PandoraPartyProject

シナリオ詳細

怪異桜

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●桜の記憶
 誰かの記憶の片隅に在る世界。
 引き継がれる世界の記憶。
 其の世界の特徴といえば、桜が一年中咲いていることだろうか。
 ああ、其処の貴方。少し時間を拝借。
 君の故郷を思い出して欲しい。
 故郷にあるであろう建物、そして人、自然──、
 空は青かったかもしれない。そして、高かったかもしれないね。
 何時も曲がっていた曲がり角、あるんじゃないかい? 何時も待ち合わせしていたあの公園、とか。
 何よりも、君の両親もいたと思うんだ。毎朝いってらっしゃい、なんて言ってくれたんじゃァないかい?
 そうそう、そのまま並木を抜けたりも……ん?
 ……ああ、君にも其の世界が在るようだね。ふふ。
 君の記憶の片隅、春以外の季節も桜が咲いていただろう?
 其れが合図、というか、切欠、というか。

 ──嗚呼。行ってしまったのかい?

 其の記憶について触れようとすると、其の世界に引き摺り込まれる……って、言おうと思ったんだけれど。
 まぁ、良いだろう。
 無事に帰っておいでね。

 もし帰ってこられたなら、きっと大切な何かを取り戻すはずだから。

●怪異の中心
 ……嗚呼、また誰か来たのね。
 私と遊んでくれる?
 嫌? 嫌なんて選択肢は無いわ。
 だって貴方が望んでここに来たんでしょ?
 私の怪異は、貴方が望まないとここには来られないのよ。
 だからね。貴方は私と遊ばなきゃいけないの。
 もしくは、私を殺してここから出るしかないわ。
 ……遊んでくれるの? ふふ、いい子ね。遊びましょう。

 楽しい楽しい、殺し合いで、ね。

●とある男の災難
「来てくれてありがとう。助かるよ」
 淡々とした様子でカストルはペラリと本を捲った。
 彼の中にある本は薄桃色──否、桜色の表紙が美しかった。
「桜の記憶……面倒なことになったみたいだよ。
 男の人が、帰れなくなったみたい。助けてあげてくれないかな」
 す、と依頼書を差し出したカストルは、宜しくね、と肩を叩くと紅茶を飲みに何処かへ行ってしまった。

NMコメント

 桜が恋しい時期ですね。どうも染です。
 桜を見ると、どこか切ない気持ちになりませんか?
 美しいものを楽しむ心は、ずっと持ち続けたいものですね。

●依頼内容
 桜の怪異に巻き込まれた男性の救出と怪異の破壊
 或いは怪異の説得

 記憶の中にひっそりと根をはり、気が付いた途端に引き摺り込むという桜の怪異。
 怪異の世界から男性を救出し、怪異を破壊してしまいましょう。
 可能ならば怪異を説得し、男性を帰還させるほうが望ましいですが、怪異と会話が可能かどうかは不明です。

●世界観
 現代日本によく似た世界。
 蔓延る怪異が猛威を奮っているそうです。
 それ以外は何ら変わりはありません。

●怪異について
 少女の形をとった怪異です。
 性格は無邪気。
 他人の記憶に居座り、他人の故郷の記憶の中に桜を咲かせ続けます。
 怪異の拡散方法としては、他人がみた記憶のことを誰かに話すこと。
 拡散源となるものがいるようですが、今回のシナリオでは登場しません。

 また、怪異は遊びと称した殺し合いを望みます。
 具体的な内容としては隠れんぼ。怪異が隠れた皆さんを探し殺そうとしてきます。
 怪異に見つからないように核となる怪異を壊し、其の世界からの脱出を試みましょう。
 敵は少女の形の怪異、そして核となる桜の木二本の三体です。
 通常の桜の木に攻撃をしても散るだけですのでご注意を。

 怪異の攻撃方法の特徴としては【流血】【業炎】【毒】の付与攻撃を行ってくることです。
 怪異の弱体化方法に、記憶の中の桜を燃やしてしまうことがあります。頑張ってください。

●男性について
 一般企業に務めるサラリーマン。
 同僚から桜の怪異の話を聞いたことにより怪異の中へ。
 家庭があるので早く帰りたいと思う反面、ここに居れば仕事にも行かなくて済むんだなという欲との葛藤中。
 まだ怪異とは遭遇しておらず、故郷の街並みを見て回っています。

●その他
 男性の死亡で依頼は失敗となります。
 滅多なことがない限りは重症もつきませんし、重症判定がついていてもあまり気にしませんのでお気軽に。

●サンプルプレイング
 桜、かぁ。懐かしいな……私も桜の下でお花見するのが好きなんだよね。
 けど、今回のお仕事はそう上手くも行かないよねぇ。怪異、かぁ。
 うんうん、男性を早く救出して帰ってきたら、お花見をすることにしよう!

