シナリオ詳細
MOLYBDENUM SUPER ARENA――SPECIAL MATCH!!
オープニング
●VSコンバルグ・コングMILD
「鉄帝の民は屈強である。
鉄帝の民は勇敢である。
この大地モリブデンは魔種の災厄によって一度は破壊され、あらゆるものが失われた。
しかし――!」
マイクを片手に叫ぶサングラスの男。
かれは蝶ネクタイをキュッと直すと、空高く手を掲げた。
幾度の砲音が響き、空に七色の煙がパッとはぜた。
発煙筒を握った飛行種たちが空を美しく飛び、青空に『MOLYBDENUM』の文字を素早く描いていく。
「我々は立ち上がった! 見よ! この大歓声!!!!」
わきあがる人々の声。
ここはつい最近まで更地だった場所だが、鉄帝民のタフなパワーによって新闘技場『モリブデンスーパーアリーナ』が建設され、そのオープニングセレモニーが開催されていた。
かつて地下闘技場で戦っていた何人ものファイターが闘技場スポンサーや関連企業から声をかけられ、広い会場に集まっている。
これから始まる新しい闘技場の歴史に、彼らもまた胸を躍らせているようだ。
レフリー担当の男は白い歯をキラリと光らせ、マイクを叩いた。
「さて? モリブデンといえば彼らを忘れてはいけませんね?
我らを救った世界のヒーロー! ローレット・イレギュラーズ!」
セレモニーのゲストとして招待、もとい依頼をうけた八人のイレギュラーズは、それぞれ完全武装状態でできたばかりの闘技場の芝を踏んだ。
吹き上がるスモークとはじける火花。鳴り響くロックミュージック。プロレスのごとき入場演出に、無料開放されたギャラリーは盛大にわいている。
「彼らの闘技センスは我々ゼシュテルヘッズも目を見張るものがあります。きっと将来は今をしのぐパワーを身につけ、世界の敵と戦うことでしょう」
雄弁に語るレフリーは、イレギュラーズの入ってきたのと逆側のゲートを指さした。
「そう、彼のような強さを! 紹介しましょう。もうひとつの特別ゲスト――ラド・バウA級闘士! コンバルグゥゥゥゥウ・コォォォォォング!!」
「ホワアアアアアアアアアアア!!」
鋼鉄の入場ゲートを拳で粉砕し、無意味な鉄板とかした扉を投げ捨てるコング。
会場じゅうが震えるほどの咆哮をあげると、アーマーの胸元をガンガンと叩いて見せた。
ラドバウのA級といえば皇帝たちS級から数えて二番目。
皇帝らがファイターとしてエントリーしない今、コングたちA級は闘技場の花形である。会場のウケはもはや鉄板。コングもそれを理解してか、会場中にみえるようにドラミングをしてみせる。
「では早速本日のオープニングマッチをお届けしましょう! 題して――!?」
ドラムロールの末、魔術式電光掲示板にドンと表示される文字。
それは。
「コングタイマン八本勝負!!」
●コングタイマン八本勝負
「よう、いつもすまねえな」
『KONG』と書かれたベースボールキャップを被った彼の名はDD。コングのマネージャーを務める男である。
彼はいつものようにローレットに依頼書を差し出すと、カフェの店員に『コングのイケイケバナナシェイク』を人数分注文した。
「コングの旦那は闘技以外にはキョーミのないお人だったんだが、アンタらのおかげで最近は広告とかイベントの仕事を受けてくれるようになったんだよ。鉄帝の連中も大喜びさ」
こんなハナシの切り出し方をするからには、今回もまた広告やイベントの仕事なのだろう。
実際、依頼書には『イベントスタッフ』と書かれている。
「広告はな、機嫌の良いときにサッと撮影してサッと撤収すればなんとかなるんだが、イベント仕事はガマンが多い。あの人は我慢と予防摂取が大嫌いなんだ。だから、よっぽど好きなモンを一緒にしてやらんと受けてくれねえ。
分かるだろ? コングの最近のお気に入り。つまりアンタらローレットさ」
DDの依頼はシンプルだ。
コングと一緒にモリブデン新闘技場のセレモニーに出席し、オープニングマッチを彩ってほしいというものである。
「ローレット! オマエ! オモシロイ!」
大地をズドンと殴りつけるコング。それだけで地揺れがおき、プレートをもって立っていたコンパニオンが転倒した。
「オレと、戦え! 一対一――タイマンだ!」
- MOLYBDENUM SUPER ARENA――SPECIAL MATCH!!完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年03月20日 22時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●モリブデンスーパーアリーナ
鉄帝首都スチールグラード。その一角にかつてあったとされるスラム街は、あまりにも急速な再開発によってその面影を喪失していた。
代わりに存在するのは真新しい闘技場とショッピングモール。そして新興団地。
新築のにおいが残った闘技場控え室に、彼はいた。
「コンバルグー!」
両開きの扉を突き飛ばすように開き、『魔法騎士』セララ(p3p000273)は控え室へと突入した。
相手はもちろんラド・バウA級闘士コンバルグ・コング。
「オマエ、セララか……」
「今日はリベンジだよ! ボクってばこう見えて負けず嫌いなの。目指せ勝利だよ!」
「ウホッホ……」
『朝を呼ぶ剱』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は同じく控え室に入り、コング用にアーマーラックへかけられたハンディアーマー(リミッター装備)を見た。
「まさかあのコングさんと直接戦える機会がくるなんて、光栄です!
