PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Frogger

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●怪談実話
 イレギュラーズ様、わざわざ練達支部のギルドまでご足労いただきありがとうございます。
 練達には様々な怪異がいるのはご承知でしょうか?
 学園にいるトイレの花子さん。口が裂けた綺麗な女性。
 認識したら気が狂ってしまう真っ白いくねくねしたお化けなんてのもいるらしいです。
 長身スーツの白いのっぺら坊の紳士が正しかったでしょうか?
 
 いいえ、そんな事は今はどうでもよかったですね。
 分かっています。この世界じゃそういったものは珍しいものではありません。
 承知しています。
 重々承知しています。

 練達を覆っているドームの外に雨が降ると、蛙が出るんです。蛙が人を連れ去るんです。
 ただの蛙ではありません。モンスターでもありません。人間です。
 その人間は猟奇的殺人者です。サイコパスです。シリアルキラーです。
 そういった種別の人間です。
 連続誘拐殺人を起こしています。
 男の人や女の人が居なくなりました。
 両手の指で数え切れなくなるくらい、たくさん居なくなりました。
 死んで帰って来た人、何があったか話してくれません。
 生きて帰って来た人、何があったか話してくれません。
 死んで帰って来た人、酷い拷問を受けて体の何処かが無くなっていました。
 生きて帰って来た人、拷問を受けてなくて体の何処も無くなっていません。
 現地の人達では手が付けられない状態になっています。
 皆、怖がっています。私も、怖いです。雨の日には、誰か必ず居なくなるんです。
 イレギュラーズ様、どうかこの蛙を捕まえて下さい。お願い致します。どうかお願い致します
 そうすればキット、皆様もお喜びになられます。とてもお喜びになられます。
 犠牲になったたくさんの男女の方々だって、無念を晴らせます。イレギュラーズ様なら、血の雨を晴らせます。

 …………。……本当ですか?
 ありがとうございます。
 では、私が調べた情報をイレギュラーズ様に差し上げます。
 本当に、ありがとうございます。

GMコメント

●成功条件:
・フロッグマン連続誘拐殺人事件を終結させる。
 
●情報精度:C
 情報屋は全く嘘を言っていないが、それでも現地人や情報屋が得られた情報はあやふやな事が多すぎる。
 以下に情報を列挙する。事件解決にあたり、よくよく参考にせよ。

●環境情報
 練達のドーム地域。後述のエネミーと交戦が予想される範囲は広い。
 次の雨の日まで、調べ事を各々がする時間は少しだけある。
 気になる事があれば調べるのも良い。簡易的な道具を用意する事も出来るだろう。
 時間になったらイレギュラーズが囮捜査を引き受けるか、あるいは次の襲撃地点を特定せよ。

●エネミー情報
フロッグマン:
 蛙の覆面を被ったシリアルキラー。
 警備や監視が薄い場所、あるいは個人宅で一人きりの場合やごく少人数の人間を狙うやり口を徹底している。
 監視カメラに撮れた数少ない情報によると、背丈や体格はバラバラ。複数人。
・適切な非戦スキルやギフトがあれば、解像度の低い映像からでもこれ以上に分かる事があるかもしれない

 攻撃方法は電撃棒や【睡眠】効果のあるスプレーを噴射し、捕縛する。
 捕まる可能性がある状況になると、フロッグマン達は徹底的な逃げに徹する。
(※このシナリオの【睡眠】は【致死毒】【不殺】を併せ持ったBSとして扱う)

 以下、特筆する情報。
・現地の警備ロボットがどうにかフロッグマンを一人捕まえると、必死の抵抗。マスクを取り外されると、密かにカプセル薬を飲んで服毒自殺した。
・自殺したフロッグマンを調べてみると、行方不明者と思われた一人だった。

