シナリオ詳細
リプレイサーズ・ナイト
オープニング
●『仮面ノ御方』より
「内密に盗んでもらいたいものがある。
持ち主に気づかれぬまま巧妙な偽物とすり替え、後に現われる盗賊に偽物をつかませろ」
喧噪。悪党だらけの顔ぶれ。カウンターの上に掲げられた次に死ぬ奴ダービー。
スキンヘッドの巨漢が酒瓶を逆さにしてがぶ飲みし、突然始まった殴り合いの喧嘩で木製の椅子がへし折れていく。
そんな闇酒場『レイノルズ』。
薄暗いカウンターの端で、仮面の者が息をついた。
男とも女とも、老人とも子供ともつかぬ声色で、『ここは騒がしいな』とつぶやいた。
「ターゲットは八つだ。同時に行なうから、一人一枚ずつ選べ」
懐から出したトランプカードをカウンターに滑らせる。
裏返してみれば、それは魔術道具だった。ターゲットとなる建物の見取り図や警備員の配置。そして盗むべき対象の公開可能なデータが光の粒となって浮き上がって表示されていく。
「盗みが不得意であるなら、それでもいい。
ただし盗賊を力ずくで撃退しつつ、警備員からも逃げおおせてもらう。
身柄を押さえられた場合は……責任はとれん。
ただ、アンタはヘマはしない人間だと聞いているぞ」
ターゲットはどれもいわくつきのマジックアイテムだ。
盗み出したなら必ず依頼主に引き渡すこともまた、条件のひとつである。
盗みか戦いのどちらかの能力を駆使し、依頼を達成せねばならない。
「おっと、最後にもう一つ。
私とそのバックについているものに関して、詮索はしないように。
これは、アンタのためでもあるんだぜ」
- リプレイサーズ・ナイト完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年03月19日 21時00分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)のリプレイス
豪華な絨毯。豪華なシャンデリア。
値打ちも想像できないような絵画や彫刻が並ぶここは、幻想王都の美術館である。
安くない入場料を払ってやってきたジョゼは、栗毛色の山猫耳をぴこぴこと動かした。
「あれが……か」
クリアケースに入ったそれは、不思議な模様の入った指輪だった。
ひとに見えないように魔術道具のトランプカードで確認してみると、どうやらターゲットはこれで間違いないらしい。
いわくつきのマジックアイテム……!
スリルやロマンに、ジョゼの気持ちが高ぶった。
青い右目で凝視してみると、ぼんやりとだが指輪の背景めいたものが見えてきた。
きわめて断片的に言うなら――空をはしるナイフ、吹き上がる血、サソリの刺青。
断片的に述べたのは、それ以上は見えなかったからだ。
なんだかとてつもなくヤバいものだということは、分かった。
けどできるなら、手にとって見てみたい。
ジョゼは一通り建物の構造を身体で覚えると、適当に堪能したフリをして美術館を出た。
外では入場料を払えなかったジョゼのダチコーが腕組みをして待っていた。
合流し、小声で語り合う。
「計画通りにだ。後でマジックアイテムの話と煮干をツマミに、一杯やろうぜ」
計画は簡単だ。美術館の前。警備員が面倒だなあと思う程度の場所で酒瓶抱えて寝たふりをさせておく。
若い警備員が『邪魔だからどかしてこい』と言われて話しかけに言った所で、ジョゼは裏口へと回った。
回ったはいいが、別の警備員がまだ見回っている。
隙をつくように窓に近づき、ハリガネを使って解錠を試みた。
うまい具合に、警備員が戻るまえに美術館内へと侵入できた。
あとは予め覚えた場所へ行くだけだが……。
「そこで何をやってる?」
「やべっ!」
物陰に隠れて移動していたジョゼだが、指輪をすり替えたところで見つかってしまった。
飛びかかる警備員を蹴りつけるが、マトモにやり合うのは得策ではなさそうな手応えだ。