全力を尽くして、盛り上げてまいりましょう!」
「オマエは……シフォシフォ」
「シフォリィです」
「あたしはラド・バウには疎いけどさ、あんたの名前ぐらいは聞いた事があるよ」
開いた扉によりかかり、腕組みをした『風断ち』ニア・ルヴァリエ(p3p004394)。
「光栄だよ、A級闘士! ハンデ付きってのがちょっとばかし締まらないけど……」
「オマエ、シッテル。風使い」
「!――!?」
台詞の途中でコングを二度見するニア。
「旦那は最近ローレットにご執心でね。そこらのヤツよりローレット・イレギュラーズに詳しいのさ。ま、他のこともこのくらい覚えてほしいもんだが」
マネージャーのDDがしょいこ一杯のバナナと共にやってきた。
「ふうん……」
『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)は担いだライフルをケースから取り出し、いつでも出られるようになれた手つきで準備をしていた。
「オマエ、じぇっく」
「ホントに詳しいんだね? ……マッテ、発音」
「オマエは……森ゴリラ」
「せめて名前で覚えて!?」
『イワ死兆』フラン・ヴィラネル(p3p006816)が振り返ってから、そして頭を抱えてねじれた。
「どどどどうしようコングさんとたわむれるイベントだから来たのにタイマンなんて聞いてないよ! 今からなに覚えればいい!? 教習所で銃を向けてバイクで防御すればいい!?」
「混ざっテル混ざっテル」
「安心しろ。勝つことや生き残ることが目的じゃない」
後ろから現れた『展開式増加装甲』レイリ―=シュタイン(p3p007270)がフランの肩をポンと叩いた。
「レイリー=シュタイン……ショッケンが倒せなかった女」
ほほう、と顎をなでてどこか上機嫌のコング。
『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は口の片端をつり上げてシニカルに笑った。
「二つ名で覚えられるとはね。ま、私は鉄帝じゃ新参者だ。コンバルグ君に胸を借りるつもりで挑むとしよう」
「『レールガン』」
太い指でついっとマリアをさすコング。
二度見するマリア。
「空前絶後のォォォォオオオオ!」
控え室にローリングで突入してきた『Punch Rapper』伊達 千尋(p3p007569)が、気合いだけで名乗り始めた。
「超絶怒濤のバイク乗りぃ!
スラムのギャングを束ね上げ!
クーロン会を撃退した伝説の男ォ!
そう! この俺こそがぁぁぁぁぁぁぁアアア!?
