シナリオ詳細
<Despair Blue>アナタを呼んだレチタティーヴォ
オープニング
●うみに、おちる
もうこの両手には『この子』しか残っていないの。
二度と、大切な『この子』の事を離さないわ――ええ、何に変えたって。
けれど、ここから、どうすればいいかわからないの。
……大切なマイセン。貴方にはもう会えないのかしら?
「会えますよ」
その声は性を感じさせぬ響きを持って居た。白から黒に色付く翼に端整な顔立ち。
彼女――若しかすれば彼――はころころと笑って言った。
「会えますよ、リーデル」
「本当に? 本当、本当なの? 私、『この子』を弟に見せてあげたいの。
ふふ、甥が出来たって言えばマイセンは喜ぶかしら? ……? ああ、ごめんなさい、泣き出しちゃったみたい」
大切に抱えていたお包みを『まるで赤子を抱える様に』女はぎゅっと抱き締めた。幻想種として長い耳は鰭のように変化し、波打つ金の髪が女の横顔を隠す。女の体を覆う茨がその仕草と共に揺れ動く。
「ふふ。『この子』ったらお腹を空かせちゃって……。あら? なあに、変な顔をして。
大きくなるのなら、沢山の『愛』が必要でしょう。私ひとりじゃ与えきれないから……うふふ、皆さん、とってもとってもやさしくて」
微笑んだ女の背後で骸と呼ぶしかない者が転がっていた。何の罪の意識もなく、彼女は自身が抱えたお包みの中に咲く薔薇を我が子のように慈しみ続ける。
「リーデルは、愛という言葉を信じるのですか?」
「いいえ? 私ってね、不幸だったの。早くに両親を亡くして、弟と二人きり。
やっと幸せになると思って結婚してすぐに主人はこの子と私を残して死んでしまったの。海洋に静養に来てね、それから、それからよ? 大切な人が出来たら、私、うっかりこの子を落としてしまって――辛かったの。海に身を投げて……目が覚めたら私の首をぎりりと大切な人が締め上げていた」
それでも、死にきれないで、私は一人きりだった。女はそう言ってそっとお包みを抱き締めた。
「この子が戻ってきた。これから、きっと、幸せにならないといけないのね。
不幸だったんだもの! 世界が私を愛してくれないと。世界が……? 今まで愛さなかったのに……? 世界が私を愛さないのならば、私も世界を愛さない――ねえ、だから、愛して、愛して! ねえ、愛して! 貴方は? 私を――」
「ええ。愛していますよ、友人として。リーデル。会いに行きましょう?」
女は、リーデルはそう言って目の前の誰かの手を取った。その時に、彼女は鼻に付くにおいを感じ取った。
「……?」
――ああ、けれど。どうでもいいわ。私を愛さない世界を救う人たちがこの子と私に『愛』をくれるのならば、それでいいもの。
●
貧弱なる国力を理由に古くから外圧に晒され続ける事となっていた海洋王国が堂々ともって宣言した『海洋王国大号令』。遙か新天地(ネオ・フロンティア)を目指すが為に随一の造船と航海技術を以て世界を寸断する東方の外洋『絶望の青』を越えるが為にローレットの助力を得た。
先のグレイス・ヌレ海域での海戦で鉄帝を撃退し、近海の海賊連合にダメージを与えることができた事で、漸く外洋に繰り出さんとするのだ。
「さあ、皆さん。この先こそが本番です! 謎と呼ぶが相応しき『絶望の青』へ――我らが悲願が為に」
やけに熱の籠った物言いをするソルベ・ジェラート・コンテュール(p3n000075)は特異運命座標達を乗せた船を見送るが為にリッツパークの港での激励を行った。
彼らは何も知らない。この先に何があるか――だからこそ、『詳しい事を説明できない』不安を抱いたソルベは自身として踏み入れることができる最前線にまで来たのだろう。
「無茶をしないで下さい。皆さんの仕事は橋頭堡……『絶望の青』での拠点を一つでも多く確保することですから。
以前の大号令では、奇病が蔓延したという噂もあります。天候も荒れ、通常の航海のようにはいかないとも言われています。危険である事は変わりないですから――」
●
『絶望の青』と呼ばれる領域へと踏み入れた特異運命座標を待ち受けていたのは不安定な天候であった。降り荒む雨の中、船を進ませれば、その鼻先には『嫌な臭い』が掠めた事だろう。
胸がざわめき、体調も万全とは言えない。それが慣れぬ海域、慣れぬ外洋であるかだと言われればそれまでなのだが――
「臭いな」
そう言ったのは、バニーユ夫人が『どうしてもと懇願した援軍』の中の一人、マイセン・コールと呼ばれる傭兵であった。
「……お前たちも思わないか? まるで何かが腐ったような――」
マイセンが毒吐いて振り返る。『あまり役に立たぬ援軍』たるバニーユ家が派遣した随伴艦は荒波に舵取りが上手くいかぬのだろうか。慌ただしささえも感じられた。