「しかたねえ、逃げるぞ!」
ダチコーのロアンに聞こえるように叫ぶと、ジョゼは殆ど正面突破の勢いで走って逃げたのだった。
間一髪。
指輪を盗んで逃げ切れたようだ。
●『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)のリプレイス
王都のとある安酒場。交代制の夜勤を終えた警備員が訪れ、ハイボールを注文した。
カウンターに腰掛けると、殆ど同時に横に座る美女がいた。
褐色の肌に金色の目。
ショートカットの毛先を頬に垂らして、覗くように首を傾げる。
「はぁい、お兄さんひとり? ステキな制服ね」
店主に『おなじものを』と言ってやれば、グラスが二つ並んで出された。
乾杯を求めるようにグラスを出してくる美女。
疲れた仕事のご褒美がこんなラッキーだとは。警備員の男は出来るだけハンサムを装ってグラスを打ち合わせた。
美術館で働いているんだ。そう語ると、美女は眉を上げた。
「あら、通りで……」
男のネクタイの裏に小指を差し込み、流れるように根元をそっと掴む。
「働いてる所、見たいわ」
それが『夜にこっそり逢いましょう』の意味だと考えて、男は鼻息が漏れるのをこらえた。
盗みにおいて、警備情報の全てを知る必要はない。盗みに行くその時、誰がどこに居るかが分かっていればよいのだ。
昨晩ひっかけた警備員は人目につかない美術館の裏で背筋を伸ばして来もしない美女を待っている。同僚には見回りをすると偽って、逢い引きに充分な時間を稼いで見せた……つもりである。
その間空白になった警備網を突くように、リノは美術室に忍び込んだ。
解錠のテクニックは習得済みだ。適した針金も用意してある。
それでも念を入れて、真っ暗な場所を明かりもつけずに移動した。
本来なら何かに躓いて自滅してしまいそうな環境だが、夜はリノの時間であり、闇はリノのフィールドだ。彼女にだけは、はっきりと周りが見えていた。
そうなれば後は簡単だ。
予め用意した偽物の指輪と美術品の指輪をすり替え、南京錠を再びロック。
あとは誰も通りそうも無いような闇ばかりを伝って逃げ去るのみだ。
今日のことは、警備員が美女に予定をすっぽかされてガッカリしただけの事件として終わるだろう。後から訪れた盗賊が、偽の指輪を盗んでいくその時まで。
●『舞台に上がった舞台監督』ケイデンス=アップルシード(p3p001643)の影なる戦い
ローブに身を包んだ盗賊が、美術館へと近づいていた。
とはいっても美術館のそば。警備員が動き出さない程度の位置だ。
ケイデンスは周囲を警戒する盗賊に突如として襲いかかった。
それがどのような戦闘であったのか、表現することは難しい。
ただ闇夜にバチバチと火花が散って、無言のまま幾度か衝撃が交わり、よろよろとした盗賊が無言のまま走り去ったのみである。
それでも戦闘の音を聞きつけた警備員はやってくる。
「おい、そこで何をやっている!」
カンテラの明かりで照らし出したのはケイデンスの奇妙に細長い後ろ姿だ。
くぅるりと振り返り、ケイデンスは笑顔にも見えぬ笑顔を浮かべた。
「お騒がせして申し訳ないが私はウォーカーのケイデンス・アップルシードと言う者で此度は匿名の情報源に基づいこちらの品の監視をさせて頂いていましたが何故そちらに伝えなかったかそうですねこれはあまり言いたくはなかったのですが今回の情報源は所謂ギフトによる未来予知から来ていますがこれの厄介なところはギリギリまで状況を整えておかないと事態が発生する以前に未来が変わってしまう故に不意に訪れた賊によってここの品が持ち去られてしまうという筋道の為に貴方方には秘密にしていましたことは実に申し訳なく思っておりますよ然るべき処罰は受けるつもりですが後悔はありません。……聞いていますか?」
ぎょっとするような早口だ。