 以上となります。ご参加、心よりお待ちしております。

  • 怪異桜完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年03月02日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
アト・サイン(p3p001394)
観光客
カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)
海淵の呼び声
築柴 雨月(p3p008143)
夜の涙

リプレイ

●ライ麦畑ではなく、
 桜の街とでも呼ぶべきだろうか。
 その中を延々と彷徨う男がひとり。
 美しい桜に引き込まれ、その桜に手を伸ばしては不思議そうに首を傾げて。
 それもそのはずだ。彼が見ているのは偽りの故郷。怪異の住まう狂気の中なのだから。
 男を追うモノがいつつ。
 よっつは英雄、または光にも化けるであろうみちしるべ。
 もうひとつは怪異──男の命を喰らわんと、喜々として森の中を歩いていた。

「あら、かくれんぼの参加者が増えたのね。面白いわ」

 鈴のなるような、少女の声で呟いたのは怪異である娘。
 口元を歪めたその時、遠くから音が聞こえたのを聞き漏らすことはなかった。

 チリンチリン。次いで、ザッザッザッ。

 鈴の音と足音だろうか、面白い。怪異はその音の方へ向かった。
 さぁ、これから始まるのは怪異狩りだ。
 
 鈴の音を鳴らしたのは『闇之雲』武器商人(p3p001107)。にんまりと笑みを浮かべて、怪異が足元を訪れるのを待っていた。
 マージナル・ホロウで得た緑翼は、武器商人の身体に馴染んでいる。
「可愛い隣人……キミに我(アタシ)は見えるのかなァ?なぁんて。
 ヒヒヒヒ、冗談だよぉ……見えないなんて、寂しいじゃないかそんなの。ね?」
 きょろきょろと不思議そうな顔をして歩いてきた怪異は、視界の端になにかが動くのを捕らえた。
「……フフフ、まずは一人目ね!」
 ぼう、と火の玉が現れる。其れはなにかに向かって降り注ぎ──否、其れが燃えることはなかった。

●燃えろよ燃えろ
(なるほど、かくれんぼねえ……まあいいさ。
 じゃあ、捕まえてみることだね、この僕を)
 『観光客』アト・サイン(p3p001394)は自身の痕跡を消しながら桜の咲き誇る街を進んでいた。
「……ふぅん。どうやらこれみたいだね」
 持ち前のモンスター知識を活かして、怪異の核となる木を見つけたアトは、油を注ぎマッチを擦った。
 ぼう。
 燃えたマッチを油の上に落とせば、忽ち桜は燃える。
 抵抗の様子はなく、ただただ燃え続けた。アトはただそれを見続けた。
 呻くように風が泣いた。
「さて、後一体だっただかな。どこかにあるだろうし誰かに任せて、僕も少女の方に向かうとするか」
 振り返ることなく、アトは走り去った。
 鈴の音が呼ぶ方へと。

 さくら さくら まいちる はなの
 とびさる さまは なにに にる
 それは いとしい あのひとの
 さかせた はなに にているの♪
 
 『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)はその唇から音を生み、歌を紡いでいた。
 桜の核は、アトの燃やした桜同様に抵抗の様子はない。
 ただ、ぼう、と花弁を燃やして反発は示したが。
「もーえろもーえろ、どんどこもえろー♪」
 にっこり。
 笑みを浮かべて歌い続けるカタラァナの歌は、ぼう、と桜を燃やした。
 ぼう。
 ぼう。
 ぼう。
 核から桜へ、桜から桜へ、桜から桜へ。
 カタラァナの声に合わせてどんどん燃えてゆく桜の、なんと儚いことか。
「……あ」
 チリンチリン。
 鈴の音が仲間を呼んでいる。
 カタラァナは音のなる方へと足を進めた。

●救いの月
 『夜の涙』築柴 雨月(p3p008143) は、男性の救助に向かっていた。
 街を飾る桜は雨月の記憶にも懐かしさを生んだようで、懐かし気に目を細めていた。
(それにしても綺麗な桜だな……。幼い頃に家族でお花見したっけかな。あの時お父さんが……)
 思い出に浸っている場合じゃなかった。と、首を横にブンブン振れば、雨月は忍び足で駆けた。どうやら足音は響いていないようだ。
 そうして駆けているうちに雨月は男性を発見する。
「こんにちは、貴方は今怪異の中に巻き込まれているんです。
 どこか痛むところはありますか?」
 医者志望である雨月は男性に駆け寄るとその様子を観察する。
「そ、そうなのかい? 俺は特に問題はないよ、ありがとう」
「ここは危険です。安全な場所に移動しましょう?」
「……こんなに桜が綺麗なのにかい? 残念だな……。
 わかった、移動しよう。案内は頼んでもいいのかな」
「はい、任せてください」
 スーツ姿に人の好さそうな笑みを浮かべた男性は、雨月の指示に従って避難をすることに。
「それにしても……ここは、見れば見る程俺の故郷に似ているんだよなあ。
 もう少しだけ、ここにいちゃだめかな」
「一緒に戻りましょう。きっと貴方の大切な人が待っていますよ」
 雨月は強制するのではなく、優しく声をかけた。
 元の世界を恋しく思う旅人の事も見てきた彼の事だ、きっとそうするのが最善だと考えたのだろう。
 その選択は正しかった。
「……うん、そうだね。俺には妻も、子供もいるんだから」
 そう言った男性は、ひらりひらりと散っていった。
 男性の意識は怪異から解放されたのだ。
「よかった。次はもうないといいんだけど」
 そういうと雨月は、仲間の元へ駆け出した。

