PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Gear Basilica>あたたかなパン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●避難所にて
 歯車大聖堂――ギアバジリカと呼ばれたその古代兵器は、モリブデンの地下より解き放たれ、各地の村や集落などで略奪を行いながら、少しずつその勢力を拡大しつつあった。
 さながら一個の軍隊と化した歯車大聖堂の部隊は、その進路をついに首都スチールグラードへと向けた。
 そんな中、住民たちの避難が開始され、住民たちは避難施設へと押し込められた。日に日に迫りくる歯車大聖堂の足音に、不安と不満を募らせる住民たち。
 その心の拠り所となっていたのは、一切れの温かいパンだった――。
「はい! 今日もパンをたくさん焼いて持ってきましたよ!」
 にっこりと微笑む、暖かい笑顔。
 ヴィルヘルミナ・フォン・ヴァイセンブルクは、両手いっぱいにパンを抱えながら、避難所に姿を現した。
 貴族として、かつてパン屋だったものとして、自分に何ができるか。そう考えたヴィルヘルミナが出した結論が、パンを焼いて、各地に配給することだった。お付きのものたちが止めるのを制し、ヴィルヘルミナはパンを焼いて、小さな蒸気ワゴンにのって、避難所を次々と回る。
 その姿は、不安に沈む住民たちに、どれほど暖かに映っただろうか? お世辞にも生活しやすいとは言えない避難所での生活に、その温かなパンは、どれほどの癒しになっただろうか?
「おねーさん、ありがと!」
 子供たちが笑ってパンを受け取る。
「いつもすまないね」
 老若男女を問わず、ヴィルヘルミナのパンで、人々は温かな気持ちを取り戻す。
 その様子を見て、ヴィルヘルミナはたまらなく嬉しい気持ちを浮かべるとともに、原因を取り除いてやることのできない自分自身に、少しばかりの罪悪感を――ヴィルヘルミナに原因の除去を求めるのは酷な話ではあったとはいえ――覚えるのであった。
「うん、今日も全部配り終えた」
 空っぽになったワゴンの中を見ながら、満足げにヴィルヘルミナは笑う。明日はどんなパンを焼こうかな――そんなことを考えながら、ワゴンの扉を閉める。
 その瞬間。
 ヴィルヘルミナは背後に何かの気配を感じ取って、とっさに振り向いた。
「――えっ」
 ヴィルヘルミナは、その可愛らしい顔を驚愕のそれに染めた。ヴィルヘルミナの背後にいたのは、黒衣の男だった。
 男はヴィルヘルミナを軽々と抱え、そのまま肩に担ぎあげる。
「ええっ!? ちょっと、やだ、放して! 放してくださいっ!」
 じたばたと抵抗するヴィルヘルミナ。だが男は、そんな抵抗を意にも介さず、ヴィルヘルミナを担いだまま、何処かへと姿を消した――。

●パン屋さんを助けて
「た、大変だよ、イレギュラーズさん!」
 避難所の警護を任されていたイレギュラーズ達は、大慌てでやってきた子供たちに気づいた。
「ぱ、パン屋のおねーちゃんが、さらわれちゃったの!!」
 子供たちのいう事には、曰く、いつものパンの配給の帰りに、パン屋のおねーちゃん=ヴィルヘルミナが、何者かにさらわれていったのだという。
 子供たちはそれを見ていたのだが、怖くて声をあげることも、止めることもできなかったのだ、と……。
「おねーちゃんをさらった奴は、あの『ぎあばじりか』がある方に行ったみたい!」
 その情報と、黒衣の男、という目撃証言から合わせて、ヴィルヘルミナをさらったのは、歯車大聖堂の『スネグラーチカ歯車兵団』たちに違いあるまい。
 そして歯車大聖堂は、『誰かが大切にしたもの』を燃料に動くという。となれば、多くの人々から『大切に思われていた』ヴィルヘルミナをさらったことは、つじつまが合うのだ。
「お願いだよ、おねーちゃんを、助けてあげて!」
 子供たちの言葉に、イレギュラーズは頷いた。
 すぐさま出発し、ヴィルヘルミナを奪還するのだ!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 さらわれたヴィルヘルミナを追い、救出しましょう!

