シナリオ詳細
<黒鉄のエクスギア>最強にアイドルで最高なファイター
オープニング
●ウサミ・ラビットイヤーというファイター
エレキギターのスイングが直撃し、ウサミ・ラビットイヤーはベースボールのごとく吹き飛んだ。
高い天井に激突し、はねかえるように落下。回転しながら地面へぶつかるが、直前で身をひねって両足と片手で着地をかけた。
痛みと衝撃に歯を食いしばるが、そんなウサミの眼前に迫る拳。
咄嗟のことでガードを損ない、ウサミの顔面へと直撃する。
今度こそ受け身もまともにとれずに吹き飛ばされ、ウサミは仰向けに地面を滑った。
浴びせかけるスポットライト。
覆う金網。
すり鉢状の観客席にはしかし観客はなく、かわりに拘束され轡をかまされた子供たちが並べられていた。
「なあなあ、ウサミよお」
ギターを肩に担いだ男がたばこをくわえ、口の端から煙を吐いた。
「変な悪あがきはよそうぜ。こちとら金で雇われてんだからよ、好きでこんなクズ仕事しねえって」
「だったら、今すぐやめたらいいじゃないですか」
「そういいなさんなや。金は命より重いねんで?」
糸目で肩を露出したドラマー風の男が肩をすくめるジェスチャーをした。
片腕組みをしてめがねに手を添える革ジャケットの男。キーボードを刀のように背負っていたが、その柄に手をかけた。
「あそこにいる数人。数人ですよ。それだけ特定の場所に運べば驚くような金が手に入るんです。
その上、僕らのチームを新闘技場に正規エントリーしてもらえる。
僕ら地下ファイターには破格の条件じゃありませんか。
どうですウサミさん。分け前をあげますから、一緒にやりませんか。なんなら新闘技場のエントリーファイターに紹介してもいい」
「……」
ウサミは舌打ちを……しようとして、やめた。
険しい表情を無理矢理笑顔に変え、たれかかったウサミミを手ぐしでグッと立ち上げさせる。
「その子たちを運んだら、古代兵器の起動儀式として虐殺されるって知ってるんですよね」
「まあ、な」
「それでもお金が大事……わかりますよ。分かりますとも。ワタシだってねえ、好きで地下闘技場にいるわけじゃないんですから」
「話が早くて助かるぜ」
たばこの煙を吐きながら、握手をしようと近づくギターの男。
だが、あげがウサミの燃えるような目に、本能的に立ち止まった。
「でも、『好きなモノ』もいっぱいあるんですよ。ここにはね」
立ち上がる。
どこからともなく現れたチェーンが、ウサミの腕にぐるぐると巻き付いた。
「ワタシはウサミ・ラビットイヤー17歳とXヶ月!
一番強くて一番カワイイ――アイドルだぴょん!」
●ウサミ・ラビットイヤーというアイドル
第三次グレイス・ヌレ海戦から明けてしばしの頃。
ゼシュテル皇帝が海洋との交渉を進めるさなか、間隙を突くかのごとくある計画が実行に移された。
鉄帝首都のスラム街モリブデン。その地下に眠るという巨大古代兵器を手に入れるべく鉄帝将校ショッケンとその息のかかった軍隊やマフィア、傭兵たちが軍事制圧に乗り出したのだ。
本来ならここまで強引かつ派手な手段をとる必要はなかったが、本当なら寄る辺なきスラム民たちがローレットに頼り、そのローレットがショッケン一派の活動を端から阻止していったことが大きな原因であった。
彼らショッケン一派の目的は大きく分けて二つ。
ひとつは古代兵器を手に入れるために必要なコアルームを制圧すること。
もうひとつは古代兵器起動のための儀式として、子供たちをコアルームに運び込み虐殺儀式『血潮の儀』を実行することである。
全力を投入するショッケン一派を前に、スラム民はとうとうなすすべを亡くした……かに見えたが。
「待たせたね、ウサミちゃん!」
声が、した。
轡をはめられ身動きのとれない子供たちの目に、ごうごうと燃え上がる炎のオーラが見えた。
