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シナリオ詳細

姫様を救え!! 野球オークとの対決 女騎士野球編

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●オークの手に堕ちた姫様
「姫様あぁぁぁっ!!」

 女騎士の悲痛な叫びが響く。
 彼女が守るべき姫君は、あろうことかオークの手に堕ちた。
 女騎士は、オークたちが居城にする闘技場遺跡でその光景を見たのだ。

「ブフフフフフフ! 女騎士よ、お前が守るべき姫様はこの通りだブ!」

 美しい姫を人質に取り、下卑た笑いを上げるオークたち。
 しかし、いかがしたのであろうか? その麗しき姫君は、みずからを救いに来た女騎士と視線を交えようとはしない。

「ああ、許してください女騎士……。わ、わたくしは、もう……」

 思わず、顔を背ける姫君であった。
 それは知られたくない恥辱にまみれ、顔を赤らめているのに他ならない。

「姫様!? 貴様ら、姫様に何をした……!?」
「ブハハハハハハ! お前の大切な姫様は、俺たちなしではいられない身体になったのだブ!」
「なん、だと……」

 愕然とする女騎士であった。
 穢れを知らぬ純真無垢な姫君だったのだ。
 だからこそ、忠誠を捧げ、守ろうと誓ったのだ。
 それが――。

「ああ、許して女騎士っ!? わ、わたくしは、もうっ! ……もう野球なしではいられなくなってしまったのです……!」
「や、やきう……?」
「ブーッハハハハ、そうよ! お前の大事な姫様はなぁ、すっかり野球の虜なのだブ!」

 野球――そのように人々を魅了する球技がこの混沌世界にも伝わっている。
 その複雑なルールと概念も、崩れないバベルのおかげでおおよその部分は理解できてしまう。
 嗚呼、嗚呼! なんということか!
 外来の遊戯、野球に魅せられ、オークたちの仲間に入れられてしまったというのだ。

「ブハハハハ! 姫様は俺たちの激しいプレーに身体を熱くしてるんだブ! 今では自分から進んで棒(バット)を握り、球(ボール)も求めるんだブ!」
「くっ、貴様らぁ! 姫様によくもそんなことを……!」
「ご、ごめんなさい! い、いやだったのに嫌だったのに、今はもう野球のことを考えただけで熱くなってしまう……。あんなに激しく内角を攻められては……。ああ、ああっ……!!」

 野球のことを語る姫様は、まるで熱病に冒されているかのようだった。
 貴人にも関わらず、身体を動かすスポーツに魅せられてしまったのである。

「ご覧のとおり、姫様はすっかり野球豚(ベースボールオーク)なんだブ」
「……よくも、よくも私の姫様をっ!」
「ブハハハハ、惨めな女騎士に、姫様を取り返すチャンスをやろう。お前が俺たち野球で勝ったら、姫様はお返ししよう。そのかわり、負けたら――」
「負けたら、なんだというのだ!」
「我々のチームに無償トレードで入団し、球拾いから始めてもらうんだブ!」

 つまりは、オークたちは野球勝負を挑んだのだ。
 女騎士が率いる野球チームが勝利すればおとなしく姫様を返すが、負けたら女騎士も強制入団という条件。
 理不尽な選択肢である。もとより、女騎士には答えはひとつしかない。

「いいだろう、その勝負受けて立つ!」

 どんなに理不尽であろうとも、決闘を挑まれたら受けねばならない。
 そして勝った者が正しい、騎士道とはそういうものである。

「ブーッハッハッハッ! そうでなくては! 勝負は一週間後、鉄帝の闘技場ラド・バウでプレイボールだブ!」

●みんなー、野球やろうぜ!
「というわけで私と一緒に野球をやって姫様を取り返してくれる者を募集している」

 冒険者を募る女騎士は、野球チームのメンバーを集めるところから始めていた。
 相手は、オークたちによる野球チームである。
 即席だろうが野球で勝利し、囚われの姫様を救い出さねばならない。
 姫様は、野球の暗黒面に堕ちしてしまい、オークたちの言いなりになっている。
 これは由々しき時代である。
 いやしくも姫君が野球にうつつを抜かすとか、問題が大きい。
 無論、スポーツは素晴らしいものだが時と場合による。

