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シナリオ詳細

<Despair Blue>海亀のスープ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 晴れ渡る空。青い海。力強い追い風。
 二十二年ぶりの大号令の下、外洋へと飛び出した小船団は何かに導かれるように一直線に進んでいた。
 イレギュラーズの知恵で進路を変えても、ふと気づくと転進している。錨を下ろしても、船がきしむほどの強風で動かされる。
「何かに呼ばれているんだろう」
 そういう結論になる。以後は誘われるまま船は進んだ。

 警戒は怠らないが、見張り以外することのない船内は不穏な空気が立ち込めていた。
 ちょっとしたことで喧嘩になったり、気が塞いだり、風邪を引いた気がしたり。
 何時からだろう。……昨日? いや、一昨日だ。そうだ、あの時何か『凄く臭かった』のを思い出した。
 幸いにして各人が役割を果たす支障にはなっていない。ただの気の迷いであればいいのだが。


 突き進む船の舳先の先の先、豆粒ほどの島影を見つけたのは見張り当番だった。
「陸地だ! 陸地だぞ!」
 某かの掌中にいる状況でも、新天地は嬉しいもの。乗組員達は甲板に群がり、望遠鏡を奪い合い、みるみるうちに大きくなる島を眺めた。
「見ろよ、噴水のように水が湧いてらぁ」
「丸々肥えた豚の群れだ! 今夜はごちそうだな!」
「豚ァ? そんなのどこに居るんだよ。キレイなおねーちゃんが手ェ振ってるのが見えねェ節穴め!」
「あのハンモックは俺がもらう」
 てんでばらばらな感想にイレギュラーズは身構えた。

 罠だ――そう思ったのもつかの間。
 生い茂る木々と白い砂浜の島に『それ』を見た。

 心を奪われた一瞬に。
 疾走する小船団は勢いを落とすことなく、楽園のような小島に吸い込まれる。


「楽園亀ってモンスターがいるんだ」
 ある情報屋が言っていた。
「要は大きなウミガメさ。手頃な獲物が泳いでるのを見かけるだろ? すると魔力で引き寄せて、相手が油断するような幻覚を見せるんだってさ。人間なら、心の奥の奥にしまったものをお出ししてくるわけ」
 見たいと渇望するもの、見たくないと拒否しているもの。心の底の一番強いもの。
 そういうものを見せられると、動揺する。
「で、獲物が油断したところを丸呑みにするんだ。後はじっくり胃袋で溶かすだけ。口の中は逆さのトゲだらけで逆流できないから会ったら最後さ。まあ、あんたたちイレギュラーズなら胃袋かっさばいて出てきそうだけどねえ」
 そんなモンスターが突然変異を起こしたら。こんな狂王種になるだろう。

GMコメント

●成功条件
 モンスターの討伐

●失敗条件
 一定時間の経過(旗艦の破壊)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。
●ロケーション
 胃袋の中です。よく例えに使われるドーム三個分の広さ。生温かくて臭い。
 真っ暗な胃酸の海、時折天井からも胃液が滴ります。
 以前飲み込まれた船の残骸がちらほらあります。他の生存者はいません。
 時間と共に船が胃液で溶かされるので、航行可能なうちに討伐しましょう。

●敵について(PL情報)
 小島ほどの大きさの、ウミガメの狂王種です。
 手頃な獲物に幻覚を見せて、油断したところを丸呑みにします。
 外側はとても硬く大きさ相応の体力があります。
 しかし内臓は鍛えようがないので、攻撃でかっさばいてください。
 イレギュラーズに対して直接攻撃はしません(出来ません)。

●仲間
 小船団の乗組員が20人います。戦力にはなりませんがイレギュラーズをサポートします。
 指示があればプレイングに書いてください。特になければ松明で辺りを照らしています。

●幻覚
 一番見たいものとか見たくないものとか、絶対無理で諦めていた(けどこっそり未練を隠し持っていた)ものを見ました。
 一人一人違う幻覚を見ています。その内容をプレイングにお書きください。

