定かではない。ないが、筋は通っていた。
 全裸である理由もちらりと考えたが、「風呂上がりに体を拭いて服を着ずに調理しようとした」ってマジでどうなんだろう、と思ったジェックは有為な推理を他のメンツに任せることにした。丸投げってやつだ。
「……さっきも皆に聞いたけど、ブリッジゼンラって儀式は知ってる?」
 一旦3人の推理が出揃ったところで、アンジュが口を開く。
 ここからが(ここからも)本当の地獄が始まる。全員が固唾をのんだ。

●同質量のトンチキを正面衝突させれば対消滅するみたいな展開やめてください
「これは代々秘められた禁じられた儀式なんだけど、いわしを悪魔的概念なものに見立て、体に取り込むことで自らをデビルいわしと化すために、はだかになってブリッジしながらエクソシストエクソシストするんだって。今までの話からすると、このひとは悪魔的概念として身に宿すためにいわしを食べようとしたんじゃないかな」
「あの……えっと、悪魔的概念を取り込む際にエクソシストエクソシストしたら対消滅……しないんですか?」
 ウィズィニャラァム、今期一番の絞り出すようなツッコミ。だがいかにF1カーといえどドラッグスターに初速で勝てないように、泥縄が手遅れと同義であるように、ポイントを押さえてツッコんでもまともな回答は得られぬのである。
「自分もすごくてかっこいいデビルいわしになりたくて、なにをやってもだめだめな自分を変えたかったんだね。ブリッジゼンラしたら過程はともかくデビルいわしになるからね」
 過程はともかく。
「でもね、このひとのペットのイカとタコとキツツキがそうはさせなかったんだよ。イカくんは怒ってヤリみたいに飛んでって頭にぶっささるし、タコちゃんも悲しんで窒息させて気絶させようとして、キツツキさんもいわしを食べるくらいなら自分を食べろって焼き鳥になっちゃったわけ。これはこれで心中みたいできれいな画なのかもしれない。どっかの〇ロとパト〇ッシ〇みたいな。それがなにかはしらないけど」
「オーッホッホッホッ!! 面白い推理ですわ! イレギュラーズなど止めて探偵になったらどうですかしら!」
 悲しい事件だったね、と憂いを交えて口にするアンジュを持ち上げたタントの内心がどうであったのか、知る由もない。
 そして、正気的に一抹の不安を覚えた一同をよそに、レジーナはふ、と得心したように頷いた。
「魚が魚雷になるくらいだし、キツツキが爆発しても悪魔的いわしがいても不思議じゃないのだけれど、汝(あなた)達の推理で細かい疑問は払拭できたわ。……我(わたし)の予測ではこれは不幸な事故だったのよ」
「な、成程! 事故というのなら道理は通らなくも」
「この男性は元々海辺の方で海水浴でもしていたのでしょう、キツツキの奥さんと一緒に。全裸なのはそういう理由ね」
「えっ」
 シャルロッテは普通だな、と推理に感心しかけ、次の瞬間に首を捻った。そんなハトのおよめさんみたいな。
「しかし不幸だったのはそこに竜巻が発生したことかしら。海水浴中の男性はその竜巻に巻き込まれて周囲の生き物ごと巻き上げられたのだわ」
「にわかには信じられませんわ……」
「タツマキか……」
 タントとジェックがなんか納得しかけているノリなのだが、いいんだろうか。室内じゃなくて浜辺、しかも冬なのだが。
「でも竜巻は通常雷雲とセット。キツツキの奥さんは運悪くその時雷に打たれてしまったの。そうとは知らず何とか奥さんを抱えた男性はギフトを使ったの……テレポートをね」
「なるほどなるほどっ、つまり――」
「その際の座標事故でイカが頭に突き刺さり、タコを巻き込んでここに顕れたわけなのだわ」
 推理を締めたレジーナに、ヨハナは高らかに拍手を響かせる。確かに道理ではあるのだ――果てしなく雑味の深い最後を除いては。
「では、私も自分の推理を披露するといたしましょう。この事件、全て発送を逆転させればいいのです!」
「お、おお……?」
 誰のものともしれぬ感嘆の声があがる。常識と固定観念に囚われていては真実に辿り着かない。つまりそういうことか。
「まず、何故軟体生物であるイカが頭に刺さったのか……逆に考えて下さい、このおっさんの頭の方がイカより柔らかかったからです!」
「そ、そんなことって……!」
 タントが『逆転の発想』に声を失うが、事態はそれだけに留まらない。まだまだ、推理は続くのだ。
「首に巻き付いていたタコが死んでいたのは何故か……? 逆に考えて下さい、そもそも、タコが死ぬ気で締め上げたからです!
 キツツキが焼け焦げた意味は!? 逆に考えて下さい、キツツキが焼け焦げたことに意味があるのではありません。むしろこのおっさんが焼け焦げていないことが問題なのです!」
「そ、それはきっとジバクゲラの……」
「良いですか」
 エルシアが思わず口を開こうとしたところで、ウィズィニャラァムの靴が高らかに響く。コレは事件の確信にいきそう。
「そもそもこの事件――殺人鬼がタコやイカを使ってこのおっさんを殺したのではありません。逆に考えて下さい。タコやイカが自らの意思でこのおっさんを殺したのです!」
 つまり、バーニングタコとフレイムイカ、そしてペットのキツツキの戦闘の果てに通常攻撃でおっさんが殺されたというのが事の顛末だそうだ。服? 着てなくてもいいのさ。
「頭が痛くなるような話だが道理は通っている……だが、ボクは敢えて着眼点を変えるよ。イカが頭蓋を貫通したんじゃない。キツツキが穿った頭蓋の穴に、イカが後から収まったのだよ」
 遂に、シャルロッテが話し始める。そしてそれは……すごく道理にかなっていた。
「現場には二人の人間が居た、被害者とAだ。この二人はイカやタコを含む海産物を焼いて食うつもりだった。しかし焼く為の火が被害者のペットであるキツツキに引火、キツツキは自分の危機を飼い主に知らせるべく被害者の頭を必死で突いたのだ」
「ははあ、言われてみれば納得ですわね!」
 頭蓋をカチ割られた痛みならブリッジも納得である。
「Aは大慌て、錯乱し直接圧迫で止血すべくイカを傷口にねじ込んだのだ。それでも止まらない出血を間接圧迫で止めるべく、タコを巻き付け首を絞める形になった……こうして『頭にイカが刺さって首にタコが巻き付いて腹部に焦げたキツツキの死体を抱えてブリッジした全裸中年男性の死体』は出来上がったのだよ」
 自宅で全裸になる理由? 本人の自由だ――そう言い終えたシャルロッテは、ぐったりと床に座り込んだ。
「シャルロッテ様、お疲れ様ですわ! あとはこれらの推理を、このわたくし!」
  \きらめけ!/
  \ぼくらの!/
\\\タント様!///
「──の頭脳でもって整理して! 一件落着ですわーー!!」
 ともあれ、全員のまとまりがあるんだかないんだかわからない推理は、無事に人々を納得させるに至ったのである。
 なお、シャルロッテはパンドラこそ減らなかったが知恵熱で2日ほど寝込んだ。

成否

大成功

MVP

シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵

状態異常

シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)[重傷]
ロクデナシ車椅子探偵

あとがき

 ボケとボケがぶつかっても対消滅するどころか重力波が発生してブラックホールになるんだよ。
 MVPは正気度の喪失具合がいちばんヤバそうなシャルロッテさんです。おめでとう。おめでたくねえ。

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