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シナリオ詳細

<星芒のカンパネラ>コールド・スリープ・エラー

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●海底基地
 とある辺境の青い惑星、ゆったりと地表を覆う海の下に、秘密の基地がある。基地の存在自体を敵から隠すためのバリアに守られ、人が生きていくために必要な食糧や酸素を生産する工場を持つ白く頑丈な基地。その中を人型のロボットが進んでいた。

 自分以外に動く者のいない基地内を毎日見回り、さして埃が積もったわけでもない昨日と変わらぬ床や壁を丁寧に掃除して、基地の各システムに異常がないかをチェックして、外部環境を精査し、味方勢力からの通信有無を確認して。近く交換が必要な部品などが予想されれば生産システムに入力し、工場を動かして完成すれば部品交換をする。
 食する者のいない食糧を調理してあたたかな料理をつくり、日に三度決まった場所――基地の最奥、人工冬眠のカプセルがずらりと並ぶ広い部屋に運んで、時間を見てリサイクルシステムに料理を放り込む。

 かつて、この基地には人間たちがいた。

 ――私の『エラー』。

 ロボットを作った男は、ロボットをそう呼んでいた。ふといつものようにカプセルの前に料理を置いたロボットは、男が眠るカプセルに視線を向ける。無感動、無感情、無機質なはずのロボットはその日、何故か――理由なき想定外の衝動に突き動かされ、イレギュラーな挙動を起こした。
 息をする者もいない、無音の世界。
 その中で、ロボットはカプセルに手を伸ばしたのだ。

 ロボットの記憶データには、人間たちが眠りにつくまでの歴史が残っている。
 人間たちは、『敵』と戦っていた。人間ではない敵『異星人(モンスター)』は、強敵だった。
 戦況は芳しくなかった。追い詰められた人間たちの勢力は散り散りになり、悉く滅ぼされていった。
 ここに眠る人々は、そんな人間たちの一団だ。いつか同胞の助けが来る望みに賭けて、眠ることを選んだ人間たち。

 ――お前をひとりにしてしまう。
 男は、そう呟いた。
 ロボットはその時、無機質な目をしていた。
「マスター、当機は、任務を遂行する能力を備えています」
 言葉通り、何も問題なく基地は維持されている。何百年も。そして、この先も、維持していく。いつか来る日まで――いつまでも、維持していく。

 ――コールドスリープは、味方勢力の存在が確認できた時に解除するように命令がされている。
 ロボットがカプセルに伸ばした手が止まった。まだ、その時ではないのだ。ないのに。
 その時ロボットは、彼を起こしたいと『思った』のだった。

 ――けれど、私の『エラー』。
 ――もし、お前が長い年月の中でもし。心を持つことがあったら。
 男は、その時とても不思議な顔をしていた。何かが痛むような、何かを愛しむような。

 ――「寂しい」と思ったら。私を起こしても、構わないよ。

「マ、スター……」
 人間の少女に似た容貌のロボットが音のない世界でひとり。理解のできない衝動に指先を震わせて、戸惑いの感情めいた色で瞳を揺らして――徐々に困惑と葛藤を深めながら。


 エラーが、彼のカプセルの前に立っている。


●運命を変える者
「初めまして、境界案内人の翠仙(スイセン)です。今日からよろしくお願いいたします」
 大きな帽子をかぶった子供の境界案内人がそう言って丁寧に頭を下げた。
「『星芒のカンパネラ』をご存知でしょうか? 人類が滅びた後の世界の物語です」
 翠仙はそういって一冊の本を取り出した。
「さて、青き星カンパネラですが、実は海底に人類の生き残りが眠っている基地が隠されているんです」

 ぱらりぱらりと本をめくりながら子供の瞳は悼むような感情を見せた。
「けれど、基地を管理するロボットがある時壊れてしまって、基地はそのまま……滅びてしまいます。壊れてしまう原因は、予期せぬ感情の芽生え。彼女にないはずだった感情の発生により葛藤が生まれて、カプセルの前で悩み続けた結果、彼女は何もしないで壊れてしまうのです。
 ボク、……彼らの物語を、もっと良い結末にできないかなと思うのです」
 大きな瞳が瞬き一つして、視線を移す。イレギュラーズと呼ばれる存在へ。