●成功条件
 ヴィルヘルミナの救出

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 パン屋のおねーちゃんこと、ヴィルヘルミナ・フォン・ヴァイセンブルクが、歯車大聖堂の『スネグラーチカ歯車兵団』に拉致されました。
 今ならまだ間に合います。すぐさま後を追い、これらを撃退し、ヴィルヘルミナを救出してください。
 情報によれば、敵は十名ほどのようですが、追跡に時間がかかればかかる程敵は本陣に近づき、その分敵の戦力も増してしまう可能性があります。
 そのために、速やかに敵に追いつきましょう。
 作戦決行時刻は昼。周囲は市街地になっています。

●エネミーデータ
 『スネグラーチカ歯車兵団』 ×10~??
  特徴
  ギアバジリカに取り込まれた狂気の兵士たちです。子供たちの証言により、十名ほどで行動していたことが目撃されていますが、あまり捜索に時間がとられると、本隊と合流し、数や機械獣などが増えるかもしれません。
  最初の10名は、サーベルを持った5名の近接担当兵士と、銃を持った5名の遠距離担当兵士で構成されています。

●NPCデータ
 ヴィルヘルミナ・フォン・ヴァイセンブルク
 ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)さんの関係者です。
 可愛らしいパン屋さん……ですが、その正体は鉄帝の貴族の一人です。
 戦闘能力はありませんので、速やかに救出してあげてください。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <Gear Basilica>あたたかなパン完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月01日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
魔動機仕掛けの好奇心
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
マム
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
嫉妬の後遺症
糸巻 パティリア(p3p007389)
跳躍する星

リプレイ


「まさか、まさか母上がさらわれてしまうとは……!」
 『悩める魔法少女』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)は、市街地を走りながら、悔やむように呻いた。
 母――ヴィルヘルミナ・フォン・ヴァイセンブルク。ハイデマリーの父に見初められ、鉄帝貴族の立場となりながら、生家であったパン屋に今なお顔を出し、パンを作り、人々に笑顔を届けることを止めない優しい母。
 その優しさが、今あだとなってしまったのかもしれない……だが、そんなヴィルヘルミナを責める気持ちは、ハイデマリーはもちろん、今ヴィルヘルミナを捜索するイレギュラーズ達にはない。むしろ、その温かなやさしさに好感を持つほどだ。
「大丈夫、マリー!」
 悔やむハイデマリーを元気づけるように、『魔法騎士』セララ(p3p000273)は声をあげた。
「ボクが……ううん、ボク達で、必ず見つけ出すんだ。だから、ここでくよくよしてても、仕方ないよ! 一緒に頑張ろう!」
