PandoraPartyProject

シナリオ詳細

幸福謳う誓詞

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 汝、誓いますか――?


 天義、その白き都に存在する聖堂で行われる幸福は突如として『不幸』の色に染め上げられる。
 一生で一番の喜色にその頬を染め上げていた花嫁は突如としての乱入社によってその機会を台無しにされ、夢見た幸福は一気に暗い感情に満たされる。
 ローレットへと不届き者の対処を求める依頼が入ったのはこれ以上、幸福を台無しにされたくはないという聖職者たちの祈りであったのかもしれない。
 結婚式を荒らす不届き者達の行いにより、それを忌避して挙式を控える者たちも増えている。
 修道女としても見逃せないというクラリーチェ・カヴァッツァ (p3p000236)は天義で『挙式』のための教会を借りたいと提案した。
「偽の挙式をイレギュラーズで行うことで、不届き者への対処を行いたく考えております」
「それは構いませんが――」
 修道女であるクラリーチェであれば教会で粗相を働くことはない。聖職者たちが心配したのは他の事だ。
「偽の挙式というのはどのようにお考えで……?」


 クラリーチェは結婚式へと乗り込む不届き者についての調査を行った。
 曰く、人の幸せを妬み嫉み、そして挙式を壊すことで満足を得ているのだそうだ。
「なんて事を……」
 他者の幸福を踏み躙る真似を許すわけにはいかないとクラリーチェが静かに拳を固めたとき、依頼書をまじまじと見ていたスティア・エイル・ヴァークライト (p3p001034)は「天義でのお仕事なんだね?」と瞬いた。
「そう、そうなんです。スティアさんさえよければお手伝いいただいてもいいですか?」
「勿論! 結婚式を壊すなんて許せないよね!」
 クラリーチェの脳裏には違う想像(きょうぼうなうみのせいぶつ)が過ったが今回は心配ないだろう――彼女がファンド計画のために新田 寛治 (p3p005073)と話していた事も見なかったことにした。
「私が挙式の補佐をしますので、皆さんには役割を分担して偽挙式にご協力いただきたいのです」
「偽の挙式ですか。某はそう言った経験はありませんが……」
 こてんと首を傾げた鬼桜 雪之丞 (p3p002312)に伏見 行人 (p3p000858)は聖職者がマニュアルも準備してくれているようだと頷いた。
「これに沿えばよさそうだ。何々? 精霊によるいたずらがご遠慮ください?」
 その言葉ににゃにゃんと笑ったのは陰陽丸 (p3p007356)だ。
「動物禁止とかはありませんか?」
「それはないみたいですね。成程、獣種も旅人もカヴァーということか。プランとしてしっかりと準備されていてよい挙式になりそうです」
 寛治が堂々と頷けば、ラピス (p3p007373)の手を引いていたアイラ (p3p006523)がきょとんとした顔で依頼書を覗き込む。
「――挙式?」
「ああ、結婚式の事だね。仕事としてそういうのもあるんだ」
 ラピスとアイラは不思議そうに依頼書を見た後、表情を曇らせた。
「挙式を台無しに……というのは見過ごせないね」
「そうだね」
 二人して頷けば、クラリーチェはその表情を喜色で満たして、ぜひ協力してください、と言った。
 さあ、人員は整った。準備をしよう。
 ドレス等の貸し出しもされ、挙式の役割分担や準備をしっかりと行い、不届き者を捕らえるのだ。

 ――病める時も、健やかなる時も、
 富める時も、貧しき時も、慈しみ愛することを誓いますか――?

GMコメント

 リクエストありがとうございます!ドレスでスタイリッシュに戦いましょう!
 ある意味、純戦シナリオです!