「基地に。その現場にもし、貴方を送ったら」
 ――何ができるだろうか?
 イレギュラーズは言葉をきいて考える。翠仙もまた同様に、一緒になって考えるように眉を寄せた。

「エラーが壊れてしまうより先に貴方がコールドスリープを解除して、目覚めた人類の生き残りたちに生きる道を提案するというのはいかがでしょうか」
 翠仙はそっとひとつ、提案した。
「基地は、人間が生きていくのに必要な物資を生産する機能があります。また、敵から隠れるための機能もあります。ですから彼らは隠れて人類社会を基地内で再建することが可能でしょう……、敵対するプロキオン勢力が健在な限り、基地の外に生存圏を広げることは難しそうですが」

「ボクは、基地の中、あるいは基地の外、任意の場所に貴方を送ります。基地の外に送った場合は、『惑星カンパネラを支配しているプロキオン』に貴方の存在が見つかる可能性があります」
 望みのままに――、そう告げた翠仙はもう一度頭を下げた。
「どうぞ、よろしくお願いいたします」

NMコメント

 おはようございます。remoです。
 2019年はお世話になりました。2020年もどうぞよろしくお願いいたします。

 今回は『星芒のカンパネラ』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2296)の続編です。人類がプロキオンに敗北してから何百年も経過しています。滅びたと思っていた人類ですが、生き残りがカンパネラにいました。しかし、何もしないでいるとその生き残りも滅んでしまいます。
 キャラクター様は「前回の王子とイレギュラーズたちのお話を報告書や案内人の説明で知っている」と言って行動してもよいですし、「知らない」と言っても大丈夫です。

 ●遊び方
 1、PCの出現場所を指定してください。LNは最大4名まで参加頂けますが、全員ばらばらでも、全員一緒でも、どちらでも大丈夫です。
 2、PCの行動を書いてください。何を意図して、何をするのか。参加者様の行動により状況が動いていくことになります。

 キャラクター様の個性やプレイヤー様の自由な発想を発揮する機会になれば、幸いでございます。

  • <星芒のカンパネラ>コールド・スリープ・エラー完了
  • NM名remo
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年01月05日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
流麗花月
ウルリカ(p3p007777)
リコシェット(p3p007871)
跳兎

リプレイ


 『歴史書は必ずしも事実を伝えるものではないが全くの偽りだけでもなかったと、彼は言ったのだった。
 海は歴史家が生まれる前からそこにあり、彼が死んだ後も揺れている。
 海を眺めて我々は笑った。
 我々は笑うことができますねと、そう笑ったのだった。』


 無人の浜辺にリコシェット(p3p007871)が立っていた。夕陽が沈み、夜が訪れて月が二つ空に耀く。銀砂の如く散らばる星を共にして。
「月が二つある」
 寄せて返す波音が延々と繰り返されて、世界が今息づいている。


●『エラー』

 月明かりの下、海の下。
 自然ならざる壁に囲まれて無人のはずの部屋に異変が今。

「芽生えたそれを、否定しないでください」



 ――生まれた。


「え?」
 驚愕の声ひとつ。エラーが目を瞠る。視線の先に、人がいた。
 宝石を溶かしたように碧と翠の狭間で艶めく髪を靡かせてウルリカ(p3p007777)が感情の読み取りにくい双眸をひたりとエラーに向けている。
「あ、貴女は?」
 侵入者。
 守護者のブレインには3文字が浮かぶ。
 だが。
「ぶははっ」
 室内満たす空気を弾け飛ばすような豪快な笑い声と共に静寂の部屋に生体反応がまたひとつ。
「おぉっと、変わった所に出ちまったな!」
 大柄で肉厚骨太の存在感のある男はゴリョウ・クートン(p3p002081)と名乗り、争う気はねぇ、と両手を挙げた。
「しがねぇオークにして旅人してる」
 見下ろす先、エラーの瞳が彼の特別な少女の持つアクアマリンの色に似た光に揺れているのを見てゴリョウは眦を柔らかにした。
「文明崩壊後の世界、か。こうした地を訪れるのは、これで何回目だったか」
 そしてもう一人、仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831) が部屋の隅で小型端末を介して現地システムを把握し始める。