目が、もとい耳が滑ってしまうほどのマシンガントーク。
話の真偽や道理や倫理や、そういったものはこの際関係がない。
重要なのは主導権を得ることだ。そしてそれは、見事に達成された。
「帰っても?」
「あ、ああ……面倒は起こすなよ」
警備員は小さく首を振って、ケイデンスに背を向けた。
芝居がかった調子で深く頭を下げ、ケイデンスは今度こそ闇夜へと消えた。
●始末人、七鳥・天十里(p3p001668)
「気兼ねなく悪者退治! やっぱり、僕は悪者退治ができないとね!」
天十里はきらきらとした笑顔で背伸びをした。
視線の先には美術館。
多くの警備員が巡回しているのが遠くからでも分かるほど、厳重な警備だ。アドリブで警備の目をすり抜けるのは無理がありそうだ。
偽物を利用して警備員の目を引く作戦も考えてみたがかえって警備が硬くなるだけにも思えたので……。
「だから、ここで待つことにしてみたよ」
現われた黒衣の盗賊に、天十里はにっこりと振り返った。
「取らせてあげるけどその後は容赦しないよ。どうなるかは……ね?」
かえって心の読めない笑顔で、天十里は銃に手をかけていた。
事情を深く察する必要など、もはやあるだろうか。
盗賊は懐に手を入れた。
退けぬなら、戦うほかない。
盗賊が銃を抜くのと天十里が銃を抜くのはほぼ同時だった。
打ちながら真横に飛ぶ天十里。
顔の横数十センチを弾丸が抜けていく。
天十里は素早く転がり柱の陰に。
弾丸が柱に当たってはねていく。
三発待ってから身を乗り出し、器用に相手のが顔を出すタイミングに弾を撃ち込んでやる。
盗賊の手元から銃がはねとんでいく。
サタデーナイトと呼ばれる粗悪な安物銃だ。
さてここからどうしよう。天十里が次の手を考えた所で、盗賊は即座に逃げ出した。
逃げる背中へ何発か打ち込んでみたが、手応えは無い。
まあ、これもこれでよし、だ。
依頼主からのオーダーである『ターゲットを守ること』は達成された。
「おい、そこで何をやってる!」
武装した警備員が複数で駆け寄ってくる。最初の銃声の時点でこちらに気づいて駆けつけた連中だろう。
逃げ切るのは……難しそうだ。
『エンバーミングの必要は無かったかな?』なんて言わずに。
天十里はにっこりと笑って両手を挙げ、警備員たちに振り返った。
後の話。
天十里は一旦警備員に拘束されはしたものの、特に何も盗んではいないということで解放された。天十里が誰にも知られず指輪を守っていたことを、彼らは知らない。
●『梟の郵便屋さん』ニーニア・リーカー(p3p002058)の影なる戦い
水鳥のように綺麗な白翼と、可愛らしい丸めがね。
帽子とおそろいのがま口バックとキッチリとした服。
ニーニアは知るひとぞ知る郵便配達員である。
今日も元気に配達仕事……かと思いきや。
「今日はちょっぴり、別バージョンで行かないとね」
眼鏡を外し、翼を隠し、胸元をきゅきゅっとやって、元からちょっぴりボーイッシュだった服装を更に整えて……警備員に近い格好へと変装した。
長い髪も帽子に入れ、暗い所でぱっと見た限りは短い背丈の警備員だ。
そんな格好で何をするのかと言えば……。
夜深く。
何の特徴も無い村人になりすました盗賊がそしらぬ顔で美術館へと歩いて行く。
変装したニーニアと一度だけ目があったが、すぐに視線を外してすれ違う。
しかし、分かる者には分かるものだ。すれ違うその一瞬がスローモーションのように引き延ばされ、相手が懐や鞄に手を入れる気配が感じられる。
「――ッ」
ニーニアは大きく前に飛び、後ろ襟めがけ素早く繰り出されたナイフを回避。
転がりながら反転すると、鞄から引っ張り出した毒液の瓶を投げつけた。
咄嗟の所でキャッチし、投げ捨てる盗賊。
「貴様、やはり警備員ではないな」
「……」
ニーニアはあくまで無言。帽子を深く被り直し、両手を鞄に突っ込んだ。
