PandoraPartyProject

シナリオ詳細

稲荷神社の妖犬騒動

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●稲荷神社が大変なようです
「あーーー、もうっ!!」
 鹿野・蒔絵は神社の境内の真ん中で頭を掻きむしった。
 境内の外では今も、玉砂利を踏む激しい音が聞こえてくる。同時に聞こえる荒い息遣いと、けたたましい獣の吼え声。
 たまたま神社の神主が不在な時に限って、これだ。
「なんで神主様が不在の時に敷地に入って来るかなー! 巫女さんとはいえ私はアルバイトだから、妖怪退治なんて出来ないのにー!」
 妖怪や魔物が普通に存在するこの世界、人の住処や領域に妖怪が押し掛けることなど珍しいことではない。問題は、言葉で話して分かってくれる妖怪ばかりではないということだ。
 言葉で話して引いてくれない妖怪は、退治するしかない。ただ、妖怪退治は一般人が行えることではない。専門家がいるのだが、伝手が無いとなかなか仕事を受けてもらえないのだ。
「もー、いくら結界が張ってあって境内の中は安全だって言っても、退治できなきゃどうしようもないし……誰か妖怪退治できそうな人……あっ!」
 困惑しながら境内の中を歩き回る蒔絵。と、ふと思い立った。いるではないか、妖怪退治に伝手のある友人が。
 すぐさまスマートフォンを鞄の中から取り出す。通話アプリを開いて、友人へコール。
「あ、もしもし千ちゃん!? お願い、ヘルプミー!!」

●巫女さんは案内人の友人だそうです
「……とまぁ、そんな感じのヘルプが私に届いたわけなんだよねー……ふあ」
 境界案内人、『雑踏の黒猫又』稲森・千河は小さくあくびを零しながら、その場の特異運命座標を見渡した。
 救難要請の電話を受け取った張本人でありながら、あくびを漏らすとはなんとも緊張感のない。しかし、これが彼女のスタイルである。
 彼女の故郷である、地球とよく似た世界、妖怪が人間と一緒に生活している世界の、一地方。千河が暮らす町が、今回の依頼の舞台だ。
「今回、騒動になってるのが私んとこの地元にある稲荷神社でね、友達の蒔絵ちゃんが巫女さんやってるんだけど……そこが、妖怪に襲われてるらしいの。
 蒔絵ちゃん一般人だから戦闘力は無いし、万一結界が破られたら大変だから、私は妖怪退治を出来ないし……だから、皆にお手伝いしてほしい、ってわけー」
 そう話しながら、千河はこきりと首を鳴らす。
 曰く、人間と共に妖怪が生きると言っても、野性のまま、本能のままに生きて人間に害を成す妖怪も一定数いるそうで。その妖怪を退治するためには戦闘の専門家がいる。
 しかしなかなか、依頼してすぐに駆け付けられるものでもないから、今回仲介役として千河に白羽の矢が立ったわけだ。
「襲ってきた妖怪は、蒔絵ちゃんの話によると妖犬ね。中型犬くらいのサイズのが10頭。
 一頭一頭は、まぁ皆ならそこまでてこずる相手じゃないかな? ただ、それなりに数がいるからね。連携されて集中攻撃を浴びないよう、気を付けて」
 妖犬はいずれも、噛みついて攻撃してくる。至近距離でないと攻撃が届かないとはいえ、獣特有の素早さは厄介だ。動きの素早い敵を捉え、確実に攻撃していく工夫はいるだろう。
 説明が終わったことを確認した千河が、ひらりと羽織をはためかせる。開かれるポータルの向こうから小さく喧騒が聞こえてきた。
「準備はいいかしらー? それじゃ、よろしく頼むわねー……ふあ」

NMコメント

 特異運命座標の皆様、こんにちは。
 屋守保英です。
 稲荷神社が襲われて大変です。わんわん。

●目的
 ・妖犬×10体の撃破。

●場面
 地球によく似た世界の、日本によく似た国の一地方にある稲荷神が祀られた神社です。
 神社の敷地内に妖犬が侵入し、暴れまわっています。
 妖怪の退治が出来る神主さんは不在で、アルバイトの巫女さんが一人、境内に立てこもっています。
 千河は巫女さんを守るため、戦闘には参加しません。

●巫女さん
 鹿野・蒔絵(かの・まきえ)
 千河の友人の大学一年生。稲荷神社で巫女さんのアルバイトをしている。
 一般人で人間。戦闘能力は皆無。

●敵
 妖犬×10体。
 中型犬くらいのサイズをした、全身真っ黒の犬の妖怪です。
 噛みついて攻撃してきます。物至単で、威力は弱めです。

 それでは、皆さんの楽しいプレイングをお待ちしております。

  • 稲荷神社の妖犬騒動完了
  • NM名屋守保英
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年03月06日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
リカナ=ブラッドヴァイン(p3p001804)
覇竜でモフモフ
ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ

