PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ぼくと書生さん

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ぼくの家にはとと様と、かか様以外にもう一人が暮らしている。
  朝食と夕食の時間に現れて、特に話すわけでもなく食事を済ませたらまた部屋に引きこもる。
 かか様に聞いたら『書生さん』と言うらしい。
 ぼくはこの、不思議な不思議な書生さんが気になって、いつしか書生さんの部屋に通うようになった。
 特に話すわけでもない。ただ隣で書を読んだり、書生さんがなにかを書いているのを覗きこんだり、昼寝をしたりして過ごした。
 書生さんはそんなぼくを追い出すわけでもなく、好きにさせてくれた。
 そのうち一言、また一言とぼくと書生さんは短いながらも言葉のやり取りをするようになった。
 決して会話とは言えないけれど、とと様ともかか様とも話をしない(したところを見たことがない)書生さんと、少しだけ仲良くなれた気がして嬉しかった。


「“坊(ぼん)、せめて貴様だけは生きよ”……もう顔も覚えていないけれど、その声だけははっきりと覚えている。それはまるで遠い過去のことのようで、つい今しがたのことのようでも――おや」
 図書館で保管している一冊の本を音読していると、特異運命座標の気配がして顔を上げた。
 その物語は何かとそのうちの一人に訊ねられた。
 聞かれたのならば答えなくてはなるまい。
「これは“書生”と“ぼく”の物語さ。あぁ、もちろん悲劇だよ」
 今しがた読み上げていた箇所に栞を挟んで、物語の冒頭部分までページを遡る。
 旅人(ウォーカー)の世界に、この物語の時代とよく似た歴史を辿った世界があったと聞いたことがある。そう、例えるならばこの物語の世界は――、
「時は大正。西洋から文化がやってきて、人々の暮らしが現代的になってきた時代」
 大正と呼ばれる時代を歴史に持つ旅人がいたのなら、それは正に現代へ至るための重要な時代だろう。
 短いながらも様々な出来事がおきた、激動の時代がそれだった。
「物語はそんな時代のある一人の少年の独白から幕を開ける。彼の家には彼の家族以外の他人、……書生さんがいたのさ」
 この物語で言う書生とは、間借りをして生活をし、学業を学ぶ存在だと思ってくれればいい。
 少年はいつからか突然暮らし始めた書生と、次第に心を通わせていった。
 しかし、少年が11歳の誕生日を迎える前日、事件は起きた。
「魔のモノが現れ、町をひとつまるっと破壊したのさ」
 父も、母も、近所の友達も、学校の先生も。みんな、みんなソレに喰われた。
 気づいたら、生き残ったのは少年と書生だけになっていた。
 とてもとても恐ろしくて、足がすくんで、声が震えて、涙が止まらなかった。
 しかし、そんなことはお構いなしに隠れていた少年たちを見つけた魔のモノは言うのだ。
『おまえらのうち、どちらかをくわせろ。そうすれば、もうひとりはたすけてやる』
 死にたくない。生きたい。一人になりたくない。
 ぐるぐると渦巻く感情と、恐怖でなにも答えることが出来なかった少年の前に、歩みでた生け贄。
 それが“書生さん”だった。
「書生は最期に少年にこう言葉をかける。『誕生日、おめでとう』」
 色々な意味で、一生忘れられない誕生日となっただろう。
 書生さんがその言葉をかけた瞬間、時計は12時を指し、魔のモノと書生は姿を消した。
 物語はそこで、幕を降ろす。
「けれど、こんな物語は嫌だろう?」
 イレギュラーズ達の、それぞれの反応を見たトゥールはニヤリと笑った。
「なら決まりだ。きみたちにはこの物語を大団円(ハッピーエンド)にしてもらおう」
 物語の世界に入り、魔のモノを討つ。極めて単純明快である。
「物語の中に入ったきみたちは、少年の住む町の住人として認識される。きっと町民達はきみたちの指示を素直に聞いてくれるはずさ」
 ただし、ひとつだけ注意すべきことがある。
 それは『少年に姿をみられてはならない』こと。
 最悪顔をみられなければ大丈夫ではあるが、用心するに越したことはない。
「さぁ、準備が整ったら教えておくれ」
 これは少年のこころに刻まれた、消えない傷を防ぐための物語。