雷が落ちる――そして、皆はぐん、と腕を引っ張る何かの気配を感じた事だろう。
「薔薇?」とマイセンは言った。それはこの場の特異運命座標誰もが疑問に思った事だろう。
海上に咲いた薔薇が自身らの体に絡みついている。
雷が落ちる――「姉さん……?」
マイセン・コールは言った。会いたいと焦がれた相手が、自身の唯一の肉親が、そこには居た。
薔薇が絡みつく。船の舵にも茨は絡みつき徐々に、傾き始めている。それが『魔種』が深海へと誘っていることに誰もが気付いたことだろう。一度、通常海域に戻った方がいい。しかし――そう上手くはいかないか。
「ふふ、ふふふふ。ねえ、愛して――?」
少なくとも、あの女を、撤退させなければ、だ。
- <Despair Blue>アナタを呼んだレチタティーヴォLv:15以上完了
- GM名夏あかね
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年01月31日 22時10分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●
船底を突き破るかの如き波が襲う。勢いよく盥をひっくり返したかのような雨が『絶望の青』を往くイレギュラーズ達へと打ち付けた。
剥き出しになった岩場に腰かけた女は『絶望』を冠するこの海域に居るとは思えないほどに優美な仕草でその細腕に子――正式、そう言えるとは思えない。それは生き物ではなく、あからさまな異形だ――を抱き締めて慈愛の笑みを浮かべていた。
「ああ……」
その薄く色付く唇に弧が浮かぶ。その微笑みをマイセン・コールは――そして、『うそもまこともみなそこに』十夜 縁(p3p000099) は知っていた。
「どうして―――」
マイセンの唇から掠れた声が漏れた。遥かなる外洋を目指すという海洋王国に傭兵として辿り着いた彼にバニーユ夫人は言ったのだそうだ。
『きっと――出会えますよ』
その時は、良く或る励ましの様に思っていたというのに。
目の前に存在するのはその姿こそ変化しているにすれど美しい儘の『姉』の姿ではないか。
ど、ど、と鼓動がやけに早い。指先が震える、マイセンが顔を上げたと同時、縁がかりそめの翼で空を駆けた。
「――リーデル!」
顔を上げたマイセンはその名を呼んだ男を凝視した。
十夜縁の22年。その間に一度たりとも忘れた事のない彼女の名。
マイセン・コールの耳朶より下がる雫石。姉との絆を現すそれに僅かな亀裂が入る。
「貴様……」
「……あぁ、そうだ、俺は知っていた。
お前さんが海洋に来るずっと前から――リーデルの事を」
堪らず呼んだ彼女の名、十夜と呼ばれる事しか頑なに許さずにいた男へ向けて、愛らしい唇が囁いた。
「縁」――と。
●
激しく吹き荒れる風に『ディザスター』天之空・ミーナ(p3p005003)は「構えろ!」と叫んだ。嵐の中、足元が覚束なくなる感覚が襲い来る。
(隠居から戻ってみりゃあ……いきなりとんでもない事に巻き込まれてんな。やるだけはやるが……期待はするなよ)
絶望の青への航海とは聞いて居たがここまでとはと吹き荒れる風がぴたりと止む奇妙な感覚にミーナの背に悪寒が走る。風読みの娘は一筋縄ではいかぬからこそ『絶望的』と呼ばれるのかと舌を打つ。
ゲイザー・メテオライトを手にしたミーナは突如、無風を切り裂く様に吹き荒れた風に顔を上げる。
「魔種だけじゃなく凶暴化した海獣まで出てくるのか――!」
「それこそ『絶望の青』か……。なるほど正に黄泉路の一丁目にふさわしい光景じゃあないか」
口元までスカーフで覆ってから『黒翼の裁定者』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は黒き翼を広げた。鼻先を擽った匂いは何か、ずっと張り付いて離れないそれは肺の奥深くまで惧れを沁み込ませてくる。
「…...悪天候を飛んだ経験はあるが、此処までとはな」
ミーナの天気予測を耳にしながら彼は甲板より飛翔した。縁をじっくりと見ているマイセンと、同様に見つめて笑うリーデルを見下ろしてレイヴンは彼女を『魔種(デモニア)』と呼んだ。
茨が伸び上がり、足元より飛び出す海獣にレイヴンは高速並列思考のポーションを口にして自身の脳神経での並列思考を可能にしていく。
ぐん、と船が揺らぐ。何処からか伸びる茨が絡み付き愛し気に船を抱く其れを見遣りながら『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)は魔楽器の鍵盤を鳴らす。
――あいとは なぁに? こいとは なぁに?