「まぁまぁ話をしようぜ!」
 ゴリョウはどっしりと座り込みエラーの瞳を覗き込む。強面に思えて温かな気配を醸し出す男の声が風無き湖面に染み込むように室内に響いた。


●『イル』

 空にぽつりと小さな粒のような舟が現れて少しずつ大きくなる。
「ちゃんと見つけてくれたんだな」
 口元を笑みで象り軽く手を振るリコシェットの傍に小型の舟が降り立ち、ひょこりとプロキオンが姿を見せた。
「貴方は……旅人、幻想種、の方ですか」
「違うけど、違わない。同郷だ」
 リコシェットは夜の海に視線を向ける。

「イレギュラーズ、というんだ」

 小動物のような眼で隣に寄る子供は無防備で小さく幼く、少女と並んで語り合い無人の夜世界の海を臨む様は自然の中にあって際立つ不自然さを伴っていた。


●『滅びの民』

 ゆらゆらと白い尾が揺れて、影が踊る。
「数百年経過しても問題なしか。技術力は確かだな」
 汰磨羈が基地のシステムを掌握していく。ぴょこりと動く猫耳は仲間の声を拾っていた。

「そいつぁ『寂しい』って感情だな。人類なら誰でも持ってるもんだ」
 ゴリョウは鷹揚に言い放てば、ウルリカが静かに言葉を重ねる。
「感情は、強いでしょう? 何度否定しても、湧き上がるでしょう?」
 エラーの瞳を受け止めるウルリカには感情を理解する色がある。エラーを思いやる温度がある――どことなくシンパシーのようなものを感じているのだ。
「……否定を続けていれば、あなたは壊れてしまう」
 彩の異なる瞳の美しさにエラーは惹きこまれるように頷いた。
「だから、肯定してください。私たちが認めます。あなたにも、感情は芽生え得ると」
 ゴリョウがぶははと笑えば、室内がそれだけで明るさを増したようだった。
「何だったら寝てるやつらを起こして、内にあるもんを聞いてみろ。なぁに、俺が許す!」
「どちらにせよ、味方勢力は待っていてももう来ない」
 ウルリカと汰磨羈が同意してカプセルの人々が順に覚醒の時を迎える。

 一人、また一人。
「そんな馬鹿な」
 目覚め、現実を知り絶望の声が室内に溢れていく。
「母星は滅んだの?」
「宇宙にはもはやプロキオンしかいないだと」

 白衣の男を助け起こすエラーを透き通る空のような汰磨羈の瞳が視ていた。男の手が少女の頭を撫でて微笑めば白瑩を撫でた温度と笑みを遠く思い出した。
「味方は全滅したというが、ならばお前達は何なのだ」
 問う声を耳にして汰磨羈が凛とした声を響かせる。
「神の使いと思ってもいいぞ」
 冗談のような言葉は、しかし縋るような視線に晒されて笑む。


「それで、どうする。御主らは滅ぶのか。それとも生きるか」


●『夜』

「なぁ、もし。人類の生き残りが居たら、イルはどうする? プロキオンと人類は、友達になれると思うか?」
 少女が秘密を打ち明ければ、子供の瞳は疑うことなく受け止めた。ふたりはもう、友達だったから。
「私は、少しずつ、お互いを知っていけば、大丈夫な気がするんだよな。誰だって、喧嘩もすれば仲違いもする。逆もそうだしな」
 少し冷たい風が金の髪を弄んで遥かな空に逃げていく。
「私も、こうやってイルと話して、イルを少しずつ知ったから、友達になれると思う」
「彼らには、僕たちを「ひと」と認めるお気持ちがあるのでしょうか?」
 子供はしゃがみこんで砂を掌に掬い上げた。指の間からさらりさらりと落ちる影にキトンブルーが揺れる。
「僕の同胞は、彼らの友や親や子を殺しました」

「そして彼らも、僕の同胞をモンスターと呼び殺したのです」

 波音は聞く者がいない日々もずっと繰り返されてきたのだろう。イルはリコシェットを見上げた。

「歴史でしか戦争を知らない僕が彼らと友誼を望んでも、当事者である彼らや僕の同胞、大人たちはどう思うことでしょう」
 月に照らされて影が揺れていた。
「僕の星で生きる彼らを僕は知らないふりをしましょう。大人たちから隠しましょう」
 ふたつの影が、波音に揺れていた。