引っ張り出せば、両手の指と指の間へ大量に挟んだ試験管タイプの毒液瓶が月の光を反射した。
「誰に雇われた」
「……」
無言を貫く。
ナイフによる飛び込み斬りを後退でかわしながら毒液瓶を次々に投擲していく。
盗賊は腕に毒液を浴び忌々しそうに舌打ちした。
「計画が台無しだ。引き際だな」
きびすを返し、柱や壁をよじ登るようにして逃げ去っていく。
戦闘の音を聞きつけた警備員がやってくるが……。
「不審な物音が聞こえて来たら盗賊らしき人物がいました! 撃退しましたが、まだ周囲に潜んでる可能性があります!」
ニーニアは盗賊の逃げた方向を指さして叫んだ。
「そうか……いや、お前みたいなやついたか?」
「それは、身長が小さすぎて、居るのに気づかなかったって言いたいのかな?」
『じゃあ僕はあっちを探すから』といって走り出すニーニア。
警備員たちは一度顔を見合わせてから、盗賊を追いかけた。
●影なる守人、『千法万狩雪宗』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
「ああ。こういう刺激も、たまには悪くないな」
汰磨羈がいるのは美術館だ。
不思議な模様が描かれた指輪が展示されているエリアでお行儀良くしている。
誰も彼女がこの指輪を巡って盗賊と戦う準備をしているなどとは思わないだろう。
だがよく観察すれば分かったかもしれない。
汰磨羈の鋭い視線が盗賊の進入路や退路を探ろうと動いていることに。
美術館をひとまわりして、外へと出る。
「幸いにも、撃退でいいという話だからな。追撃はせずに、すぐ逃げられるルートを見出しておくか」
隣には小さな公園があった。茂みが多く、侵入するにも逃げるにも、そして戦うにも良い場所だ。
汰磨羈は茂みに隠れ、時を待った。
夜が更け、闇に紛れるように一人の盗賊が現われた。
「そこに、誰かいるな」
黒い虎のブルーブラッドだ。
低く渋い声に、どこか可愛らしい耳。
汰磨羈は僅かに片眉をあげたが、ほどなくして茂みから姿を見せた。
お互い、目的を問う必要などない。
汰磨羈はただ装備していた霊光器を眼前に突きだし、その両端から光の刃を発生させた。
「すまないが、ここは通行止めだ」
「なら、踏み倒すまで」
虎の盗賊はポケットからナックルダスターを抜くと、拳に握り込んだ。
汰磨羈が光の刃を発射。対して盗賊は上半身の動きでかわしつつ距離を詰め、顔面にパンチを繰り出してくる。
対して汰磨羈もまた素早く踏み込み、相手の眼前で跳躍。空中で器用に回転すると、相手の背中を切りつけた。
「……!」
追撃。振り向きざまのパンチで打ち払う盗賊。
光の刃とナックルダスターの間で火花が散った。
「筒抜けだったという事だな、貴様の行動は。さて、どうする。警備員が集まってくるのも、時間の問題だが──」
戦闘の音を聞きつけてか、走る警備員の足音が近づいてくるのが分かった。
「……仕事はここまでのようだ」
盗賊はローブを翻し、迷わずに逃走を始める。
足の速さがかなりのもので、汰磨羈から見ても追いつくのは困難そうだ。
ならばこちらも逃げるまで。
「生憎だが、是にて失礼させて貰う」
汰磨羈は高い跳躍で近くの柱に飛びつくと器用によじ登り、そのまま民家を乗り越えて隣の道へ。
待機させていた馬へと飛び乗った。
「盗賊は撃退しておいてやった。有難く思う事だ!」
警備員たちは去りゆく汰磨羈の言葉に意味が分からず、ただ顔を見合わせるばかりだった。
●逃げの天才、『兎に角』オカカ(p3p004593)
「えっとー、とにかく盗賊さんをやっつけて、逃げればいいんだよねー? よーし、逃げる事ならボクにまかせておいてー!」
そう語ったオカカがやってきたのは夕方の美術館前である。
一通り見て回って周辺の地形を把握しておくためだ。
自分にとって逃げやすい道を探すのだ。