●成功条件
 結婚式荒らしの捕縛

●結婚式荒らし*5
 結婚式を荒らしまわる不届き者です。人の幸福が妬ましいのです。
 スタイリッシュに双剣などで戦います。
 参列者に紛れるために正装でピシッとした格好をしてきています。

●偽結婚式
 結婚式荒らしを誘い込むために偽結婚式を行ってください。
 今回は修道女のクラリーチェさんの伝手で教会を借りました。
 偽結婚式をよりリアルにするために役割を決定してくださいね。

・挙式を取り仕切る神父
・補佐する修道女(クラリーチェさん)
・新郎新婦
・参加者
 +NPC参列者 ※指定してください。天義NPCなら出る可能性も……。

 それぞれ服装もご指定ください。
 ドレスを揺らしてスタイリッシュに戦って見せましょう。
 しかし、『偽挙式』ですので、偽と言えどもリアリティは重視です。
 式の執り行い方はマニュアルを準備済み。不安なく行えますね!

●教会
 ステンドグラスの美しい教会です。パイプオルガンの音色が響き、こじんまりとした結婚式をお楽しみいただけます。
(ロケーションの飾りつけについてご指定があればご記載ください)

 どうぞ、よろしくお願いいたします。

  • 幸福謳う誓詞完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年03月06日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶
陰陽丸(p3p007356)
じゃいあんとねこ
ラピス・ディアグレイス(p3p007373)
瑠璃の光

リプレイ


「幸せな二人を、それを見守る人たちを害するものは許せません。不届き者には罰を、ですね」
 神の与え給ふた幸福を一時の気まぐれで害することは主の施しへの反逆である。神の徒が多く住まうこの白き都ではそのような声も聞こえた。なればこそ、神の徒として――『祈る者』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は『力』を有する者として幸福を害する者へ『処罰(おしおき)』するべく舞台を整えた。
「幸せになるための結婚式を台無しにしようとするなんて許せない。絶対に捕まえてあげるんだから!」
 憤慨する『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は青紫のドレスに身を包む。菫が咲き誇る如き質の良いドレスにその身を包んでいた彼女は此度の『偽装結婚式』の参列者として天義騎士団よりリンツァトルテ・コンフィズリーとイル・フロッタの参加を要請していた。……表向きに言えば、この白き都でもその名を聞くヴァークライト家令嬢と活躍見せる『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)らの頼みである事、そして『この国を救った英雄』への感謝を込めて騎士団は直ぐに二人を式場へと派遣した。
 最初はと言えば「俺にはあまり向かないだろう」と渋ったリンツァトルテへは「結婚式に不幸をもたらす悪者がいるんだって、人が足りないから参列者として協力して貰えないかな?」というスティアの微笑(圧力)がオマケされたのだが……
「ええと、お招きいただき、ありがとう?」
 どこかぎこちなく首を傾いだイルにスティアは「こっそりリンツさんにアピールするチャンスだよ。綺麗に着飾っちゃおうね!」とアドバイスをひとつ。首を傾いだクラリーチェの向こう側でイルの赤い顔が衝撃と決意で満ち溢れていた。
「結婚式! とても大切な儀式だと聞いています!」
 尾をゆらりゆらりと揺らした『じゃいあんとねこ』陰陽丸(p3p007356)の胸元に蝶ネクタイを飾った『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)は大きく頷く。
「結婚式は門出の日、ともいう。旅をして回っている俺としても感じ入る物がある日だね……それを邪魔する相手に容赦はしないさ」
「羨ましいのか何か分かりませんが、嬉しい事を邪魔するなんてひどい人達ですね! これ以上悪さをしないよう捕まえておしおきです!」
 陰陽丸はしっかりとした決意を胸にそう言った。羨ましい、確かに人生で一度だけのビッグイベントとも呼ばれる結婚式である。『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)は事前に作法についてきちんと学んだうえで「ドレスですか」と小さく呟いた。
 洋風の正装であり、天義では着用する者も多いドレスもこの日ばかりは装いが変化する。よく見るイブニングドレスとも違う豪奢なドレスは体の線にフィットする者も多く、和装を主とする雪之丞にとっては気恥ずかしいものと思えた。
「しかし、挙式のドレスは、拙からみても、美しいものですね。……こういう場は、縁など無いものとは言え、憧憬を感じます」
 人に非ざる身でも、赦されるなら――その言葉は心の中で噛み締めた。自身の中に存在する因子が神が目の前に在る事を否定するような気がして雪之丞は息を飲む。
「それでは挙式のプランニングを確認しましょうか」
「あ、はい」
 結婚式をしっかりとプロデュースして見せる寛治に緊張したように頷いた『小指の糸』ラピス(p3p007373)は黒のタキシードを身に纏う。その装いは『小指の糸』アイラ(p3p006523)と対照的な色彩になるようにと考えられた。
(普段は色彩が近い僕とアイラだけど、こういうのも悪くないね)
 どこか緊張したようなアイラは純白のドレスと慣れぬ化粧で頬を赤く染める。ラピスと愛を誓う為にやってきた普通の女の子――そう思って貰えるように。とくん、とくんと音を立て、式場の扉の前に立っている。
(花嫁さんの気持ち、今ならわかる気がします。
 こんなにも楽しみにしているのに、それが壊されるなんて辛い――ボクら達の手で必ず。未来で誓われるであろう沢山の人の愛と幸せを護ります)
 ゆっくりと、扉が開く。緊張したアイラの姿をその双眸に移してからラピスは息を飲んだ。
 真っ先に綺麗だよと褒めようと考えていたのに――言葉にならないほど。