「そもそも、そんなに野球というものがやりたかったのなら、ひと言おっしゃっていただければ……」

 女騎士は悔やんだ。
 しかし、こうなってしまうと後の祭りであった。

「ともかく、オークたちに野球で勝たねばならない。どうか、私を助けてくれ!」

GMコメント

■このシナリオについて
 皆さんこんちは。解谷アキラです。
 そんなわけで野球です。スキルやギフトを駆使してオークたちに勝利しましょう。
 野球のルールについては、我々の知る野球そのものですが、イレギュラーズがその力を発揮するとマンガ的野球となるかもしれません。
 基本的に、攻撃と防御は戦闘に準じる処理をします。
 募集人数は10人ですが、控えは必ず交代します。
 また、女騎士はベンチにいますが基本的に数合わせでスターティングメンバーにはなりません。
 ちなみに、オークチーム山海ポークスの先発オーダー、成績は以下のとおりです。

・山海ポークス
1.オークセカンド
左投げ左打ち
打率.302 盗塁3
2.オークショート
右投げ右打ち
打率.287 犠打4
3.オークサード
右投げ右打ち
打率.320 本2
4.オークレフト(キャプテン)
右投げ右打ち
打率.315 本4
5.オークキャッチャー
右投げ右打ち
打率.231 本1
6.オークセンター
右投げ左右打ち
打率.220 犠打2
7.オークライト
左投げ左打ち
打率.298 本2
8.オークファースト
右投げ右打ち
打率.201 本1
9.オークピッチャー
右上投げ右打ち
打率.187
5勝2敗 防御率3.01

控え.姫様ピッチャー
右横投げ右打ち
1勝2敗4S 防御率2.34

 オークたちの打順、成績はあくまでも目安としてのものです。マークするオークや作戦など、野球っぽいプレイングであれば採用いたします。参加者で事前に相談してスターティングメンバーの打順、ポジションが揃っていると試合は有利に進みます。
 ポジションのかぶった場合はGM判断で調整します。
 なお、負けると女騎士が強制入団となってしまいます。
 それではよろしくお願いします。いい野球しましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 姫様を救え!! 野球オークとの対決 女騎士野球編完了
  • GM名解谷アキラ
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年03月15日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
リナリナ(p3p006258)
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ルリム・スカリー・キルナイト(p3p008142)
勇気のチャロアイト

リプレイ

●試合開始!
 ここ鉄帝、闘技場ラド・バウは今宵スタジアムとなった。
 ナイター設備の照明が、グランドを照らす。
 混沌ハムファイヤーズの先発オーダーも発表された。

・混沌ハムファイヤーズ オーダー
1番:『何事も一歩から』日車・迅(p3p007500)
右投げ右打ち センター
2番:『分の悪い賭けは嫌いじゃない』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
右投げ右打ち ショート
3番:『Ende-r-Kindheit』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
右(下)投げ右打ち セカンド(ピッチャー)
4番:『Punch Rapper』伊達 千尋(p3p007569)
右投げ右打ち レフト(ピッチャー)
5番:『天然蝕』リナリナ(p3p006258)
右投げ右打ち サード
6番:『「姫騎士」を目指す者』ルリム・スカリー・キルナイト(p3p008142)
右投げ右打ち ライト
7番:『展開式増加装甲』レイリ―=シュタイン(p3p007270)
左投げ左打ち ファースト
8番:『イワ死兆』フラン・ヴィラネル(p3p006816)
右投げ右打ち キャッチャー
9番:『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)
右打ち右投げ ピッチャー

控え:『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
右投げ右打ち 選手兼任ヘッドコーチ

監督:女騎士レディーナ

 イーリンが選手兼任ヘッドコーチに就任したのは、野球は素人である女騎士レディーナのたっての願いである。
 打順とポジションは、彼女の案を監督が承認した形だ。
 さて、両選手並んでいよいよプレイボールが告げられる。