「よーし、ぜったいに捕まらないぞー!」
オカカは気分を引き締めて、道の端っこにある大きな木箱へと身を隠した。
じっと耳をすます。
夜がやってきて、人通りが少なくなる頃。
箱から僅かに外を覗くようにして、オカカは周囲を伺っていた。
盗賊が現われる時間。
盗賊が美術館の前へへと向かうのを確認すると――。
「悪い人にはお仕置きだー」
オカカは木箱から勢いよく飛び出した。
それが自分を狙った刺客だと察した盗賊は銃を抜き、後退しながら銃撃を始めた。
ぴょんと横っ飛びに銃弾をかわすオカカ。
そのままジグザグに走ると、オカカは自慢の角で体当たりをしかけた。
銃のグリップを叩き付けるように振り払う盗賊。
さすがに交わしきれなかったオカカは地面をバウンドしながらころころと転がるが、すぐに体勢を立て直して突撃を再開。
今度は銃撃を角で弾きながらまっすぐに突っ込んだ。
直撃をうけた盗賊は吹き飛び、木箱を破壊しながら道の端に転がる。
「何の音だ! 誰かいるのか!」
戦いの音に気づいた警備員が複数で走ってくる。
盗賊は畳んでいた翼を広げ、民家の屋根を飛び越えるようにして逃走。
「やったあー、ボクの勝ちー。それじゃあ逃げるよー」
オカカは警備員を尻目に一目散に逃げ出した。
地形を把握していて、ある程度開けていて、尚且つあれやこれやがゴチャゴチャある町中での逃走である。
オカカの才能もといギフトのおかげもあって、警備員はものにつまづいて転倒したり道を間違えたりと次々にリタイア。
最後には、オカカは塀の上からその様子を見下ろしていた。
「逃げきれたかなー?」
じゃあお仕事はおしまい、とでも言わんばかりに塀の向こうへと消えていく。
●『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)の初仕事
「酒場にいた時から思ってたけど、やばい仕事を受けてしまった」
裏路地を歩きながら、威降はどこか気だるげだった。
夜に紛れそうな黒髪と青い目。ある意味どこにでもいそうな、しかし不思議とどこにも居なさそうな、少しだけかわった雰囲気をもつ青年だ。
「いや、受けたのは俺だ。他の皆も今頃頑張っているだろうし、全力で何とかするだけさ」
覚悟を決め、マフラーを引っ張る。
裏路地の角を曲がったその先は、例の美術館だ。
裏路地から出てきたのは、それまでの青年ではなかった。
ウィッグで変装した威降である。
流れるように気配を殺し、空気に紛れていく。
警備員の流れは昼間の内に見て置いた。
安くない入館料を払って美術館を見物し、何気なく建物の周囲も見て回った。
警備のサイクルはいい加減だったが、人数が多い分隙が小さいのは確かだ。
適当な石を掴み、遠くに投げてやる。
「何か物音がしなかったか?」
「さあ……気になるなら見てこい」
二人組の警備員のうち一人が外れ、もう一人が戻りを待っている。
行くなら今だ。威降はそっと窓に近づくと、用意した針金を使って解錠を試みる。
安くないコストを払っただけのことはある。素早く窓を開き、まるで何事もなかったかのように戻すことができた。
これで野外の警備はクリアだ。
威降はそのまま気配を殺し、目的の美術品の所までたどり着いた。
模様の入った指輪だ。
これを偽物と交換して……。
「おい、そこで何をしてる!」
館内の警備員が呼びかけてくる。
威降はわざと『あと少しだったのに!』と叫ぶと一目散にダッシュ。
あらかじめ鍵を解いていた窓から飛び出すと、茂みを抜けて変装を解き、何事も無かったかのように夜の町に紛れた。
手の中には、ターゲットの品。
「次は平和な仕事だといいなぁ……」
ぎゅっと握りしめ、威降はため息をついた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
――congratulation!
