シナリオ詳細
<Despair Blue>魔の海域の海流を止めよ!
オープニング
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貧弱な国力を理由に、古くから外圧にさらされ続けてきたネオ・フロンティア海洋王国。
彼等の反骨心は混沌随一と呼ぶにふさわしく、高い造船、航海技術をもって、世界を寸断する東方の外洋……即ち『絶望の青』を越えるという目標を生み出した。
遥かな新世界を夢見る彼等は、22年振りの『海洋王国大号令』をもって動き出す。
彼等海洋はローレットの助力を受け、後顧の憂いを断つ為の近海掃討を終えた。
さらに、領海に蔓延る海賊連合に大ダメージを与え、大号令に一枚噛まんとするゼシュテル鉄帝国と交戦。
完全勝利とは言えずとも海洋はこの撃退に成功し、ようやく外洋挑戦の準備を整え終えていた。
ここからが本番。鬼が出るか蛇が出るか……吉と出るか凶と出るか。
結末は分からないが、全てが謎に包まれた『絶望の青』への挑戦が今、また始まろうとしていた。
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再び、海洋からの依頼が出回り始めたのは、海洋の人々が大海原へと船をこぎ始めたかららしい。
「そこで、アンタ達に頼みたいことができたってわけさ」
ローレットにて、『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)はやってきたイレギュラーズ達へと告げる。
オリヴィアが仲介するのは王国からの依頼だ。
海洋の沖にある、魔の海域。
この海域に近づく船は、なぜか強い海流によって島の北の入り江へと誘い込まれてしまうのだという。
「入り江からなら脱出ルートはある。そこは気にしなくていいよ」
また、この海域に近づくだけで乗組員も不調を訴えるようで、とてもではないが航海にならないという。
しかも、沖に出るに当たって、魔の海域は非常に邪魔な位置にある。
『絶望の青』へと挑戦するに当たって、是非とも、障害を取り払っておきたいのが王国の本音だ。
「前回、チームを組んでこの海域を調査したメンバーがいたんだよ」
小さな島、森に囲まれた頭頂部の丘、そこにある白い石像とそれが呼び寄せる紫色の靄が人々に不調を及ぼすことが分かっている。
ただ、その調査の中で、メンバー達が行った実験。
飛行種メインで再度調査隊を出し、木の板などを入り江に流れ着かせるというものを幾度か行ったところ、水妖が姿を現したというのだ。
「どうやら、海洋近海に発生する水妖を仲介し、そいつを島の周辺に留まらせて海流を維持しているようだよ」
今回、行いたいのはこの水妖討伐だ。
姿を現した水妖は2体。敵は保険をかけて両方を海流維持に利用しているようなので、どちらも倒してこの石像の栄養供給減を断っておきたい。
「また新たな水妖を捕まえて下僕にしちまいそうだが、その前に石像破壊の依頼が出ることを期待したいね」
新たな下僕を生み出す為、石像が力を弱めたなら僥倖だ。明らかに危険な石像を叩くなら、しっかりと地固めしてから挑みたい。
「相手も危険と察すれば……ガス生命体なんぞ送ってくるかもな」
このガスクラウドは石像が力を割いて生み出したと思われる。
今のうちに数を減らしておけば、後々楽になるかもしれないが、物理攻撃が利かない面倒な相手。それなりの対策は必須だろう。
「ま、こんなところかね」
オリヴィアは現状を説明してから、イレギュラーズ達へと端的に告げる。
「依頼目標は水妖2体の討伐だ。ガスクラウドはアンタ達の体力気力を奪ってくる。程々にしないと身が持たないよ」
頑張りすぎるのも考え物。
自分の身を大事と思うなら、引き際はしっかりと見極めるべきだと忠告し、彼女は説明を終えたのだった。
- <Despair Blue>魔の海域の海流を止めよ!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年02月07日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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海洋近海。