「ブッフッフッフッ、よく逃げずにチームを編成してやってきたんだブ。山海ポークスの重量級打線を見せてやるんだブ」
「ふん、お前たちになんかに屈するものか! こっちも野球の強者を集めてきたんだ! 必ず姫様をお救いする」

 並んで、女騎士と四番でキャプテンのオークレフトと視線を交え、火花を散らしている。
 その肝心の姫様は、あろうことか山海ポークスのユニフォームに袖を通してしまっている。

「ご、ごめんなさい、女騎士……。わたくしはもう、山海ポークスの女……抑えの切り札にされてしまったの」

 申し訳無さそうに顔を背ける姫様であった。
 ざっと見るなり、山海ポークスは種族的特性もあって姫様以外は重量級の大型選手が揃っている。
 オークレフトも2mはある巨漢だが、チーム一の長身は、オークファーストだ。体の線は他のオークより細いが細いが、上背は2m30Cmはあろう。その手も妙に長い。
 打順は下位だけに、一塁線の守備の固さを思わせる。

「プレイボール!!」

 主審の合図で試合開始が告げられる。
 先攻は、混沌ハムファイヤーズである。
 先発のオークピッチャーは、ワインドアップから大きく振り下ろす本格派のオーバーハンドだ。
 重そうな速球がバシーンとミットを鳴らす。
 それを横目に、混沌ハムファイヤーズは監督・女騎士を中心にベンチ前で円陣を組む。

「必ず勝って姫様を取り戻そう! 相手は強敵かもしれないが、私は君たちを信じている!」

 その監督の期待に応えるべく、千尋が掛け声の音頭を取る。

「行くぞテメーらァ!」
「混沌ハムファイヤーズ! ファーイッ! オ――――!!」

 先頭バッターとなる迅を中心に、選手たちが声を揃えた。
 しかし、である。

「ん~、やきゅ?  やきょう? 何だソレウマイのか? リナリナ分あるのか?」

 しかし、リナリナはまだ野球をよくわかっていなかった。

「野球っていうのは、ボールをバットで打つ。打った珠を守って取るのよ」
「そう、珠と棒を使うの」
「おー、アレだなっ。よくわからないけど何だかんだベースボールみたいだなっ!」

 イーリンとミルヴィがなんとか野球の何たるかを教える。
 ベースボールなら知っているらしい。
 こう見えて、リナリナは英語もわかる賢い原始娘である。
 野ボールでも通じたのかもしれない。

●混沌ハムファイヤーズ初回の攻撃
『一番、センター。日車・迅』

 アナウンスが告げられると、迅が右のバッターボックスに立った。
 オークピッチャー振りかぶって……投げた!
 インハイに威力のあるストレートが決まる。
 思わず、迅ものけぞるような球威、今のは手が出なかった。
 出塁中心の打席を心がけている迅であるが、そう簡単に塁に出してもらえそうもない。

「どうブ? うちのエースは打てそうかブ?」
「いやあ、そう簡単に打てそうもないですね。でも、楽しませてもらいますよ」

 キャッチャーの囁きにも動じず、気を取り直して構える。
 二球目は外角外しのストレート、見送る。
 三球目は外角低めにカーブ、タイミングを外され鋭いスイングで食いつき、左にそれてファール。
 カウント2-1、ボールカウントはピッチャー有利。
 一番バッターとしては粘りたいところ。
 四球目、真ん中低めのまっすぐ! しかし、迅見送った。
 ボールは高速でがくんと落ちる、フォークだ!
 種族的特性で、チョキの形を作りやすいオークは深く握れるためか落差が大きい。

「やるわねー」

 ヘッドコーチのイーリンがひまわりの種をくっちゃくっちゃ食べながら分析する
 速球と落差の大きいフォークが武器だが、キャッチャーのミットから外れるボールも多い。
 制球力より、力で押すタイプのようだ。

「フレー、フレー! ファイ、オー!」

 下位打線のルリム、フランはベンチから飛び出てチアガールになって応援している。
 オークたちも気が散るくらいにはかわいい。
 そして、オークピッチャー第五球、外角へのストレート! 迅がこれを引っ張る。