「……そうでありますな、セララ。ありがとうであります。皆、母上を探すために……よろしくお願いするであります!」
 仲間たち皆に届くように、大きな声で。その願いは、想いは、確かに仲間達に伝わったのだ。
「参考ていどに、してほしい……けど」
 『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)は少しだけ意識を集中する――満月のような宝玉をあしらったピアス、その意志が仄かに発光する。
「あっちのほうに、いる気がする……よ」
 ささやかな占い……当たらぬも八卦、という程度のものであったが、何の指針もなく探すよりはずっといいだろう。
「ありがとうであります。皆さん! 彼方の方を重点的に探してほしいのであります!」
「任せて!」
 『慈愛の英雄』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)は頷くと、そのギフトを解放した。瞬く間に髪の毛が銀色に変わり、腰から羽をはやした吸血鬼の姿となる。
「お母さん、必ず見つけてみせるから! さぁ、君も、この金髪の子に似た女の人を探して!」
 使い魔のコウモリにそう告げると、ユーリエは跳躍、飛翔。屋根の上に飛び乗り、上空から地上を見下ろす。
 上空には、ユーリエの他に、ジェットパックを装備した『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)の姿もあった。
「パン屋のお姉さんを、さっさと見つけて助けなきゃ、メンドウなことになりそうだね」
 イグナートはジェットパックを操作しつつ、一端屋根の上に飛び移る。
「しかし、お母さんだったとはね。ビックリだよ。お姉さんかと思ってた。ワカイよねぇ」
「そこには拙者もちょっとびっくりでござるよ!」
 屋根の上に現れたのは、『跳躍する星』糸巻 パティリア(p3p007389)だ。パティリアは手首からギフトによってひも状の触手を射出し、鍵縄のように利用しながら屋根の上を縦横無尽に駆け回っている。
「とと、そうではなくて。この道の先は行き止まりでござる! となると、奴らが向かったルートは隣の道――」
「つまり、こっちだね。リョウカイ。下の皆に伝えよう!」
 イグナートは頷いた。
 捜索は続く。空からの調査もあり、捜索はスピーディに進んで行った。
「建物の中には……誰もいないのだわ」
 『お節介焼き』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が、建物の中を透視しながらつぶやく。
「やっぱり、一直線に本拠地に向っているみたい。焦らせるわけじゃないけど、早く見つけた方がよさそうだわ」
 華蓮の言葉に、仲間達は頷く。イレギュラーズ達は、迷うことなく先へ、先へ。やがて、しばし進んだ先にて、声をあげたのは『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)だ。
「見つけた! 人助けセンサーに反応があったよ!」
「母上でありますか!?」
 ハイデマリーが声をあげるのへ、チャロロは頭を振った。
「断言はできない……けど、この辺で困ってる人と言ったら……!」
「上空から確認するよ!」
 ユーリエが屋根の上を跳躍し、チャロロの指示した方向へ向かう。果たしてそこには――。