ローレットのイレギュラーズ達は港で中型船を借り、沖を目指して進む。
「とうとう絶望の青……か……」
赤髪をリーゼントとした大柄な海種、『蛸髭 Jr.』プラック・クラケーン(p3p006804)が水平線を見つめて。
「俺ら海洋民からしたら、とんでもなくやべー所なんすよ。希望であり、絶望であり……夢であり」
海洋の国土は狭く、国民達は遠洋に……絶望の青を越えた彼方に希望を見出している。
「さぁてさて。絶望の青へ往くにもまだまだ障害だらけみたいねぇ」
長い銀髪に大柄な垂れ目の少女、ゼファー(p3p007625)は水平線から少し視線を反らし、見えてくる孤島を見据える。
島へと誘い込む海流、生気を奪うガスが浮かぶこの地帯は魔の海域と呼ばれる。
「こんなおっかないとこがあと幾つあるのやら……?」
「流石、魔の海域って言われてるだけあって、棲んでる魔物も厄介なんだね」
背に梟の翼、帽子に丸眼鏡をつけた『堕天使ハ舞イ降リタ』ニーニア・リーカー(p3p002058)は様々な調査結果を確認し、そんな感想を抱いたそうだ。
「生命力を奪う石像ですか……厄介な物がありますね」
和服を着用した金髪女性、『百錬成鋼之華』雪村 沙月(p3p007273)がこの海域一体に悪影響を与えている原因である石像の存在について語る。
「効果がよくわかりませんし、なるべく島の近くでは戦いたくありませんね」
海上でも影響があるようだが、島に上陸するよりはマシだろうと沙月は判断していた。
海兵を思わせるセーラー服着用の少年、『刺天の輝虹子』湖宝 卵丸(p3p006737)もこの依頼に気合を入れる。
「未知なる海へ漕ぎ出す為に、その障害となる水妖をやっつけるんだぞっ!」
海流の調査結果から、石像はこの海域の水妖を介して海流を操っているのではないかと見られている。
島に誘い込む魔の海域の海流。絶望の青を目指すには、障害となってしまう。
「操られてるのは可愛そうだけど、魔の海域の更なる先を目にする為にも、これ以上邪魔はさせないんだからなっ!!」
まだ見ぬ討伐対象へ、卵丸は討伐意欲を燃やす。
「とにかく、まぁ、皆、ガンバッテ帰りましょう!」
プラックは絶望の青の航行を見据えた上で、仲間達へと無事に依頼を解決するよう促していた。
中型船の操船は、フードから中性的な容姿を感じさせる『観光客』アト・サイン(p3p001394)が担当する。
その護衛に、大柄な白熊の獣種『二代野心』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が当たる。
彼は操船のサポートをと進行方向などを指示しており、操船補佐要因として構えていた。
そんな操船に当たる2人に対し、卵丸は接近戦の為、仕方なく操船を任せているとのこと。
「……ほんとに残念だけど、けっ、決して海賊だけど船の操り方忘れたわけじゃ、無いんだからなっ」
海賊だけれど、決して操船術を忘れたわけじゃないと彼は2人から目をそらしつつ主張していた。
「ねえ、みんな、今から衝撃的なこと言っていい?」
一方のアトだが、そこで驚きの事実を口にする。
「僕船を操船するの初めてなんだよねー」
「「えっ」」
一斉に、表情を曇らせる仲間達にアトは軽く笑って。
「いや、乗り物の操縦なんて全部同じだよ。手先は器用なんだから任せておくれ」
そんなアトに……性別不詳だが、便宜上彼としておく、海洋出身である緋色の鷹人『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)が航海士としてサポートにつくことにしていた。
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魔の海域を目指す中型船。
操船するアトをサポートすべく、プラックは航海術で海や天候の様子を確認しつつ、周囲にある岩礁の目測、操船方法を伝えてアトの操船をサポートしていた。
また、カイトもできる限りの準備を整えてきていた。
航海に必要な技能を持つ船乗り、セイラーとして、カイトは航海術の効果を存分に発揮すべく、航星図や水路誌を所持してきている。