NMコメント

 まだ出したことのないジャンルのシナリオを出してみようキャンペーン!(戦闘編)です!
 以下、補足です。

【目的】
 魔のモノを倒す。

【世界】
 日本の大正時代に近い世界です。
 魔のモノと呼ばれる存在がおり、それを倒すための秘密結社が存在します。
 また、ごく稀に魔力をもつ人間が生まれてきます。
(魔力を持つ人間は発見され次第、秘密結社に勧誘されます)

【登場人物】
 ぼく:
 書生が間借りをしている家の子供。物語の世界の人間には珍しく、魔力を有しています。
 イレギュラーズ介入前の物語では、魔のモノから生き延びた後に秘密結社に入り、成人すると同時に失踪します。
 今回、彼にイレギュラーズが戦っている姿や顔を見られると、物語に大きな影響がでます。注意してください。
 書生:
 “ぼく”の家で生活をしている青年です。
 イレギュラーズ介入前の物語では、魔のモノの生け贄に自ら名乗りをあげ死亡します。
 物語の世界の人間には珍しく魔力を有しており、それを扱うことができます。
 イレギュラーズの手助けをしてくれるかもしれません。

【敵】
 魔のモノ:黒い霧状の塊です。
 霧を辺りに充満させ、人々の生命力を喰らいます。
 魔のモノを倒せるのは魔力を有した者のみとされています。

【この世界での皆さん】
 魔力を有した者として扱われるため、神秘攻撃・物理攻撃ともに魔のモノに対して有効です。
 また、少年の住む町の住人からは同じ町民として認識されるため、避難誘導なども容易に行えます。
 ただし、“ぼく”と“書生”には認識補正が働きません。

 それでは、皆さんのプレイングをおまちしております!

  • ぼくと書生さん完了
  • NM名樹志岐
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年02月28日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
辻岡 真(p3p004665)
旅慣れた
オズ・ヨハネス・マリオット(p3p006699)
魔科学ドール
ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい

リプレイ

 春に向かう日差しが心地よく、道端には野草が芽吹き始める頃。
 俺が住み込みさせてもらっているこの場所にも変化があった。
 この家の子供が、俺の部屋に度々訪れ、居座るようになった。
 特に困るわけでもないので、坊を好きにさせている。
 そのうち坊は書を眺めるようになり、そこに出る言葉の意味を俺に訊ねるようになった。
(俺に弟がいたら、こんな風なのかもしれないな)
 机を支えにしながらゆっくりと腰をあげると、どこへ行くのかと問われる。
「厠だ」
 答えれば、納得したように再び書に目を落とす。その後ろ姿をちらりと見てから俺は廊下へと出た。

「……で、何用かな? 見たところこの辺りの人間ではないようだが」
 イレギュラーズの目の前にはシャツに着物と袴姿の男が立っている。
 少年――『ぼく』とだけ表記された少年に顔を見せないように仮面をつけている面々は不思議な存在に見えたのだろう。
「私達が何者か、そして何の用事か……。それを説明する前にこれをみてください」
 いいながら仮面をはずしてラヴ イズ ……(p3p007812)が魔力で作り出した弾丸を宙へと放つと、書生は激しい目つきで見据える。
「なるほど、噂に聞く秘密結社の者かな?」
「まぁそんなところよ」
 話が早くて助かった。ふぅ、と小さく息をついて、本題に入る。
 魔のモノがこれからやって来ること。それを倒しに来たこと。
「町の人たちは私達が注意を引き付けるけど、それでも避難できなかったりしない人たちがいると思うの」
 ラヴがそういった人たちや少年を書生には連れて逃げ隠れてほしいことを伝えると、書生は少し考えるような素振りを見せた。
「承った。……俺を使うならうまくやれよ、秘密結社の者」
 当然だ。無言で頷いたイレギュラーズ達に、書生は僅かに笑った。

「さぁて、上手くいくかなぁ?」
 くるくると手元で弄ぶナイフ。仮面で隠した目元と弧を描いた微笑み。
 オズ・ヨハネス・マリオット(p3p006699)は道化師……もとい、魔法使い(物理)である。
 魔法を以って奇跡を起こす魔法使い。人の心を掴んで、魅了することには慣れている。
 そして一人が集まれば十人、二十人と呼び寄せるのに時間はそうかからない。
「さぁさ、おいでらっしゃい見てらっしゃい。これより始まるはオズの魔法が如き奇術の数々」
 此度の魔法は一度きり。見逃すなんて勿体無い!
 ナイフと舞闘を組み合わせた曲芸はみごとなもので、口上と物珍しさが合わさって町民が次へ、また次へと集まってくる。 その様子にオズはにこりと笑う。
(これなら大丈夫そうだね、そっちは頼んだよ!)