それは きっと ひとのよの しずけき ことを にくむもの♪――
唇から漏れた響き。視線はリーデルへ向けられる。夢見る様に、カタラァナは口にした。深淵に眠り待つ神を音言祝ぐ歌はモスカの娘として受け継ぐ唯一。
大輪の薔薇咲かせた海獣がざぶりと沈んだそれを視線で見送ってから信念の鎧を纏って『二代野心』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は一気に『跳ね』た。戦闘中に飛び続ける事はできないが、それ故に移動時一直線に飛ぶ事だけを心掛ける。
(俺の役割は舵の奪還なわけだが……操舵していた奴等は生きてんのか?)
茨が絡んだ操縦室の扉を蹴破るようにエイヴァンは内部へ向かう。囂々と音を立て一気に傾いだ船に「おお」と声を漏らした『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)は大壺蛸天に腰かけふらりふらりと空を舞う。
「―――というわけで再びクラーク家の妾なのじゃ」
グレイス・ヌレ海域でも『援軍』として派遣されていたバニーユ家。それが信頼できぬ存在である事はデイジーとて理解の上だ。
(この状況こそ奇妙なのじゃ。
バニーユの選んだ援軍が魔種の縁故というのも奇妙な縁だと無視することもできまい。
……邪魔にならない程度にある程度『此方の指示を言い聞かせておく必要』もあろう)
穏やかな笑みと、そしてその胸中に渦巻く思惑は幼いといえども流石はクラーク家の娘であろうか。
生まれ持ってのカリスマ性を発揮し、自身の胸には『海洋王国特別勲章』を飾った彼女は『本気モード』で声かける。
「今回もお主達には重要な任務を担って貰うのじゃ、お主達の働きは後ほどバニーユ家にも報告させて貰う故、しっかり頼むのじゃ」
海鳥が声響かせる。デイジーの言葉を聞いたバニーユ家の者たちは夫人より『イレギュラーズをお守りするように』と云いつけられていたこともあったのだろう。デイジーの威厳あるその言葉に大きく頷いている。
荒れる海に舵を取られてぐらりと随伴戦が揺れる。振り仰いだデイジーの視線の先、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)は大型拳銃『狼牙』を構えリーデルをじっくりと見遣る。
(いやな天気だぜ――)
打ち付ける雨の中、ドーナツを齧り、体勢を立て直したジェイクはガンアクセサリを備え、魔種より伸びる茨を遮るように銃弾を撃ち出す。女の腕を掠め、鱗が飾られた白い肌に赤が走る。
「――――?」
「こっちだ、魔種」
嵐、そして魔種。この状況こそ絶望の青ならではか。一筋縄ではいかないと雨をぐい、と拭ったジェイクへと茨がずんと伸び上がる。
「ねえ、どうかしたのかしら……?」
アフタヌーンティーでも楽しむかのような穏やかな声音を発して、リーデルはマイセンと縁を通り抜けジェイクを狙う。美しき薔薇の花弁に混じり込んだ『嫌な臭い』を感じながらも『泳げベーク君』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)はその花を受け止める。
自身こそが閉じた聖域、侵されざる者としてその薔薇を受け止めるベークが感じたのは奇妙な違和感であった。永劫不滅の防衛武装に身を包んでベークはその『違和感』を振り払う様にぴちりと跳ねる。
「海に出たは良いものの『やっぱり』という言葉に尽きますが、厄介事が重なりますねぇ……」
狂王種。それはこの海域で発見される狂暴化した海獣たちの事だ。デモニアは美しく微笑み余裕を湛え、天候は未だ混迷を極めている――荒れる波と胸に渦巻く不安と厄介な体調の異変はこの海域ならではなのかもしれないが……。
(この匂いは――? ああ、いや、不穏な状況ではありますが、まぁ、まずは生き残りに全てを賭けるべきですかね……)
厭だ嫌だと首を振る。あくる日の思い出の様に生存の強い意思を抱くベークは薔薇を受け止め乍らまた身を削る羽目になるのかと嘆息した。
「希望に満ち溢れた航海になるとは思っちゃいませんでしたが……些かハードですね……これは……」
「ああ。ハードな事には変わりない。けれど、俺達よりも――」
消臭フィルター付きのマスクを着用しながら『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は銀の剣を握りしめ、舵の奪還に向かうエイヴァンや茨を除去するカタラァナを支援する。
その向こう、未だピクリと動くことなく凝視した儘のマイセンの背中にリゲルは唇を噛んだ。青藍のマントを揺らした彼の脳裏に過るのはあくる日の父の姿。
―― 馬鹿な事を言わせてくれ。『おめでとう』。リゲル――
「マイセンさん。彼女は『貴方の姉君』なのですか」
リゲルは確かめる様に言った。