乃科です。丸呑み楽しいなって気持ちをシナリオにしました。
ついでに秘密の思い出を赤裸々にしたい依頼です。
描写のアレンジ・アドリブが入る場合がありますので、『アドリブ歓迎』『アドリブNG』などプレイングやステータスシートで意思表示をお願いします。
それではよろしくお願いします。

  • <Despair Blue>海亀のスープ完了
  • GM名乃科
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年02月11日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
秋宮・史之(p3p002233)
浮草
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
天之空・ミーナ(p3p005003)
蒼穹の戦神
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
リナリナ(p3p006258)
プラック・クラケーン(p3p006804)
救海の灯火
ゼファー(p3p007625)
never miss you

リプレイ

●楽園の夢を見る
 空が赤い。安っぽい絵の具で塗りつぶしたように雑な濃淡を繰り返す、うるさいだけの赤。
 ついでに塗りつぶして筆を何度も洗ったように、海の色も赤黒い。
「!?」
『天然蝕』リナリナ(p3p006258)は船上を見回した。右を見ても左を見ても、さっきまで騒いでいた仲間は誰も居ない。随伴艦も島も無い。
 どうしたものか。周囲を観察しつつ佇んでいると、船べりに無数の腕がしがみついた。なめくじかイモムシか、骨のない生き物のようにぐにゃぐにゃと這い上がる。
「おー、何だコイツら!」
 それはヒトに近い形をしていた。薄っぺらい笑顔が首の上にあるだけで、後頭部が足りない。それらは次から次へと現れて、ぬめるような足取りでリナリナを取り囲んだ。
 そいつらの口が一斉に開く。向こうに赤い空が見えた。リナリナを小馬鹿にした会話が紡がれる。彼女を一度も見ないままで。
 取り囲んで悪口を言うだけで、命の危険は特に感じない。
「結局いつもの依頼状態! なんだコレ、幻覚?」
 さりとていい案も浮かばず、リナリナはどっかりとあぐらをかいた。いつか覚めるまで、肉でも食べながら小休憩だ。

 船員から回ってきた双眼鏡を覗くと、砂浜に立つ男の後ろ姿が見えた。
 ゼファー(p3p007625)は二、三度瞬きをして、もう一度人影を確かめる。
 筋骨隆々とした大きな背中だ。
 年々縮んで、小さくなった頼もしい背中。
 島にいる人は古い記憶の姿で、だから偽物だとわかるけれど。
 あの老人は今も何処かを旅しているのだろうか。
 自分はまだ、彼の記憶の中に在るのだろうか。
(共に生きた時間を、吹き去った風を。――貴方は、覚えてくれていますか)
 ゼファーは心の中で問いかけた。

 行方不明になった婚約者が浜辺を歩いていた。
 生きていたのか、と錯覚する余地はない。彼の隣には髪が長かった頃の自分がいる。二人とも幸せそうに、手をつないで。
 ただただ幸福なまやかしに、『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は息を呑む。
 断ち切れない思いであることは自覚があったが、赤裸々に見せつけられると胸が騒ぐ。
 二人は顔を寄せて何かの言葉を交わすと、こちらを見向きもせずにどこかへと歩いてゆく。寄り添って、一緒に、どこまでも。

 幻覚に浮かれきった甲板を後方から眺めていた 『うそもまこともみなそこに』十夜 縁(p3p000099)は、何気なく背後を振り返った。きらきら輝く金色が、目の端に引っかかったので。
 そこには幻想種の女が佇んでいた。潮風を受けて揺れる豊かな金髪に、青い瞳。両手でふくふくとした赤ん坊を抱えている。
「ねえ見て、この子、今笑ったわ」
 女は目を細めて微笑む。
 ……一番見たくて、一番見たくなかった母子の姿。
 頭ではわかっているのだ。これは幻で、二人ともとっくに死んでいると。
 風にのって乳臭い赤ん坊の匂いがする。幸福があったひだまりの匂い。
 赤ん坊があーうー、と声を上げて縁に両腕を伸ばした。