●死亡者・生存者・行方不明者
死亡者:
・年齢性別がバラバラ。雨が晴れた後、何処かに遺棄されている事が多い。
・例外なく損壊が酷く、身元確認難航中。おそらく行方不明者の誰かだろう。

生存者:
・男二人。女三人。
・事件について一切語ろうとしない。
・全員、大きな怪我は見受けられないが精神的に不安定な状態にある。しかし薬物や魔術などの痕跡は無い。
・会話技術、あるいは精神的に落ちつける技術、もしくは他のスキルや『確信的な指摘』があれば何か引き出せるかもしれない。

行方不明者:
・死亡未確認含め、多数。
・それぞれ親しい間柄の人間が行方不明になっている場合も多い。

●第一犠牲者の遺棄現場に残された手紙
『ぼくはフロッグマン!
 みんなにゲームをていきょうするのがぼくのやくめ!
 たんていしょくん、たのしいエンターテインメントのはじまりだ!!』
 みみずがのたくったような子供じみた文字で書かれている。

  • Frogger完了
  • GM名稗田 ケロ子
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月02日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
橘花 芽衣(p3p007119)
鈍き鋼拳
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて
カリヨン(p3p007956)
歌謡い

リプレイ

●蝌蚪
 イレギュラーズはまずは生存者達から情報を得るべく、保護されている病院へ足を運んだ。
「貴方達がイレギュラーズですね? 話はギルドの方から伺っております」
 現地の役人、他の国でいうところの騎士や常備兵にあたる治安維持の人間か。そういった風体の人物達と軽く挨拶を交わす。
 相手の振るまいを窺いながら、現状不自然な部分は感じなかった『特異運命座標』恋屍・愛無(p3p007296)は会釈を返す。
「追加の情報はあるか?」
 その言葉に彼らはぎこちなく首を振ったが、必要な物資や情報の調達には協力するといった姿勢を表明してくれた。練達で肯定的な名声やコネクションを持った者がいる事あってのだろう。
「面会の準備は整えておきました。どうぞ」
 そのまま、生存者達が保護されている個室へと案内された。

「ね、ね、あなたを苦しめた方々の事を知りたいですわ。どうか……教えて下さらないかしら……?」
 個室で対面した相手へと、宥める様に尋ねる『ごらん遊ばせ』カリヨン(p3p007956)。生存者……十歳くらいの、カリヨンと同年代ほどであろう少女は小さく首を振る。
「しらない。それにおじいちゃんがゼッタイ話しちゃダメ、って言ってた」
「おじいちゃん?」
 対面の少女はぎこちなく頷いた。話に聞くに、彼女は祖父に「事件の事は何も他の人に話すな」とキツく口止めされているらしい。事前情報で親しい者同士が行方不明になっている事から、おそらくその祖父も被害者の一人だろう。
 それを思い返しながら、再び尋ねる『砂漠の冒険者』ロゼット=テイ(p3p004150)。
「何があったか、覚えていない? 何でもいいんだ」
 相手の顔色を伺っていたロゼットは「君次第でフロッグマンを捕まえられるかもしれない」といった風に、幼い義侠心をくすぐるように言葉で煽った。
「……ほんとにしらない。大人のヒトに助けてもらうまでだれもいないお部屋に閉じこめられてただけだもん」
 少女は事件の体験を思い出したように顔を歪ませる。
 カリヨンは持っていた依頼書から面会相手の氏名年齢を確認して、少し考え込んだ後にキュッと唇を噛んだ。
「余程怖かったのですわね……話して下さってありがとうございます。どうかわたくしの唄で安らいで下さいまし……」
 カリヨンの口から紡がれる優しい子守唄。少女は元々疲弊していたのか、その歌を聞いている内にベッドで横になってしまう。
「眠っちゃったみたいだね」
 ロゼットも眠たげに目をこすりながら、少女の様態を確認する。
「このままではずっと脅えていそうだったから……眠りへ逃がしてあげたかったんですの」
 心を鬼にして詰問するのも選択肢かもしれないが、幼い子供が怯えている様子は見るに堪えない。
 しかし得る物は得た。この子の祖父とやらがこの事件について確実に何か知っているだろう。