宙を踊りリーデルまで飛び込んだ縁の傍からぐんと飛び出す薔薇の海獣を誘い様に破滅の声を響かせた『闇之雲』武器商人(p3p001107)がヒヒヒと嗤う。
曰く、『気の合うコ』と呼んだ忌鎌を握りしめ、ぐるりと風を切り裂けば海獣の鋭き牙が武器商人を狙い穿つ。
「姉――だ」
マイセンはリゲルを見た。
救いを求めるような視線を彼に向けてその唇は震えている。
「……そう、ですか。俺も魔種となった父上を追い掛けていた身、貴方と姉君の時間を作れるようにサポート致します」
けれど、とリゲルはマイセンを見た。
頭の内部に響き渡る恐怖を思い返す。それが『原罪の呼び声』である事をリゲルは知っている。
「貴方まで魔種になってしまったら、彼女への救いの手が、また一つ潰えることになるのです」
「……ああ、ああ」
悍ましい気配がその鼻先を擽った。それが何であったのかをリゲルは、マイセンはまだ知らないままだった。
●
荒れ狂う海原で茨を立ちながら武器商人は赤子を慈しむ様に抱えたリーデルが譫言の様に繰り替えす『愛してる』を聞いて居た。
女は一撃飛び込んだジェイクの挑発に目の色を変えている。縁はその様子を眺め、堪え切れないと彼女の名を呼んだ。
「リーデル……!」
茨を焼き払いながらも縁は呼び掛け続ける。リーデルによる攻撃はベークが受け止め続け、ジェイクがその後ろで挑発を続け続ける。
(苦しい所ですね……これがデモニア……)
壁役であるベークは自身の体へと刻み付けられる重責と常に絡み付いた『厭な気配』と匂いに脳を掻き混ぜられるような奇怪な感覚に陥った。
「全力で行きますから支援お願いしますよ!!」
「ああ、回復は任せろ」
ミーナは頷き、すぐ様にベークへと癒しを送る。リーデルとは距離は未だある。しかし、舵の確保に入るエイヴァンは絡み付く茨の対応で未だ戦線には戻っては居ない。
茨の除去を行いながら、歌い続けるカタラァナは周辺に存在する狂王種に視線を向けた。
(なるほど、なるほど。……海獣にもいろいろあるんだねえ。
コン=モスカ領から出ればその果てには魔が潜む――なんて、デモニアだけじゃなく狂った獣も住むなんて)
カタラァナの視線の向こう側、バニーユ家の説得を行うデイジーとて、戦線への復帰を行わねばならなかった。
(望まれぬ援軍程、面倒なものはないのじゃ。大人しくしていてくれればいいのじゃが……)
クラーク家としての威厳を見せつけながら、旗艦に戻ろうとするデイジーは鋭い荒波と共に襲い来る狂王種に焦りを滲ませる。
狂王種はリーデル・コールと呼ばれた女の『ご機嫌』によるものなのだろう。
「ふふ、素敵だわ」
恍惚の笑みに「何がだ」とジェイクは呻いた。
「こんなに沢山の愛『この子』に与えられるんですもの――!」
愛して欲しい。
その狂乱の響きに武器商人は二つ返事で求める言葉を紡ぐことだろう。
「ああ、そうか。悪いね。普段なら囁いてあげれるのだけれど……キミが求める愛は誰でもいいわけじゃないんだろう?」
武器商人はそっとマイセンと縁を見遣った。
彼女には『特別』が存在している。その出自をデータの限りなぞれば分かり切っていた。
「駆け巡れ我が魔力の奔流」
レイヴンは慣れ親しんだ空でも尚、荒れ狂う天気の中では油断は禁物だと茨を魔砲で引き飛ばす。ちりりと剥がれる茨たちはデモニアの魔力の所為か意志を持って動いているようにも思えた。
(中々に面倒だな。海獣を退けながらの撤退戦と考えたならば余り消耗しない方がいい。
リーデルが何所迄追ってくるか、それから『船』の航行可能になるまでの時間だな……)
防衛将帥たる彼の旗下に集ったならば全ての戦士が不屈を志す。その膂力で扉に張り付く茨を除去して内部を覗き込む。
「生きているか!」
「た、助け――」
震える声が聞こえ、エイヴァンは扉の向こうに海洋軍人たちが生きていることに胸を撫で下ろした。しかし、茨は内部に入り込み彼らを蝕み続けている。
意志あるそれを取り払い内部に入る為には中々に骨が折れそうだ。
「お前らも茨へ対抗しろ! 大丈夫だ、直ぐに助ける。分かったな!」
茨に絡まれている『程度』で済むなら僥倖だ。面倒な程に絡み付いたそれを払うエイヴァンを支援するようにカタラァナが協力し、リーデルと視線を合わせた儘の縁が船に絡んだ其れを除去し続ける。
「『起動せよ、起動せよ、八ツ頭の大蛇』――来いハイドロイド」
詠唱と共にその姿を現すは異形なる多頭海蛇。高水圧弾を放つハイドロイドは魔力を纏い、海獣の群れを蹴散らせた。
鮮やかなる薔薇がひらりひらりと舞い散る中でレイヴンはそれを受け続ける。眼下に臨んだ海獣の群れを逃がしはせんとハイドロイドは大口開く。
支援を行うミーナは武器商人にちらりと視線を送った。不屈なるその人の事は信頼している――リーデルによる攻撃が武器商人へと行かない限りは戦場で楽し気に微笑んでいてくれるのだ。
(大丈夫だ――カタラァナを失わない様に気を付けながら、リーデルからも目を離さない。
ああ、やるだけしかやれないぞ? こんな状況!)