「もう、放してくださいってば! わ、私、怒りますからね! フランスパンは堅いんですからね!」
 と、どこから取り出したのか、フランスパンを振り回しているのは、黒衣の兵士に担がれたパン屋のお姉さん――ヴィルヘルミナ・フォン・ヴァイセンブルクだ。
 黒衣の兵士たちは、人質の行動など意にそぐわぬ様子で――不気味なほどに無表情で――隊列を崩さず、鉄帝の街を走っている。その身体のあちこちには、埋め込まれた歯車がカチカチと回る。もはや、人であることすらやめてしまったのであろう狂気の集団。果たしてヴィルヘルミナは、黒衣の兵士たちに連れ去られてしまうのか――。
 その時。
 ばさり、と上空を、何かが飛んだ。
 黒衣の兵士たちが、一瞬、立ち止まる。わずかな停止。それだけで、充分だった。
「させない、よ」
 と――。
 静かに声が上がった。これには、流石の黒衣の兵士たちも、周囲を警戒するように見渡す。みれば、彼らの後方に立ちはだかる、少女の姿が二つ。
「鉄帝軍人ヴァイセンブルグ家がひとり、ハイデマリー」
 一人の少女が、名乗りを上げた。
「うそ……ハイデマリー、あなたなの?」
 ヴィルヘルミナが、驚きの声をあげた。それは、娘が助けに来てくれた驚きと共に、危険な場へと娘が現れたという驚きでもあった。
「その友達! セララ!」
 セララは懐から、一枚のカードを取り出した。そのままちらり、と、ハイデマリーを見やる。ハイデマリーは一瞬、うっ、とうめいた様子を見せたが、やがて何かを諦めたように頷き、自身の軍服に手を伸ばした。
『変身!』
 二人の身体が、輝きに包まれる――次の瞬間。二人の身体を包んでいたのは、可愛らしくもりりしい、魔法少女のコスチューム――!
「混沌世界の平和を守る正義の味方!」
 ぴしっ、とポーズを決める、魔法少女――セララ。
「世界(主に鉄帝)の平和を護る(鉄帝の)正義の味方」
 やや躊躇した様子を見せつつ、しかし合わせるようにポーズを決める魔法少女――ハイデマリー。
『魔法騎士セララ&マリー参上!』
 ここに舞台装置があったならば。間違いなく壮大なSEとスポットライトが当てられていたであろう――実際その光景を見ていたものは、それを幻視した。
「うそ……ハイデマリー、あなたなの?」
 ヴィルヘルミナが、驚きの声をあげた。それは、娘が魔法少女になっちゃった! という驚きの声でもあった。
 どこかキラキラとしたヴィルヘルミナの視線に、たまらずうめいたハイデマリー。しかし気を取り直して咳ばらいを一つ。
「こほん……母上を返していただきましょう、我が家にちょっかいかけたことを後悔させるであります」
「マリーのママを放せ! 放さないなら……力尽くでも止めてみせる!」
 二人の魔法少女の登場に、しかし黒衣の兵士たちは冷静であった。五名の兵士たちがサーベルを抜き放ち、魔法少女へと相対する――黒衣の兵士たちにとってみれば、新手とはいえたったの二名。数の利で打ち倒せる。そのはずであった。
 だが、この時すでに、イレギュラーズ達の布陣は完成していた。黒衣の兵士たちの進行方向――いまはその後方となった路地から、イレギュラーズ達が一斉に飛び出してくる!
 そして真っ先に動いたのは、ハイスピード忍者、パティリアである。パティリア素早く敵陣に切り込むと、ヴィルヘルミナを担いでいた兵士を強襲。そのままヴィルヘルミナを奪い取ったのである。
「持っていかせんでござるよッ!」
「きゃっ!?」
 急に抱きかかえられたヴィルヘルミナが声をあげるのへ、パティリアはウインク一つ。
「口を閉じているでござるよ! 舌を噛んでしまうかもでござる!」
 そのまま触手を発射し、屋根の上へと跳躍した。
 追いすがろうとする兵士たちの足元に、赤黒い鎖が着弾。その足を止めた。
「その人は私たちの”大切な希望”です。邪魔はさせませんよ!」
 鎖の主――ユーリエが声をあげる。
「確保したでござる!」
 パティリアの言葉に、ハイデマリーは内心胸をなでおろした。
「さぁ、皆! ここからが本番だよ!」
 セララの言葉に、仲間達は一斉に武器を構える。
「皆の、大切なものを、うばうなんて……ゆるせない、から!」
 コゼットはむー、と怒った様子を見せて、声をあげる。その様子に形勢不利を悟った黒衣の兵士たちだが、しかし彼らに撤退の二文字はない。そのような正気など、とうに捨て去っているのだ。
「カチ、カチ」
 男たちの歯車が鳴る。
「ならばお前たちを倒し、炉にくべる」
「やってみると良いよ……出来るならね!」
 チャロロは勇敢に、凶器の兵団へと相対する。
「ブキミだねぇ。歯車のバケモノって感じかな」
 ニヤリと笑いながらも、イグナートに隙は無い。
「こんな変な奴らに、負けたりしないのだわ!」
 華蓮の叫びに、仲間達は頷き。そしてそれを合図にしたように、黒衣の兵士たちも殺気をみなぎらせる。
 そして両者は一斉に動き出し、戦闘へと突入した!