「目立った怪我もなく、瞳孔異常なし。脈拍に多少乱れはあるが……うむ、実に健康体だ!」
 別の生存者の聴取にあたっていた『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)。医療技術がある為、手始めに魔術や薬といった懸念を調べてみるが、やはりその手の影響は見当たらない。
「いっただろう。そういうもんにはかかっておらんと。……わかったらほっといてくれ」
「そういうなご老人。我々は探偵ではないが、悪事を企む教授でもないのだ。どうか心を開いてはくれまいか?」
 初老の男性は素っ気なく聴取を拒んだ。精神的に疲弊しているのもあるが、それ以上に強い拒絶を感じ取った。 
「死人に口なし、だが生者も語ってはくれずか。中々奇妙な事件だが、だからこそ情報屋としての腕が問われるというものだ」
 静かに頷く『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)。
 そういったところで、別の聴取にあたっていたカリヨン達が男性の病室へやってきた。
 彼女らは合流した仲間に耳打ちをして、この男性の孫がどういった事を話したか共有する。
 その情報を得て、何処か確信めいた表情で納得するグリムペインとリュグナー。
 二人は顔を見合わせ、どちらが先に行くべきか思案。
「なんだ、もう用がないなら帰ってくれ!」
 声を荒げる男性に対して、リュグナーが歩み出た。彼は落ち着き払った仕草で懐から写真を取り出してみせた。
「この者達を知っているか?」
 それが目に入った瞬間、男性の瞳孔が大きく開くのが見て取れる。 
 咄嗟に知らぬ素振りを装うが、訓練を積んでいない一般人が読心術じみた技術に抗うのは難しい。
「襲われた場所は?」
 男性は「やめてくれ」「俺は悪くない」と頭を抱える。怯えていた。こういった尋問はお互いに気が良いものではない。
 それでもリュグナーは限界を見計らいながら、初老の男性に対して残酷な問いかけを突き刺した。 
「…………突飛な事を聞くが――貴様、人を殺めたことはあるか?」


「人を殺しておいて何がエンターテインメントだ! 恐怖と絶望を振りまくのはただの獣でしかないじゃないか!」
 『鈍き鋼拳』橘花 芽衣(p3p007119)は犠牲者達への仕打ちを思い返して、やり場のない怒りを露わにしていた。
 次の襲撃地点を割り出す事も兼ねて、『風のまにまに』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)や役人達と共に遺棄現場へ辿り着いたのだが、その場所に残った血痕や微かな腐敗臭からどんな惨状だったか想像出来てしまう。
「確かに嫌な事件……気味が悪いし気分も悪い」
 憤慨とまではいかないまでも、芽衣と同じく心穏やかではないドゥーである。この遺棄現場に遺されていたというフロッグマンの手紙を見返し……内容に首を傾げつつも新たな捜索を試みる。
 捜索といっても、何処ぞの探偵よろしくズボンについた土の跳ね返りで見分けるだけが術とは限らない。特に、魔法が使えるイレギュラーズは被害者本人と交信出来るのは大きな強みだ。推理小説の十戒や二十則などというのは、本物の探偵に任せれば良い。
 遺体現場を見回っている内に、ドゥーは首尾良く犠牲者と思わしき霊体を見つけた。
「初めまして、俺はドゥー。あなたが巻き込まれた事件について調べてる」
 霊体に対して、意思疎通を試みるドゥー。霊体は死んでいるといった自覚もおぼつかないのであろう。あやふやな挨拶を返した。
 素性について尋ねてると、事前情報の一部に合致した。行方不明者で間違いないだろう。次に誘拐される人の条件を尋ねる。「わからない。でも雨の日に一人で学校から帰ってた」という答えをもらえた。芽衣に伝えれば場所を割り出せるかもしれない。
 次に犯人に関する情報、どうして生存者がいるのかといった事柄を尋ねた。
 霊体が犯人の事を思い返そうとしてくれたところで、霊体は酷く苦しそうに呻いた。
「……っ!」
 ドゥーは口を覆って驚いた。霊体の腕がぼろりと落ちた。続いて足が音もなく崩れ落ちた。ドゥーは先ほどの手紙が脳裏に過った。