ぎり、と奥歯を噛み締める。結わえた髪を揺らし、ミーナはリーデルの標的となるジェイクへの攻撃を全て庇うベークへと視線を送った。
「耐えてくれ!」
「出来るだけですよ!」
波を感じ、仲間達の体力を支え続けるミーナ曰くの『生命線』たるカタラァナ。ミーナの視線を受けながら激流なる戦場をするりと泳ぐ彼女は留まる事を知らない。
「ああ、こわいこと。リーデルちゃんは、夢中なんだね」
「そうだな。何も見えちゃいない。イレギュラーズだとか、十夜だとか、マイセンだとか。
そういうものじゃない程に『狂って』るんだ。……どうすることもできない程に」
吐き捨てたミーナの声にカタラァナな頷いた。海獣の中で踊るように武器商人は海を往く。
薔薇を傷つけ、カタラァナの旋律聞きながら武器商人は海獣の様子を伺い続ける。
「さて、海淵の歌姫。相手はどうかな?」
「君を阻害する者はいないように思うけれど、どうかな」
ころころと声音が躍る。訊きながら濡れた髪を撫でつけた武器商人はその背に淡い緑の翼を背負う。
「聞いてくれるかい――断章を語ろう。
灰被る少女は親切を対価に舞踏会へ行き、恋する人魚は歌声を対価に人間の脚を得る。
ソレは良くも悪くも物語を動かすが、ひとつ忠告だ。ハーメルンの悲劇を起こしたくなければ対価を踏み倒すな」
謳う様に朗々と。ゆったりとその身を包んだローブが雨水含み重たくさえも感じられる。目の眩むような憤怒に、足搔く怠惰に、その身を包み儚き花は忌鎌を振り翳した。
「さて、湧く友人たちはそろそろ終いかな? それとも花が咲けば顔を出すのだろうか。
さあ――呪いの聲を響かせるのは飽きただろう。海に落ちても泡にも慣れずに不幸を嘆くだけでは苦しかろう」
世界も、誰も、愛してくれない。ならば、愛する価値はあるのかしら。
呪詛のようなその声音に武器商人は「さあ、どうだろう」と小さく返した。
●
「愛だのなんだのってのはわかりませんが。それで人に迷惑かけていい理由にはならないんですよ!!」
ベークは不滅の如く自身の体を強烈に修復する。彼を信頼していると、ジェイクは白梟の誇りを胸に抱きリボルバー拳銃の引き金を引き続ける。
ベークの甘い香が全てを和らげて呉れればいいのにとジェイクの獣の嗅覚は確かに危険性を感じ取る。
(この海域に入ってからずっと感じて居た事だが――リーデルを前にしてからより強くなったな)
仲間を信じて身を任せたジェイクはリーデルに対して挑発を続け続けた。
獲物とは追い詰めるために存在する。そして、それを喰らうのだと未来さえ手の内に、彼は確実な『死』を与える引き金を引き続ける。
格闘交えた距離すら選ばぬ射撃術を放ち続け、銃弾の雨が降り荒む。全て飲み喰らう驟雨の中に、交り込んだ弾丸は美しい女の肌に淡い傷をつけた。
「どうして――?」
「どうしてなんて聞く事か? 俺達は『絶望の青』の攻略を目指し、お前はそれを邪魔している。
明確な理由があるからこそこの引金を引いている。目の前の魔種をぶっ倒して絶望の青を攻略することが本来のオーダーだ」
一度、この海域から離脱して、航海への準備と立て直しをすることなど本来ならば必要のない事だと彼はその脚に力を込める。
「ああ、けれど私だって……。私だって『この子』の為に愛がほしいの。
愛……? ああ、そうだわ。皆が咲き誇ってくれればいいのよ。ねえ、愛して――?」
「生憎だが、お前へ与える愛なんてない」
ジェイクが放つ弾丸と共に、その言葉にリゲルは頷いた。指切りで約束した、愛しい妻との決まり事。無事に帰ってきてくれと、決意を胸に送り出されたならばその脚を止めるわけにはいかないのだ。
「十夜、マイセン。此処は無事に帰ろう。それから、彼女を魔の力から解放してやるんだ!」
決意と共に、警戒心を緩めぬ儘にリゲルは銀閃の煌めきと共に早業で切り返す。