●音の元に
「ヒヒヒ。待ちかねたよ、我(アタシ)の可愛い隣人。一緒に遊ぼうじゃないか」
 空中からふわりと降り立った武器商人。
 その先には桜の怪異の本体である少女がいた。
「……ねぇ。私のご飯、かえしなさいよ。
 一人帰っちゃったじゃないの」
 不満げな声色で、しかし笑みを浮かべる怪異は不気味だ。
「……ここにいたか」
「よかった、間に合ったよ」
 遅れてアトとカタラァナも到着する。
「あら、あなたたちも私と遊んでくれるのかしら。
 沢山遊びましょ。そして、美味しいご飯になって頂戴ね」
「やあ、なんか勘違いしてるみたいだけどさ。
 きみなんかより怖いのは、僕らの世界にはいっぱいいるよ?」
 にっこり。笑みを浮かべるカタラァナ。
 すぅ、と息を吸う音。直後、その唇から薄黄色の魔力が放たれる。
「!?」
 思わず耳をふさいだ怪異。彼らがその隙を逃すことはなかった。
 破滅の呼び声が響き渡る。怪異の瞳は武器商人に釘付けだ。
「ほら、ほら、おいで?我(アタシ)はここだよ?
 いいコだねぇ、もっと踊ろう」
「うるさい。黙りなさい」
 ぼう、ぼう、ぼう。火の玉が躍り出す。
 どこからともなく桜の枝が伸びて、武器商人を切り裂こうと暴れまわる。
 しかし、依然として武器商人は笑みを浮かべたままだ。
 怪異はカタラァナに目もくれず、毒持つ花弁を降らしながら武器商人を攻撃し続けた。
 カタラァナの歌声がじわじわと、侵食するようにその身を滅びへ導いていたことも知らず。

 アトは無害な桜を使って怪異を罠にかけようとしていた。
(桜の木の枝のしなりを利用してロープで足を吊るし上げるスネアトラップの作成。
 男性の記憶の中からバケツをちょろまかしておいたんだよね。
 通りかかると上から油がぶちまけられる罠を作成して、っと)
 ふぅ、とアトが息を吐いたと同時、怪異は怯えた顔をしていた。
 何度も何度も切り裂こうとも立ち上がる武器商人。歌い続けるカタラァナの爆発的な音量。
 どちらも不気味なものにしか思えない。
「武器商人! こっちへ誘導してくれよ!」
「あィ、わかった」
 波のように、一度引いてから押し寄せる武器商人。緑の翼で視界に広がる桜を覆い隠して。
「ヒッ……!?」
「嗚呼、そうだ。かくれんぼじゃなくて鬼ごっこもいいね?
 もっと遊んでおくれ、『キミが』それを望んだのだろう?」
「違う、そうだけど……違う、こんなのじゃないわ!」
「待っておくれよ、ねぇ、ねえ、可愛いキミ、愛しい隣人。
 もっとキミの物語を頂戴!
 ……それとも、怪異としての未知を全て暴かれる前に逃げる? ヒヒ!」
「な、なんなのよっ……消えなさい、何処かへ行って頂戴! きゃぁ!?」
 駆けだした先、怪異は足を取られて罠にかかった。
 逆さ吊りになった少女の顔色は、みるみる青に変わる。
「大丈夫。痛くなんてないさ。さァ、目を閉じて」
 武器商人は怪異の目をそっと手で覆ってやった。未だに反抗するようすで、身体を前後に動かしてはいたのだが。
「なかなか……厄介なもん持ってたじゃないか!
 実際僕と相性が悪かったんだよねえ、それ」
「自分が狩る側だと思ってた?
 そうでなかった今、どんな気持ち?
 ね、教えて?」
「……お前たちなんか、死んでしまえ」
「……ああ、そう」
 ざしゅ。
 アトはその首に剣を滑らせた。
 少女の首か落ちた。
 それでもなお、桜は咲き続けていた。

●さくら、さくら
「皆さんご無事で何よりです」
 雨月は安心した様子で駆け寄ってきた。
 世界は滅び始める。さらさらと、花弁が散るように。隅からひらりと溶けていく。
「桜、燃えると結構綺麗だったね」
「馬鹿め、観光客が桜の花弁に感傷を抱くものか。
 僕にとってはここはただの森であり、そして森であるならばそこにゲリラが潜むは必然だろう?」
「ヒヒ、ローグのコはゲリラだったのかい?」
「あ、違う違う。僕はただの観光客だよ」
「ほんとに?」
 けらけらと、四人の声が響き渡る。
 そうして、四人の姿も桜の花に化けて、消えてしまった。


 また、遊んでね。

成否

成功

状態異常

なし

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