金網を切り裂いて広いリングへ乱入した、炎堂 焔(p3p004727)を見た。
「その人たちが、子供たちを虐殺炉に運ぼうとしてる傭兵たちってことでいいんだよね」
かついでいた槍を抜き、地面をギャリッとこするように振り込む。マッチ棒に火がつくように、槍の先端が燃え上がった。
ウサミはそんな彼女を振り返り、照れたように苦笑した。
「……今日は依頼してないぴょんよ?」
「依頼なら、その子たちの親から受けてるよ。それに、まだ解散したつもりはないからね」
焔に続き、何人ものイレギュラーズが金網を突き破ってリングインしてきた。
その有様に、相手のファイターたちが目を見開く。
騒動を聞きつけた他のファイターたちがリングへかけつけ、九対九のにらみ合いへと発展。
焔はウサミの手を掴んでひっぱりあげると、並んで指を突きつけた。
「ウサミwithファイヤーシスターズ、参上! 子供たちの命と夢は返してもらうぴょん!」
- <黒鉄のエクスギア>最強にアイドルで最高なファイター完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年01月29日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●いちばん強くてかわいくなりたい
「ウサミwithファイヤーシスターズ、参上! 子供たちの命と夢は返してもらうぴょん!」
地中の古代遺跡。
日夜闇バトルが繰り広げられる地下闘技場のフェンスという鳥かごの中で、少女たちは天空を指さした。
目を見開くファイターたちに、びしりと指を突きつけるウサミ・ラビットイヤーと『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。
「そこで――ファイターの皆? せっかく3チームも雇われてるんだから、『チームごとに』決着をつけない?」
「チームごと……だぁ?」
V字のギターを肩にかつぎ、ラヴァーズVのボーカル&ギターのフライは顔を左右非対称にゆがめてたばこを噛んだ。
野生をむき出しにして襲いかからんとしていたブルーモンキーズのチンパンたちも首をかしげ、顔を見合わせている。
まあそういうことなら……という空気ができはじめたところで、チェリーブロッサムのルックスセンター(自称)のチェリーが片眉をゆがめた。
「はぁ? あり得ないんですけど。なんで敵の言うこと聞かなきゃいけないの?
大体ウサミとか最近チョーシ乗ってるよね。クアッドコアとかに気に入られたからってゲリラライブとかしてさ。歳くってるくせにマジうける。それに――」
「まあまあ」
後ろで『仕方ないなあ』という顔をしていたミヤマとヒガンが手をかざして止める。
「私たちはそれでもいいよ。そっちはどういう組み分け?」
「えっとね……」
焔とウサミはそれぞれゼファー(p3p007625)の方を見た。
「私たちは三人アイドルユニットの『レッドらビッツ』だよ」
と言いながらゼファーの頭に青いラメのついたウサミミカチューシャをがしょんと装着。
「え?」
「平均年齢17歳のユニットだよ」
「ん? んー」
若干話に流されかけていたゼファーだが、ウサミミの位置をきゅっと直して咳払いをした。
「いいでしょう。抜群のラビットコンビネーションってやつを見せつけてやりましょ!」
「じゃ、私たちは隣のステージに移りましょ。呪殺爆殺デスマッチ用の檻があるから……」
移動しようとするミヤマたちに、『天義芸人(善)』リゲル=アークライト(p3p000442)が手をかざした。
「待ってくれ。先に……子供たちの猿ぐつわを外してくれないか」
「……」
「……」
ミヤマとヒガンは顔を見合わせ、ことここに至ってからは別にいいかなって目をしていたが、チェリーだけがまた『ハァ?』と声を上げた。