 黒衣の兵士たちの攻撃が、イレギュラーズへと迫る。とりわけ攻撃が集中したのは、真正面に立ちはだかった二人の魔法少女、ハイデマリーとセララだ。名乗りを上げ、注意をひいた二人に、刃と銃弾が迫りくる。
「あまい、でありますッ!」
 銃弾を回避しながら、お返しの銃撃をお見舞いしてやる。『聖銃ナーゲルリング』より放たれた魔法の銃弾が、ライフルを持った黒衣の男を打ち倒す。
「マリーも怒ってるだろうけど、ボクだって怒ってるんだからね!」
 『聖剣ラグナロク』を振りかざす魔法少女――振るわれるサーベルの斬撃を刃でいなし、反撃の斬撃をお見舞いする。
「おにさん、こちら……」
 一方で、『跳挑発止』の動きで敵をおびき寄せ、幻惑するのはコゼットだ。その可憐にして華麗なる動きを、黒衣の兵士たちは捉えることができない。
 その右腕を振るい、イグナートは黒衣の兵士たちをまとめて薙ぎ払う。ぶおん、と振るわれるシンプルながら想い乱撃が、黒衣の兵士たちを滅多打ちにする。
「そうそう、オレだって怒ってるよ。皆のパン屋さんをよくも、ってね!」
 言葉通りの怒りを乗せた一撃が、黒衣の兵士を粉砕した。ばらばらと歯車をまき散らし、黒衣の兵士は活動を停止する。
「ヴィルヘルミナさん、とりあえず安全な場所まで……!」
 華蓮の言葉に、ヴィルヘルミナは頷きながらも、
「でも、皆は……」
 イレギュラーズ、そして娘の事が心配な様だった。華蓮は安心させるように微笑むと、
「私達は大丈夫……とっても強いんですもの。だから、あなたには、今は逃げてほしいの」
 そう告げる。ヴィルヘルミナは頷き――しかし娘から視線を外さぬまま、華蓮と共に後方へと去っていく。
「お前達……どうしてヴィルヘルミナさんを狙うんだ!」
 『機煌宝剣・二式』にて敵のサーベルを受け止めながら、チャロロが黒衣の兵士たちへと声をかける。かち、かち、と歯車のなる音と共に、黒衣の兵士は呟くように答えた。
「炉にくべる……炉にくべる……」
「くそっ、そればっかり……!」
 抵抗意志力を刃にのせ、サーベル兵士を斬り捨てる。乱戦状態になってはいたが、敵は少しずつその数を減らしているのを確認できた。このペースで行けば、せん滅までそう時間はかからないだろう。
「皆さん、ヴィルヘルミナ殿は大丈夫でござる!」
 後方へとヴィルヘルミナを護衛していたパティリアが、声をあげて戻ってきた。
「後は遠慮は無用だわ! 皆、やっちゃって!」
 華蓮も同様に、戦線へと戻ってくる。
「ならば、一気にやっつけちゃいましょう!」
 ユーリエが振るう赤黒い鎖――鞭のようにしなるその鎖が、ライフルを持つ黒衣の兵士を強かに打ち付けた。その勢いのまま地に倒れた兵士の心音が止まる様に、歯車の音が止まり、そのまま動かなくなる。
「あんまり、時間を、かけてると……ぞうえんが、きちゃうかも、だよね」
 炎の舞を舞うコゼット――情熱的に、心昂るように――その火傷するような舞が、黒衣の兵士を翻弄し、その焔の中へと閉じ込める。
「ああ! 長居はムヨウだ!」
 イグナートの拳が、焔の中へと閉じ込められた黒衣の兵士を殴り飛ばす。焔と、拳。二つの攻撃にさらされた黒衣の兵士が、勢いのまま吹き飛ばされ、燃やされ、その活動を停止した。
「てやぁっ!」
 機械盾でサーベルの攻撃を受け止め、反撃の斬撃をお見舞いするチャロロ。切り裂かれた黒衣の兵士は歯車をまき散らしながら、活動を停止する。
「残るは一人――セララさん! ハイデマリーさん!」
 チャロロが叫ぶ――セララとハイデマリーは頷き、最後の黒衣の兵士へ向けて――セララは弾丸のごとく駆けだした!
「合わせるよ、マリー!」
「了解……ヴァルハラへの駄賃であります!」
 ハイデマリーはナーゲルリングを構えた。研ぎ澄まされた一撃、その銃弾が、白き夜のごとく冷たく、冷徹に、黒衣の兵士へと突き刺さり、その動きを止めた。次の瞬間、黒衣の兵士の眼前に現れたのは、セララの姿だ。
 セララが呼び寄せるは天雷。その輝きをラグナロクに受け、一気に振り下ろす――。
『ギガセララ・ヘクセンナハト!』
 雷と、白の夜、爆発する魔法少女のパワーが、黒衣の兵士にさく裂した! 直撃を受けた黒衣の兵士は、盛大な爆発と共にその活動を停止する!
「我らに手を出した罪――ヴァルハラで償うがいいであります」
 ハイデマリーは静かに呟き――そして、戦闘は終了した。