 疑似とはいえ結婚式はめでたいものだ。寛治は加工だけでも神父の役をして見せると滞りなく式を執り行っていく。サポート役に回ったクラリーチェともしっかり連携を取り、さながら本職のように式を執り行うさまは流石は敏腕マネージャーであろうか。
 讃美歌を慣れた様子で歌う騎士団二人に途惑いながらスティアが合わせ、端の方でちょこりと巨体を丸めていた陰陽丸が「にゃあん」とつなげていく。パイプオルガンを弾くクラリーチェはそのぎこちない様子がどこか面白く、ついくすりと笑みを漏らした。サポート役として、介添えをするクラリーチェは参列者の中に『暴徒が紛れている』事を前提に言葉少なにした注意喚起がどのような影響を与えるであろうかと息を飲んだ。
(修道女として色んな人を見てきましたので、多少なりとも読み取れる筈……特にこの場で『祝福しない』というならば風貌から分かるはずです)
 きちんとドレスコードに則って礼服を着ていた行人は貸衣装に身をまとめ整髪料できっちりとした髪にどこか行こちなさを感じると身を固くしていた。
 彼の傍に居る精霊たちは皆、大人しいが元来、そう言った存在は『人の意に反することもあり気まぐれ』だ。悪戯はしてはいけないと言い含めた彼に「はあい」と少し不服そうであった精霊たちを思い出しては行人は小さく笑った。
『けど、居てもいいー?』
「いいけど、静かにな」
 式も続いている最中なのだからと行人が小さく囁いた。傍に座っていたイルがちらちらとリンツァトルテを見ている――スティアの言葉もあってあからさまに意識している――ことに気づき、スティアはにまりと笑う。
「イルちゃんとっても綺麗だねー! ねぇねぇ、リンツさんはどう思う?」
「あ、ああ……」
「ああって」
 むう、としたスティアにリンツァトルテは「馬子にも衣裳というだろう」とふいと逸らす。イルはスティアの裾をぎゅうと握りしめて全力で首を振っていた。そんなやり取りを行いながらスティアは探る感情の中にどこか『異質』なものを発見する。
 それは雪之丞の霊魂たちも同じであった。彼女の傍に集うた霊たちが皆一様に怯えたように身を竦めたのだ。
(もしや――)
 そっと顔を上げる。式の進行は続く中、鼻先をくすくすとさせた陰陽丸は奇妙な金属の臭いを感じ立ち上がった。
「アナタハ、スコヤカナルトキモ、ヤメルトキモ、
 タガイヲアイシ、イツクシミ、ソシテシガフタリヲワカツマデ、
 マゴコロヲツクスコトヲチカイマスカ?」
 ――そして、流暢な言葉づかいできちんとその言葉は言い直される。
 どこまでも幸せそうに、そして『愛しい相手を慈しむように』してラピスがアイラを見る。そうすることで暴徒たちの心を揺さぶれる可能性が上がるだろうという判断だ。
(アイラ――)
 その目配せにアイラは頷く。ラピスが感じ取った感情を伝えるように『小鳥は祝福の鳴き声』をぴゅうと漏らす。
「小鳥も祝福しているようですね」
 ――それこそ、『敵の存在を把握した』という合図に他ならないが、クラリーチェが視た限りではイレギュラーズ達の情報伝達が行われていることを参列客たちは気づいていない。
「それでは、誓いのキスを――」
「ち、誓いのキ……!!?」
「誓いのキスか……人に見られながらは初めてだから、流石に気恥ずかしいけれど、結婚式だし、しないとね……」
 寛治の茶目っ気と共にラピスは頷いたが――アイラはそれ以上に動揺した。
「まままま待ってくださいラピスお顔が近っ、そそそそれにこんなに沢山の人の前でちゅーなんてでき……敵さん!!?」
 顔を上げれば、敵襲である。がばりと体を離したラピスは破魔の術式刻んだ手甲でしっかりと指揮棒を握りしめる。
「タイミングが悪いなあ」
 邪魔立てされたことをぼやいたラピスに続き、飛び込むように椅子を蹴り武器を手にした暴徒の許へと刃一閃する雪之丞のドレスが華麗に揺れる。しかし捲れぬ様に、すり足で穏やかに動く彼女はいつもと衣装が違うことが酷く心もとないとため息を混じらせた。
「おいでませおいでませ。妬み恨み。己の幸福すら見つけられない愚か者は、拙がお相手しましょう」