(イザベラ女王陛下に吉報をお届けしますよ! 『絶望の青』踏破の足がかりを発見しました!)
 島の発見に『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)はガッツポーズをした。親愛なる陛下に新たなる橋頭堡を報告できる。何と喜ばしいことだろう。願わくば補給地点として役立つといい。
「食料とか水とか……、……なんだあれ」
 島を観察していた史之は、異物に目を留めた。
 布団だ。寝る時に使うあれが一組、置かれている。使い込まれた布団の柄が過去と結びついた時、視界が吸い込まれるように他のすべてが暗くなる。
 いつの間にか布団の上には幼い史之がいて、『誰か』を夢中で抱きしめていた。
「……嘘だろ、やめろ」
 わんわんと響く耳鳴りの中、その声は明瞭に届いた。
 ねえ***いいよねいちどくらいぼくはねずっとこんやもかみおろしがあったんだろう***しってるんだぼくだってねずっとこうしたかっ……

 島発見に沸き立つ甲板が静かになったかと思うと、眼の前に死んだはずの母が立っていた。
『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)はぴんと立った犬耳を震わせる。
 母にはいろいろな事を教わりたかった。父や弟に会わせたかった。家族みんなで幸福な生活を送りたかった。寄せては返す後悔が胸にさざめく。
 ――しかし。
「過ぎた事に囚われ、今を見失うのはナンセンス。……そうよね、母さん」
 鶫は母に微笑んで、電磁加速式重穿甲砲『金之弓箭』を構えた。
 母の幻も笑った。だから、かつて彼女に教えられた事を思い出す。
 眼を閉じ、集中し。
 眼を開いて、引き金を引いた。


 そこは暗い、暗い場所だった。気まぐれに吹く生温い風は『絶望の青』の潮風とは別種の気持ち悪い臭さを孕んでいた。
 遠い場所でぴちょん、と水滴の音がする。
 真っ先に幻覚からさめた『ディザスター』天之空・ミーナ(p3p005003)は、足元の感覚からまだ甲板にいるのを確かめると声を上げた。
「みんないる!? 怪我はないかい?」
 彼女はほんの少し前まであった、当たり前の日々の夢を見た。もうそれが『無い』ことも知っている。幸せな夢に浸るほど若くないんだよ、と自覚したら現実に戻ったのだ。
「ここにいるぜ!」
 近くから『蛸髭 Jr.』プラック・クラケーン(p3p006804)の声がする。
「……幻覚終わった?」
 リナリナは周囲をキョロキョロと見回した。真っ赤から真っ暗になって見えないが、ヒトガタの『何か』の気配は消えている。
「あらあら、真っ暗ですわー」
「灯りはあるかしら?」
 メリルナートとゼファー。あります、と船員がカンテラを灯した。
 飛び起きた史之は青い顔で船縁へ走った。こみ上げるものを吐けるだけ吐き出して、新鮮な水で口直しをする。
「ちょっと船酔いしたかな、ははっ……うぷ」
 脳裏に蘇る悪趣味な幻覚。落ち着け、と自分に言い聞かせた。ありえなかった過去だから、と。

 結果から言えば、小船団は楽園亀なるモンスターの狂王種に丸呑みにされたようだ。
 広々とした赤黒い洞窟……のような胃の中。異臭を放つ胃液の海に船は浮いている。即座に船が溶けるほどの強酸ではないようだが、あちこちに浮かぶ木材の成れの果てを見ると時間の問題だろう。
 しかし、飲み込んだのは特異運命座標。可能性の塊。いつも通りに消化して終わり、となるわけがないのだ。

 一通りの状況確認と負傷者の処置が済むと、脱出の話になった。
「この狂王種の内部構造はわかる?」
「ええと……」
 ミーナの問いかけに鶫は感覚を研ぎ澄まし、楽園亀の内臓を探った。普通の生き物と変わらないようで、心臓だの肺だのと臓器が詰まっている。食道は逆流防止のトゲがびっしり生えて、来た道を戻るのは無理そうだ。
「口の方はダメ、その逆はもってのほか。となると、横腹狙いですかね、やはり」
「肺の方向は?」
「この船の舳先から二時の方角ですね」