「母上……ご無事で……っ!」
 ハイデマリーは、思わず抱き着きたくなる衝動を制した。大切な母がいる……それはとても嬉しい事だったが、人前で母に甘えるような行為に、少しの恥ずかしさを感じたのは事実だ。
「良かった……ハイデマリー、あなたも無事だったのね」
 しかしそんな娘の気持ちを知ってか知らずか。ヴィルヘルミナは、優しくハイデマリーを抱きしめた。ハイデマリーは一瞬、顔を赤らめて焦った様子を見せたが、しかしすぐに、その腕に抱かれるままとなった。
「ヴィルヘルミナさん、ケガはない?」
 チャロロが尋ねるのへ、ヴィルヘルミナは柔らかに頷いた。
「ええ。皆さんのお陰で……特に、忍者さんたちには、お世話になって」
 と、パティリアと華蓮、二人に視線を送った。
「いえいえ、これもまたニンジャの務めでござるゆえ」
 こくこくと、嬉し気に頷くパティリア。
「無事に救出できて本当に良かったのだわ……」
 胸をなでおろすように、華蓮もまた頷いた。
「さ、此処もアンゼンとは言えないからね。避難所に戻ろう」
 イグナートが声をあげるのへ、仲間達は同意した。
「そう、だね。ヴィルヘルミナさんがさらわれた、って教えてくれた子たちに、ちゃんと、たすけられたよ、って伝えなきゃ」
 コゼットがこくこくと頷いて答える。
「これで、避難所の人たちも安心してくれますよね!」
 ユーリエも、微笑んでそう言うのであった。
「あ、はじめまして! マリーの親友で、魔法少女仲間のセララです!」
 避難所へと帰還する道すがら、セララはヴィルヘルミナへと挨拶をした。ヴィルヘルミナは微笑んで、
「あら、ハイデマリーがいつもお世話になっております」
 ぺこり、と頭を下げる。
「疑うわけじゃなかったけど、ほんとにお母さんだったんだね」
 イグナートが声をあげる。
「ほんとに、お姉さんかと思ったよ」
 チャロロもそう告げるのへ、ヴィルヘルミナはくすくすと笑ってみせた。
「ところで、セララちゃん。魔法少女って、さっきハイデマリーが姿を変えたあれみたいな事なのかしら?」
 と、どこかキラキラした瞳で問いかけるヴィルヘルミナ――。
「あ、いや、それは」
 ハイデマリーは否定しようと声をあげるが、セララはそれを遮るように、声をあげた。
「はい! それで、これ、読んでほしいんです!」
 と、セララは一冊の本を差し出した。
 それは、セララのギフトにより作り上げられた、今回の事件の物語の漫画。
「これ、マリーの活躍を描いた漫画です。良かったら読んでみてください」
 まぁ、とヴィルヘルミナは嬉しそうに、それを受け取った。
「ありがとう。戻ったら夫と読んでみるわね」
 大切なものを受け取ったように、その本を胸に抱きとめて。
「……セララ? その、軍人としての私の活躍ですよね? ね?」
 尋ねるハイデマリーに、セララはにっこりと笑って答えなかった。
 とはいえ。
 それがどのような――魔法少女とその仲間達による冒険譚であれ。
 娘の成長を記録したそのマンガは、ヴィルヘルミナにとって宝物であることに違いは無いのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様のご活躍により、可愛らしいパン屋さんは無事、その身柄を保護されました。
 渡された本は、きっと家族で楽しく回し読みされたことでしょう。

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