『オタマジャクシみつけたよ。テもアシもない、かえるのこども。もういらないから、キミたちにあげる』

●蟾酥
「や、やらなきゃ孫や俺を殺すって……」
ぶつぶつと言葉にする初老の男性。ロゼットが精神安定効果のギフトを使いながらよしよしと宥める様に彼の頭を撫でた。
 ――フロッグマンと呼ばれる存在は行方不明者達が脅されてやっていた。薄々予想はしていたが、いざ当人から聞かされると重苦しいものがある。
「貴様を疑いたいのではない。――だが、そうしないための理由、カードが欲しいのだ。そして、この事件を終わらすために……貴様の力が借りたい。貴様が友人を、家族を守るのだ」
 男性はイレギュラーズの物言いに未だ戸惑いながらも、孫に事実を伝えない事を条件に捜査への協力を概ね了承した。
 イレギュラーズは監禁場所や他の生存者など、各々知りたい事を尋ねた。返って来た答えはこうだ。

 監禁されていたのは廃ビルで、他の行方不明者達も居た。連れ去られる時や解放される時は意識を失っていたから詳しい場所は分からない。
 身内が監禁されている事と、第三者が手酷く殺されたのを見たら抵抗する気は失せた。
 誘拐犯に提示されたゲーム――俺の場合は殺人に加担して、身内共々解放された。

 男性はそのように語る。グリムペインは愛無と顔を見合わせてから、更に質問を重ねた。
「今も、監視はされているか? 指示役……真犯人とやり取りをした事はあるか? 口止めされているとか」
 監視について「分からない」という風に男性は首を振る。ただ、真犯人とやらについてはある程度見解を示してくれた。
「指示してたヤツは、男だ。他と同じ蛙のマスクをしてて、声も変だったが……ガタいからして俺よりいくらか小柄な男だ」
 最後に、何処かに隠し持っていた小さなカプセル剤をイレギュラーズに手渡した。
「バレそうになったり、呵責に苛まれたりしたら使えと渡された」
「ふぅむ」
 毒々しい色の薬物。グリムペインさえ判断付かない事もないから、おそらく珍しいものだ。薬学か、化学か。どちらか一方の知識があれば入手ルートが見抜けたかもしれない。以前の服毒自殺の線から役人にも調べてもらってもいるが、何にしても特定まで少し時間は掛かるだろう。
 そんな風に諦めかけていた頃合い、『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)――稔が手を挙げた。
「調べさせてもらえないか? 俺達のギフト――Hollow Truthなら何か分かる事があるかもしれない」
 皆、顔を見合わせる。彼のギフトは『物品などに携わるフィクションを含んだ物語』を生成する事が出来る能力。少しでも情報が欲しい今において、使う事に異論は無い。男性含めて皆はそれを了承した。
 そうして三分ほど、ギフトの影響は本という媒体を形どって現れた。
「ありがとう。それでは、ギフトの情報に真贋が混じってないか、そちらの男性に確かめてもらいたい。まずは――」