「うっ……!?」

 スイングの瞬間、ボールひとつ分落ちる。
 カットボールだ! バットが芯を外し、三塁線へのゴロになる。

「走れ走れ-!」

 迅の足なら、内野安打も期待できるサードの深い位置。
 返球がファーストについたのはそれよりも速かった。
 ポークファーストが、めいっぱい腕を伸ばしてキャッチした。

「ブフフ、普通ならセーフだったのに残念ブ」

 ベンチに戻る迅に、オークファーストが誇るように言った。
 長いリーチを活かして、一塁でアウトカウントを稼ぐ、これが山海ポークスの内野守備である。

「気を取り直していこー!」

 続いて、二番ショートのリアナルが打席に立つ。

「師匠との役束の甲子園を目指し、応援と平行して野球を練習した私に怖いものなんてない!」

 高校球JKであったと詐称するリアナルだが、師匠のイーリンは外国人スラッガーとしてヘッドコーチを兼任している。

「もうよくわかんねぇなこれ」

 ともかく、構える。
 多少、腰にこようが思い切ってフルスイングの場面。
 しかし、ズバッ! ズバッとストレートか決まる。
 フルカウントまで粘るものの、フォークで三振に取られてしまう。
 オークピッチャー、フルカウントからフォークを放る度胸もある。
 迎えるクリンナップ、まずは三番セカンドのミルヴィ。
 スタンドの観客たちも応援に熱がこもる。

「玉と棒の扱いなら自信あるヨッ、練達の修行中にエンジョイしてたから♪」

 意味深だが、深い意味ない、そう信じたい。
 オークピッチャーも興奮気味で鼻息が荒い。

「そーれ、燃える女なら!」
『女なら! 女なら!』

 ネクストバッターズサークルの千尋が声を出す。
 三塁側ベンチスタンドの観客も、声を合わせた。

「ここで一発ホームラン!
『ホームラン! ホームラン!』
「かっ飛ばせよ! かっ飛ばせよ!」
『かっせー! かっせー!』
「レフトスタンドへー! かっとばせー! ミルヴィ!」
『かっとばせー、ミ・ル・ヴィ!』

 外側にカーブを放って、ボールを先行させての探り気味の組み立てである。
 ランナーを出して四番を迎えるのは避けたい。
 内角のストライクを取りった珠も、ミルヴィは独特の十六夜打法で身体を畳んでカット。
 ヒットは打てないまでも、ファールで粘るのだ。

「いいブ、付き合っちゃるブ!」

 オークピッチャーも、力のこもったストレートで押していく。
 十球まで粘ったものの、レフトフライに倒れた。
 一回表は力のこもったオークピッチャーの前に三者凡退となってしまった。

●序盤の攻防
 攻守入れ替わって、混沌ハムファイヤーズが守備につく。
 マウンドは、先発ピッチャーの洸汰である。

「野球大好きなシミズコータ、ここに参上だぜ!」

 高い出塁率と犠打を記録する二番を抑えてクリンナップと勝負したいところ。
 左バッターの一番オークセカンドに対して第一球……投げた!
 外角にスパーンといい球が決まる。
 続いてカーブ、ぎりぎりバットを止めて見送った。
 三球目のフォークを大きく空振りに取る。
 奇しくも、オークピッチャーと同じく、洸汰も全力ストレートとカーブ、フォークを武器にする本格派右腕だ。

「次なんだろー、ストレートかな? あっでもカーブかもね……最近ナックルも試してみたいって言ってたなぁ」
「……ちっ」

 キャッチャーのフランの囁きは、大きく集中力をかき乱す。
 四球目、真ん中低めの速球を絶妙なバットコントロールで三遊間に打ち返した。
 リナリナが野生の勘でこれに飛びつき、一塁のレイリーに送る。

「おー、内野の守り方わかる! 走者アウトにする!」

 リナリナのグローブさばきと送球は、技術うんぬん以上に天性の運動神経によるものだ。
 レイリーのキャッチングもばっちりである。
 続いて、二番オークショートを三振、三番オークサードにあわや長打かと思わるファールがあったものの、これをセカンドゴロに仕留める。
 この試合、投手戦の様相を呈していた。