「……そこに穴を開けて船ごと脱出しようって計画よ。ついでに大砲は使えるかしら? 温存しておいてもこっから出られないなら無駄でしょ。一緒に撃ち込んじゃいなさいな」
「障害物の少ないルートはわたくしが考えますわー。時々胃液が滴ってきますので、頭を守ってくださいね」
 ゼファーとメリルナートが船員に伝えると。
 応! と頼もしい返事が揃った。
「こんな暗くて臭い所とはさっさとおさらばして、陸で旨い酒でも飲みてぇモンだ」
 輪の外で作戦を効いていた縁は、ぶよぶよした胃壁の天井を見上げて嘆息した。

●窮鼠は猫を噛む
 飛行組は一直線に作戦ポイントへ飛んだ。時折したたる胃液を無視して、とにかく速く、速く。
「目印をつけますよ!」
 鶫の召喚式高圧縮霊子砲『天之瓊矛』から放たれたビームは胃壁を切り開くように薙ぎ払う。レーザーメス代わりとなるビームは、胃液の波打ち際に目印となる線を刻んだ。
 じゅうじゅう、肉の焦げる匂いが立ちのぼる。
「よもや、こういう使い方をする事になるとは」
「わたくし達を飲み込んだのが運の尽きでしたわねー。このお腹の虫は、ちょっとばかり凶暴ですわよー?」
 メリルナートの指先からしたたる血が転じて氷の槍となる。投げられた槍は吸い込まれるように目印へと刺さり、氷の華がひらく。
 噴水の推進力を拳に乗せて、プラックはブリッツボーイ・MEをお見舞いした。
「撃つべし、撃つべし、撃つべし!!」
 燃える心を詰めた拳で殴り続ける。まっすぐに。
 適当な瓦礫を足場に定め、ミーナは弓を引き絞った。普段相手にするモンスターに比べて、格段にダメージの通りは悪い。
 それが何だ。攻撃が効いてはいるのだ。前へ進むために戦えばいい。
「ちーっとばっか……今の私の『普通』はやべえぜ?」
 そうして放たれた弓は深々と胃壁に突き刺さる。
「このクソ亀、絶対にただじゃおかない!」
 史之は胃壁に体当りする勢いで接近すると、ドーム状の斥力を発生させた。赤いプラズマが荒れ狂いバチバチと胃壁を乱打する。
 胃全体が身震いするように震えた。

 酸の小雨が降る中、遅れて船団が到着した。
「リナリナ、暴れる!」
 野生児は軽やかに飛び降りた。ひょいひょいと足場を飛び石にして攻撃ポイントに接近するととりあえずガブッと噛み付いた。
「……ラクチン亀、ビミョー」
 味の感想を呟いて。
 ハンマードリルでぶん殴る、シンプルな戦法でダメージを与えていく。
「あんたら、近くを照らしておいてくれ」
 縁は船員に指示を出した。一気に現場が明るくなり、ややブレ気味だった攻撃箇所が収束する。
 彼も足場伝いに壁へと向かい、行雲流水でとつっ、と突いた。無造作な動きで放たれた闘気が火焔へと変わり、愚かな敵を燃やし尽くさんとする。
「ま、こんだけでかいと効き目があるかはわからんが」

 防御も回復も捨てて全力の猛攻を続けるうち、ざあっと血が吹き出した。胃の皮膚が破れて流血したのだ。
 むせるような血の匂いが漂う。流れた血で胃酸が中和され、一時的に痛みが減ったのだろう。ぶるぶる震えていた胃の動きが大人しくなった。そのため酸の雨も減る。
「砲撃の準備ができたわ! 総員退避!」
 そこでゼファーが声を上げた。イレギュラーズは一旦、攻撃の手を止めて現場から距離を取った。
 甲板に並んだ大砲が照準を合わせる。集中的に攻撃を加えた、一番傷の深い場所。
「撃てぇっ!」 
 号令にあわせて弾が打ち込まれる。様々なモンスターと何度も戦えるように、と積まれていたありったけの砲弾が一点に降り注いだ。
 体の内側から激しく殴られる衝撃に、楽園亀は暴れた。