●雨蛙
 ドーム外で雨が降り始めた。住民達は怯えながら家路を急いでいる。
 住民達の足を急かすのは、ひとえに誘拐事件への恐怖にほかならなかった。
 そんな時でも、どうしても外せない学業や仕事。それを優先し尚且つ「自分はきっと浚われたりしないだろう」という根拠の無い自信を抱えている者はいる。
 そしてこの道に誘拐しやすそうな少女二人が通りかかる。特に、片方はタオヤカな獣人である。
 待ち構えていたフロッグマンは、スプレー缶を握って彼女達の目の前に歩み出る。
「あぁ、待ってたんだよ」
 蛙の覆面を被った不審者達が現れるなり、少女二人は悲鳴をあげる事もせず全く躊躇いなく格闘術で目の前に飛び出した者を二人がかりで張り倒した。
 唐突な出来事に困惑するフロッグマン達。
『だいじょうぶか! ロゼット! 芽衣!!』
 青年――虚が安否を確かめると同時に控えていた仲間達と連携してフロッグマン達を取り囲む。
「大丈夫よ。でも、やっぱり手応えからしてこの人達一般人だ。だから……」
『わかってら!』
 イレギュラーズ達は一斉に武器や拳を構えた。
「……なんだって、この場所にあらわれると……」
 フロッグマンのささめく声に、芽衣は少々得意げに言い返す
「皆が集めた情報があれば、貴方達の襲撃場所を予測するには十分よ! 私は橘花 芽衣。フロッグマンを捕まえに来たわ!」
 ドゥーや稔がもたらした情報によって誘拐場所や被害者の傾向は分かっていた。あとは、芽衣自身が持ったスキルの使いよう。今回は運良くそれが的中したといったところだろう。
「やぁやぁ、何処から来たか素直に話してくれれば殺しはしないよ」
「今すぐ投降するなら命は助けよう。さぁ、どうする」
 グリムペインと愛無はフロッグマン達が至極怯えているのを見抜いて、すかさず脅し文句を発する。無論、一般人と既にわかりきっている上での言葉だ。
 フロッグマンの大半は破れかぶれに芽衣に向かっていく。それ以外の少数は冷静だったのか、一目散に逃げる事を優先する。
「失礼。ここであなた方を取り逃すわけにはいかない」 
『その通りだ。易々逃がすかよ!』
 虚とドゥーは、相手よりも素早く立ち回って行く手を塞ぐ。
 ほとんどのフロッグマンは、手元にあったスプレーで退路を開く為にイレギュラーズに戦いを挑まざるを得ないのであった。
 
●Frogger
 真っ先に動いたのはリュグナーである。
「アガレスの閉鎖よ!」
 黒く半透明な鎖がフロッグマンの足首と影を繋ぎ止めるように絡みつく。
「リュグナー君、そのままおさえていてくれたまえ!」
 拘束されたフロッグマンに対してすかさず、グリムペインが呪文を唱える。対象の足下から斧が振るわれた風切り音がしたかと思えば、フロッグマンは短い断末魔をあげて転げ回る。
「大丈夫。死んではいないよ。死ぬほど痛いけれど」
 飄々とした態度で言い切るグリムペイン。しかし、フロッグマン達の練度はやはり低い。不殺の心得がなければ生かしたまま捕縛するのは難しいか。
 イレギュラーズの心情を知らない様子で、複数で必死に戦いを挑んでくるフロッグマン。とかく、芽衣は集中的に狙われた。
 格闘術で幾らか自分に向けられたスプレーをはたき落とすが、それでも数が多かった
。芽衣は真正面から霧状の薬液を吹きつけられ、酷く咳き込んでしまう。
「げほっ、ごほ……!!!」
 異様な眩暈、眠気。フロッグマン達の戦い方が素人同然とはいえ、武器となるスプレーの効力だけは洒落にならない。
 意識を失いそうになる寸前、優しい歌声に乗せた詠唱が芽衣の意識を呼び戻した。カリヨンの治癒術だ。
「ぶっは……たすかった」
「わたくし、まだまだ打たれ弱いですので前衛はお任せしますわ! その代わり回復はドンと頑張りますわよ!」
 芽衣を取り囲んでいたフロッグマン達は、たじろいだが、そんな悠長な暇はなかった。
『稔の言葉を借りれば、役者は揃ったわけだ! いくぜ、お前の得意技!』
 そういった瞬間、Tricky・Starsは体を入れ替えた。現れた稔がバッと背中の羽を広げたかと思うと、指先から目映い光が離れて、周囲にいるフロッグマンの視界を灼き尽くす。
 フロッグマン達は失明したかのようにしなが、目の激痛に転げ回った。
「心配はいらない、しばらくすれば治るはずさ。さて、逃げていった者については……」