●『人』
 汰磨羈が人々を集めている。

「海水の蒸留装置が出来れば、水には困らない。水があれば、作物を育てられる。肥料は、人間の排泄物を使えばいい」

「魚は、プロキオンに見つからん範囲で確保出来れば、養殖を行っても良いが……」

「食料保存は、コールドスリープ装置を流用すれば問題ない」

 嫋やかな手が迷いなく動いて既存システムにアレンジを加えていく。真剣な表情の人々は時折意見を出したり質問をしながら自分達が生存する未来図を描いていく――彼らは、味方が死に絶え敵に支配された世界の中、この惑星で生きる道を選んだのだ。
 生存した一団の中の貴重な科学者である白衣の男もまた、神妙な面持ちで相談に参加していた。

 主を見つめていたエラーにゴリョウが声をかける。
「料理のレシピだ。料理は知ってるな?」
 見上げた先のニッと浮かべた笑みにエラーが頷く。その表情は自然で柔らかく、人のようだった。

 ――恐らく、彼女はシンギュラリティを起こしかけている。適切なメンテ……いや、カウンセリングが必要だ。出来るか?

 仲間の声を思い出しながらゴリョウが温かに言葉を紡ぐ。
「俺が知りうる限りのそれをオメェさんに伝える。それを人間たちに教えるんだ」
 食べる喜び、作る楽しさ、振舞う心の温かさ。
「腹が満ちれば心に余裕が出来る。美味いもん食えば、明日も頑張ろうってなるのが人間だ!」
 熱を分け合うようにしてゴリョウが説けば、ウルリカも宝石めいた瞳に不思議な優しさを感じさせながら一緒になって話をして、人の輪に向けてエラーの背を押すようにして言葉を贈る。


「私たちは、あなたを彼らの中で生きる感情を持つ存在として認めます」
「あの輪の中に入っても良いんだ」

 無音だった基地の中に今、人の声が溢れていた。
 この日、永久に続くかと思われた日常が変わったのだ。
 永劫変わらぬと思われた無機質なこころは歩き出すのだ。

「気張れよ! 人類の心の安寧はオメェさんにかかってるといっても良い!」
 声に励まされるこころがある。それを自覚しながら前に出したエラーの指先が白衣の裾におずおずと触れて、布を数ミリつまむようにして引く。
「……?」
 視線を向けた男は自らの注意を引くような挙動を見せた少女に一瞬目を瞬かせ、眉を下げて父親のように微笑んだ。
「寂しかったかい、すまない」

(トップを一人にするのは賛成できん。閉鎖環境下では、思考閉鎖に陥り易い。できれば、代表を複数立てる議会制を推したい所だが)
 社会体制の構築に頭を悩ませていた汰磨羈が科学者とエラーが寄り添うようにしているのを見て眼を細める。
「ま、最終的にどうするかは、御主等次第だな」
 短時間とはいえ熱のある討論を交わした人々の顔を順に見れば、汰磨羈への信頼の色が濃く浮かぶ。

「行ってしまわれるのですか」
(本当に神の使いと信じている)
 人が困難の中で生きるためには、希望が必要だ。汰磨羈は蜜のように甘く微笑みを浮かべた。その微笑みひとつで特別な加護を得たような顔をする人々。汰磨羈はそんな人々を一人一人ゆっくり見つめ、未来に続く道照らす道標のように希望を贈る。
「では、"また会おう"」

 背筋を正した人々が声をあげ、礼をする。それは、神聖な儀式のようで。
 ウルリカはそんな人々をいつか見た彼女のよく知る人々と重ねるようにして、ぼんやりと見つめ、
 ――いつかのように端然と礼をした。

 それはやはり、彼らにとって神聖な儀式だった。


●『星』

 夜闇に紛れるように差し出した小指に不思議そうな瞳が返されてリコシェットがくすりと笑い指切りを教える。
「イルを忘れない」
 勝気な瞳と臆することなく堂々と伸びた背筋を見てイルは姉を思い出す。
「僕も」
 頷いた子供は二度目の別れに息を吐き、昏い海へと視線を移して姿の視えぬ『敵』に微笑んだ。

「この星を守りたい」

 呟いた王子は、満天の星を抱く夜空を見上げる。
「僕、姉に王位を譲るのをやめます」
 リコシェットの髪を風がふわふわと揺らし、翠の眼差しが追いかけて映す星空に声が放たれる。


「いつか……」


 その先の言葉は、ふたりだけが知っている。

成否

成功

状態異常

なし

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