「だからなんて敵の言うこと聞かなきゃいけないわけ? めんどいしガキとかうるさいしイヤなんだけど」
「ほほー。懐がせまいのう。妾とちがって貧相なボディをしておるせいかのー?」
ふわふわのついた扇子を口元でぱたぱた振りつつ視線で煽っていく『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)。
チェリーは強く舌打ちすると、ミヤマに指でサインを出した。
「けど、私たちが担当してる子たちは一緒に連れて行かせてもらうよ。これは仕事だから……」
「ああ、好きにしろ」
『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)はだらんと腕を垂らした姿勢のままチェリーたちをにらみつける。
「……アンタのいうアイドルってやつは礼儀も仁義も学んでねえ生き物なんだなあ」
「はぁああ?」
「華やかな舞台に憧れるって気持ちは分かる。誰にでもある夢ってモンだ。
けどなあ、子供の命を犠牲にしてまでかなえる夢に、価値なんてあるのか」
言い返せず、チェリーは舌打ちをして白い革手袋をはめた。
「どーでもいいわよ。さっさとかかってきなさい! 全員ブチブチのブチコロにしてやるわ!」
別のステージ……というよりライブステージへとやってくるラヴァーズV。
「んで、アンタらは?」
「シャドウムーン……じゃねぇや。ジャスティスⅢ、追い風のジャスティス参上!」
すでにできあがっている『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)がピッと二本指を立ててウィンクした。
「お前ら、俺に惚れるなよ?」
「ホォー、美少年やないの」
案外まんざらでもないって顔でドラムのイェンが糸目の目尻をややあげた。
「で、そちらのお二人さんも?」
「ま、そういうことだ」
『不沈要塞』グレン・ロジャース(p3p005709)はがっつりとした鎧の胸元を叩いてから、相手を指さすポーズをとった。そこから流れるように盾を構えるが……。
「ほう、『ツェッペリン式防御戦闘術』ですが……結構なものですね」
メガネのキーボード担当トルマが顎をあげた。
「へえ、知ってんのか?」
「彼女はこっちの界隈でも有名人でしてね……」
ちらりと顔を見られて、『雷雀』ティスル ティル(p3p006151)はぱたぱたと手を振った。
「私はそういうアレじゃないよ?」
と言いながら腕輪状態にしていた武装を展開してアームブレードへと変形させた。
「それにしても、ずいぶん簡単に条件を呑んだね」
「まぁな……こっちもクソ仕事してんだ。少しは義理も通さねえと」
『義理』という単語に若干疑問を覚えたが、ティスルはそれ以上気にせず身構える。
カッとスポットライトがステージを照らし、フライはギターを強くかき鳴らした。
「んじゃ――シークレットバトルライブといこうぜ」
●チェリーブロッサム VS エターナルシャイン
「マジうける。あたし仕事してるだけなのに噛みついてくるとか。邪魔だし興味ないから潰しとこ」
ごきごきと指を鳴らすと、チェリーは桃色の魔力砲撃を放った。
「そんな理由で、ひとを傷つけていいわけがないんだ!」
リゲルは白いきらめきを全身に纏うと、蒼銀の騎士装束へとチェンジした。
「これが俺の真の姿! 見習いアイドル騎士、リゲル推参!
子供たちの未来は俺達が守る!」
放たれた砲撃を輝く剣で切り裂くと、吹き飛ばされそうな衝撃を踏ん張ってこらえた。
「黒星(ブラックスター)――!」
切り裂く力をそのままオーラの斬撃に変え、チェリーめがけて解き放つ。
直撃したチェリーに、義弘は猛烈な跳び蹴りを繰り出した。