●バイクはありかなしか?
 二回表、打順は四番レフトの千尋から。
 バブルガムを膨らませ、目の下に黒いペイントを塗った千尋が構える。独特のスタイルでバットをくるくる回す。只者ではオーラだ。
 オークピッチャー、初球フォーク!
 ぐわらぐわらがきーんと千尋、痛烈なセンター返し。
 千尋、一塁を回ってバイクに乗った!
 センター投げられず、二塁打である。
 しかし、オークピッチャーが塁審に抗議だ!

「えっ? だってバイクに乗っちゃいけないってルールに書いてないし……」

 しれっという千尋であった。
 山海ポークスナイン、この暴挙に千尋に詰め寄る。
 
「おい、待てよ! セーフだろ」

 抗議権を持つ女騎士とともに、洸汰が猛抗議する。
 両軍でてきてスタジアムは騒然となった。
 このまま1時間19分の最長抗議記録にもつれるかと思われたが、いらついたオークたちが洸汰に迫る

「やめなさい、勝負は野球で、でしょ」

 あわや乱闘かと思われたが、レイリーが止めた。
 暗黙のルール、乱闘時は敵チームを止めるがしっかり守られた。

「えー、野球規則の3条、『靴のかかとやつま先には、普通使われている部品以外のものをつけてはならない』というルールに基づきましてルール違反、アウトを宣告します!」

 主審、無情にも千尋にルール違反アウトを宣告!
 プレイ前からバイクに乗っていればセーフだったかもしれない。

「でも惜しかったのですわ」
「まあ、次も打つさー」

 ルリムに答えて、千尋はベンチに戻った。
 オークピッチャーはこれでリズムを崩すことなく、後続のリナリナ、ルリムを討ち取った。
 二回裏、洸汰は四番オークレフトに二塁打を許し、五番オークキャッチャーを四球で歩かせて塁にだすも、打ち分けを得意とする六番オークライトを緩急をつけたピッチングで三振に仕留めた。
 打率が高い七番を迎える。左で長打のあるバッターだ。

「そういえばこの前おにーさん見たよ、意外だよねーあんな店に……あっ大丈夫、秘密にしてるよ? まぁ……打たれたら後で愚痴っちゃうかもだけど!」

 フラン、絶妙の囁き!
 振り遅れたスイングで転がった三遊間のゴロをリアナルが捕球する。

「セカン!」

 リアナルの好守備を、迅がカバーしてフォースアウト、ファーストレイリーが確実に捕球し、ダブルプレー!
 二回裏の攻撃終了、チェンジである。

●代打、私!
 さて、洸汰とオークピッチャー、両者ともランナーを出しながらも三、四回を抑えて迎えた五回表。
 大振りの6番ルリムを三振に仕留めたが、7番レイリーがきれいにオークピッチャーの速球をレフトに流し打ち、シングルヒットで出塁。
 続くフランは、バットを天狗の鼻のように構える深緑名物天狗打法の構え。
 これでオークピッチャーのインコースのボールを誘い、なんと尻から当たりにいった。

「いったー!」

 一、二塁のチャンス。悠々とランナーが進む。

「監督、代打私!」
「代打、イーリン!」

 混沌ファムファイヤーズ、好投の洸汰に代打を送り、勝負に出る。

「イーリン、頑張れー!」

 代打のイーリンを少しえっちな衣装でミルヴィが応援する。
 会場は、その応援に合わせ、伝説の「代打、俺」の再現に大いに沸いた。

「ちっ……!」

 オークピッチャー、ここで点を許すわけにはいかない。
 ストレート、カーブを二球揺さぶってからの勝負球!
 そのストレートを、目のさめるようなライナーでセンターのフェンス直撃の長打!
 ランナー二人帰る走者一掃のツーベースヒット!
 2-0、待望の得点である。
 さらにイーリンも二塁に進み、追加点のチャンス。
 バッター、一番に返って迅。