「はぁ、はぁ」
 唯一逃げ延びたフロッグマンは追撃を振り切ったと思い、周囲を見回した。気配は感じない。
 早く本拠地に戻らねばと走って、走って走り続けた。
 ようやく、根城にしてる廃ビルに辿り着いた。すぐにドアを開けようとする
「追い詰められた蛙は洞穴に潜るというが、人でもそれは同じなのだな」
 フロッグマンは声に驚いて咄嗟に振り返ろうとしたが、急に視界が天と地が逆さまになった。
 何が起こっているのか理解する前に、脳天から地面へ叩きつけられる。最後のフロッグマンはそれで気絶。
「格闘術を覚えておいて正解だったな」と頷く愛無。さておき、彼女は仲間と到着と共に本拠地へと踏み込んだ。
 幸い、救助に来た大勢駆け込むとフロッグマン達も戦意を失ったようで。抵抗らしい抵抗は受けずに残った行方不明者達の救助を行う事が出来た。
 あとは此処で各自調べたい事を調べるのだが……

「なんだこれは」
 汚らしい字体で書かれた手紙を見つける愛無。内容についてはこうだった。

『ゲームクリアおめでとう。しょうひんはぜんぶたんていさんにあげる』


●Flogger(煽り立てる者)
 ギルド支部にて。成功報酬が支払われると共に、役人達から耳が痛くなるほど賞賛の言葉を送られていた。
「イレギュラーズ殿、ご協力感謝致します!」
「い、いえ。わたくしは当然の事をしたまでで……」
 大柄な役人の発声に、たじろぐカリヨン。他のイレギュラーズも握手やハグを求められていた。

 和気藹々としているさなか、イレギュラーズ達の中で穏やかでない者が何人か。
「何か心配ごとでも?」と、小柄な役人が愛無達に声を掛ける。
「行方不明者達を誘拐に駆り立てたヤツがまだいる」
 愛無の言葉に、警察一同は目を丸くした。ギフトでも半ば察知していた虚は、肯定するように頷く。
 小柄な役人は表情を変えず「ほう、では怪しい宛はありましたか」と返した。
「情報屋……と思ったが」
 事前に情報屋の身上を調べていたが、ハッキリ言って白だった。判明しつつある薬物の入手ルートから大きく外れた人物だ。
 会心の一太刀、紙一重で蛙の喉を切り裂くに一歩届かなかった。そんな思いが愛無の心にしこりを残す
 小柄の役人は、ほくそ笑んだように言った。
「そう心配する事もないでしょう。役人は無能ではありません。皆様の集めて下さった証拠があれば二、三日もすればいずれ犯人の正体にお気づきになられるでしょう」
 愛無は小柄の役人を睨み付ける。お前はまさか―― そんな事を言おうとしたところで、担当の情報屋が扉を蹴破らん勢いでギルドに入ってきた。
『ん、どうした。何があった?』
 事件を終えて落ち着き払った虚であったが、情報屋の言葉に絶句した。
「あの、病院で事情聴取したお爺さんとお孫さん……何者かに、毒殺、されました……」

 事態を察したイレギュラーズは、一斉に小柄の役人を睨む。
 役人は、捕縛される最中も狂ったように、狂ったようにけろけろと笑い続けるだけだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 練達における一つの連続誘拐殺人事件は、これで止まる事でしょう。
 何があったかはリプレイに書いてある通りに。
 お疲れ様でした。

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