「たとえスラムの住民とはいえ、子供を犠牲にして叶える夢なんて野良犬にでも食わせちまえ」
吹き飛んだチェリーへと更に駆け寄り、頭を掴んで追撃の膝蹴りをたたき込む。
「チェリー!」
彼らの速攻を防げなかったミヤマとヒガン。
駆け寄ってフォローにかかろうとするが、先んじてデイジーが間に割り込んで両手に魔力をあふれさせた。
「くっふっふ、見よ! 子供たちが妾を応援する心が輝きとなるのじゃ! これぞエターナルシャインなのじゃー!」
「ミヤマ!」
「う、うん!」
デイジーが連続で放つサテライトコンボを、ミヤマたちは妖力を纏って抜いた刀で防御しはじめる。
そのままデイジーへと突撃を開始。
たこ足を突っ張って背を高くしたデイジーと、ミヤマ&ヒガンの連携プレイがぶつかり合う。
ギャッと声をあげて吹き飛んだチェリーが金網にぶつかり、目を回して気絶した。
剣を振り、息をつくリゲル。
「とにかく自分勝手な敵でしたね……義弘さん」
「こんな奴は殺す価値もねえ。拳が汚れる」
そう言いながら、リゲルと義弘はくるりと振り返った。
「ほう、やっと終わったか。こっちは純情じゃぞー」
とかいいながら子供たちに交じってお菓子食べてるデイジーがいた。
「なんでギャラリーに混じってるんだろう……」
「まあ、ミヤマとヒガンもそれなりの実力者だからな。一人でしのぐのはキツかったんだろう」
けどそれならなぜチェリーのフォローに割り込んでこなかったのか、とミヤマたちの方を見ると、二人は肩をすくめて苦笑した。
「チェリーがどうしてもって言うからこの仕事をしたけど、子供を犠牲にするっていうのはチョットね……」
「けど、仕事の手を抜いたって知られると後評判が悪いから……ね?」
もうちょっとだけやっていかない? と刀の柄をトンと叩いてみせるヒガン。
「ほう……」
義弘のプレッシャーをうけつつも平然としているというのは、なかなかの度胸である。生きるか死ぬかの地下ファイターをやっているだけのことはある。
「仁義を通してえって話なら、断る理由はねえな。リゲル、おまえさんはどうだ」
「あまりピンとはきませんが……子供たちに手をかけようというつもりではないなら、いいでしょう」
バッとマントをなびかせ、笑顔を作って剣を構えるリゲル。
彼が大地を蹴って突撃をかけると、ミヤマもまた同時に飛び出して互いの剣をぶつけ合った。白銀と桜色の火花が散り、交差した剣越しににらみ合う。
一方で義弘もまた突撃をかけ、その辺に置いたあったパイプ椅子を掴んでヒガンに投げつけた。
スパンとパイプ椅子を切断するヒガン。直後に繰り出した義弘のパンチを受けてのけぞるも、くるりと身をひねって転倒を回避。義弘へと斬りかかる。
「二人とも良いガッツなのじゃー! あとで飴ちゃんをやるのじゃー!」
サイリウムをふりふりして応援してくるデイジー。
もしかして一番自由なのって彼女なんじゃ……と少しだけ思ったリゲルであった。
●ラヴァーズV VS ジャスティスⅢ
三人のセッションビートが波動となって襲いかかる。
グレンは縦を突き出すと、サンディとティスルを自分の背後へと同時にかばった。
「弱者を売って金にする、か。否定まではしねえさ。
だが新闘技場へのエントリー権、コイツだけは認められねえな。
鉄帝で生まれ育ったんなら、あんたらもガキの頃に憧れたんだろ?
ラド・バウで喝采を浴びて華やかに戦う闘士達によ。
それが、子供の命を犠牲にしてでも舞台に立つだ?
闘士はただ強ければ良いってもんじゃねえ。
人を『魅せる』のが闘士だろうがッ!」
目に強い輝きを灯し、グレンはずんずんと前進していく。
攻撃しているのはラヴァーズVたちであるにも関わらず、精神的にはグレンに圧されているようにも見えた。
「あんたらが踏み台にしようとしてる子供達にこそ!