さらに、彼は自身のギフト『風読みの羽根』で風を読みつつ自然知識も生かして全力でバックアップに当たっていて。
「不自然な潮の流れ……来るぞ、アト! しっかり舵を握ってろよ!」
カイトの呼びかけを受け、アトは潮目と風を相乗させるとことで、船の速度が上がったことを実感して。
「おお、すごい、なんかスピードがやばくないか、これ」
魔の海域に突入し、メンバー達は警戒を強める。
その一方で、操船に気を良くしたアトは心地よく風を切って。
「急ターン、っていうかドリフトぉ!」
海流の流れに乗る船が岩礁に当たらぬよう、舵を握るアトは大声で笑う。
「あっははは! 振り落とされるんじゃないぞ、みんなぁ!」
楽しそうに舵を回すアトの傍、エイヴァンは自らのギフトもあって戦意を向上させつつ、岩礁に引っかかった場合に備えてスキルを準備していた。
そして、エイヴァンは石像がある場所……島の中央にも常に注意を払う。
沙月もまた、水面は聴覚、空には視覚とハイセンスを働かせて敵の襲撃を警戒する。
「可能なら、脱出ルートを進みながら戦闘したいですね」
島へと流される途中に交戦を開始すれば、それだけガスクラウドに絡まれる時間が長くなる。
ガスクラウドの討伐にはさほど一行も執着してはおらず、できれば優先討伐対象の水妖のみを討伐して依頼を完遂させたいところだ。
とはいえ、敵もそう簡単には姿を現さない。
敵の出現条件はおそらくこの区画の周回と見て、メンバー達も海流に入り、島に流されてから脱出という工程を繰り返す。
異変は3周目、島に到着した直後に起こる。
おそらくは、この区域で異常を起こす元凶である石像はイレギュラーズ達が煽りともとれる行動をとっていると認識したのだろう。
「海面……両サイドから来ます!」
水面から、水で構成された人魚の姿をした水妖2体が顔を出し、冷ややかな視線をイレギュラーズ達へと向けてくる。
「島からも出迎えが来たようだな」
エイヴァンが言うように島の中央から風に乗ってくる紫色のガス。
毒々しさも感じさせるそれは一所に固まり、4体のガスクラウドとして敵と判断したイレギュラーズ達へと襲い掛かってくる。
「おおい、全員、集まれ!」
舵の前から動けぬアトが仲間達へと呼び掛けて。
「へっへ、魔法は苦手だからね!」
そう語るアトは所持するスクロールを広げ、赤の熱狂、神子饗宴と重ねて仲間達の強化に当たる
「……できる限りの最善を尽くしましょう」
沙月が仲間達へと足並みを揃えるように促すと、エイヴァンは援軍も来ると思われるガスクラウドにも注意を払い続けていた。
ガスクラウドは物理攻撃が通じないとあって、卵丸は片方の水妖を相手すべく近づいて。
「卵丸は、蒼蘭海賊団団長、湖宝卵丸……この海を、お前達の好きにはさせないんだからなっ!」
堂々と名乗りを上げ、彼は仲間と共にその討伐を開始するのである。
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魔物達との交戦が始まる中、操舵担当のアトは島からの脱出ルートまで船を移動させる。
一行としては3度目の脱出だが、アトのみ、昨年末の調査依頼を加えて4度目である。
その脱出に、15分ほどかかることは確認済み。
アトは荒っぽい操船をしながらも、どうやれば仲間達が戦いやすくなるかと細心の注意を払って舵を動かす。
「切れたら戻っておいでよ、僕はなるべくこれだけ出来るように温存しておくからさ!」
舵を握ったまま、彼は戦闘においては逆に仲間の援護に動く。
さて、イレギュラーズ達は水妖とガスクラウド、それぞれの担当に分かれて撃破、もしくは迎撃を行う。
増え続けるガスクラウドは、プラック、ニーニア、エイヴァンが担当する。
「とりあえず、ガンガンいくっす!」
プラックはふわりふわりと浮かぶガスクラウド達を巻き込むように、大津波を引き起こし、飲み流さんとする。
威力を伴わぬプラックの一撃だが、大きく吹き飛ばした上で、その動きをしばし鈍らせることができる。
「こっちに追いつけなくなってくれると、ありがてぇっすね!」
また、相手の気を引けば、遠距離ばかりのスキルを封じることができる。