「さて、こっちも始めようか」
 町の中心にある見張り台の上から辻岡 真(p3p004665)が双眼鏡を覗き込んだ。
 町の中心から外れまで。そのまた向こうの森の木々まで、見逃してなるものかと神経を研ぎ澄ませて。
「どう? 見つかった?」
 書生へ協力を取り付けたラヴが、同じように見張り台の周辺で耳を澄ませていたハロルド(p3p004465)に訊ねると彼は首を振った。
 町民がいなくなった町はどこか寂しさが漂っている。ヒュウと吹いた風が肌寒さを感じさせた。
 そんな風に乗って、微か――本当に、微かであるがガスが噴き出すような歪な音を聞いた。
「ハロルド君! 見つけた!」
「あァ、こっちも聞こえたぜ!」
 速く、速く。人々の平穏を脅かすモノは皆殺しにしなくては。

 それはシュウシュウと音を立てて、赤く光る双眸でギョロリと周囲を見渡している。
(はらがへった。にんげんがくいたい)
 人の魂が食いたい。人の肉が食いたい。無自覚にも魔力を持って生まれ出た人間のそれなど、蜜のように甘美で最高の食事である。
 確かに感じた。そんな最高の食材の気配を。
 ――あぁ、だというのに。
『なぜだ、なぜにんげんがいない!』
 建物の扉を揺らすほど激昂したそれは気付かない。気づけない。
 目が、眼が。目付きの悪い三白眼が獲物を視界に捉え、日の光を反射して煌めく剣を振るうのを。
「よぉ、アンタが“魔のモノ”とやらか」
 ニヤリと不敵に笑う彼に向けてソレは赤い瞳をギョロリとこちらに向けた。
『にんげん? まりょく? なぜ、なぜなぜなぜなぜ! くだんの“ひみつけっしゃ”か!?』
「ただの人間だって魔力くらい持つさ」
 ――僕らは特異運命座標だからね。
 接近戦を仕掛ける真に霧状の体の一部が触れ、じゅうと服を溶かし肉を焼く嫌な音と臭いがした。
 それでもナイフを片手に斬りかかれば、切り取られた箇所が空気中に霧散する。
 ソレからしてみたら虚をつかれた形になったが、小刻みに目を動かし周囲を見やる。
(ふそくのじたい、だが……)
 目の前には魔力を有しているとはいえたった二人。
 ならば、上手く立ち回ればこんな下等生物など……。
「簡単に倒せる? それは無理だね!」
 物陰から投げ込まれたナイフがソレの目のひとつに突き刺さる。
 狙いも角度も勢いも申し分ない。当然さ、曲芸師はどうすればお客さんを笑顔にできるか知り尽くしているからね。
「ってわけで魔法使い(物理)とうちゃーく! 町のみんなには終わるまで戻ってきちゃダメって言っといたからね!」
 元気よくはねる度に目が覚めるような夕日色の髪が煌めく。
 視界を半分奪われたソレはゆるりとこちらを向いた。
 赦さない、許さないゆるさないユルサナイ。
 はらがへった肚が減った腹が減った。
 もうなんでもいい、もうどうでもいい。邪魔立てをするなら全て、総て、統べて。
『おまえらをくわせろォォォォッ!!!』
 体の半分に当たるところからかぱりと開いた口は、霧状のからだに似つかわしくないほど肉々しく艶やかな緋色で、鋭くとがった歯列は肉食動物を彷彿とさせる。
 口腔から漂う悪臭はソレが今までに奪ってきた命が少なくないことを雄弁に語っていた。
「はははっ、楽しくなってきたじゃねェか!」
「楽しいかどうかは、わからないけれど……」
 小さく息を吐いたラヴは手にした銃に夢(たま)を籠める。
 おやすみなさいと夢を名に持つ二丁の拳銃は彼女の祈り。
 せめて安らかに。幸せな夢を。願いを込めたまけの一日(だんがん)は眠りには至らないものの、動きを制限するには十分だった。
「あの子の誕生日の思い出を悲しい記憶になど、させたくない!」
 寄せては返す波にも似た攻撃。幾度も幾度も繰り返して少しずつ、確実にソレの体を削り取っていく。
 その度に真の体はソレの霧によって焼けていくが気をしてなどいられない。
 傷ついた身体は癒せばいい。けれど心の傷はなかなか癒せない。
 そしていくら自分達でも、落としてしまった命は救えない。
 だから落とさぬように、やって来たのだ。