「ぶあああああああっ!」

 これを気迫の投球でねじ伏せ、三振に仕留める。
 五回裏からは、セカンドのミルヴィがピッチャーに入り、そのセカンドにイーリンがつく。
 このポジション、不安なのは素人の女騎士がヘッドコーチを失うという点だ。ベンチに下がった洸汰が支えることになる。
 しかし、ミルヴィはアンダースローの変化球投手。
 幻影魔球で下位打線を翻弄、当たってもボールを芯で捉えられず、凡退する。
 この後、両チームとも追加点を入れられず終盤戦へ。

●後半戦の熱闘
 五回表、選手交代がアナウンスされる。

『選手の交代をお伝えします。オークピッチャーに変わりまして、姫様――』

 いよいよ、姫様がマウンドに上がる。
 打順は、七番レイリーから。
 サイドスローから切れの良い速球が食い込んでくる。
 大きなカーブと、くいっと沈むシンカー。
 オークピッチャーと違って制球力も抜群である。
 フラン、イーリンも立て続けに三振を取られた。
 変化球を武器に持つミルヴィと姫様の投げあいである。
 両者、一塁を踏ませない熱投であった。
 しかし、8回裏。
 姫様をアウトに討ち取ったが、1番オークセカンドが内野安打で出塁。2番オークショートがバントで送り、三番オークサードが左中間を抜くクリーンヒット。
 エンドランをかけたオークセカンドが返って1点を返す。
 ミルヴィとレフトの守備位置を変えて千尋がマウンドに上がる。
 謎の野球センスを持つ千尋が、四番を抑えられるか?

「ふっふっふっ、いくぜ!」

 魔球、ファンクボール! 急激に顔にホップするという原理がよくわからない魔球である。
 これにリズムを崩され、オークレフト痛恨の三振!
 続くオークキャッチャーもきっちり抑えた。
 そしていよいよ最終回、混沌ハムファイヤーズは追加点がほしい。
 打順は、四番千尋から。
 悪球打ちの千尋は、変化球についていける。
 シンカーを、あわやレフトスタンドかという大ファールを放った。
 投げる珠がなくなったかと思われた姫様だが、その瞳は死んでいない。
 セットポジションから投げたのは、ストレート! いや――。
 手前でぐっと伸びてきたかと思うと、弓なりに落ち、千尋のバットが空を切った。

「ブッフッフッ! 姫様の武器はストレートとカーブ、必殺技はシンカー。そして秘密兵器が、あのジャイロボールなんだブ」

 ベンチに下がったオークピッチャーがしたり顔で言う。
 ジャイロボール、現代の魔球とも言われる。
 スライダーを教え込もうとしたら、すっぽ抜けて変化をしたので試しに取得させたものである。
 姫様のジャイロは、いわゆるフィーシームジャイロだ。

「むぉ~!? タマがクネクネ曲がって打てない!? ズルいゾッ!」

 続いてのバッターは、変化球を苦手とするリナリナだ。
 姫様を打ち崩せるか?

「リナリナ怒った! だったらクネクネする前に打つ!」

 変化をする前に叩く、そういう方向性であった。
 ナチュラルパワーでフルスイング!
 ジャイロの軌跡が変化する前に前にぶっ叩いたボールは虹のアーチを描き、スタンドイン!
 ほしかったダメ押しの1点である。
 これがポークスナインの心を砕いたのか、九回裏を千尋がきっちり抑えてゲームセット!
 3-1で混沌ファムファイヤーズの逃げ切り勝利であった。

成否

成功

MVP

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女

状態異常

なし

あとがき

 野球シナリオ、ゲームセットです!
 姫様をリリーフに出したんですが、混沌ハムファイヤーズの継投策にやられました。
 白熱する試合は全部お伝えできず、ダイジェスト的になっていますが別の視点からの観戦シナリオも出してみようかなと企んでます。
 一打席づつ判定しましたが、楽しかったです!
 MVPは兼任ヘッドコーチにして代打2点タイムリーというイーリンに贈ります。
 伝説の「代打、俺」でのタイムリーは見事。
 お立ち台にヒーローインタビューを受けたことでしょう。

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