時間経過で状態異常を回復する力があるのが面倒だが、ガスクラウドを全て討伐する必要はない。他班が水妖を討伐するまでの時間稼ぎができれば十分といったところだろう。
ニーニアもガスクラウドへと牽制の為に攻撃を加えて。
「神秘攻撃しか効かないなら……」
普段、郵便屋さんとして働くニーニアは、迷々郵便によってガスクラウド達を惑わせる。
時間稼ぎが十分ではあるのだが、ガスクラウドは放置するのも厳しい相手だ。
「こちらの魔力、気力をすり減らしてくるのは厄介だからね……」
ガスクラウドが発するマジックドレインガスは、こちらの力を奪い取ってくる。
少しでも相手の手数を減らし、皆が全力で攻撃できるようにと意識し、ニーニアはガスクラウドの討伐を目指していた。
エイヴァンはというと、集まってくるガスクラウド対処を行うが、特に操船するアトを庇えるように位置取る。
信念の鎧を纏った彼は可能な限り、他のメンバーを自らのエスプリ「防衛将帥」の範囲に収められるように意識して、エイヴァンは右手に集中した力を解き放つ。
(ガスなら、よく燃える可能性はあるからな)
物理攻撃は無効な敵だが、状態異常まで完全に封じられるわけではないようだ。
燃え上がる炎によるダメージを期待し、エイヴァンはなおも燃え上がる一撃を叩き込むのである。
水妖にはカイト、卵丸、ゼファー、沙月の4人が討伐に当たる。
この作戦において、討伐すべき対象である人魚型の水妖。
面倒なことに、分かれて出現した為、4人も2、2に分かれて対処へと動くことに。
「遠くに逃げられると、めんどくさい技ばっかり持ってるかな」
この為、カイトは水妖の資金にまで迫り、近づいてから殴りかかっていた。
それだけでなく、カイトは船へと残ってくる水妖と合わせ、ガスクラウド達が纏めて攻撃範囲に入るよう立ち回って。
「……あれ、物理通りにくいんだっけ? でもガスなら燃えないかなぁ?」
すでに仲間が実証していたが、状態異常の回復力はあるものの、状態異常まで効かないというわけではない。
体力を奪おうと、ドレインタッチで触ってこようとする水妖と纏めて、カイトは数本の羽根と炎を舞わせて炎狩を使う。
次の瞬間、竜巻のように敵をなぎ払う火災旋風が船上へと巻き起こった。
水妖に十分それがダメージを与えていることを確認し、カイトは後方のガスクラウドにどれだけ影響があるか注視する。
確かに物理攻撃である炎狩でガスクラウドにダメージは与えられないが、巻き起こる炎でガスクラウドの身体をじりじりと燃やしていた。
そいつの真横へと、卵丸がジェットパックによる簡易飛行で迫る。
敵も距離を取るべく、大量の泡を発してイレギュラーズたとを弾き飛ばそうとしてくる。
卵丸その前に相手の態勢を崩そうと、キルデスバンカーに虹の如き七色を纏わせて。
「虹の煌めきに惑え……必殺、蒼・海・斬!」
斬撃と共にその輝きをもって、彼は水妖の態勢を崩していた。
逆側に現れた水妖には、ゼファーが語り掛けていて。
「さあて、踊りましょうか。人魚のそっくりさん? 不本意ながら、手荒なエスコートになりますけれどね!」
名乗りを上げるゼファーは敵の気を引きつけながらも、極限にまで高めた攻撃性、闘気を火焔としてそいつを包み込む。
船上へと上がり、直接水のような尾を叩きつけてくるその水妖の対処を続けるゼファー。
そいつと合わせ、ガスクラウドを上手く射程に収めた沙月もまた攻撃を仕掛けて。
「あまり時間をかけたくはありませんしね」
そっと触れるような所作で、沙月は水妖へと触れる。
遅れて、発生する強い衝撃波は水妖の身体に痺れを駆け巡らせた直後、巻き込んだ後方のガスクラウド1体を消し飛ばしてしまったのだった。
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戦いの中、操船を続けるアト。
敵は現状、全てが船上へと上がってきている為、できるだけ船を傾けぬよう舵を操る。
ただ、その中で、アトは自分にガスクラウドが迫っていることに気づいて。
「ちょっと! 僕のところまで敵が来ているよ、何やってんの!」
幸いにも、弱体化のガスをまき散らす敵はまだ距離はあると判断し、アトは冷静に黒坑人のピースメーカーを発砲する。
神秘攻撃として攻撃すれば、通常攻撃でもダメージは与えられるが、アトにとってはそれ以前の問題で。