『悠久-UQ-』の伊達――」
いちタメしてから、キメ顔でコングを見た。
「千尋だァーーーーーーーーーー!!!!!」
デスペラード! て言いながらポーズをとる千尋。
「さあ、試合が始まるぜ」
●エキシビジョンマッチ
歓声に沸く新闘技場モリブデンスーパーアリーナ。
鋼鉄の扉を拳で破壊して飛び出した巨大なゴリラことコンバルグ・コング。
咆哮と共に堅く握った拳で打ち鳴らす『コングドラミング』の重厚な音色に、観客達は大興奮だ。
対するゲートから現れるのは昨今人気の何でも屋ローレットから特別参戦した戦士。フラン・ヴィラネル。
深緑の霊木から削り出したという釘バットを手に現れた。
「コングさんとタイマン……リミッターつきとはいえがっつり格上。生き残れるか……? いいやだめだあたし勇気をだせ、おかーさんも言ってた!」
頭上に浮かぶ回想。『母』の仮面をつけた再現VTR用女性がささやいた。
『フランや、女は胸じゃないゾ』
「ちがう」
『女は度胸!』
「それだ!」
『熊に襲われたときは相手の腕を取って360度回せば勝てる』
「それか!?」
「ウホッホ!」
いつの間にか鳴り響いていた試合開始のゴング。
ナックルダッシュで突っ込んでくるコングに対し、フランはぬおーと言いながら飛びかかった。
振りかざして釘バットのスイングが、コングの頭頂部に直撃――かに思われた、コングの突撃はバットの力を相殺。釘は気合いゆえか表皮で止まった。
「うそん!?」
鉄の壁でも殴ったみたいに手がしびれる。
が、ここで引いたら女の名折れ。
「つたわれ私のゴリラ力! ふんぬ! ふおお……ウホオオオオオオオ!!」
びっくりするほど回ったEXAによって繰り出される謎の連続ゴリラスマッシュ。
が、それによって引き起こされたガス欠によりフランはぷしゅーといって三等親のねんどろみたいくなった。
「ぺひゅー」
次の瞬間繰り出されるゴリラタックル。
フランは回転しながら飛んでいき、お空にキランと星をつくった。
第二戦。シフォリィ・シリア・アルテロンド。
剣をおさめたままコングに一例。そして観客にも礼。
闘技場というフィールドに礼を尽くすその姿勢に対し、コングは両拳を合わせる姿勢で制止。根っからの闘士である彼が、シフォリィの姿勢に敬意を表した形だ。
「いざ」
剣に手をかけるシフォリィ。
その瞬間、既にコングは動いていた。
抜刀より早く至近距離へ到達。
既に振りかざされていた拳がシフォリィの顔面めがけて迫る――が、シフォリィは大きくのけぞることで回避。
暴風が髪をもてあそぶが踊るようにコングの側面へ移動。
しっかりとコングの目は彼女を追っている。反撃の機会なしと察したシフォリィはコングの後方まで回り込んでからあらためて抜刀。
まっすぐに突き出される剣が反転したコングの裏拳のナックルガード部分を削り火花を散らす。それでも無理矢理に突き込んだ剣がコングの脇腹へ突き刺さり、シフォリィは目を見開いてさらなる踏み込みをかけた。
「――ッ!」
コングの足が地面からわずかに浮く。
シフォリィは気合いの声と共に突き進みコングをフィールドの壁まで押し込み衝突させた。
が、そこまでだ。
シフォリィの胴体が鷲掴みにされ、彼女ごと無理矢理剣を抜くと豪快な三回転の末に天高く投擲。
空中で幾度となくスピンした末に両足と片手で着地すると、ショルダータックルを仕掛けてくるコングめがけて剣を構えた。
自らの気力を白銀の刃に変え、全長3mはあろうかという巨大なエネルギーソードがコングの拳と真正面からぶち当たった。
早々にスタミナ切れを起こしたシフォリィに代わり、観客席に混じっていたセララがダッシュジャンプでリングイン。
「今日こそ勝つよ、コンバルグ!」
魔法カードを一枚引き抜くと、セララのコスチュームがナイトのそれへとチェンジ。
赤い魔法の力を纏ってコングめがけて突撃していく。
――と見せかけて、コングの『攻撃による防御』によって繰り出される拳の下をスライディング回避。
回避仕切れなかった分を剣で受け、真っ赤な炎をあげながらコングの側面へ移動。
死角からの斬撃――がコングの『足』にキャッチされた。
「わっ!?」
足によって剣ごと持ち上げられぶん投げられるセララ。
余談だがこの技はコングがD級時代に使っていた技らしい。
「やっぱりコンバルグは強いね! ボクもめっちゃ燃えるし楽しいよ!」
空中でカードを抜いて飛行騎士フォームへチェンジ。赤い翼を靴から広げるとコングの周囲をジグザグに飛び回り始める。
「パワーも技も作戦も! ボクの全力をぶつけるよ!」
飛び回るセララに対してコングは両腕を下げたリラックス姿勢で停止。
隙だらけにすら見える姿勢のうち、最も死角になる位置からセララは必殺のギガセララブレイクを繰り出した。
――が、本能で察したコングが急速反転して剣を素手でつかみ取る。
――が、至近距離から構えた盾によるシールド・セララストラッシュがコングの腕を切り裂いて肩から抜けていく。
腕を押さえて引き下がるコング。判定勝ちのフラッグが上がったところで、セララはニッと笑ってその場から飛び退いた。
「今度は本気の時に勝つからね!」
一時の休憩を挟んだ後半戦。
「空前ぜ(略)――」
千尋がバイクをどるんどるんいわせながらリングインした。
「クリミナル!」
ビッとポーズをキメてから、千尋はバイクのアクセルをひねった。
「これが終わったらバナナスムージー奢ってやるよ!! 行くぞオラァ!!」
ボッといってバイクが爆発。
千尋は垂直発射された。
会場の全員が視線を下から上へとスライドさせ、しばらく空を見た後再び下へとスライド――させた所に待っていたのはアッパーカットの発射前姿勢のまま溜めているコングだった。
あっこれ死ぬじゃんと誰もが思ったが、予想はしかし裏切られた。
「だが苦しい時こそニヤリと笑え、傍から見てみな男だぜってヤツよ。
見てるかーーー!!!スラムの連中---!!俺輝いてるだろォーーー!!!」
落下と共に繰り出した千尋のパンチが奇跡的にコングのパンチの威力をギリギリ逃がす角度で命中。
千尋だけをよけてすさまじい上昇気流が天空の雲を散らし、渦巻いた風により周囲に蒸すような熱と気圧が走った。
と、そこにリングインする黒いバイク。
千尋はにやりと笑うと、バイクへ着地するようにまたがって離脱。
からのクイックターンでコングへ再びの突撃を仕掛けた。
「行くぜコングくん!これが今の俺の全力だァ!!