計算通り、と戦場を読み切る彼の許へとバニーユ家側より戻ったデイジーが蒼き月を揺らす。
「む、足場がやはり安定しないのじゃー」
「ああ……飛び続けることもできないし、姿勢を崩した時に対応しよう……!」
デイジーに頷くリゲル。必ず皆で帰ると決めたリゲルにデイジーは頷いた。
アックスガンを振るい上げ、エイヴァンは船を傷つけんと飛び込む海獣を卓越した防御技術を破壊力に変えて殴りつける。
マイセンを護り立ち回るリゲルにリーデルに痛手を与えんと健闘するデイジー。
デモニアの狂気に触れながら、デイジーはバニーユ家の動向を見詰めていた。
(うむ、こちらの離脱までは大人しくしてくれておりそうじゃな……)
雨が打ち付け、飛び込む茨を消し去って、デイジーは天へと手を伸ばす。
鮮やかなる月が落ちる。リーデルはその眩さに目を細めた。
リーデルを『もう一度』殺す覚悟なんてなかった。
狡いかもしれない。しかし、船が動かせるまでは張り付いて兎に角時間を稼ぐしかないと考えているのも確かだ。
(身体が動く限り……これが、あの日からずっと逃げ続けて来た俺への当然の報いだって言うんなら)
茨を払い続ける縁の事をマイセンは凝視していた。
リゲルが『デモニアに耳を傾けてはいけない』と言った通り、姉が反転し『御伽噺の悪役』になっている事をマイセンは厭でもわかる。
「……あれが、デモニア……? 俺の、姉さんが……?」
父上が、とリゲルは言っていた。
マイセンとて傭兵として世界を旅していた。その際にイレギュラーズの活躍は耳にしたこともある。
しかし、身内がデモニアになって姿を変え、そして不幸を撒き散らすからこそ殺せと言うのだ。
それを分かりましたと答えられるものが居るだろうか。
じっとりと、その掌に汗が滲んだ。
「おい、貴様は姉さんの『何』だ」
「……俺は」
マイセンのその瞳に縁の指先が震えた。直視できない現実がそこには横たわっている。
「ねえ、マイセンでしょう?
ああ、ああ、やった。やっぱり『セイレーン』の云う通りだわ。ふふ、有難う、セイラ!
貴方のおかげで会えたわ。見て、貴方の甥よ? 可愛いでしょう。あれ、姪だったかしら?」
リーデルはぎゅ、とお包みを抱き締める。
彼女の中では亡くした子供の性別も、名前も、姿も、もはや覚えてはいない。
ただ、大切な何かを抱き締めている事だけが脳に刻み込まれているのだ。
「ほら、見て?」
にこやかに囁いたリーデルの瞳に淀んだ狂気が見える。
いけない、とその両脚に力を込めて、リゲルはマイセンの前へと滑り込んだ。
勢いよく甲板へと打ち付けられたその喉奥から声が漏れる。
「ッ――な、」
「どうして……邪魔するの?」
首を傾げるリーデルにリゲルは「引き摺られるな!」と叫んだ。
「世界も愛してくれないのに……貴方達も愛してくれないの? 私の事、不幸の只中に置いておくの……?」
「だから、どうした? 不幸なのは、てめえだけじゃねえんだよ!」
吼える様にジェイクは言った。弾丸を打ち出すそれを止めることはなく、茨が船へ叩きつけられる。
大きく揺れた船の舵を握りしめてエイヴァンは動け、と何度も繰り返した。
(くそ、少し進んでもこの海じゃ『天気が落ち着く』タイミングを見計らうしかねぇ――!)
エイヴァンが「天気はどうだ!」と叫んだ声にミーナは「『風』はチャンスじゃないって言ってる」と返す。
ビュウと吹き荒れた風の中、もう少しで一度風が止み波が落ち着く機があるとミーナは『世界からの贈り物』で感じ取っていた。
「あと少しだ。訊いたな? 風が止んだ瞬間に一気に通常海域迄駆け抜ける!
心配するな。事務仕事よりこうした仕事のの方が向いてるんだ――行けるな?」
海神の軍規は士気を高揚させる。兵たちがエイヴァンに頷き、虎視眈々と状況を見極める。
(躓いてくれるなよ……!)