 火薬の白煙に曇った視界の中、酸の大波が船を揺らす。胃液が甲板まで洗ってゆく。
 転倒する者、船から放り出される者、まともに浴びて体を溶かされる者。
「船に掴まれ! 慌てんなよ!」
 パニックを起こしかけた船員をプラックが一喝する。ついで大津波で船を洗い流すと、噴水に乗り落ちた船員を回収に向かった。
「回復するよ!」
「落ち着いてくださいませ。ちゃんと治りますわー」
 史之とメリルナートが深手を負った船員を癒やして回る。

「おー、穴開いた! 胃酸排出!」
 最初に気づいたのはリナリナだった。血を吹き出していた箇所はぽっかりと黒い穴が空き、胃液が川のように流れ出ている。
 鶫はハイセンスで亀の様子を確認した。
 乱れて浅い呼吸音に変な音が混じる。たぶん血も吐いている。
「まだ亀は潜っていない……このまま脱出すれば海上に出られますね。まっすぐ穴を掘り進めれば肺ですよ!」
 死に際の畜生の最後の大暴れで、天地もわからなくなってくる。胃酸の波に揉まれるより、残骸と船のぶつかり合いが増えた。
 船と船員の悲鳴が賑やかだ。しかし絶望は無い。
 進むべき『前』は鶫が常に示している。間違う余地はなかった。
「自分の胃酸で苦しめばーか!」
 史之は珊瑚のネクタイピンにそっと触れ、障壁を前方に展開した。ぎらぎらと輝く赤光理力障壁を槍の形に圧縮して放つ。
 鶫の天之瓊矛から放たれたビームと重なって前へ、前へ――肺をぶち抜く!
 楽園亀は大きくはねた。それが最後だった。
「やった……」
 船員から歓声が巻き起こり、海亀の腹を満たした。

●白紙の希望
 イレギュラーズを乗せた小船団は横っ腹の大穴から飛び出した。
 外だ。久しぶりの太陽が輝いていた。
 と言っても『絶望の青』、雲の向こうに黄ばんだ円が浮かんでいる陰気な空で、すぐに向きを変える風が吹き荒れている。ついでに胃袋とは別の変な臭さが鼻をつく。
 それでも、外だ。
 船も人も満身創痍だが、生きて腹の外に出た。イレギュラーズがいたおかげで死者も少なく抑えられている。

 縁は船縁に腕を置き、何もない水平線を眺めた。他人……いや他亀のやり方にどうこう言いたくはないが、流石に悪趣味すぎる手口だった。『絶望の青』が見せた母子像をまぶたの裏に追いやり、己の首を撫でる。
 死んで初めて全貌を見ることが出来た楽園亀を眺めていたミーナは、ふと好奇心が湧く。
「そういや海亀って食えるんだっけか?」
「ラクチン亀、内臓マズいぞ。内臓じゃない肉、ウマいか……?」
 警戒をにじませるリナリナに「別の部位だと違うんじゃない?」と返してミーナはちょいと肉を切り取ってみた。スープのだしにでもしてみよう。

「くそがっ……会えると思ったのによ……」
 勝利の余韻の合間に、プラックは楽園亀が見せた父親の幻覚を思い出す。
 突如現れた親父がよう、と片手を上げるのだ。驚いているうちに消えた泡沫だった。
「チッ……幻覚かよ」
 プラックは自重で沈みゆく楽園亀に中指を立てた。

 小船団は被害の程度から、いったん引き返すことに決まった。体制を立て直してふたたび『絶望の青』へ漕ぎ出すのは、近い未来のことだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。

狂王種の退治は無事に成功しました。
主に船体の被害のためいったん引き返しましたが、すぐに『絶望の青』へ戻ることでしょう。
ご参加ありがとうございます。

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