自分達もああなりたいと! 『憧れ』させるのが闘士の使命だろうがッ!」
突如、完璧に動きを連鎖させたティスルとサンディがすさまじい反応速度で飛び出していく。
精神的な隙を突かれた形になったラヴァーズVの三人はその動きに対応できない。
トルマがキーボードを剣のように構えて前に出るが、サンディの繰り出した暴風のようなキックが剣の防御をはねのける。
「今だティスルちゃん!」
「もらった――!」
瞬光一閃。
黒い光と化したティスルはトルマの横をすり抜け、アームブレードを振り抜いた姿勢で停止した。
振り返るトルマ。が、一瞬遅れて血を吐きその場に崩れ落ちた。
「なんつー連係プレイだ。完璧に互いの個性を活かしてやがる」
額に嫌な汗をかきはじめるフライ。
イェンが防御のバフをかけるべく空間展開したドラムセットを叩き始めるが、すぐさまサンディが砂をまいて音楽を妨害。
ノイズによって強化状態を解かれたイェンに、ティスルが激しい回転をかけながらさらなる斬撃を繰り出した。
すり抜けざまの斬撃、からのターンしての斬撃。更にイェンの周囲をぐるぐる回りながら変幻自在のブレードによって斬撃をたたき込みまくった。
血を吹き上げ、仰向けに倒れるイェン。
「やべえな、三対三だぞ。ここまでアドバンテージをとられるなんてことあるか」
集団戦において一人も傷つかずに勝つなんてことは幻想である、とされている。
集中攻撃で頭数を減らす戦法は、同時に自分たちの頭数を減らされるリスクを回避できていないからだ。
しかしグレンによる二人同時のカバーとサンディの連鎖行動、そしてティスルの高反射&高EXA移動攻撃による戦場のかきみだしは圧倒的な連携効果を生み、単純な三対三の構図をひっくり返した。
「まずはアンタの企みをへし折ってやる。でもって、ヒーローになろうぜ!」
盾をかざしたまま剣をとり、相手の防御を押しつぶすように急接近をかけるグレン。
フライはギターをハンマーのように叩きつけたが、グレンの繰り出す剣によってへし折れてしまった。
「へっ……ハートで負けたか。完敗だぜ。何モンだあんた、名前を聞かせろよ」
「グレン・ロジャース。ただの男さ」
降参のポーズをとったフライに対して剣を収め、グレンは子供たちに手を振った。
●ブルーモンキーズ VS レッドラビッツ
「ホアアアアアアアアアッ!!」
身体を丸めてボールのように突撃してくるマーモを、ウサミはチェーンを振り回すことではねのけた。
「こんの――相変わらずすばしっこいぴょん!」
「ホワッキャキャキャキャ!!」
死角から繰り出すマーモデスクローを張った鎖で防御すると、ウサミは大きく飛び退いて距離をとった。
更に檻の鉄格子に足をつけ、フィールド内を立体的に飛び回る。
同じく立体的な飛び回りをかけてジグザグに行き来するウサミとマーモ。
その一方で焔はチンパンと接戦を繰り広げていた。
すさまじい握力と両手両足をフル活用した器用な打撃攻撃を繰り出してくるチンパンを、炎と槍のリーチを活かしたテクニカルな戦法で焔がかわしていくといった構図だ。
炎の攻撃を上手にかわすチンパンに、若干手を焼いているといった様子もみられる。
「ウホアッ!」
焔の突き出した槍を掴んでぐるぐると回転しながら手元へと寄り、顔面に『足パンチ』を繰り出してくるチンパン。
焔は槍を手放して飛び退くと、拳と足に炎を纏わせて回し蹴りを繰り出した。
が、そんな焔の攻撃をショルダータックルでカットしてくるマンドル。
攪乱、攻撃、防御の三つを上手に連携するブルーモンキーズ。なかなかに強い……。
が、しかし。日頃から自由な連携プレイを重ねてきたローレットも負けてはいない。
「ゼファーちゃん!」
「まかせなさい」
ゼファーは槍を投擲すると、慌ててキャッチしたマンドルめがけて膝蹴りをたたき込んでいった。
蹴り飛ばされ、転がるマンドル。さらにゼファーは軽快なステップを踏みながら手招きしてみせた。
「コングは子供達を助ける為に自ら進んで戦いだってしたのに、ね。
ちょっと頭を冷やしなさいな、お馬鹿さん達」
「ウホ……」
痛いところを突かれたという顔で起き上がるマンドル。
「さぁて、かかってらっしゃい?」
タンク担当のマンドルを引きつける形で、ゼファーはマンドルがぼこぼこに殴り合い始めた。
が、それこそが焔たちの狙いである。
ギャリギャリと音を立てて放たれたウサミのラビットチェーン。