俺は! やれば! 出来る子なんだよォーーーーーーー!!!!」
迫るバイクを拳ひとつでぺしゃんこにするコング。
が、事前にジャンプしていた千尋の拳がコングの顔面へと命中。
大きくよろめいた――次の瞬間に繰り出された『回し蹴りパンチ』が千尋に直撃し、千尋は観客席へとまっすぐに突っ込んでいった。
飛んできた千尋を風のクッションで受け止めると、ニアは手すりを飛び越えてリングへと降り立った。
対するコングは手をぷるぷると振ってから、ニアへと身構える。
ここまでの戦いで披露が蓄積しているのは事実。とはいえ……。
「あたしのスタイルからしてまともに食らったら終わりだ」
ニアは風の精霊を呼びだし自らの周囲に強風を纏うと、その勢いのままコングへまっすぐに跳び蹴りを繰り出した。
広げた手のひらで防御するコング。捕まれる――と思われた寸前、それを先読みしていたニアはコングの手をホッパーにして反転。自ら纏っていた風をコングにだけ残すと、彼の動きを暴風によって制約しはじめた。
風にまかれぶんぶんと首を振るコング。
「効いてる? ……いや、油断したら死ぬ」
相手はA級。小手先の技で完封できるような領域にいない。
ニアはあらためて短剣を抜くと、コングの周囲をぐるぐると走り回りながら小刻みに風を斬り付け続けた。
切断された風はコングの鼻を殺し、意識を断ち切り、ニアへと集中させ隙を大きくさせていく。
狙うならここだ。
ニアはピンポイントで飛び立つと、コングの腹へと自らの短剣を突き立てた。
直撃。
深々と刺さった短剣――と、ニアをまるごと抱きしめるコング。
否、これは!
(鯖折り!?)
めきめきと骨がいかれる音がする。
このままでは――
と思われたその時。観客席の階段を駆け下りたマリアが跳躍。自らに超電磁の力を纏うと、はじかれたようにコングめがけて跳び蹴りを繰り出した。
ニアを解放し飛び退くコング。
地面に突き刺さったマリアはしかし電磁力によって一ミリほど浮遊し、すさまじい速度でコングを追尾。
空中でコングをとらえると、目にもとまらぬ速度で連続蹴りを繰り出した。
足が無数に増えたように、観客達には見えたことだろう。
飛び退いた姿勢。それも踏ん張りのきかない空中での被弾に、コングはマリアの連打を雨に晒されるビニール袋のごとく無防備に打たれ続けた。
最後の一発が撃ち込まれ、ムーンサルトジャンプで離脱するマリア。
背中からズドンと落ちたコングは……しかし、まるで何もなかったかのような顔で起き上がってみせた。
「私は非力だからね。一撃は軽い。だが塵も積もればなんとやら! ってね!」
攻撃の手は緩めない、乱数起動をかけて相手の間合いを鈍らせる歩法を繰り返した。
「変わった歩法だろう…?習慣でね…。いつも歩幅と足運びの速度が違うんだ。 他人から見ると違和感があるらしくてね。よく気持ち悪がられたよ。さて、君には――」
「オモシロイ」
刹那のことだった。
隙を突いてパンチを打ち込もうと踏み込んだその時には既に、マリアの頭が捕まれていた。
ジャム瓶の蓋をあけるかのようなつかみ方で、ぎゅんと首をひねられる。
(嘘だろ)
自らの力が逆利用されたと気づいた時には、マリアはおかしな方向にねじれ、吹き飛んでいた。
「…………」
壁にめりこんだマリアを見下ろし、観客席の手すりに腰掛けていたジェックはぴょんとその場から――下りずに、不安定な手すりの上に立った。
「ジブンのフィールドで戦わせてモラウよ」
構えたライフルで足を狙って射撃。と同時に手すりから後方に飛び観客席の中を駆け抜けた。
対するコングは狙われる位置を本能で察して転がり、急所をさけてジェックを追い始めた。
ジャンプ一発で観客席へと乱入すると、ジグザグに逃げながら振り返るジェックに狙いを定める。
フィールドが無限に広い舗装平面でない限り、逃げ続けるということは困難である。ジェックも当然それを理解し、牽制をかけながら観客と観客の間を走った。