「……っ、」
 長時間に及ぶ一進一退の攻防に、やがてオズはがくりと膝をつく。
 他のイレギュラーズも、膝をつかないまでも疲弊から意識が朦朧としてきた。
 次第に緩慢になってゆく動きに、それは『ハッ』と嗤った。
『やはりこのていどか。わらわせてくれる』
 町一体を壊しつくし殺し尽くすつもりだったが、気が変わった。
 代わりにこいつらの肉を食み、血を啜り、骨を砕いて魂を飲み込んでやろう。
 そして腹を満たしたら、また別の町にでも向かおう。
 先程までよりもっと濃い霧を周囲に広げる。自身の防御は薄くなるが、ひとまとめにこれらを片付けるにはこれくらいがちょうどいい。
 どうだ、立っているのがやっとであろう。攻撃になど手が回るまい。
 さて。ひとり、ふたり、さんにん。……おや? もうひとりは、
「俺は此処だぜ」
 ――それはむかしむかし。ここではない故郷の世界でとある勇者のために聖女が送った剣。
 ハロルドはわずかに残る加護を受け、音もなく、気配もなく背後から忍び寄っていた。
「“乱月”……悪しきを討つ聖剣! 魔を断つ退魔刀! 思う存分喰らいやがれ!」
 そこから先は不思議とスローモーションのようだった。
 本来目にも止まらぬ早さで繰り出される斬擊は、その太刀筋の一本一本が手に取るように見える。
 されど攻撃よけることはソレには叶わなかった。
 疲弊した体に無理をして広範囲を侵食する霧を発生させたことは、ソレにとって致命的であったのだ。
 振りおろされた聖剣にカツンと、なにか硬いものが当たる感触があった。
「これがお前の要か!」
 そのまま霧の体に手を突っ込み、それを奪い取ると、それはルビー色の小さな球体であった。
 確証はない、けれど瞬時に確信した。
 これを壊せば終わる、と。
「じゃ、これで本当に本当に最期ね」
 これは、魔法だ。
 光の魔法。誰かの為の魔法。おやすみの魔法。
「あなたはもう、おやすみなさい」
 魔法は魔のモノと呼ばれたあなたのために。
 いい夢が見られます様に。小さく呟いて光が放たれた。

 最期の魔法が放たれた頃。
「どうやらおわったらしい」
 争う音が聞こえなくなったのを確認した書生が、不思議そうに自分の手を見つめる少年に目がいった。
 おおかた、自分に魔力があると言うのを気にしているのだろう。
 自分はあまり他人と話したりするのが得意な人間ではない。
 けれど精一杯の親愛を込めて――それでも乱雑な撫で方に抗議の言葉がとんでくるが、そんな言葉は聞こえない振り、知らんふり。
「……なぁ、坊」
 そんな自分の態度に呆れたのか諦めたのか、ややむくれた表情になった少年に声をかける。
「明日は誕生日だろう。……俺と共に帝都へ行かんか?」
 誕生日の贈り物を買いに。今日を二人で生き抜けた記念に。
 これからの指針を仰ぎに、秘密結社があるとされる帝都(そこ)へと。

 境界図書館の片隅。
 厚い表紙のその本の最後は、賑やかな華の帝都の街並みと、二人たたずむ少年と青年の挿し絵に書き変わっていた。

成否

成功

状態異常

なし

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