「僕の気力は無限じゃないんだ。守ってくれないと困るぞ! 君等が!」
少しだけ不満を口にするアトだが、ガスクラウドはかなりの確率で状態異常を振り払う。抑え続けるのもなかなか難しい相手だ。
ガスクラウドの面倒な所はそれだけではない。
アトのカバーに回り、爆裂する一撃をガスクラウドに叩き込むエイヴァンがそれに気づく。
「追ってきているな」
島から複数の紫のガスがこちらに近づいていたのだ。
脱出ルートは多少無駄な軌道を描く必要があり、増援到着は避けられないとメンバーは判断していた。
ともあれ、この場に残るガスクラウドを抑えるべく、プラックが想いを込める。
この先に広がる絶望の青から帰ってこない人々、そして彼らを待ち続ける人達。プラックの身内も含めてごまんといたとのこと。
「一緒に来てる人達にだってよ、帰りを待つ人が居るんだ」
依頼が終われば、いつもの日常が待っている。だから、皆を守り、一緒に帰るとプラックは生きこんで。
「その為に、もっと輝け、力を貸せ! BBG!」
力を高めるプラックはさらに津波を起こし、ガスクラウドの動きを止めていく。
戦いの最中、ニーニアは迷々郵便で燃え上がっていた1体のガスクラウドを霧散させる。
「今回で殲滅して安全に通れるようになるのが1番なんだけど、一応ね」
ニーニアは続けて、ギフトのマッピングで道を覚えながら、ガスクラウドの行動範囲などをチェックしていた。
さて、水妖を相手にする面々。
こちらの敵は決して弱くはないが、怒りを与えて歌を封じることでメンバー達はその力を大きく削いでいた。
爆翼で敵の理性を奪っていたカイトは、相手が正気に戻れぬよう気がけ、近場から三叉蒼槍を叩き込む。
「喰らえ、音速の一撃。零距離銛打ち術だっ!!」
そいつへと卵丸も接近し、音速の一撃を見舞った水妖の体を凍らせてしまう。
合間にカイトが航海術に気を回しながらも、問題ないと判断してすぐ火災旋風をガスクラウドごと浴びせて水妖を弱らせていく。
体力を減らした敵目掛け、卵丸がキルデスバンカーを打ち込むと、その水妖の身体は形を崩し、ただの海水となって甲板から海へと流れ落ちていく。
残る水妖を倒せば、依頼自体は完了だ。
神速の踏み込みから沙月が相手の身体へと拳を打ち込むと、敵は苦しそうな表情を浮かべながらも、正気に戻ってゼファーの体力を奪おうとしてくる。
「いい加減、こんな場所に長居するのはうんざりして来ましたし、そろそろ、大人しくぶっ倒れてくれると助かるんですけどねぇ!」
槍での連撃を浴びせながらも、ゼファーが敵を煽る。
そのゼファーに気を取られた水妖の隙を突き、沙月は流れるような所作で乱撃を打ち込んで込んでいく。
刹那、呆けた水妖へ、ゼファーはまたも自らの闘気を火焔として浴びせかけると、こちらもまた意識を完全に焼失し、海洋に漂う海水の一部となっていったのだった。
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水妖2体を倒し、魔の海域を出るまでの残り数分をイレギュラーズ達は耐えることとなる。
ゼファーがガスの身体に槍の連撃を撃ち込んで恍惚状態とした敵を、沙月が狙う。
「あまり得意ではありませんが……」
得意ではない神秘での一撃をガスクラウドへ叩き込み、ダメージを重ねていく。
敵は突然近場で発生するわけではなく、島から浮遊してやってくる為、定期的にチェックしていれば、不意打ちは防げそうだ。
「この地点ではファミリアーは呼び出せるかな?」
戦闘状態を解き、ニーニアは小鳥を呼び寄せて明後日の方向へと飛ばす。
すると、ガスクラウドの援軍がそちらへと流れていく。
「天候と波が崩れる前にずらかるぞ!」
素早くこの場からの離脱をとカイトが促せば、アトが船を光速で動かし始めて。
「すまないね、僕がやられるよりかはマシだと思って揺れに耐えてくれ!」
そんなアトにダメージが及ばぬよう、エイヴァンは全力でかばう。
「こっちだよ!」
また、卵丸も戦いの手を止め、エコーロケーションで進路上の岩礁などを確認し、ナビゲート役に徹していた。
一方で、残るガスクラウド2体。