――が、一方のコングは周囲の観客を根こそぎ撥ねながらまっすぐに追尾。ジグザグ走行をしていたジェックを瞬く間にとらえた。
「――!」
くらえば終わりだ。
ジェックは大きく飛んでリング内へと離脱。
飛んできた複数の座席を逆クレー射撃の要領で打ち落とすと、最後に飛んできたコングに狙いをつけた。
「サテ、どこまで通じるカナ」
ガスマスクの奥で目を細め――銃声。
スタンプパンチで地面に叩きつけられたジェックの最後の一撃が、コングの鎧に命中。中央装甲を破壊した。
そうして、最後に現れたのがレイリーである。
「さぁ、晴れ舞台! 魅せてやろうじゃないか。
この私を倒せるか! 私を地に倒せる自信あるかな! 『コング』!」
ゲートから堂々と現れたレイリーに、コングは咆哮をあげて突撃。
繰り出されたパンチに対し、腕を解放、装甲を展開。三重装甲の表面に非破壊魔法障壁を纏わせると、コングのパンチを真正面から受け止めた。
ここまで何人もの猛者を殴り倒してきた拳が、止められる。
なぜか?
そう、セララたちの斬撃やマリアの連続攻撃によるスタミナ減退が、コングのパワーを確実にそいでいたのだ。
瞬間的に盾を開き、間を縫うように繰り出すパイルバンカー。
コングの拳に鉄の杭が突き刺さる。
「……ムウ」
どす、どす、と後じさりするコング。
ここまでジェックたちが確実に蓄積させていたダメージが、ついに限界に達したのだ。
勝負はついたかに見えた。
が、しかし。
「コング殿、頼みがある。……貴方の全力を」
その鎧を脱げ、とジェスチャーするレイリー。
騒然とする観客たちのなかで、コングは獰猛に笑った。
「……オモシロイ!」
力んだだけで、ハンディアーマーがはじけ飛ぶ。
毛皮を直に晒したコングは。ボッという音と共に突撃してきた。
否。
突撃はもう終わっていた。
レイリーとその背後の空間および観客席とその先にある売店。
全部をまるごと崩壊させて、コングは拳を突き出していた。
「……それでこそ」
レイリーは笑って、砕けた腕を叩いた。
成否
大成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
――congratulation!
GMコメント
■成功条件
・コングと戦い、ある程度まで時間をもたせる
オープニングセレモニーの内容はラドバウA級闘士コンバルグ・コングとの一騎打ち八本勝負です。
順番はイベント管理会社のひとが決めるので、これについて話し合う必要はありません。
みなさんは自分の特技をガンガンに出して戦うことに集中してください。
●コングとの戦力差
現在のローレット・イレギュラーズはトップチームであってもラドバウでいうD級にあたります。
D級とA級の戦力差は歴然であります。
……が、今回はDDが特別に用意した『リミットアーマー』によって実力を制限し、ある程度実力を近づけた状態で派手なバトルができるようにセッティングしています。
例えるならC級対D級くらいの実力差で戦えるでしょう。
E級闘士ジェミニ・ジェムニ(ラドバウクエスト『あなたはもう負けている』)とローレットトップチームの戦いを想像するとピンとくるかとおもいます。
・コングの戦闘スタイル
コンバルグ・コングは『筋肉で全部解決する』という豪胆なスタイルで戦います。
殴る蹴る、球状になって突っ込む。といった感じになるでしょう。
A級並のどうかしてるスペックやあれこれは今回リミットし、皆さんからみて『ちょっとやばい強さ』くらいに落ち着けたようです。むりやり。
なお、本人が強く希望すればリミットアーマーを解除したガチのスペックで戦ってくれるそうなので、興味があるかたは試してみてください。
またパンドラを使用しての復活に関しては任意でかまいません。
Tweet