GMコメント
いらっしゃい、こちら闇酒場『レイノルズ』。
注文はビール? スコッチ? ウィスキー? ひっくりかえるほど酷い酒だって置いてある。
アルコールのないものは……んー、水くらいかな。
とりあえず一杯注文しな。さっき出て行った仮面のあいつがもつそうだ。
【依頼内容】
『ターゲットを偽物とすり替える』または『ターゲットを狙って現われる盗賊を撃退し、警備員からも撤退すること』
成功条件は『4件以上のターゲットを守ること』です。
できれば1件につき1人で解決できればベストなのですが、後述する理由からそれが困難そうなら1件につき2人まで投入してよいものとします。(例:2人×4件)
最低成功条件でもある4件防衛が達成できればよし、という判定です。
なおこちらは『逮捕されなければ』悪名はつかず、普通に幻想での名声値が加算されます。逮捕されるとその状況に応じて悪名がついたりパンドラが減ったりします。ご注意ください。
【A:盗みサイド】
依頼主(の末端)からターゲットの偽物を受け取り、建物へ侵入。
ターゲットをすり替え、そのことがバレないように撤収しましょう。
最悪侵入がバレてもいいですが、すり替えの事実だけはバレないように気をつけましょう。
侵入するターゲットの建物は二種類。
どちらかを選んでください。
(※メタですが、全員A-乙を選んだ場合ターゲットは全部A-乙パターンだったことになります)
・A-甲:警備員が沢山いる美術館
貴族がパトロンになっている美術館です。
高価な美術品が展示されているため、お金をかけて沢山の警備員が巡回しています。
怪しい人がいればつまみ出し、怪しくなくても重要なエリアには近づけないように言われています。
対人潜入スキルやそれらを使用する際の工夫諸々があるとスムーズに進むでしょう。
・A-乙:機械セキュリティだらけの博物館
練達につながりをもつ貴族たちによる博物館です。
貴重な展示品がいくつもあるため、監視カメラや光学センサなどが仕掛けられてます。
鍵も複雑なヤツなので鍵開けスキルだけだとスムーズにはいきません。
機械修理や改造、科学といった知識技術をもっていると、ここではスムーズさがまします。
【B:戦いサイド】
すり替えなんてめんどくせえ! 盗賊をとっちめればいいんだろ!?
という力とパワーで解決する側です。
盗賊が現われるまで近くでじーっと待機し、現われたら襲いかかり、撃退します。
戦闘で不利になるとみるや(捕まっては大変なので)盗賊も逃げていくでしょう。
ですがここからが肝心。
警備員は騒ぎを聞きつけて現われ、あなたを捕らえようとします。
ダッシュで逃げるなり言いくるめるなり方法はありますが、ただスキルを使う(ないしは単純行動を書く)よりも具体的なプランをプレイングで提示したほうが成功確率がぐっとあがります。
尚、現われる盗賊は1人。装備やクラスは不明ですが戦闘には優れていないので一人でなんとかできるレベルのはずです。
【相談のススメ】
単独任務とはいえ、一人でプレイングを書くとなにかしら穴ができるもの。
お互いのプランを説明しあい指摘しあうことでその穴を埋めたり思ってもいないアイデアが盛り込めたりと、より成功条件に近づけることができます。
是非、相談によるプレイングのマッシュアップをお勧めします。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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