海洋王国軍佐官用正装を身に纏ったエイヴァンに襟を正した軍人たちは「指示を!」と彼へと告げる。
「魔種に動きがある! 攻撃を避けろ!」
エイヴァンの号令に兵が合わって舵を取る。
リーデルの放った茨は泡沫に消え周囲を包み込む魔弾と変化した。船を大回りさせその魔弾を避け続ける。
ぐらぐらと揺れる足場より一気に跳躍したレイヴンは溜息を交らせてリーデルを見た。
闇色の瞳は虚空を見ている。縁の事も、マイセンの事も見ていない。
その白い肌にくっきりと浮かんだ扼殺の後は彼女をより狂気的に魅せた。
「悲惨だな。多くの人はまぁ、悲劇というのだろうさ」
「ええ、そう。そうなの。私はとても不幸で――可哀想だった。
けれど、今は幸せよ? 大切な弟と、それから、大切なあの人と、出会えたもの」
にこりと笑い、響いたは魔的な気配。
マイセンが一気に揺さぶられる。それを止める様にリゲルが滑り込み、鍵盤に指を滑らすカタラァナは相手の『波』に同調し、治癒の魔力を送り続ける。
「ああ、ねえ。……魔種にもいろいろあるんだねえ。僕はもう、これは可哀相なのだと思うよ」
「そう、かしら?」
「そう。そうだよ。本質が変わったとかそういうんじゃない。
一番大事なものが、ダメになってしまっているんじゃあないの?」
俯いたカタラァナは唇を震わせる。
ああ、きっと、彼女は本質的にダメなのだ。愛しい物が指先から毀れる様に、この海の上の水の様にさらさらと流れていったのだ。
それは流転する運命の如く、彼女を包み込んだ死の気配の如く――
「あなたに、あげる。滅びをあげる。
――それはきっと、美しいと思うよ」
「ええ、けれど、『一人では寂しいわ』」
ぞ、と背筋に気配が走る。マイセンと縁は呼びかけ、奥歯に力を込める。
お前の姉を殺したのは自分なのだと、その意味を込めた叫びはマイセンを強く、強く強く揺さぶり続ける。
「俺を恨め。後でいくらでも罵って殺せ。だから――今だけは、正気でいろ!」
その声にリゲルは頷き刃を振り上げる。風が止んだと合図を送るミーナに頷いてエイヴァンは出航準備の号令をかける。
●
「ねえ――」
呼び声が聞こえる。それを聞きながらマイセンが頭を抱える。
リゲルは「駄目だ」と彼の肩を掴むが悍ましき呪いの気配がその身を包み込む。
傷付きながらもイレギュラーズは海域離脱を目指す。ジェイクが牽制する弾丸の雨の中、デイジーは「行くのじゃ」と叫んだ。
武器商人の長い髪が揺れる。その視線はリーデルへと向いていた。
「十夜!」
リゲルの声に頷く縁はマイセンをぐ、と掴む。
「……悪い、リーデル」
「縁」
呼ばれた瞬間に背筋に嫌な気配が走った。身体が震え、喉奥が引きつる。
十夜 縁はマイセンを後ろへと投げた。受け止めたリゲルはマイセンを抱え、そして縁を救うが為に手を伸ばす。
「リーデル!」
強烈な匂いがした。それがこの海域に漂っていたものだとマスク越しでさえも分かる。
リゲルは顔を上げた。
「心優しき本来の貴女ならば大切な人たちが命を落とす事を哀しみ悔やむでしょう!
本来の貴女の心を俺は護りたい、救いたい」
剣を振り上げる。茨が銀色に絡みつき、ぐん、とリゲルを海上に叩きつけようとしたその隙間へとベークが滑り込む。
(危険、危険、まるで安全な所なんてないじゃないですか……!)
常にリーデルの攻撃を受け止め続けたベークは自身の体の中に悍ましく這いつくばる何かに気づく。
それはミーナの支援でも消えることのない呪い。
悍ましいと称するしかない正体不明の呪いはリーデル・コールと呼ばれた女のその身より感じる気配と似ていた。
「縁よ! しゃんとするのじゃ!」
鋭い声を飛ばしたデイジーはリーデルのすぐそばに邪悪なる怨霊を顕現させた。執拗なるその攻撃は月魔女の作法そのもの。気紛れに、嗜虐的に、そして狂気を孕んだ冥刻の魔女は美しき月を手製の写本を手にデモニアを脅かす呪いを放つ。
「聞いておるか!」
「ッ――ああ……!」
はっと顔を上げた縁の手を、リーデルは握って離さない。
茨と、そして襲い来る海獣の群れの中、マイセンを救ってくれと縁は叫んだ。
(あいつだけは――!
俺の記憶の中のリーデルの為に、あいつだけは守らねぇと――!)
振り仰ぎお包みを遠くへ、遠くへと吹き飛ばす。それはミーナの一撃も加わった。
刹那、ベークと、そしてリーデルの視線を受け続けたジェイクの体に何らかの異変が走る。
「ッ――!?」
「……どうかした?」
カタラァナの夢見の瞳がジェイクを見る。その身体より感じた気配はこの海域に付き纏うものと同じだ。
(死臭――?)
そう感じたと同時、リーデルの腕の中からお包みが離れていく。
「あ」と声がし、そしてその儘、ミーナの体が茨を伴い甲板へと打ち付けられる。
獣の嘶きが如く雷光が降り注ぐ。
「ああああああああッ――――――!」
狂乱した様に金の髪を振り乱した女の茨が暴れ始め、大いなる波が船よりイレギュラーズを滑り落とした。
ずぶりと落ちたベークは共に投げ出されたジェイクをすぐ様に支える。
自身と、そして彼から感じる呪いの意味は未だ分からない。
「あああああああッ―――――ー!」
厭だと頭を振り回し、金の髪を振り乱したリーデルが『自身の子供が居なくなった』とその心と、声を震わせる。
「どうして――! あああッ――――!!」
強烈なる痛打が特異運命座標に降り注ぐ。ぐ、と掴んだのは縁の腕。
彼の体を蝕んだ『気配』もまた、ベークとジェイクと同じ。
それをこの海域に住む者ならば知っているのだろうか?