●稲荷神社の境内に
 『雑踏の黒猫又』稲森・千河の手によって稲荷神社の拝殿の前に転移した後、『新入り稲荷様』長月・イナリ(p3p008096)はその手をぐっと突き上げた。
「稲荷神社での面倒ごとなら私の出番かしらね? 新米でも稲荷として頑張らせてもらうわ!」
 気合を入れるイナリ。稲荷神社のお稲荷様としても、此度の事件は放置はできない。
 マジモンの狐っ子がやってきたことに、鹿野・蒔絵は目を見開きながら頭を下げた。
「千ちゃんのお知り合いさん、お手数おかけします! よろしくお願いします!」
 アルバイト巫女さんとその友人の境界案内人に笑いかけると、『もふもふハンター』リカナ=ブラッドヴァイン(p3p001804)は神社の境内を眺めつつ目を細めた。
「ふむ、ここは故郷に似てるわね。人間だった頃……小さい頃に来たことあるわ」
「うきゅうきゅ。人外と人間が一緒に生活してる世界……羨ましいっきゅ」
 実は元世界では日本人な吸血鬼に、『乗りかかった異邦人』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)もグリュックに抱かれながら前ヒレをパタパタした。
 その二人に笑顔を向けながら、『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)が拝殿の外に目を向ける。
「結界があって、よかった。私達は妖犬退治に集中できるわ」
 視界の先には、何匹もの妖犬がこちらを睨みつけては吠えている。結界のために拝殿には近づけないようだが、中を見ることはできるらしい。
 レーゲンが犬たちを見ながら、こてんと首を傾けた。
「妖犬さん達も寒いから中に入れてほしかったりするっきゅ?」
「どうかしらね。あの吠え方、そんな穏やかな理由とは思えないけれど」
「犬と狐は仲が悪いものね」
 リカナが言葉を返すと、イナリも頷く。稲荷神社に犬を連れて行くな、というのはあちこちの神社で言われることだ。狐と犬は、狩るもの狩られるものの関係。相性は悪い。
 と、妖犬に目を向けたまま、リカナがふっと口角を持ち上げた。
「暴れてるのは……わんこっと。倒してしまうなら、数匹もふってしまっても構わないのでしょう?」
「えっ」
 突然のもふり宣言に、蒔絵が困惑の声を漏らす。
 彼女は知らない。リカナ=ブラッドヴァインがもふもふハンターであることを。実は千河もちょっともふられた。
 その千河がぐっと身体を伸ばしながら苦笑を浮かべる。
「まぁ、いいんじゃなーい? 別にどう倒そうが、どう処理しようが、私は気にしないし……ふあ」
 その言葉を受けたリカナがますます笑う。隣ではレーゲンも尾びれを振っていた。
「それじゃ。おいたをする犬には、お仕置きね?」
 そんなラヴの言葉と共に。
 特異運命座標は結界から踏み出していく。