「式を狙う不届き者が出たようです。皆さんは速やかにこの場から避難してください」
 そう口にした修道女に慌てるように参列客がまばらに走って出ていく。その背を狙わんとした暴徒の一撃を受け止めたは蔓草飾った刀身。行人が視線でアピールしたそれにクラリーチェは頷いた。
「イルさん。リンツァトルテさん。もしご迷惑でなければご助力いただけますか?」
 ゆったりとしたトゥニカの裾を揺らして、クラリーチェは静かにそう言った。魔人の指輪を飾った指先に魔力が巡る様子に頷いてからリンツァトルテは避難誘導を手伝おうと参列客の安全を確認する。
「分かった。私も微力ながら助太刀しよう」
「イル。スカートには気をつけなさい」
 淡々とそう言ったリンツァトルテにイルは大きく頷いた。スカートには気を付けてね、と微笑んだスティアは「イルちゃん! スカート!」と叫んだ。
 細剣を握りしめ暴徒の許へと飛び込んで行くイルの金髪が大きく揺れる。桃色のドレスの裾が広がり、鮮やかな曲線を描くが――「気をつけろと言っただろう!」と先輩からはお叱りが飛んでいる。
(やはり……心もとないのですね)
 雪之丞は息を飲む。そうした『アクシデント』もある意味想定内であろうか。退避の様子を確認し『部外者』の様な顔をしていた神父はすたすたと歩を扉へと進め、ゆっくりと振り返る。
「マナーがね(ガチャ)、作るんです(ガチャ)、人を」
 ……鍵を閉めた。
「さて、武装結婚式というのも趣があるでしょう」
 そう言って、椅子に横たえてあったクラシカルな傘を開く。開いたそれが暴徒の一撃退けて、冷静な表情を崩すことなく一気に叩きつけた寛治は「結婚式ではお静かに」と告げる。
 暴徒に向かい「にゃーん」とその巨体を叩きつけた陰陽丸は咥えたタクトを振るう。憎悪に溢れる爪先が切り裂きながら愛らしい蝶ネクタイを揺らした陰陽丸が走れば、スティアの癒しが仲間たちを支援した。
「恋路の実る先、大切な儀を壊すなら、報いは自身で受けるべきでしょう。
 それとも、まさか自身の恋路が上手くいかぬ腹いせでしょうか? いっそ、憐憫すら感じますね」
 ドレスの裾を揺らし、その刃先をしっかりと暴徒へ向けた雪之丞が口にする。
 鮮やかなドレスの裾が捲れぬ様に、しかし、その動きと共に舞い上がったレースが軌跡を描いたそれにクラリーチェは美しいと感じた。
 修道女は式を支援するものだ。だからこそ、サポートしたいと祈りを向ける。
「くそ――!」
 吐き捨てた暴徒が狙うのは花嫁だ。豪奢なドレスにブーケを構えたままのアイラは「それにしても、ラピスのタキシード、とってもかっこいいなぁ……」と頬を赤らめていた――が、その狙いを受けブーケに仕込んだ杖を向ける。
「仕込み杖でどうするつもりだ!」
「――こうするんです!」
 花嫁渾身のビンタと共にドレスがひらりと揺れる。ふりるとレースの海がそこには生まれ、動きと共にヴェールがはためいた。
「愛を誓えるボクらが憎いですか? 大丈夫、ボクは充分貴方たちを憎んでいます
 ボクは、他人の幸せを願えない人が、結婚なんてできると思いませんけど……貴方たちは、どうお考えで?」
 氷蝶は周囲を包み込み、刹那、それに合わせてラピスが暴徒を受け止める。
「そのドレスを汚したり、ボロボロにしちゃうのは勿体無いしね」
「けれど、ラピスが汚れてしまいます!」
 アイラの悲痛な声にラピスはくすりと笑い、美しい純白を汚さぬ様にとその指先をそっと撫でた。
「僕? ……僕はいいんだ。愛する人の為に汚れ傷つく事くらい、厭わないさ。
 君たちは幸福自体が憎いのかい? それとも、自分が得られない幸福が憎いのかい?」
 囁く声音と共にヴェールが揺れる。人の幸せは恨む者というけれど、とアイラは首を振る。
「次ここにくるときは、素敵な人と一緒に来てくださいね。ボクとの約束、です」
 