プラックが上手く船外へとガスクラウドを津波で押し流したところへ、ニーニアが戦闘用に改造したドローンで電撃を浴びせかけ、その2体をかき消してしまう。
後続はファミリアーにつられていたのか、こちらに来ない。
うまくガスクラウドをやり過ごし、イレギュラーズ達は脱出ルートを出て、魔の領域から脱した。
「少しは情報も得られたかな」
状態異常が効くこと、ファミリアーを囮にできること。
それらを依頼完了時に報告すべく、ニーニアはメモを纏めていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは、ガスクラウドの増援を
ファミリアーを囮とすることでやり過ごしたあなたへ。
タイミングを見て、解決編シナリオを運営予定です。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
海洋の沖にある魔の海域。
その島の北側の海域に潜む敵の討伐を願います。
拙作「<青海のバッカニア>魔の海域の中心にある島」の続編にあたります。
当初、前後編の予定でしたが、決戦依頼前に1話挟むことになりましたこと、お詫びいたします。
●概要
魔の海域中心中央にある島、中央にある石像がこの一帯の海域に海流を引き起こして島に生き物を招き入れ、生命力を奪うことが分かっています。
今回、その石像の操られた水妖を倒すことが目的です。
この水妖が石像の力を仲介し、海流の流れを強めていると見られています。
ガスクラウドは最初4体いますが、その後は島から断続的に送られてきます。できるだけ数を減らしておけば、石像の力を弱めることができるかもしれません。
また、逆にうまくやれば増援を止めることは可能ですが、これを行うのであれば、前回調査結果の読了が必須と思われます。
今回現れる水妖は、拙作「<青海のバッカニア>意思持ち力示す水妖」のアクア・ローレライと。
ガスクラウドは、拙作「<青海のバッカニア>魔の海域の中心にある島」に出現する個体と同種の個体です。
シナリオの背景を知る上で一読頂けると幸いです。
●敵……魔物
◎水妖×2体
全長1.5mほど。意思を持った水妖です。
全身が水でできた女性の人魚のような姿をした魔物です。
歌声によって海洋生物を操る力がありますが、
今回は水妖のみで襲って来ます。
・ドレインタッチ……(A)神近単・HP吸収
・バブルスプラッシュ……(A)神遠単・飛(基本、飛ばされた海上へと落下する形です)
・包み込み……(A)物中単・窒息
・惑わす歌声……(A)神遠域・狂気・恍惚
◎ガスクラウド×4+α体
全長6~70cmほどに固まった紫色のガス生命体です。
真の海域にある島、中央の像が使役する存在で、
自らの危機を察して遣わしたものと思われます。
水妖交戦開始時4体いますが、
水妖が不利になればさらに数ターンに1,2体ずつ増える可能性があります。
・ドレインガス……(A)神遠単・HP吸収
・マジックドレインガス……(A)神遠単・Mアタック・AP吸収
・ウィークネスガス……(A)神遠範・物攻-・神攻-
・ガス生命体……(P)物無・BS回復50
●状況
海洋沖、船の舵が効かなくなり、中央にある島へと誘い込まれるという魔の海域があります。
今回はその海流突入~島の間を周回している間に襲ってくる水妖、ガスクラウドと戦うことになりますが、どの地点で敵が出現するかは不明です。
基本、中型船の船上か入り江で交戦となる可能性が高いですが、島からの脱出まで考慮が必要です。
なお、島の入り江から海流突入までは脱出ルートを使っての脱出です。脱出ルートの出口までいけば、残るガスクラウド(合わせて水妖)は退いていきます。
海流に流される時間は10分、脱出ルート移動は15分ほどを想定してください。
海流突入~島の入り江間は舵が利きませんが、岩礁はあるので、船を操作する人は必須です(操作は副行動でOKです)。
事後は無時撃破できていれば、脱出ルートを使わずとも脱出ができる程度には海流が弱まるとみられています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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