腕をぎりりと掴むリーデルはその儘、縁を海へと引き摺り込む。
「待て――!」
叫ぶリゲルの声に「マイセンだけは、俺の命に代えても……!」と縁は鋭い声で叫んだ。
身体が震える、息が苦しい。樹を失ったマイセンが無事であればと縁は願う。
「ねえ、縁」
悪い夢のようだ。自身の頸に手がかかる。『彼女にそうしたように』その指先が首筋に絡みついた。
「どうして、」
悪い夢なら醒めて呉れ。縁がそう願えども悍ましい気配と共にその身体は海の中へと攫われる。
「――どうして、殺してくれなかったの?」
海が荒れる。波が立つ。
リーデルとリゲルは叫んだ。エイヴァンはそれ以上はダメだとリゲルとマイセンを船の中へと押し込む。
「リーデル・コール! これは一体何だ――!?」
問い掛けるレイヴンの声は届かない。
狂乱の女の叫び声と共に荒れた海からの離脱を急げとエイヴァンが声をかけ、追い縋る茨を武器商人が払う。
「やれ、女の妄執とは怖いものだけどね――……そうなるのかい」
困ったものだと武器商人は自身の眼前へと飛び込んだ茨を強かに受け止めた。
援軍たるバニーユ家の随伴艦は退路を確保し、リーデルが撤退していくと連絡を下す。
「撤退?」
それは縁を海へと引き摺り込んだ事からなのだろう。
彼の翳が見えなくなる。
しかし、其処で止まれば皆が海の中だ。
「我々は彼が戻る可能性に賭けて近隣に留まります」
「無理をするでないぞ!」
バニーユ様からの指示ですから、と縁を待つという随伴艦をデイジーは見送った。
船は走る。
リーデルの茨を逃れるように、ひた走る。
荒れ狂うその場所を抜け、穏やかなる陽光と共に涼やかな潮の気配を感じたその場所には一人のイレギュラーズの姿はない。
そして、ベークとジェイク。
二人より感じられたのは悍ましき呪いの残り香のみ。
成否
失敗
MVP
状態異常
あとがき
この度はご参加ありがとうございました!
遙かなる外洋、そして新天地(ネオ・フロンティア)を目指しての航海です。
恐ろしき場所、そして、まごう事無く刻まれた何かの気配。
MVPは生命線たるあなたへとお送りします。
これから、どうなっていくのでしょうか。またお会い致しましょう!
GMコメント
夏あかねです。不穏なる気配。
●成功条件
イレギュラーズ全員揃っての通常海域への到達(リーデル・コールの撃退)
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
また、『不穏な気配』と『嫌な臭い』が蔓延しており、何らかの影響を受ける可能性があります。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はEです。
無いよりはマシな情報です。グッドラック。
●絶望の青
天候は不安定。ころころと変わり続けています。今はどうやら嵐のようです。
落雷が激しく、船の舵には茨が絡みついています。かなり視界が悪く、船も大揺れなので足場も不安定です。
イレギュラーズ全員+マイセンがのった旗艦とバニーユ家が付けた随伴艦の2隻で行動しています。
旗艦の操縦を担っていた海洋軍人からの応答は途切れています。船が沈む可能性もマイセンは示唆し、対応が必要そうです。
どうやら、バニーユ家の援軍は『一応は航海の能力はありますが絶望の青では役に立たない』ようです……。
●リーデル・コール
魔種。元は幻想種であった麗しい女性です。痛々しく首に残された扼頸の痕が印象的な女です。腕には『異形』の入ったお包みを抱いており、自身の赤ん坊として大切にしています。
非常に強力な力を所有し、不安定な性質であり対話は無駄です。成り立ったかと思えば直ぐにころころと言を変化させます。
それと、何かいやな匂いも――……
・原罪の呼び声
・必殺所持(自身も、そうされたかった)
・攻撃力がとても高いです
●薔薇の咲いた海獣たち
ターン経過で増加します。リーデルの影響を受けて狂暴化しているモンスターたちです。狂王種(ブルータイラント)と称される変異体たちであり、強力なユニットです。
●マイセン・コール
援軍。バニーユ夫人による傭兵であり、リーデル・コールの実弟。
マイセンはリーデルを探して旅をしていたそうです。耳飾りは姉と分け合ったものの片割。鳥の仮面とフードを着用しています。その戦闘スタイルは前線に立つ苛烈そのものです。
●バニーユ家の援軍
バニーユ家による援軍である随伴艦1隻です。乗組員10人はバニーユ家当主代理の夫人の命で追従してきます。ある程度の戦闘や回避行動は行えますが、『絶望の青』という慣れないフィールドではあまり役に立ちません。
曰く『イレギュラーズの皆様をお守りしていらして』とのことで囮などには使用できそうです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
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