それがマーモ、マンドル、チンパンたちにがちりと巻き付き、三匹を一カ所へと固めてしまった。
「さあ、今だぴょん!」
焔とゼファーの槍を蹴り上げてパスするウサミ。
「おっけー!」
焔はゼーファの槍を。
ゼファーは焔の槍をそれぞれつかみ、青い炎と赤いオーラをそれぞれ纏った。
「キャキャ!?」
どうみたって必殺の一撃が繰り出されるであろう雰囲気に、マンドルたちが鎖をほどこうともがくが……執念によって巻き付いたウサミのチェーンからはそう簡単に逃れられない。
焔とゼファーのチャージアタックが炸裂し、マンドルたちはまとめて金網の外へと吹き飛ばされていった。
子供たちの拘束を解き、これでよしと胸をなで下ろすウサミ。
「ここはもう大丈夫だぴょん。焔も、皆も……まだやるべきコトがあるんでしょ? 子供たちはこのウサミ・ラビットイヤーがきっちり送り届けるぴょん!」
振り返るウサミに頷き、一度合流した仲間たちはそれぞれの戦場へと賭けだしていった。
運命の時間まで、あと……。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
GMコメント
■■■オーダー■■■
・成功条件:子供たちの奪還
・オプションA:ウサミの生存
・オプションB:ファイターとして勝負に勝つ
・オプションC:アイドルらしく勝負に勝つ
■■■シチュエーション■■■
スラムから浚われた子供たちが今まさに地下遺跡の虐殺路へと運搬されようとしています。
アイドルとしての正義感から駆けつけたウサミと、浚われた子供たちの親から依頼を受けたローレット・イレギュラーズ。
しかし運搬の護衛を依頼された地下ファイターたちが、高額の報酬と新闘技場のエントリー権を対価に立ち塞がりました。
子供たちを助け出すには、ここにいるファイターたちを倒すほかありません。
普段は歓声の飛び交う広大な地下闘技場で、新たな命のやりとりが行われようとしています。
敵側の目的は『子供の運搬』であるため、子供を人質にとったりこの場で殺してしまったりはしないでしょう。ものすごく意味の無い犠牲だしお金にならないからです。更に言うと、特に好んでこの仕事をしているわけでもなさそうです。
■■■フィールド■■■
地下闘技場のリングです
普段は金網電流デスマッチに使われるフィールドですが、今は金網に電流魔法は流れていません。
というか、試合ではないのでリング内外のどこを使ってもOKです。
リング内の直径はレンジ2攻撃がまあまあ届く程度(バスケットコートよりちょい広)。観客席まで含めるとレンジ3攻撃が活きる範囲になります。
■■■エネミー■■■
三つのチームが合同でこの仕事を受けており、現在リングへ駆けつけている状態です。
・ラバーズV
三人組のロックバンド風地下ファイター。
ギターのフライ、ドラムのイェン、キーボードのトルマで構成される。
激しい肉弾戦と根性が武器で、音楽の力で自らと仲間を強化・回復しながら戦う持久戦スタイル。
・デイリーブロッサム
『そのひぐらし』というサークル名でも活動している少女モデルチーム。
唯我独尊でワガママなチェリーと彼女のワガママに日夜振り回されているミヤマとヒガンの三人で構成されている。
日本刀を武器にするトータルファイターのミヤマとヒガンは比較的常識人だが、新闘技場のエントリー権がどうしてもほしいほしいとチェリーがワガママをいうので仕方なく仕事をしている。
チェリーは神物両刀超火力タイプ。魔砲や魔力撃の威力が武器で他全部が弱点。
・ブルーモンキーズ
霊長類系獣種三人チーム。純粋な地下ファイターで、細かい考えが苦手。
パンチ力が自慢のチンパン、防御が堅いマンドル、小柄ですばしっこいマーモの構成。
コンバルグ・コングの(追従者という意味での)フォロワー。
■■■味方戦力■■■
・ウサミ・ラビットイヤー(リングネーム)
通称『鎖兎』。永遠の17歳。
地下ファイターにして地下アイドル。
アクロバティックな動きと鎖を使った戦闘スタイル。
主に鎖で相手の動きを鈍らせて決め技につなぐのがテッパンで、今回の戦闘ではPCの決め技チャンスを作る役割を持ちます。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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