 周辺の確認をしてからクラリーチェはさて、とイレギュラーズ達へと向き直った。
 捕縛された暴徒を見てから陰陽丸は首をこてりと傾げた。
「続き、しますか?」
「神聖な場ですから、殺しはしませんが、逃走も、許しません。無粋でしょう――しかし、この場の空気が失われるのも惜しいというもの終われば、折角ですから、続きと行くのもひとつでしょうか?」
 賛同して見せた雪之丞にアイラの頬がかあと赤く染まっていく。陰陽丸は嬉しそうに尾を揺らしたが、アイラは「でも、衣装も汚れてしまったでしょう」としどろもどろに繰り返す。
「衣装の替えならありますから、どうぞ、続きをしましょう」
「そうですね。せっかくの誓いのキスでしたから」
 これもプランの一つだと告げた寛治にびくりと肩をはねさせたアイラがそろりとラピスを見遣る。
「続きですね! ならお片付けします!」
 楽し気な陰陽丸にスティアも「私もお手伝いするね」と頷いた。
「さて、新郎新婦のお二人。まだ式は終わっていませんよ? ――では、新婦のベールを上げて、誓いのキスを」


 神父、寛治の言葉にアイラは「キ、キスは」と慌てた後、そっと、ラピスを見上げる。
「そうだ……ねぇ、ラピス。ドレスのボク、どうかな? 感想。聞きたいなって、思ったの……」
 赤く染まった頬と、そしてどこか不安げに揺れたその宝石のような瞳が、どこまでも愛らしい。


 ラピスは小さく笑った。当り前の言葉を返すのに、きっと彼女は不安に心を揺らしているのだ。
「……アイラのドレス姿? ふふ、言うまでも無いでしょ? っていうのも意地悪かな……凄く素敵だったよ」
 ヴェールの中でラピスしか見れないアイラの表情が、愛らしくて、仕方がなくて。
「それから、忘れ物、と。キスをひとつ――愛しているよ、アイラ」
 口付けにきらりきらりと光が落ちる。精霊たちの『悪戯』が空から祝福のようにきらめいて、落ちた。
「結婚って、すごいんだな。とてもきれいで、とても、素敵で……」
 イルがぼんやりと呟いた言葉に行人は頷いた。ああ、きっと、彼女も夢を見ているんだろう。
「結婚? うん、まぁ……そうだねえ。ちょっと俺には重すぎるかな」
 旅人が肩を竦めたそれにイルは「うん、私もちょっぴり同感だ」と笑ってから、その視線はあこがれの先輩へと向いていた。
「――けれど、……行く末に光、有れ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご結婚おめでとうございます(?)!!!!

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