●神社の玉砂利を踏み鳴らして
 近づいてきた四人に対し、妖犬がけたたましく吠え掛かる。
「ワンワンワン!!」
「ガウガウ!!」
 敵意剥き出しだ、話を聞いてくれる雰囲気ではない。だが、レーゲンはそれでも、動物疎通で言葉をかけた。
「うきゅきゅわん!」
 その犬語に、犬たちの吠え声が止まった。なおもこちらを睨む妖犬に、取り出すのは※コパンのサンドイッチだ。
「ご飯を探してるなら米粉サンドイッチの残りがあるけど食べるっきゅ?」
 実は、お昼ご飯に食べた食べかけ。それを妖犬の前に優しく放り投げると、犬たちの視線はサンドイッチに向いた。
 警戒しているのだろう、睨んだまま口を付けようとしない。
「グルルル……」
「食べないっきゅ。お腹が空いているわけではなさそうっきゅ」
「このまま大人しくさせるのは無理そうね、倒しましょう」
 少ししょんぼりした様子のレーゲンに声をかけ、ラヴが二丁拳銃を構えた。
 隣でリカナも、神社の拝殿を背にしながら構えを取る。
「凶暴な子を一度にもふるのは無理だから、ごめんなさいね?」
 小さく謝りながらも、その表情に容赦はない。イナリも前に飛び出すべく、己の機械剣を構えた。
「それじゃ、始めましょう」
 その言葉と共に、飛び上がったラヴが銃の引き金を引く。
 そこから飛び出すのは幾本もの光の束。眩い光が一頭の妖犬の身体を焼く。
 同時にリカナの魔砲が発射される。集団の中心に着弾しては、轟音と共に爆発が起こった。
「ギャワンッ!」
「いいわね、援護するわ!」
 玉砂利が飛び散る中、次いで前に出たイナリが機械剣を振りかぶった。と、接近してくる妖犬は三頭。剣で斬るには具合が悪いか。
 なら。イナリがすぅと息を吸い込む。
「喝!!」
「ギャウゥッ!?」
 炸裂するイナリの大喝。音波が衝撃となって妖犬を襲った。
 他方では、グリュックに抱かれたレーゲンも妖犬に吠え立てていた。威嚇するような声に、妖犬が慄いている。
「そこっきゅ、うっきゅっきゅー!」
「キュゥゥ……」
 そのまま、へなへなと崩れ落ちる妖犬。その様を見て、目を見張るのはラヴだ。
「不殺?」
「こんな世界っきゅ。妖犬を受け入れてくれるおうちも、あると思うっきゅ」
「いいわね、大人しくしてくれるなら私も一匹欲しいくらいだけど」
 リカナもザミエルを構えながら軽口をたたく。本当に、大人しくしていてくれるならこんな騒ぎにはならないのだ。
 と、一頭の妖犬が集団から抜け出した。リカナとラヴの間を抜けて、拝殿の方に走る。
「ガァッッ!!」
「きゃっ……!」
 向かってくる妖犬の姿に、蒔絵が小さく悲鳴を上げた。すぐさまにラヴが振り返り、銃の引き金を引く。
「そっちは駄目よ、おやすみなさい――」
 発射された夢が銃弾となり、妖犬を貫く。撃たれたそれはへなへなと崩れ落ち、穏やかな表情で眠り始めた。
「ウ……」
「大丈夫よ。私たちに任せてね、蒔絵さん」
「おー、頼もしい。大丈夫だよ蒔絵ちゃん、あの人たちとっても強いから」
 ラヴが言葉をかけて再び前を向くと、その背中を見た千河がにっこり笑った。
 本当に、頼もしく、強い人々だ。
「せぇいっ!」
「ガ――!?」
 イナリが機械剣で一刀両断、妖犬を切り伏せれば。
「うっきゅー!!」
「ギャゥゥゥッ!?」
 グリュックにぶん投げられたレーゲンが解放した魔力と共に妖犬を吹き飛ばす。
「うふふふ、もふもふ……」
「ガゥッ、ガゥッ!」
 元気な最後の一頭は、リカナによってもふられてもがいており。
「穏やかになるかなと思ったけど駄目ね」
 大人しくもふらせてくれなくて、ちょっとがっかりしたリカナが妖犬を解放すると、それは立ち止まって身体をぶるっと震わせた。
 その瞬間に、引かれるラヴの引き金。
「最後よ。これが私の、夢の通い路。おやすみなさい――」
 放たれた極太の光線が妖犬を飲み込む。
 そして後には、ただ仄かな熱だけが残されていた。

●そして静寂は訪れる
 敵意を持つ者の姿がなくなったことで、結界内の二人も安堵の息を吐いた。
 戻ってくる特異運命座標に千河が笑って手を振ると、蒔絵が大きく頭を下げる。
「ん、お疲れ様ー」
「あ、ありがとうございました……!」
「千河さん、ありがとう。蒔絵さんに怪我はない?」
 ラヴが優しく笑いかけると、蒔絵もようやく笑顔を見せた。二人とも、かすり傷一つ負っていないようだ。
 安全が確認できたところで、イナリが蒔絵に声をかけつつ手を伸ばす。
「とりあえず、荒れたところを整えないとね。箒とか、貸してもらえる?」
「あっ、はい! こちらです!」
 蒔絵が事務所から箒や塵取りを持ってくると、ラヴとイナリの二人が掃除の手伝いに。リカナは神社の拝殿前に据えられた賽銭箱に賽銭を入れて、二礼二拍手。
「次は、大人しく愛されるもふもふに生まれ変わってくるのよ……」
 妖怪であってもいいけれど、人と仲良く出来る存在に生まれてきてもらいたい。
 それはレーゲンも同様に思っていて、不殺でやっつけ生き延びた二頭の妖犬を前にして、優しく元気に声をかけていた。
 慈悲を貰った妖犬は大人しく伏せている。どうやら、もう暴れる気は無いらしい。
「ワゥゥ……」
「妖犬さんたち、神社の番犬や飼い犬としてやり直す気はないっきゅ? レーさんがおうちを探す手伝いもするっきゅ!」
 そう言うレーゲンが前ヒレで妖犬を撫でると、彼らはその手を大人しく受け入れた。
 そのまま優しく妖犬を撫でるレーゲンのところに、紙片を手にしたリカナが歩み寄ってくる。
「あら大人しい。もう一回モフモフさせてもらってもいいかしら?」
「ウワンッ」
 もふもふ要求をしたリカナに、返される吠え声は同意か拒絶か。どちらにしろ、リカナはもふる気満々のようだけど。
 と、レーゲンがリカナの手に握られた紙片に視線を向けた。
「リカナさん、おみくじ引いたっきゅ?」
「ええ、折角だからね」
 それは、先程引いたおみくじだった。事務所の入り口に設置されていたそれをいつの間に引いていたのか、彼女はそれを広げてみせる。
 番号と各種運勢、忠告の文句が記されている紙片を見せつけて、リカナは笑った。
「大吉。最高よ」

成否

成功

状態異常

なし

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